マギレコRTA ワルプルギス撃破ルート脳筋傭兵チャート   作:スパークリング

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引き続き脳筋傭兵チャートをお楽しみください。


Side.八雲みたま 異変の正体

「みたま、どうやら私はもう限界まで来ているらしい」

 

 3月の暮れのこと、モモちゃんがわたしにそう告白した。

 なにを言っているのかわからなかった。

 

 『限界』。

 底が見えない力を今もなお滾らせているモモちゃんにとってその漢字二文字は無縁だったはずだ。それはわたしが良く理解している。

 

 今年で魔法少女歴六年。

 それでも数多くの魔女と戦い、力を付けていくモモちゃんは、他のベテラン魔法少女たちとは比べ物にならないほど調整し甲斐があったし、これからもずっと……それこそ、そこに立っているだけで魔女をやっつけてしまうんじゃないかと思うくらいまで成長できるとわたしは見込んでいた。

 そんな、もしかしたらモモちゃんよりもモモちゃんの身体のことを知っているわたしの予想を裏切る言葉だった。

 

 いったいどうして。

 わたしが口を開く前に、モモちゃんが言葉を続けた。

 

「みたまは知っているであろう? 私の魔法少女の願いを」

 

 それはもちろん知っている。

 わたしは魔法少女のソウルジェムを調整する際に、その魔法少女の過去を不可抗力とはいえ見えてしまう。その際にわたしはモモちゃんの願いを知った。

 

 『力が欲しい』。

 ただそれだけの、とってもシンプルな願い。

 

 モモちゃんらしくない願いだと思ったけど、モモちゃんの知る情報や、魔法少女になるときの状況を照らし合わせて考えるなら納得できる願いだった。

 

 この願い事によって、モモちゃんは常人と比べるのも烏滸がましいほどの凄まじい身体能力を誇る肉体を手に入れることができた。

 魔法少女特有の願いの結晶でもある『固有魔法』をモモちゃんが持っていないのは、それすらも肉体に還元されてしまったから。

 つまり、モモちゃんにとって自分の肉体こそが願いの結晶で、モモちゃんが一番大切にしているものでもあった。

 

 そしてこの願い事の最大の利点は、燃費の良さだった。

 固有魔法を持たないというのはデメリットであると同時にメリットでもあった。

 魔法を使った魔法少女らしい戦い方ができない代わりに、魔女との戦いに消費する魔力が圧倒的に少ないのよ。

 

 魔法少女にとって、日常生活を送っている時と魔女と戦う時ではソウルジェムが濁るスピードに差が出る。

 当然、魔女と戦う時の方が濁るのが圧倒的に早い。日常生活で普通に暮らす分には魔法なんて使わないからね。

 

 魔女と戦って魔法を使って、体を動かして、疲弊して、そしてソウルジェムが濁る。だからグリーフシードを使って浄化する。グリーフシードがなければ魔女と戦う。これが魔法少女として当然のサイクル。

 でも、モモちゃんは違う。

 

 元々の高い素質に加え、ソウルジェムの観点からするとモモちゃんにとって、魔女との戦いは日常生活を送ることと大差がない。

 だから魔女と連戦しても使用するグリーフシードが少なかったり、ソウルジェムを綺麗にせずに数日放っておいても異状が起こることがない。ソウルジェムの汚染という魔法少女が抱える宿命のひとつが軽減されているのよ。

 

 そういう事情もあったからモモちゃんはグリーフシードにそこまで執着しないし、平気で他人に譲渡することができる。過酷な傭兵稼業をずっと続けられてきたのも、そもそも自分で使うグリーフシードの個数が少なかったから。

 

 ここまではモモちゃんが描いた展開通りだった。

 そう、モモちゃんはこうなることを予想した上で魔法少女として契約したのよ。

 

 あらかたのキュゥべえから説明を受け、そして今叶えたいことと調和できるように考え抜いた結果見つけたモモちゃんの願い。本当に中学一年生の時に契約したの?って聞きたくなっちゃうわよね。

 

「じゃがの、甘かった」

 

