マギレコRTA ワルプルギス撃破ルート脳筋傭兵チャート 作:スパークリング
NNとMMって似てる、似てなくない?
最年長として頼られるように、私は生きてきたわ。
親もなく、碌に仕事もできない年齢の私たちが生き残るために資産管理と運用方法を覚えて、私は稼ぎ頭としてみんながお金に困らないように支えてきた。
魔法少女の戦い方を研究して、三人でうまく戦える方法を編み出してきたのも私。
前回は失態を犯してしまったけど、その場その場の最終的な判断を下して、最善で最適な答えを選び続けてきたのも私だった。
別に誇る気はない。
三人で生き抜くと覚悟を決めて、私がふたりを……遊佐葉月と三栗あやめを守ってみせると誓った今、私はそれらを覚えるのが苦痛じゃなかった。
覚えないと生きられないから、そういうマイナスな思考じゃなくて、覚えればふたりを守ることができるというプラスの思考で私は行動し続けて、そして身に着けた。
ふたりを守る、その気持ちさえあれば私は割となんでもできた。いや、できないものなんてないと本気で信じていたわ。
アレ以外は。
「ぅ……ぅう……」
今現在、平日の夜七時過ぎ。
夜ご飯の時間になったとき、机に突っ伏しているあやめが気分の悪そうな弱々しい声をあげていた。
今日は葉月が委員会の仕事で遅くなる日。そして葉月こそ、我が家の料理担当でもある。
つまり葉月がいない今、時間になってもご飯が出てこないということだった。
連絡してきた葉月は奢るから出前を取っていいって言ってくれたけど、出前なんて出費の無駄。
いくらお金に困っていないと言っても、年頃の女の子である私たちの財布の中身は些か寂しいもの。それは葉月だってもちろん例外じゃない。だから……。
「……私が作るわ」
そう、決めた。
私が作った方が早いし、無駄な出費もしないで済む。
葉月からは「このはは絶対に料理だけはしなくていいからね。絶対だよ」ってなんか妙に言い聞かせられるように禁止されていたけど、最後に私が料理してから大分時間が経っているわ。
確かにあの時は失敗しちゃったけど、それはきっと初めて料理をしたから。うん、そうに決まっているわ。
だから今日は私が作る。
あやめだって、私の料理を食べてみたいって言ってくれたんですもの。腕によりをかけて、全力で美味しいものを作ってみせる。
そう決めたのはいいのだけれど。
その結果……生まれてしまったのが、明らかに様子のおかしいあやめだった。
最初の内は美味しいと言いながら食べてくれていたんだけれど……途中から完全に喋ることなく、黙々と食べ進めていた。眉間が寄って、食べるペースもどんどん落ちていたことに、「美味しい」と言われて内心舞い上がっていた私が気付くこともなく。
完食してぐったりしてしまっているあやめを見て、ようやく様子がおかしいことに気が付いた。
「あ、あやめーっ!」
「たっだいま~!……って、あやめ!? あやめ、大丈夫!? これってまさか……」
丁度私が悲鳴を上げたその時、帰宅した葉月はいち早くあやめの異変に気が付き、机の上に乗っている食器を見て全てを察した。
「ち、違うのよ!? あ、あやめはね!? おいしいって言って……全部食べてくれたのよ!?」
「ぜぜ、全部!?」
内心原因がわかっていながらも決して認めたくない私は、なにも違っていないのに違うと言っていつもの私らしからぬ言い訳をしてしまうけど、葉月はそんな私よりも、私の料理を全部食べつくしたあやめを心配し始めた。
「言わんこっちゃない……だから出前にしなって言ったのに……」
溜息交じりに頭を抱えた葉月のその言葉でようやく現実と向き合う気になった私は、あやめに確認した。本当は美味しくなかったのかと。
あやめは申し訳なさそうな顔をしながら、それを肯定して水を求めていた。
満身創痍。そうとしか形容しがたい状態になるまでに、私の料理はあやめを苦しませてしまっていた。
葉月曰く、こうなることがわかっていたから葉月が料理の担当を一任して、できないときは出前を取ったりスーパーの弁当を買うように促していたらしいわ。
「アタシが食事の面倒を見るから、料理は諦めて? ねっ!」
でもその葉月の言葉だけは、私は認めるわけにはいかなかった。
誰が諦めるものですか。
葉月とあやめと一緒に生きる、私はそう誓ったのよ。そのためなら私はなにも諦めないわ!
