マギレコRTA ワルプルギス撃破ルート脳筋傭兵チャート 作:スパークリング
そして……今回、物凄い出来事が発生してます。
もうさぁ、本当に本当に大嫌いだったんだよね。
なんかいきなり来た父親を名乗る男の虐待から始まってさぁ、そいつに怯えて空気同然になっている母親に放置されてさぁ?
ロクでなしの父親は刺されて死んじまうし? 父親が死んだことで吹っ切れちゃった母親も車に轢かれて死んじまうし?
ほんっと、つまんねーあたしの家族はどこまでもつまんねー生き方をして、そしてつまんねー死に方をしやがった。
そんなクソみたいなつまんねー環境から出られたと思ったらさ、今度は学校でいじめだってよ。しかも意味わかんねー理由でさ。
はぁ~あ。まあアレだね……。
まるで毎日冴えなくて、楽しくなくて、つまらなくてさ。そのうえ苦しくて、痛くて、面倒くさくて。だからと言ってただ死ぬってのも腹立つしさ? とりあえず生きているよってやつ、いんじゃん?
所詮あたしもさ、そんなやつらのひとりだったってことなんだよね。
わかってんだよ。
こんな目に遭っているやつなんてこの世界に
でもさぁ……それで納得するほど聖人君子ってわけじゃなかったんだわあたし。
だからアイツの話に乗った。
もう全てがどうでもよくなっちゃってさ、そんなときにアイツ……キュゥべえと契約して魔法少女になった。
あたしをいじめてきたやつらをあたし以外の記憶から存在ごと抹消して、知り合いからも、友達からも、家族からも思い出してもらえず、そんなことになっていることすら知覚させずに消滅させる。
も~、最っ高の気分だったね。
次の日に学校に行ったらさ、そいつらが席ごと消えてんだもん!
教室のところどころ、机があるべき場所が妙にぽっかり空いてるってのにさ、みーんなそれに違和感を抱くことなく、楽しそうに昨日とおんなじ笑顔浮かべて友達と駄弁ってやがんの!
しかもあたしが消したやつらの話をしたらさ、きょとんとした顔で「誰それ?」って言うの! 先生すらもその状況に違和感なくホームルームを始めるしさ! 傑作っしょこんなん!
もうこれ学校絡みのいじめだろって、腹抱えて笑っちゃったよね! なに言ったか覚えてないけど、大声で叫びまくったよ!
あぁ、本当に面白かったなぁ。あたしの人生で多分最初に感じた楽しいと思ったことなんだろうね。
あ、でも同情なんかしちゃダメだよ?
あたしがやってんのはさ、『復讐』なーんていう御大層なものですらない、私怨と八つ当たりに塗れた、どうしよーもなくつまんねーことなんだからさ。
結局あたしはさ、周りにつまんねーつまんねーと言っているくせにさ、自分から面白いことをしようともしない、周り以上につまんねー人間だったってことなんだわさ。
魔法少女になって違う世界に来れたと思った。
でも、そんなに甘くはなかったよ。
あの時のあたしは本当に弱っちくてさぁ。
なり立てほやほやってのもあったけどさ、絶望的に戦闘センスがなかったんだわ。
なんで杖を使った魔法を使えるのに近づいて殴ってんだよ、普通に距離取って魔法使えや、なんて感じの今のあたしからしたらツッコミどころ満載の危なっかしい戦い方なんてしちゃってさぁ。そんな風に戦っていちゃあ、勝てる敵にすら勝てないっての。現に使い魔数匹倒すだけで息上がっちまってたしね。
こんなんで魔女なんて倒せんのかなって、慣れてもいねーくせに余計なこと考えてっから使い魔相手にピンチになっちまうんだよ。
……でもさぁ。
「その人を攻撃してはダメ!」
そのおかげでさぁ……会えたんだよね。
短い間だったけどさ、あたしに光をくれた、あいつにさ。
瀬奈みことっていうやつなんだけどさ、そいつ……瀬奈は思い込みが激しいところはあったけど、どうしようもなくお人好しでさ。
名前の響きが似ていて同じ魔法少女だからなんて理由で、こんな根暗なあたしを友達って言ってくれてさ。こっちは内心、楽できるから利用してやろうって思っていたのにさ。
しかも瀬奈はあたしに魔法をくれた。
魔法少女には固有魔法があるって聞いたんだけど、あたしにはそれがなんなのかわからなかった。
あたしらしくなーんにもないのかなって思っていたんだけどね、ある日の魔女退治であたし、瀬奈と同じ『暗示』の魔法を使えるようになった。
それから別の魔法少女と出くわす度に、あたしの魔法が変わっていった。その魔法少女たちと同じものに。
『上書き』の魔法。
あたしは他人の魔法を使うことができる。