 モモちゃんにとって完璧だったはずの魔法少女の契約。

 病気とはほぼ無縁で、深い傷や損傷が起きても魔力で修復できる魔法少女のベースとなる肉体に加え、純粋に高い戦闘能力とその燃費の良さで生き永らえやすいようにこれでもかと強化された体を手に入れたモモちゃん。

 でもその裏に隠された実態は、モモちゃんの想像をはるかに上回っていた。

 

「この前キュゥべえと久々に話をしたのじゃ」

 

 ――キミの身体はもう……限界が近いんだからね。

 

 確かにキュゥべえは、モモちゃんにそう告げたらしいわ。

 キュゥべえは本当のことを全て話すわけではないけど、決して嘘は吐かない。そういう存在。

 

 その兆候は今年に入ってから現れ始めたらしい。

 わたしもびっくりしたのだけどモモちゃん、他の魔法少女の子との特訓中に攻撃をモロに受けて気絶してしまったそうよ。普段は反応できた攻撃に対して、一瞬とはいえ反応が遅れてしまったみたい。

 その時は油断したと自分を戒めて終わりにしようとしたみたいだけど、微かに残った違和感から異変を感じ取ったモモちゃんは……すぐに手を打った。

 

「それが自分の『後継者』となる魔法少女を、早々に育て上げることだったのよ」

「……っ」

 

 今の神浜はモモちゃんのおかげで戦えない魔法少女の数は減少傾向にある。でも完全になくなってはいない。

 モモちゃんが『傭兵』として活動した時から今に至るまで、モモちゃんなしだと生きていけない魔法少女の子もいるし、キュゥべえがいる限り新しい魔法少女は増えていく。

 

 そんな魔法少女たちを救う存在……モモちゃんに代わる存在を育てることにした。

 だから前々から『傭兵』になるために勉強していた愛弟子のかりんちゃんを、自らに代わる『傭兵』になれるように手を回し始めた。

 

 急だったと思わない?

 あのモモちゃんが相談もなしにいきなり傭兵採用試験をするって言い始めたのよ?

 普段のモモちゃんなら入念に相手の予定を聞いてから日程を決めるのに、わたしも含めてみんな聞いたのは前日だったでしょう? かりんちゃんに至っては当日だった。

 普段と変わらない様子だったけどモモちゃん、内心では相当焦っていたのでしょうね。

 

 話を戻しましょう。

 そんなモモちゃんは特訓とはいえ人生初の敗北を喫して、なんとなく悟っていた自分の体に起こった違和感は、このキュゥべえの言葉で確信に変わり、そして思い知った。

 自分の体に限界が訪れようとしている、そんな逃れることのできない運命を。

 

「正直に言うと、ボクもこんな形でキミの『願い』がキミに牙を剥くなんて思いもしなかったよ」

 

 『願い』は、魔法少女の力の源であると同時に、その魔法少女を中から蝕む猛毒でもある諸刃の剣。

 一度願い、手にした力は二度と変えることはできないし、その願いの結果がもたらした因果の(もつ)れは必ずそこに修正という形で収束する。

 

 希望を願った魔法少女はそれと同じくらいの絶望を受け、中には取り返しのつかない出来事を引き起こしてしまうこともある。

 そうやってプラスマイナスゼロになることでこの世の中は成立し、ひとりの人間がどんなに無茶な願い事をしたとしても、崩壊することなく回り続ける。

 モモちゃんもまた……そんな魔法少女の悲しい運命からは逃れることができなかった。ただそれだけだった。

 でも、それだけの代償が恐ろしい皮肉となってモモちゃんの体に襲い掛かった。

 

「キミは願いを叶えて、その強靭な肉体を手に入れた。まさかたったの一撃で魔女を倒すところまで成長するなんてね。でも……その体はどこまでも人間の体(・・・・)だったということだ」

 

 魔法少女の体はあくまでも、もともとの肉体を媒介としている。つまりベースは素体となる普通の人間の体にすぎない。

 魔法少女になって多少身体能力が上がるのは、魔法によって無意識のうちに強化されていたから。ソウルジェムの濁りが早くなるのも、常人を超えた魔法少女ならではの身体能力を発揮するために魔力を使っているからだ。

 

 じゃあモモちゃんの場合はどうだろうか。

 並の魔法少女をも超越した身体能力、明らかに本人の体重の倍以上の大剣を片手で自在に操れる腕力。そして、そこから繰り出される一撃必殺の破壊力を誇る攻撃。

 もうわかるでしょう?