絶対に、私の料理でふたりに「美味しい」と言わせてみせる!
そう宣言すると、ふたりは露骨に嫌そうな顔で「ぇえ~!?」と不満の声を出すけどそんなことは関係ないわ。必ずやってみせるんだから。
それからは、私の全身全霊をかけた料理研究の日々が始まったわ。
まずは下準備、料理をするには適正な道具が必要不可欠。
葉月は代用したりしているけど、それは葉月が天才だから。そして私は凡人。凡人の私には道具を代用するなんていう高等技術は使えない。だからまずは形から入ってみることにしたのよ。
お金の心配を葉月はしてきたけど、それは問題ないわ。安くていいものをさらに安い時に買い揃えたのだから。私のお金のやりくり術を舐めないでほしいわ。
「そして、書物から学んだ料理の理論……」
「理論!? アタシ、そんなの勉強してないよ!?」
仰天している葉月だけど、仕方がないのよ。
料理の天才タイプの葉月なら勉強しなくても自然とできるのでしょうけど、私は天才じゃないもの。だから一から勉強しないと碌な料理を作ることができない。
きっと私が料理ができなかったのも、勉強しないでいきなりチャレンジしたからに違いないわ。
「まあアタシが天才なのかは置いといて……。このはが料理の天才じゃないのは、はっきりしてるよね」
「…………」
「あっ、ごっごめん!」
いいのよ……いいのよ葉月。わかっているもの。だからこそ勉強したんだもの! だから、やるからには一分の隙も無く、徹底的にやり遂げてみせる!
味の相互作用を考えた対比、抑制、相乗効果。舌を満足させるテスクチャー……即ち食感の選択。そして色彩効果。これらをすべて満たしたとき、必ずやおいしい料理が作れる……はず! 加えて調理器具だって揃えたもの。私に死角はないわ。
「……このは、今日作る料理は、アタシが試食するよ!」
そんな私のやる気を感じとってくれたんだと思うわ。曇りのない笑顔で葉月が進言してくれた。
ありがとう葉月、私頑張るわ!
気分が良いうちにやってしまいましょう!
「まずは、対比効果を狙って塩と砂糖を混ぜ込んで……」
そう呟いた時、まだ近くにいた葉月の笑顔が凍り付いていたことに私は気が付かなかった。
そして、できあがった。我ながら完璧な仕上がりね。
名付けて、『甘味たっぷりカツオだしオムレツ』!
オムレツを紫芋パウダーで青く染めた上に、真っ赤なケチャップ。砂糖に漬けた白いカリフラワー。複数の食感が楽しめるように、卵の焼き具合はカリッカリとふわふわをミックスしてみたわ。
色彩、相乗効果、食感……全てにおいてパーフェクトね。
「さぁ、ふたりで頂きましょう!」
「うん……」
さようなら、料理のできなかった私!
(さようなら、今日までのアタシ……)
「いただきます!」
「いただきます……」
そうオムレツを口に入れた瞬間、私の口にありえない味と食感が広がっていく。
な、なんなのこれは……!
マズいし食感も最悪じゃないの……! な、涙が出てきたわ……。
美味しくなくて悲しいのもそうだけど、あまりのマズさに私の舌がこれを食べることを拒否しているのだから。
「ぅーん……」
葉月は一口で撃沈。
気絶してしまっていた。
「は、葉月ーっ!」
「ただーいまーっ! このは! これ! これ見て……って、葉月が倒れてる!?」
丁度私が悲鳴を上げたその時、帰宅してきたあやめが持ってきたのは『料理教室』と書かれていたチラシだった。
教室を開くお店は……『洋食ウォールナッツ』!?
神浜の中でも特に有名な名店じゃないの!
