拝啓、最古の魔法使いはじめました。   作:ヤムライハさんの胸の貝殻になりたい

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すみません、色々と整理をしていたら誤って消してしまいました。
なので再投稿です。


日記

○月✕日

 

 今日から日記を付けることにした。

 日記、と言っても日本にあったような上等なものでは無い。

 自家製の粗い羊皮紙や粘土板を使って、獣の血をインク代わりに木の枝で字を書いているだけの粗悪品だ。

 それでも読めて書けるなら、日記と呼称してもなんら問題は無いだろう。

 それはそうと、今日でルフが見えるようになって四年目だ。

 以前は何も見えていなかったのに、母が亡くなってその直後にルフが見えるようになったのは何か意味があるのだろうか。

 

 そんなことをここ数年はずっと考えている。

 勿論、答えが出ることは無い。

 それでも思考を止めずにいられないのは、娯楽がないからだ。

 な○う系よろしく、オセロや将棋でも作った方がいいのだろうか? 

 うぅむ、まあいざとなったら作ってみることにしようか。

 

 

 

 ○月✕日

 

 魔法の練習……と言うよりか魔力を感じる練習を最近している。

 マギ風にいうなら魔力(マゴイ)だ。やり方はルフが何となく教えてくれる。

 目を瞑って体の奥底に意識を集中すると、血管のような、神経のような管を何かが巡っているのがわかる。

 これが俗に言う魔力とやらで、個人的な保有量はそれなりにあるのではないかと思っている。

 しかし比べる対象がいないので、あくまで個人的な思い込みかつ自称に過ぎないのだが。

 

 だがまあ、魔力面における心配はあまりしていない。

 というのも、俺がマギだからだ。

 マギはルフからの魔力の供給を受けることが出来る。だから理論上は魔力は無限で、俺の体力次第でその総量が決まる。

 最近は体力作りに村の外れの森を走り続けている。

 これが意外と疲れるのだ。

 でもめげる訳には行かない。マギでマイヤーズ教官が言っていた、「健全な魔力は健全な身体に宿る」を信じて今はひたすら鍛える。

 初期ティトスのように、魔法のみを過信し、傲慢に杖に縋り、己の手で道も切り開けぬような軟弱者にはなりたくない。

 それにいつの日かユナンよろしく、「雷光剣(バララーク・サイカ)」を使ってみたい。

 ところで、名前がユナンだった。これもうあれだな。うん。あれだ。

 

 

 名前が同じならロールプレイするしかねぇよな!

 

 

 ○月✕日

 

 僕、僕、僕。今日一日はそれを呟いていた。

 うーん、慣れない……。使ってて違和感を感じる。

 数少ない友人にも笑われてしまった。けれど、こちらの方が見た目のイメージにはあっているらしい。

 前に一度、森の奥にある泉に反射した自分の顔を見たことあるが、母さんに似ていた。

 まあ父親の顔を見た事がないので、もしかしたら父親にも似ているのかもしれないが。

 

 それはそれとして、前世で飼っていた猫のタマゴローは元気にしているだろうか。

 誰かに引き取られているといいのだが。

 タマゴローで思い出したのだが、孤児院のちびっ子達は元気だろうか。

 どうせ死ぬと分かっていたら、孤児院宛ての仕送りに貯金の全てを送っておけば良かった。

 卒院した先輩として申し訳ない。一体何のために貯めていた金だと言うのか。

 

 

 

 ○月✕日

 

 前回からかなり間隔が空いてしまった。

 というのも……最近変な夢を見るのだ。

 そのせいで日記を書く気力がわかなかった。

 その夢というのは空白の広い空間に、全身を靄に覆われた人物が一人出てきて魔法を撃ってくるのだ。

 初日はリアルな痛みと共に飛び起きて、体をぺちぺちと触ってみたが、当然ながら傷は見当たらなかった。

 だが夢というには、余りにも痛みがリアル過ぎて怖かったのだ。

 

 初めの一週間は手も足も出なかったが、一ヶ月近くたった今では応戦して何とか戦えるようになった。

 それに比例するかのように、現実でもメキメキと魔法の腕が上がってきている。

 こないだは数秒だけ重力魔法を使うのに成功した。

 ただ夢なのに起きた時に異様に疲れているし、精神力が摩耗しているしで余り好き好んで見たい夢ではないのは確かだ。

 

 

 

 ○月✕日

 

 あの夢を見続けて早一年。

 何とかようやく勝ちました。

 と言っても「あの人」が本領を発揮せずに、手を抜きに抜いて、その上でまぐれで勝ったようなものだけど……。

 というか、そりゃ勝てるわけないわな。

 

 全力も全力、もう死にたくなかった僕は、限界を超えた死力を尽くして魔法の雨をふらせ。

 さらにその中に幾重もの細やかな術式を組んで、搦手を使って何とかどでかいのを一発叩き込むことに成功した。

 そうして我が特大の魔法で靄が吹き飛んで現れた人物はなんと、かのソロモン王じゃありませんか。

 

 疲労と混乱でろくに回らない頭を使って、必死に言葉を紡ごうとしたが、ソロモン王は「お前ならやれる」と笑ってどっかに消えていきましたよ。

 何が? どういうこと? そんな事を一日中考えていたせいで、狩りに集中出来ない一日だった。

 ほんと、何がなにやら。

 


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