 

 モモちゃんの戦闘スタイルは一切魔法に頼らない物理攻撃ばかり。そして全て大きく体を使うものばかり。

 魔法少女になったとはいえ、もともとが人間のものである体への負担が大きすぎるのよ。

 

「例えるならキミは契約してからこれまでの間、ずっと強烈なブースタードラッグを服用しながら生きていたようなものさ。そう考えるならキミの並外れた戦闘能力も納得できる。

 いくら素質があったとしても、ここまで強力な魔法少女が生まれ、そして六年間も生き永らえたのは極めて珍しかったからね。

 ソウルジェムが濁りやすかったり、暴発しやすかったりと、抱えるデメリットのせいで、過去の強力な魔法少女たちは極めて短命だったんだ。場合によってはボクもすべてを話した上で契約を持ち掛けた魔法少女もいるくらいにね。

 

 さて、そんなドーピングを服用し続けてきたキミの体が……いつまでもまともでいられると思うかい?」

 

 悪魔の宣告。そうとしか形容しがたい残酷な真実が告げられた。

 

 今まではずば抜けた魔力で強化し続けてきたモモちゃんの体は、成長していくにつれて強化し成長させる余地がなくなってしまった。キュゥべえの言葉で言うなら限界を迎えようとしていた。

 皮肉なことにモモちゃんの体が、彼女の願いで手に入れた『力』を受け入れることができなくなってしまっていた。

 

 モモちゃんの体が成長しないのもその副作用のひとつ。

 

 体の成長すらも、自分の『力』を受け入れるためのリソースにしていたのだから身長は止まったまま。

 なんか胸だけは成長しているけど、それはキュゥべえですら「わけがわからないよ」と匙を投げてしまう珍現象だったみたいよ。

 

「今からボクが語るのはあくまで推測でしかないけど、ほぼ確実ともいえるキミの運命だ。

 おそらくキミは今年で力の成長が止まるだろう。そして……20歳。人間の定義で『大人』と呼ばれる歳になった時、本格的な弱体化が始まる。

 それが一気にくるものなのか、段階的に衰えていくものなのかまではわからないけどね」

 

 19歳の誕生日に調整したっきり、モモちゃんの調整に手応えがまるでなくなってしまったわ。

 当然よね。その日こそ、モモちゃんの『力』に体が対応できる最後の日だったんだから。

 

 もうわかったでしょう?

 今、モモちゃんの身に起こっている現象の正体が。

 

 キュゥべえの言った弱体化は、『老い』という形で実現してしまった。

 

 今まで無理をし続けた体は限界を迎えたことで成長が完全に止まり、彼女の『力』もそれに合わせてもう増えることはない。来年の誕生日を迎えるその日までがモモちゃんの全盛期になるでしょう。

 そして……それ以降は、もうモモちゃんはひとりどころかチームを組んだとしても魔女と戦うのが困難な状況になっている可能性が高いわ。

 髪の毛や行動からすでに『老い』の兆候が見え始めている。

 

 この運命からはモモちゃんは逃れられない。

 いくら調整してもグリーフシードをストックしても無駄。

 

 だってモモちゃんの異状は、ソウルジェムじゃなくて彼女自身の体にあるのだから。

 魔法少女として生き永らえたとしても、肝心の肉体が機能しなければどうしようもない。寿命という人間の限界に逆らうことはできない。

 

 これがモモちゃん……星奈百恵の身に起こっていることの真相よ。

 

 

 

 

 

 沈黙が調整屋の待合室を支配している。まぁ、そうなるのも無理はないわよね。

 ここにいる全員がモモちゃんを頼りにし、慕っていた魔法少女たちですもの。

 わたしだってすぐに受け入れられずに、教えてもらった日は店仕舞いをして泣いたわ。

 