「うう……ああ、そこね。あの事件の時には色々とお世話になったけど、今でも普通に通っているお店だよ……」
「葉月! 意識を取り戻したのね!」
「うん……。ウォールナッツの料理は値段の割に本当に美味しいよ。初めて食べた時は……美味しかったのもそうだけど、色々あって涙が出ちゃったくらいだもん」
ウォールナッツで料理人をしている少女も魔法少女らしくって、私たちが犯人としてでっち上げられたあの昏倒事件の時も、私たちを信じて積極的に私たちが無実だという話を広げてくれていたらしい。
「それにあそこは、あの百恵さんとも繋がっている色んな意味で凄いお店だよ」
「百恵さんとも……」
神浜最強と言われている星奈百恵さんまで認めるレストラン……まさに、神浜最強のレストランね。
そこで開かれる料理教室……これは行くしかない!
なんか妙に上機嫌に勧めてくれる葉月とあやめに見送られながら、私はウォールナッツの料理教室に行くことにした。
(料理教室なら、試食するのはアタシたちじゃないしね!)
(食べるの、あちしたちじゃなくなるもんね!)
「む? おお、お主は静海このはじゃったかの?」
料理教室当日。
そこそこの人数がここに集まっている中、まさかの人物が笑顔で話しかけてきた。
白髪の尻尾ヘアーと、古風な喋り方が特徴的な幼女。
しかしその正体は御年19歳の大学一年生で、神浜最強の戦闘能力を誇ると言われている大物魔法少女、星奈百恵さんだった。
ここと深い繋がりがあるとは聞いていたけれど、まさか料理教室に参加しているとは思いもよらず、意外なところで出会ったことに私は目を丸くする。
「お久しぶりです百恵さん。あの時はお世話になりました」
「よいよい。ところで、お主も料理の勉強をしにきたのかの?」
「ええ」
そこから料理教室が始まるまで百恵さんとお話をした。
なんでも百恵さんはここの料理教室の常連で、始まった当初からずっと通い続けて腕を磨いているらしいわ。
百恵さん専用の踏み台もしっかり用意されている辺り、ここの先生も百恵さんが来ることを前提としてセッティングしていることがわかる。
そういえばあやめ、かこさんと一緒にフェリシアさんに誘われて百恵さんの手解きを受けた時に、お昼を御馳走してもらったって話をしていたわね。
「あのおばあちゃんすっごい強いし、すっごい料理上手いよ!」
ってはしゃいでいたかしら。
未成年なのにおばあちゃんって言われている百恵さんが可哀想だったけど……まぁ、あやめがそう呼ぶのもわかる。
初めて会った時は怒らせちゃったけど、この人が私よりも年上だってことはすぐにわかった。なんというか、院長先生と同じような落ち着いて柔らかい雰囲気をしていたから。
「まなか先生の指導は素晴らしいものじゃぞ。一年前までは凡人であった私も、今や料理が得意分野と胸を張れるくらいになったからのう」
言葉通りに身長に見合わないほどの巨大な胸を張ってくる百恵さん。
凡人……つまり今の私と同じレベルだったらしい百恵さんが、あやめが喜ぶほどの腕前までに成長するなんて……!
「はーい、みなさん! こんにちは! 今日、料理講師をする、胡桃まなかです! よろしくお願いしまーす!」
先生が最前列でご挨拶している。
あやめより年上でしょうけど……葉月と同じくらいかしら? いや、隣のテーブルにいる人のことを考えると……いやいや、さすがにそれは考えすぎね。きっと百恵さんが例外なだけよ。うん。
まぁ、見た目や年齢なんてどうでもいいのよ。肝心なのは彼女……胡桃まなか先生は私と同レベルだったであろう百恵さんを矯正させるほどの指導をしてくれるプロだということ。この人の教えを請えば私だって……!
「まずは基本から教えていきます! と、その前にもうひとり、紹介しないといけませんね! 百恵さん、お願いします!」
「うむ」
あら? 隣の調理台に立っていた百恵さんがまなか先生の隣に?
「星奈百恵という。よろしくお願いするのじゃ!」
「百恵さんはアマチュアですが、まなかも認める料理の腕を持っている方です。前半の基本的な道具の使い方や料理のやり方に関する指導は、この百恵さんにもお手伝いしてもらいます」
まなか先生に認められるところまで、百恵さんの腕が上達しているなんて……!
