「京介、瑠奈、朝ご飯出来たわよ?」
家の1階から、お母さんの声が聞こえた。
その声で、私は目が覚めた。ケータイを見てみると、6時45分・・・。6時半に設定したアラームも、毎度の如く無駄なようだった。
「おはよう、お母さん」
「おはよう、瑠奈・・・京介は?」
「知らない。まだ寝てるんじゃないの?」
下に降りると、お母さんがお味噌汁を作っているところだった。さっき大きな声で『朝ご飯出来たわよ?』とか言っておきながら、これも毎度の如く朝ご飯はできていない。
でも、私にはそれでいい。まだ髪の毛に寝癖がついたままだ。
私は剣城瑠奈。
お父さん、お母さん、今はちょっと事情があって入院しているお兄ちゃん、双子のお兄ちゃん、私の5人家族。お父さんもお母さんもとても優しくて、入院している優一お兄ちゃん(普通に『お兄ちゃん』と呼んでいる)もよく家に帰ってきてくれるし、とっても優しい。
でも、双子のお兄ちゃん・京介(こちらも普通に『京介』)はちょっと冷たい・・・でも、それは学校での姿。
家に帰ると、家のお手伝いはするし、料理や掃除もするし、はっきり言うと私より『女子力』という奴が高いように思う。それに、私にもとても優しい。
お兄ちゃん曰く、『京介はツンデレ・・・そして、シスコン』らしい。
私が寝癖を直して、通っている中学校『雷門中学校』の制服を着て、再びダイニングに戻ると、京介がいた。
「京介おはよ」
「あぁ、おはよう、瑠奈」
京介はまだ眠そうだ。まだ半開きの瞼が面白くて、私はしばらく京介の顔を眺めた。だが、京介は一向に私がなが見ていることに気がつかない。
今度は京介の白いほっぺたをつまんでみた。意外と柔らかいほっぺただった。私が引っ張ると、京介はあからさまにいやな顔を・・・しないで、私のほっぺたをつまんできた。
「瑠奈の頬、柔らかいな・・・」
そういいながら京介は、私のほっぺたをお餅のように引っ張りまくった。だんだんたまらなくなってきた私は、
「きょーふけのほっへもやあらかいよ(京介のほっぺも柔らかいよ)・・・でも、はなひて(でも、離して)」
とがんばっていい、なんとか離してもらった。その時、後ろから声がした。
「ほら、仲良しもいいが、早く食べてしまいなさい」
「お父さん!」 「父さん!」
そこにいたのはお父さんだった。お父さんはもうスーツを着て、出勤するところだった。お母さんが、ネクタイを締めてあげている。
ふっと京介の顔が曇る。理由は大方わかる。
「・・・今日も、兄さんのところに寄って行くのか、父さん?」
お父さんは京介を少し真剣なまなざしで見つめた後、やさしい顔になって私たちの頭をなでながら言った。
「あぁ、優一と少し話してから会社へ行くよ・・・ほら、京介も瑠奈も、早く食べてしまいなさい。特に京介、まだ着替えてもいないじゃないか。急ぐんだぞ?じゃあ、行ってきます」
私たちは声をそろえて言った。
「「行ってらっしゃい!!」」
それから数分後・・・
「もう、早くすればよかったのに・・・あと1分しか待たないわよ?」
ゆっくりと準備をした京介は、案の定家を出る時間ぎりぎりになってもまだ、準備が出来ていなかった。あきれながら、私たちは毎朝、お兄ちゃんのところへいってから学校へ行くから、結局は一緒に登校することになる。別にそれがいやだとは、一度も感じたことがないからいいんだけど。
「悪い、やっぱり早く準備はするべきだな・・・」
そう呟きながら京介が玄関から出てきた。それから私たちは、一緒に病院へと向かった。
「京介、天馬だけにお兄ちゃんのこと、伝えてるんでしょ?・・・でも、天馬だけだったら、さすがに神童先輩とか怪しむと思うの。毎回兄妹して朝練を休んでること」
病院に行く途中、私は今日もサッカー部の朝練があることを思い出し、京介に問いかけをした。京介は、雷門中学校サッカー部のエースストライカー。1年生ながらものすごいキック力だ、と少年サッカー界では有名。私は雷門中学校サッカー部のマネージャー。京介と天馬しか知らないことだけど、私も実はサッカー出来る。まぁ、考えてみれば当たり前といえば当たり前。だって、兄弟2人ともサッカーやっているんだから。しかも、結構強い。これは冗談ではない。
さっき話に出てきた天馬っていうのは、同じ1年生の松風天馬。1年生ながら、キャプテン。神童先輩っていうのは、2年生の神童拓人先輩。元キャプテンで、天才ゲームメーカー。『神のタクト』の異名を持つ。
「そうだな・・・いつかは伝える」
ちょっと真剣なまなざしになった京介のことを、少しかっこいいと思ったのは秘密。
さらに数分後・・・
私たちは、お兄ちゃんの入院する病院『稲妻総合病院』にやってきた。
「お兄ちゃんっ!おはようっ!」
お兄ちゃんは、やさしいまなざしを私たちに見せた。私は嬉しくなって、お兄ちゃんに抱きついた。続いて京介も入ってきた。京介は、一瞬目を見開いた。ふと横を見てみると、お兄ちゃんが勝ち誇ったような顔をした。・・・そうか、これがシスコンというものか。
「・・・兄さん、おはよう」
「あぁ、京介、瑠奈、おはよう」
私はお兄ちゃんから離れて、リンゴをむいた。今日はウサギさんの剝きかたでむいてみた。案の定、お兄ちゃんと京介は大喜びした。よかった、そんなにうれしかったのね、と私は思った。
「それじゃあ、行ってくるね。また、帰りに寄るから」
「今日は瑠奈が寄って帰る。俺は、部活に参加するんだ・・・ごめん、兄さん」
「気にしないで、京介。じゃあ、またね、瑠奈」
私たちはそんな会話そしてから、2人で学校へ向かった。
病院を出る途中、太陽君と会った。太陽君は、新雲学園のサッカー部に所属していて、10年に1度の天才と呼ばれている。天馬とは、よきライバルで友達。
「太陽君、久しぶりね。体の調子はどう?」
「君は・・・剣城と瑠奈ちゃんかい!?そっか、優一さんのお見まいか・・・。うん、体は結構いいよ。もうすぐ思いっきりサッカーができそうだよ」
「そうか、よかったな」
「あぁ。じゃあ、今から学校だよね?またね!」
そんな簡単な会話を済ませた後、今度こそ私たちは学校へ向かった。