 かりんちゃんはモモちゃんの弟子として、一番近くでモモちゃんの戦いを見続け、そしておそらく一番モモちゃんの寵愛を受けた魔法少女。

 かつて迷走していた時も一番傍で寄り添い受け入れてくれた出来事も手伝って、かりんちゃんにとってモモちゃんは大きな心の拠り所だったのでしょう。

 

 ななかちゃんは付き合い的に一番短いし、他の四人と比べて関係も浅いけど、モモちゃんがプライベート以外で、仕事関係で連絡先を交換した唯一の魔法少女。

 モモちゃんに認められた稀有な魔法少女で、彼女もまたモモちゃんを慕っていた。

 そうじゃないと、公私を混同せず比較的ドライな性格のななかちゃんが、モモちゃんの異変に気付いてすぐにここに来ることなんてしないでしょう。

 

 十七夜やひなのだって、モモちゃんを重宝し尊敬していた魔法少女。

 モモちゃんがいたから東西中央の魔法少女たちによる紛争が収まったし、一年前の鏡の魔女による事件の時だって、完全中立のモモちゃんがまとめ役となって事件解決に動き、ストッパーとなったことで協定違反する魔法少女が現れることなく、比較的穏便に済ませることができた。

 

 そして……やちよさん。

 彼女にとってのモモちゃんは親友以上の存在にまで昇華していた。

 一部ではモモちゃんは『七海やちよの切り札』なんて呼ばれることもあるくらいにやちよさんはモモちゃんに頼っていたし、変わることなく腰を据えているモモちゃんがいたからこそ、あの悲惨な事件から立ち直ることができた。

 多分かりんちゃん以上に、モモちゃんを拠り所にしていたのでしょうね。

 

「……百恵は、アイツはなんて言っていたんだ?」

 

 真っ先に口を開いたのはひなのだった。

 

 やっぱりひなのは強い。

 自分の気持ちよりもモモちゃんが何を言ったのかを聞いて、それを尊重しようとしてくれている。

 身長云々で会う度に張り合っているけど、その実仲良しで互いにいい距離で付き合ってきた間柄だもの。

 

「うむ、そうだな。星奈はこの運命を知って、一体なんて言っていたんだ?」

「確かに、それは気になりますね」

 

 続くように十七夜とななかちゃんが聞いてくる。

 このふたりもモモちゃんと適切な距離で接してきた魔法少女。だからこそ、まだ心に余裕がある。

 

 余裕がないのは……かりんちゃんとやちよさんのふたりだけみたいね。

 これは想定通りだから落胆なんてしないわ。わたしだって、落ち着くのに三日もかかったもの。

 

「モモちゃんは、受け入れていたわ。この運命を」

 

 モモちゃんの運命を聞いた時、取り乱して縋るように泣いてしまったわたしを、モモちゃんはただ優しく抱きしめてくれた。

 わたしなんかよりもよっぽど悲しいはずなのに、それでもモモちゃんは変わることはなかった。

 

「なーに、人はいつか死んでしまうものじゃ。私はちょっぴり、それが早いだけであろう?」

 

 なんてカラカラ笑いながら言っていたわ。ポジティブすぎるけど、モモちゃんらしかった。

 こんなにあっけらかんと自らの寿命を受け入れられる人ばかりなら、医者も苦労はしないでしょうに。

 

「それにのう、不思議なことに私は自分が死ぬことが怖くないのじゃ。

 この神浜には強い魔法少女がたくさんおるし、弱かった魔法少女も少なくなってきた。

 東西中央の問題も沈静化して起こらなくなったし、それぞれ強力なリーダーたちがいて、手を取り合おうとしておる。

 完全中立ならみたま、お主もいるし、私の後継者であるかりんだっている。この神浜を引っ張っていけるようなポテンシャルを持つ魔法少女だっている。

 