百恵さん……いえ、百恵先生。色んな意味で頭が上がらないわ。
「しっかり見ていてあげるからの。一緒にやっていくのじゃ!」
そしてそんな百恵先生はにこやかに私のところまで来てくれた。
どうやら私から教えてくれるらしい。
「まずは包丁の使い方じゃの。無駄なく、そして綺麗に切ることがおいしい料理を作る秘訣なのじゃよ。切り方によっては食感も変わるから、簡単なようで意外と奥が深いのじゃ」
「あ、それって『テクスチャーの選択』ですね!」
「て、てす……?」
やっぱり勉強したことは無駄じゃなかったみたいでテンションが上がってしまった。
結構噛み砕いているけど百恵先生が言っていることは、私が勉強したものと全く同じだったのだから。
「ま、まぁ多分そうなのじゃろうな。口で説明するよりも見てもらった方がよい。私が今からやるから、よーく見ておくのじゃよ」
鼻歌を歌いながら百恵先生は包丁を手に野菜を切っていく。
水で洗った後に薄く皮を剥いていく。するするするっと、途切れることなく綺麗に皮が剥けていった。
ピーラーを使わないでこんなことができるなんて……凄い手先の器用さ。さすが百恵先生。
魔法少女としてじゃなくて料理の腕も最強クラスとは恐れ入るわ。
「まぁ、こんなもんじゃの。ほれ、お主もやってみるとよい」
さすがに皮を剥く作業は百恵先生がやってくれて、そこから食材を切る練習に入った……のだけれど。
「ちょっと待つのじゃお主よ。よいかの? こうじゃよ」
「そうじゃそうそう……って危ないぞ、お主よ! ゆっくりでよいのじゃ。慌てずともよい」
「食べ物を切るときは猫さんの手じゃ! そんなに押さえつけんでも大丈夫じゃ、怪我をするぞ!」
……正直、すごく難しいわ。
少しまなか先生と話をして戻ってきた百恵さんは、どうやら今日一日私の担当になってくれるらしい。
「なーに、安心せい。最初はみんなこんなもんじゃよ。包丁はもうよい。次は卵を割ってみようかの。ほれ」
「えいっ! あっ! 殻が全部入っちゃいましたわ」
「お主は無駄に力を入れすぎなのじゃ。もう少しリラックスせんか。こう、ボウルの縁にコンコンコンと……ほい、こう少し皹を作って……ゆっくり割るのじゃ」
「えっと……?……!」
で、出来た……! 綺麗に卵が割れた!
「そうじゃそうそう! よく出来たのう!」
踏み台に乗っているもののそれでも私より背の低い百恵先生は、つま先立ちしながら手を伸ばし、私の頭を撫でてくれた。
……こうして誰かに褒められながら頭を撫でられるなんて、いつ以来だったかしら。
多分院長先生にされたのが最後だと思うけど……思い出せないってことは、相当昔にされて以来ってことね。
年長者だったから葉月もあやめもやらないし、つつじの家を出て以降、あの昏倒事件が起こるまではふたり以外の誰にも心を許すつもりがなかったから無縁だと思っていたし、やってほしいとも思わなかったけど……される時が来るなんてね。
多分他の誰かにされたらすぐに掃うのでしょうけど……不思議と、この人にされるとその気になれない。子供扱いされているとか、そんな考えが出てこない。
落ち着くというか、懐かしいというか……どこか心地よかった。
そんなやり取りをしながら、基本的な料理のやり方を百恵先生に教えてもらうこと30分。
一通り教えてもらって……明らかに昨日までの自分とは違うことが実感できた。
「力を抜くのじゃ、お主よ。そんなに力まずとも美味しい料理は作れるものじゃよ?」
もう何度も言われたこの言葉。凄まじい力を誇る百恵先生だからこそ、凄い説得力があった。
よくわからなかったけど、少しずつできるようになっていくことに安心感が得られたのか、危なっかしいと心配そうに百恵先生が見ていた私の包丁さばきも軽いものになった。
「うむ! とりあえずは大丈夫そうじゃの。少し休憩を挟んだら課題料理を作るぞ。私も隣で作っているから困ったことがあったら私か、まなか先生に聞くとよい」
そう言って百恵先生は隣の調理台の方に向かっていった。
たったの30分だったけど、かなり濃い時間だった気がするわ。
まなか先生が見ている他の人達も授業が終わったみたいで、丁度ブレイクタイム。
十分休んで、後半に差し掛かった。
「それでは料理教室の後半。課題料理を作っていきましょう。百恵さん、ありがとうございました」
「まぁ、ひとりしか見ておらぬがの」
苦笑いしているけど、おかげで自信は付いたわ。
だからこの課題料理……今の私ならちゃんとできる!
