光の戦士の時間旅行   作:Apollo 13

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議論

謎のアシエンの襲撃から一日。

急遽ア・ルトの招集で石の家に帰還した暁の面々は、彼女が語る言葉を信じることが出来なかった。

 

「この世界はもうすぐ"塗り替えられる"。そうなる前に、あのアシエンを止めなきゃいけない」

 

塗り替えられる。

滅ぼすでもなく、霊災を起こすでもなく。

想像がつくはずなく、まして現実味などありもしない唐突な話に、その場にいた全員が困惑した。

見かねたヤ・シュトラが口を挟む。

 

「…待ってア・ルト、それじゃ話が見えないわ。もっと詳しく説明して頂戴」

 

「…わかった」

 

少し面食らった表情になりながら、ア・ルトは自らが『超える力』で見たという事を語り始めた。

 

 

「あのアシエンの狙いは、『歴史の改ざん』だった。かつて水晶公…グ・ラハが行ったような時空超越をつかって、この世界の過去も未来も書き換えるつもりなの」

 

 

語られた事実に、誰もが絶句する。

 

「そんな…第八霊災が起こる未来は回避されたというのに……」

 

「過去も未来も書き換えるって…それじゃ、私達が認識している『今』はどうなるの?まさかもう変わってたりしないわよね?」

 

「大丈夫だよアリゼー、まだこの『今』は書き換わってない。でももう時間はない。相手の狙いがわかっている以上、行動を起こすのも『今』しかないの」

 

 

ルトのその言葉を皮切りに、シャーレアンの賢人たちは議論を開始した。

 

「…まず、状況を整理しましょう。ア・ルト、その歴史の改ざんはどのようにして進められていたの?」

 

「詳しいところまではわからない。けど確か、『波』がどうとか言ってた気がする」

 

「『波』…?エーテルの波長がどうとか、次元の狭間での時空の揺れとか、そういうことか?」

 

「いえ、相手がアシエンである以上そのような人間的な、彼らの言うところの『なりそこない』的な問題は持ち合わせていないでしょう。それよりも私は、それとは別に気になることがあります」

 

そう言って、ウリエンジェは自身の疑問を呈する。

 

「そも、かのアシエンは如何にして歴史を塗り替えるのでしょうか」

 

「それは、時空超越をつかって…」

 

その答えに、彼は目を鋭くした。

 

「そう、そこです。もし時空超越をしたとして、その歴史は"書き換わるのでしょうか"?」

 

「…なるほど、そういうことか」

 

「そうね、私もそこは気になっていたの」

 

皆がウリエンジェの問いに首を傾げる中、サンクレッドとヤ・シュトラが納得した様子で、ウリエンジェの疑問に追随する。

 

「グ・ラハ、今お前の中ある魂は第八霊災が起こった未来のお前の記憶を受け継いでいるな?」

 

「あ、あぁ。魂はこちらの世界の俺だが、記憶は確かに受け継いでいるよ」

 

「なら聞くが、お前が時空を超える時、お前が元いた世界は『消滅していた』か?」

 

その問いにグ・ラハは一瞬首を捻ったが、すぐに答えた。

 

「……いや、してない。少なくとも俺は、そういう現象を認識していない、はずだ」

 

「…やはりな。こいつはかなり面倒な事になった」

 

「ど、どういう事なの?」

 

理解が追いつかないという表情で聞くアリゼーに、ウリエンジェが答えた。

 

 

「グ・ラハの答えが正しいとすれば、第八霊災が起こった未来の世界は消滅していない、つまり存続しているということになります。しかしそれでは、私達が認識している『今』、つまり第八霊災を回避したこの世界と、矛盾が発生してしまうのです。」

 

「『祖父殺しのパラドックス』というやつだ。例えば今から、誰かが時空を超越して過去に行き、若い頃のルイゾワ様を殺したとする」

 

「なっ、サンクレッド!」

 

「落ち着け、例え話だ。もしルイゾワ様が過去で殺された場合、アルフィノとアリゼーは『生まれてくるのか』?そして『今』存在している二人は『消滅するのか』?」

 

「そ、れは……」

 

「…なるほど、『多元世界解釈』か」

 

そこで、ようやく状況を飲み込めた様子のアルフィノが、更に議論を重ねた。

 

「私達が認識している世界の『外』に存在する、同じような世界の羅列。いわゆる並行世界(パラレルワールド)と呼ばれるものだね。エーテルを通して、この世界と似たような世界が幾重にも重なり合って出来ていることを"観測"しようとした学説を、大学で読んだことがあるんだ」

 

「加えて、蛮神『アレキサンダー』の件も記憶に新しいわね。階差機関を用いた未来予知…。今はもう研究は出来なくなってしまったけれど、あれはもしかすると『多元世界』を独自に解析して、その先の未来を読み解くものだったんじゃないかしら」

 

「…もしお祖父様が殺されたとしても、それはここではない『別の世界』で起こった事になるから、現在の私達は消滅したりしない、ってこと…?」

 

アリゼーの答えに満足した様子で、ウリエンジェはこれまでの話を纏めていく。

 

「つまり私達が存在しているこの世界と、第八霊災が起きた世界は別の次元であり、歴史が書き換わったのもこの世界での事。第八霊災が起きた世界の歴史は、書き換わっていない」

 

「あちらの世界が消滅していないことは"観測"出来ている訳だしな。『時空超越で歴史は書き換えられない』ということで、間違いないだろう」

 

「ちょ、ちょっと待って!それじゃ、アイツはどうやって歴史を改ざんしようとしてるの?時空超越で書き換わらないなら、他に方法なんて……」

 

「ある」

 

アリゼーの疑問を、ア・ルトはキッパリと否定した。

 

「この世界でたった二つ、時間に干渉できるものがある」

 

それは。

 

 

「『重力』と『エーテル』」




なお自分で何書いてるかわかってない模様
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