 やり残したと思うことはない。悔いはない。老兵は死なずただ去るのみじゃ。

 20歳になったら傭兵を引退して静かに暮らそう。

 そして……体が完全に死ぬ間際に、自分の手でソウルジェムを砕く。

 生き恥を晒すつもりはない。ひっそりと朽ち果てようぞ」

 

 それがモモちゃんが出した答え。

 引退して、誰にも悟られることなく寿命が来たらひとりで死ぬつもりよ。

 自分のことで悲しませる人を出したくないからって、モモちゃんは確かにそう言ったわ。

 

「……そうか」

「……ふむ」

「…………」

 

 三人は黙って目を瞑った。

 そして。

 

「それなら……そこまで覚悟が決まっているなら、アタシはなにも変わらない。

 もうお節介はしない。

 今まで通りに、最後までアイツと付き合うぞ。

 それが本人も望んでいることだろう」

 

「ふっ、そうだな。

 星奈が気にしていないと言うのなら、自分も余計なことはするまい。

 誇り高い傭兵としての大往生を見届けよう」

 

「ですね。

 百恵さんを慕う者のひとりとして、彼女の意志を尊重しましょう

 それが私にできる彼女への手向けです」

 

 それが三人の出した結論だった。

 

「ええ、わたしも同じよ」

 

 さすがにいきなり症状が出た時は心配になって深く聞いちゃったけど、もうわたしも追及するつもりはないわ。

 モモちゃんがどうしてもダメそうなとき、そしてモモちゃんがわたしを頼ってきたときだけ、手を差し伸べるつもり。

 

「……そうなの。先生はいつだって強かったの。

 そんな先生が大丈夫って言うなら、わたしも信じるの」

 

 かりんちゃんも心を決めたみたいね。

 まったく、本当に強いマインドを持っている子ねこの子は。こういう子は長生きするわ。魔法少女としても人としてもね。

 もしかしたら、魔法少女の真実を知っても、平気な顔で乗り越えちゃうかもしれないわね。今はまだ教えられないけど。

 

 さて、残っているのはただひとり。

 

「私は……」

 

 俯いて固く手を握っているやちよさん。

 まだ、決められないみたいね。でもそれは仕方のないことだと思う。

 

 よほど強い心を持つ人間じゃないとこんな話は耐えられないと思うし、加えてやちよさんは過去、目の前でふたりの仲間を失っている。立ち直りつつあるけど乗り越えることはできていない。

 そんな中で今、一番近いところにいる親友の命が尽きようとしているのだもの。

 受け入れきれなくて当然よ。

 

「無理して今決める必要はないわ。わたしだって受け入れはしたけど、諦めてはいないもの」

 

 モモちゃんの運命は理解できた。でもだからと言ってこのままモモちゃんが弱っていく姿を黙って見ているつもりはない。

 せっかく調整屋なんて、魔法少女との繋がりの深い店を開いているのよ。

 モモちゃんの体に効果のある魔法少女がいないか、わたしは探している。

 

「うむ、自分も東に有効な魔法少女がいないか、当たってみるとしよう」

「だな。中央はアタシに任せろ」

「わたしもお客さんの中にそういう魔法が使える人がいないか聞いてみるの!」

「皆さんほどの人脈はありませんが……私も知る限りの魔法少女に声をかけてみるとしましょう」

 

 それは他のみんなだって同じ。

 わたしたちがモモちゃんのためにできることはこれしかない。

 

 悲しんでいたって仕方がない。

 悲観するくらいなら行動しないと、諦めてこのまま自分の運命に身を委ねているモモちゃんを助けることなんてできない。

 

「……そうね。私は百恵の運命を簡単に受け入れられない。だけど、足掻くことなら今からでもできるわ。

 西は任せてちょうだい。なんとしてでも百恵を助ける。

 勝手にひとりで死なせてたまるものですか」

 

 やちよさんの目に強い光が戻った。

 西のリーダー七海やちよ、東のカリスマ和泉十七夜、中央のまとめ役都ひなの、二代目神浜傭兵御園かりん、広い人脈を持つチームのリーダー常盤ななか、そしてわたし、調整屋の八雲みたま。

 