今度こそさようなら、料理のできなかった私!
「先生、ガスを止めても火が小さくならないわ?」
「え? こ、このはさん! フライパンの上の油に引火しています! 百恵さん!」
「心得た!」
遠くにいたまなか先生が指示を出すと、隣の調理台から踏み台を持ってすっ飛んできた百恵さんがフライパンの蓋を横からゆっくりとスライドさせて上に乗っける。
するとすぐに火が収まった。
「ふぅ……みなさんももし、揚げ物かなんかで誤って油に引火してしまった時は、ああいう風にして対応してください。絶対にやってはいけないのは水をかけることです。大炎上しますので本当にやらないでください。濡れタオルで覆うのもあんまりお勧めしません。濡れきっていないところに引火してしまう可能性がありますからね。フライパンを使って料理をするときは必ず、近くに専用の蓋を用意するようにしましょう」
そうまなか先生が綺麗に締めくくって授業再開。
あ、危なかったわ今のは……。
「強火にしすぎじゃな。こんなところまで力を入れおって……隣にいるから、まなか先生が他の人に付いているときは私に聞くとよい」
にかっと笑って、百恵先生が調理台の方に戻っていく。
「ああ、そうじゃ……」
その途中、百恵先生は真剣な顔で一言。
「よいか? 余計なアレンジは決してするでないぞ? それから味見もこまめにするのじゃぞ? 味見はつまみ食いではないからな? それから重ねて言うが、わからなかったら先走らずに私かまなか先生に聞くのじゃぞ?」
「は、はい……」
なんかすごい迫力があった。
それからは物凄く……ええ、物凄く平和に料理教室が続いた。
フライパンを使った焼き鮭の火加減はまなか先生に確認してもらった後に、心配になったら百恵先生を呼んで一緒に見てもらったから多分大丈夫。
炊き込みご飯に使う出汁の配合を百恵先生に見てもらって、炊飯器に入れる出汁の量がわからないからまなか先生に確認を取って対応して……出来上がった炊き込みご飯を食べた時は、本当に自分が作ったものか、一瞬疑うほど美味しかったわ。
ちょっと食べすぎちゃって、まなか先生に呆れられちゃったけど。
お味噌汁だって、百恵先生の言う通り、調味料を入れては少し味見してを繰り返して……美味しいお味噌汁を作ることができたわ。
お味噌汁が爆発? するわけないでしょう。
完成した純和風の料理を見て、思わずうっとりしてしまう。
そういえば私、今日は凄く味見をしているわね。
隣で百恵先生がたまに横目で見てくるから、意識してやってきたけど……前までの私は味見なんてしてなかったかもしれないわ。だから出来上がったものを食べるまで、失敗していることに気が付かなかったのかも。
「それでは……実食してみましょうか」
順番にまなか先生が回って試食してコメントをしている。
アドバイスもしているみたいで、ひとりにつき二分くらいは時間を使っている。凄い本格的というか、ガチな採点のようね……。
そしてついに、私の番になった。
「さて、このはさんの番ですね」
まずはお味噌汁を小皿に移して、一口。
「……はい、なるほど。良いですね。ちゃんと味見して整えられているのがわかります。具材も……いい感じですね。しっかり熱が通ってお味噌も程よく染み込んでいます」
お味噌汁は大丈夫……ということね。
「炊き込みご飯も……いいですね。決められた量と方法で作れているので、まなかが作ったものと大差がありません。鮭も問題ないですね。火はちゃんと通っていますし、味付けの塩の量も適正なのでしょっぱくありません。ちょっと焼きすぎちゃっている感じはありますが、大丈夫です。よく、出来ていますよ」
にっこり笑ったまなか先生は、次の人の所に向かっていった。
「……ょし!」
出来た……! 出来たのよ静海このは……! 美味しい料理、作れたのよ私!
