光の戦士の時間旅行   作:Apollo 13

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日常

モードゥナ、レヴナンツトール。

 

巨大な水晶の塔を臨み、多くの冒険者が集うこのキャンプには、とある組織が居を構えている。

その名は「暁の血盟」

これまでにエオルゼア諸国の抱える多くの問題を解決に導き、北方のガレマール帝国による侵略を退けアラミゴ、ドマ両国の独立を達成し、今や英雄と呼ばれるようになった《光の戦士》を擁する者たちである。

そんな彼らは今日も世界を救うべく、エオルゼアの大地を疾駆している…

 

訳でもなかった。

 


 

「だぁぁ、つっかれたぁー…」

 

だらしなく机に腕を放り出しながら、ミコッテ族の女性がぼやいた。

 

「今日は蒼天街行って、子竜ちゃんとおしゃべりしながら道具作るつもりだったのにぃー…」

 

「ごめんなさい、最近は鎮静化していた筈のグナースの塚から異常なエーテル波が観測されたものだから、即応出来たのがイシュガルドにいた貴女だけだったのよ」

 

申し訳無さそうにそう言いながら、クルルがカモミールティーを淹れてくれる。礼を言うそのミコッテの横では、急遽呼び出しに応じてくれたアルフィノ、アリゼー、そしてグ・ラハが、同じく疲労の面持ちで茶を飲んでいた。

 

「なかなか上手くいかないものね…。ここ最近はどの蛮族も蛮神召喚に踏みきっていなかったから、このまま活動そのものも収まってくれると思ったけど…」

 

「どうしようもないわよ、クルル。私達が融和の姿勢を見せても、そうじゃない人間がいる限り蛮神召喚が止まることは無いわ」

 

「そういえばシドとサンクレッドの報告で、ギムリトの帝国兵に目立った動きは無いが、先日既にエオルゼア各地に展開している帝国軍基地に次々と艦艇が着陸したと情報が入っていたね」

 

そう、今回の蛮神ラーヴァナの召喚においても、高地ドラヴァニア近辺で帝国兵の目撃情報が報じられた矢先の出来事だった。

竜詩戦争が終結しドラゴン族との直接的な争いが無くなろうとも、蛮神の存在を否定する帝国軍がいる限り、蛮族側にとっては自分達の平穏は無いも同然なのである。

 

「報告とこの状況からすれば、帝国軍はドラヴァニア近辺で大規模な作戦を実行する可能性が高い、と考えられるわけね」

 

「そこに来て、道中に拾ったコイツだろ?」

 

そう言ってグ・ラハが取り出したのは、小型の雷波通信機だった。テイルフェザーから一度「分かたれし者たち」の集落に寄る際の道で、あちこちに設置されていたらしい。

 

「さっきヤ・シュトラから、同じような物が低地ドラヴァニアでも発見されたと報告があった。かなり広域に設置しているようだ」

 

「となると、もう殆ど準備は完了してるってことかしらね」

 

「蛮神召喚と帝国兵か…。これからちょっと忙しくなるかもしれないね」

 

そこまで話したところで、タタルがケーキを持ってやってきた。

 

「お待たせしまっした、タタル謹製ロランベリータルトでっす!」

 

「ありがとうタタル。んーとっても美味しそう!」

 

「キター!!疲れた時には甘いもの!鉄則だよね!」

 

「ちょっと、さっきまで殆ど喋ってなかった癖に、いきなり元気になりすぎじゃない?」

 

「まぁまぁ、今回は彼女が前衛で一番消耗しただろう?」

 

「俺も今回は急ぎだったから、杖しか持ってこれなかったんだ。すまなかった」

 

「いーのいーの、私も焦って大剣しか持ってきてなかったし、ちょうどこの四人が集まってくれて良かったよ」

 

言いながらミコッテはフォークを持った。

 

「…でもアリゼーのぶんはちょっと取っちゃお♪」

 

「あっ、やったわね!!っていうか貴女のほうが私のよりちょっと大きいじゃない!」

 

「えー?燃える床踏みそうになってアルフィノに助けられたのはどこの誰だっけ?」

 

「ぐっ…!あ、あれはちょっと焦ってただけで…っていうかそれとこれとは別でしょ!?」

 

「こら二人とも暴れないの!せっかく淹れたお茶が溢れちゃうわ」

 

「…彼女、本当に疲れてるのか?」

 

「あ、あははは…。流石は我らが英雄殿だね…」

 

テラス席に彼らの笑い声が響く。

レヴナンツトールを拠点にしてから、『暁』の面々はこの高層テラスで話をすることを好んだ。風が通るし景色もよく、何よりキャンプの喧騒がよく聞こえる。彼らの日々の情報収集にはもってこいの場所だったのだ。

 

「ほら、早く食べるわよ!後で特訓付き合ってもらうんだからね!」

 

「えーまたぁ…?私もう疲れたから家に帰りたいんだけど……」

 

「何言ってるの?そんなこと言ってどうせまた木人と格闘してるんでしょ?」

 

「動かない物と人とじゃ感覚違うよぉ……。それに私今暗黒騎士だから、アリゼーのほうがジリ貧になるだけじゃないの?」

 

「ならチーム戦にしましょ?私はアルフィノ、貴女はラハと組むの。これなら互角になるはずよ」

 

半ば強引に話を進めるアリゼーを、タタルとクルルが面白そうに見ていた。

 

「え、えぇ!?私はこれからウリエンジェと話を…」

 

「四の五の言わずに来る!ラハも、それでいいわね?」

 

「あ、あぁ。俺は構わないが…あんたは、俺と組むのでいいのか?」

 

戸惑いながら、グ・ラハはミコッテの顔を覗いた。すると彼女はにっこり笑って、もちろん、と言った。

 

「ごちそうさま!それじゃ行くわよ、ア・ルト!」

 

「あ、ちょっと待ってよ!ンモグッムグッ……ほひほうはま!!」

 

「あ、おい!そんなに急いだら喉に詰まるって!タタルごちそうさま!おーい、ルトー!」

 

「やれやれ、ウリエンジェへの報告は明日だな…。ごちそうさま、美味しかったよ」

 

慌ただしく駆けていく四人を見送り、残された二人は顔を見合わせて大笑いした。

 

 

これは彼らの日常。

過去と未来、多くの人々が命懸けで繋ぎ止め取り戻した、英雄達の日々。

 

 

 

 

『…成る程。警戒はしているみたいですが、随分とまぁ緩みきってらっしゃるご様子ですねぇ…』

 

その日常に少しずつ、そしてまたしても、《影》が忍び寄りつつあった。

 

『…結構、私の【実験】のモルモットになって頂くのに、実に丁度いい…』

 

《影》は、彼らの予想を超える事象を生み出す。

 

『まずは初期段階、彼らを【いつ迄繋ぎ止められるか】…。せいぜい役に立って頂くとしましょう…』

 

 




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