 神浜の魔法少女の中でも指折りの六人全員が、最強の魔法少女の背負う運命に抗うために立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……いいお湯であったのう」

 

 今日も、楽しい日であった。

 大学で授業を受けて、木崎衣美里先生のところでみんなと喋って、笑って……こんなことは忙しかった一年前までは味わうことができなかったのう。

 

 仕事は本当に少なくなった。抱えているのはななかが持ち込んできた一件くらいじゃ。

 

 私が見てきた魔法少女たちは皆立派になって私の元から離れていった。いいことじゃ。いいことなのじゃが……なんでじゃろうな。

 嬉しいはずなのに妙に寂しく感じてしまう。こんなことは今までなかったのじゃがな。

 

 ふと、部屋の中を見渡してみる。

 今年で四年目。もう慣れ親しんだはずの私の部屋なのじゃが……妙に広く感じて仕方がない。

 

 そして静かであった。当たり前じゃ。私はひとり暮らしなのじゃから。

 他の人の声がしなくて当たり前。四年もこの部屋に住んでおるのじゃぞ。慣れっこじゃったはずじゃ。なのに……。

 

「テレビでも点けようかの」

 

 誰かの声がないと落ち着かない。この静けさが妙にもどかしい。こんな年になって涙が出そうなくらいに寂しくて仕方がない。

 

 誰か……。

 

 ……いかんいかん! 気をしっかり持つのじゃ星奈百恵!

 何もない空間に伸ばしていた手を引っ込め、頬を軽く叩いて奮い立たせる。

 

 泣いてどうする、大丈夫じゃ。私はひとりではない。沢山の友達がいるであろう? 誇れる愛弟子だっているであろう? じゃから寂しくなんてないのじゃ。

 それに私は皆に頼られる存在なのじゃ。そんな私が弱気でどうする? 堂々とせんか!

 

「……よし! 髪の毛を乾かすとしようかの!」

 

 鼓舞して、テレビから流れる音を聞いて調子が戻った私は洗面所に戻る。踏み台に乗ってドライヤーを手にした。

 身長は悲しいことに伸びることはなかったが、胸だけは成長した。私が目指す理想の体型でないのは悲しいが、グラマーではあるかのう? うーむ、よくわからん。

 

「あーあー、とうとう真っ白けっけになってしまったのう」

 

 私の『願い』の副作用のせいで老化が始まってしまった私の体。

 その症状が髪の毛に現れていたのじゃが……早かったのう。6月に入る間もなく真っ白になってしもうたわい。

 

 せっかくじゃし染めてみようかのう?

 うーむ、無難に黒かの? 金髪は……なんか別の人物と被りそうじゃからなしじゃな。茶髪も同じ理由でなしじゃ。

 ちょっと派手に思い切って紫なんていうのも面白いかもしれんのう……って、それはただのおばちゃんの発想ではないか! 余命宣告を受けた残る寿命が短い身とはいえまだギリ未成年じゃぞ私は! 却下じゃ却下!

 

 うーむ……うーむ……。

 …………。

 ……。

 

「まぁ、染めなくてよいか!」

 

 お金の無駄じゃしの。

 それに、これが今の私なのじゃ。ならば堂々とこの白髪で街を歩こうではないか。

 全部白髪になったからなんじゃ。私はまだまだ元気じゃし、バリバリの現役じゃわい!

 

「うむ、胸を張って最期まで私らしく歩いて行くのじゃ!」

 

 

 

 

 




今回の内容

星奈百恵 魔法少女ストーリー 第1話。Battle2及び3ストーリー
前回の内容が第1話、Battle1ストーリー。えっ、あのボリュームでそれは……うるさいんじゃい!

開放条件:
八雲みたま・七海やちよ・御園かりん・常盤ななかの好感度が一定以上
『バイバイ、また明日』をクリアまたはストーリーを全開放している

開放特典:
星奈百恵のステータス一部公開

星奈百恵 ステータス:
属性 :無
タイプ:アタック
Accele:1
Blast:3(↕︎↕︎↕︎)
Charge:1

次回からまたRTA→シナリオの順に戻りますよー。
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