「良かったのう、お主よ」
もうひとりの先生である百恵先生が穏やかに笑いながら来てくれた。
ちなみに百恵先生の料理は既にまなか先生に試食済み。頷きながら楽しそうにおしゃべりしていたから、きっと最高の評価をもらっていたに違いない。さすが百恵先生……。
思えば百恵先生がまなか先生の指導を受けていたのは三回だけ。
火加減と味付けの時くらいしか呼んでいなかったから本当に手馴れている。鼻歌を歌っていたし、心底料理が好きなのでしょうね。
料理教室が終わった帰り道。
改めてまなか先生にお礼を伝えた後、私は百恵先生と一緒に歩いていた。
いろんな話をしたわね。どうして料理を勉強しているのかとか、そんな話から始まって、魔法少女の話や仕事の話、そして……あの昏倒事件の話。
残念なことにあの事件はいまだになにも進展がないらしい。
憎たらしいことに犯人は知能犯らしく、一切の尻尾を出してくれていないみたいだ。
でも……今は少しだけだけど、犯人に感謝している自分がいる。
あの事件があったから私は他人を信じようと思うことができたし、百恵先生然りまなか先生然り、その他何人もの魔法少女の知り合いもできた。友達もできた。
それが巡り巡って、私も料理を作ることができるようになった。
「料理教室がなくとも、私を頼ってよいからの。なんなら今度家に遊びに来るとよい。一緒にまた料理をしよう。それから三栗あやめと言ったかの? なかなか美味しそうに作ったものを食べてくれて嬉しかったと、また遊びに来いと伝えておいてほしいのじゃ」
この親切心MAXの世話焼きで柔らかく誘ってくる感じは完全にその……おばあちゃんみたいね。
私のおばあちゃんがどうなのかは知らないけど、世間一般に言うところの典型的なおばあちゃんって多分この人のことを指すんじゃないかしら?
でも、それはありがたいお誘いだった。
まなか先生は多忙で、料理教室の時くらいしか教えてもらう機会はないけど、百恵先生なら連絡を入れたらスケジュールを組んでくれそう。土曜日は完全に仕事もないみたいだし、それを狙ってあやめと一緒に遊びに行くのも悪くないのかも。
連絡先を交換して百恵先生と別れ……そして帰ってきた我が家。
早速、料理教室で磨いた腕を振るわせてもらおうじゃない!
なんか葉月とあやめが震えているけど大丈夫よ。
まなか先生と百恵先生のアドバイスを忠実に守れば……!
「は? ちょ……これ本当にこのはが作ったの!?」
「う、嘘だ……味噌汁が美味しい!? ご飯は炊き込みご飯だし、おかずも綺麗で……なんでっ!?」
「なにがあったのこのは!? というか本当にこのはなの!?」
「…………」
……いくらなんでもこのリアクションは酷いんじゃないかしら?
「私は正真正銘の静海このはだし、なにがあったもなにも料理教室に行ってきたのよ! 失礼ね!」
その後、私はあやめと一緒に百恵先生の所に度々行くことになるようになった。
焼き物とお味噌汁、ごはんなら作れるけど、他はまだまだだから。
玄関で温かく私たち迎えてくれるあの人を見て、私は改めて思う。
あぁ、ここが……この神浜こそ、私たちの新しい『つつじの家』なんだ、ってね。
書いていて思った。誰やコイツ!?
料理ができる静海このはなんて……静海このはじゃない!(超失礼)
本編と全く関係ないサイドストーリーだったので書きたいように書いていたら、このはまさかの弱点克服。勝手にキャラが動くのがいけないんや。
ちょっと待って! 『CROSS CONNECTION』関係ないやんですって?……うるさいんじゃい!