扱えるのは一種類限定だけで意識してコピーしないと自分のモノにできないけど、充分強力な魔法だった。しかもこのコピーは何度だって使える。
生まれつき取り柄もなーんにもないあたしらしー魔法。
他人からパクってきて自分のものにする。そんな固有魔法だった。
まぁでも? 結局瀬奈の『暗示』の魔法しかロクに使わなかったけどね。
他のやつらの魔法、あたしと相性良くなくってさぁ、瀬奈の魔法が一番使いやすくて便利だったから、ずっと『暗示』の魔法を使い続けた。
「えへへ~! ちょっと誇らしいかも……!」
そんなあたしの心の内を知らないであろう瀬奈はただ嬉しそうに笑った。
気付けばあたしも、少し笑っていた。……こんな風に笑えるようになったんだなって、少し自分でも驚いていたのは秘密だった。
だからあたしたちはふたりで『暗示』の魔法について研究することにした。
そして気が付いたんだけどこの魔法、かなりヤバいものであることが判明した。
この『暗示』の魔法は相手の記憶にも干渉できて、対象の記憶を封印することができる。思い込みを増長させて混乱させたり、自分に言い聞かせることでリミッターを外したりといろんなことにも使える。
そのいろんなことがさぁ……全部魔女じゃなくて人間相手にも使えることだから尚更ヤバいってわけ。
だからあたしは、瀬奈にその事実を話さなかった。
瀬奈のことだからたとえ知ったとしてもそんな風に使わないだろうし、そんな凶悪な使い方を示唆されて落ち込む姿を見たくなかったって言うのもある。
そんな……お互いに魔法を研究しながら魔女を倒して、それなりに充実した毎日を過ごしていたある日のことだった。
「まずは一段落だな」
あの変な喋り方の女と出会ったのは。
堅っ苦しい喋り方で一緒にいると息苦しくってしょうがない。
瀬奈は魔法少女の知り合いが増えて嬉しいらしくってぺらぺらと自分のことを喋っている。
こいつのことはあたしは知っていた。
和泉十七夜。
たったの一年で東の魔法少女たちを纏めるようになったカリスマだ。
正直、こいつは凄い面倒くさい存在だと思った。
今のあたしにとって、大切なのは瀬奈だけだ。瀬奈さえいれば後はいらない。そんな風に思うようになっていたんだ。
そして、あたしと瀬奈の世界にこいつは不要だ。
前々から試してみたかったこと……魔法少女に『暗示』の魔法をかける実験。その被験体になってもらおうと思った。
検証したかったことが実行できて、ついでにあたしのことを忘れてもらえる。一石二鳥だった。
帰り道にこいつを襲って魔法をかけてやる。そう考えていた時だった。
「瀬奈君と更紗君はまだ新人みたいだな。だったら紹介しようか、傭兵に」
「傭兵……ですか?」
「ああ。聞いたことはないか? 星奈百恵……というベテラン魔法少女のことだ」
その名前も聞いたことはある。
なんでも神浜最強の戦闘能力を持つって言われている魔法少女。
『完全中立』を謳っていて、神浜の全ての魔法少女の味方と公言しているやつだ。
和泉十七夜からその名前が出た時、あたしは一気に不快な気持ちになった。
その名前だけはどうしても瀬奈に聞いてほしくなかったからだ。
「星奈……さん! 帆奈ちゃん、また私たちと響きが似ている名前だよ! しかもそんな人が神浜最強ってすごいね!」
「う、うん。そうだね……」
ああ、こうなるってわかっていたから聞かれたくなかったんだよ!
星奈百恵。
漢字二文字で後ろに『奈』の字。あたしたちと同じだ。
こうして瀬奈と仲良くなれたのも名前の響きが似ているからっていうのがきっかけだった。だったらそれは他の魔法少女だって例外じゃない。
星奈百恵。
あたしはこいつのことが大嫌いだったんだ。
百に恵まれるなんていう御大層な名前。
『星』とかいう希望を表す一文字に、あたしと同じ『奈』の字がくっついていやがる。あたしにとっちゃあ皮肉以外の何者でもない苗字だった。
名前からして大嫌いだったのに、さらにそれを後押ししたのはその名前通りの輝かしい功績の数々を聞いたから。
周りからの信頼の厚さ、確かな実力。すべての要素がなーんにもないあたしとは真逆。
『完全中立』という謳い文句も嫌いだった。
そんなことを言えるのは心に余裕のある強いやつだけ。そしてそんなやつは本当になーんにもないやつの気持ちなんて知らない。理解しようとも思わないだろうさ。
それにさ、『完全中立』って結局のところ、どっちつかずっていうことでしょ? それが神浜の全ての魔法少女の味方と公言しているから笑わせる。
もし魔法少女同士でどうしても避けられない戦いが起きた時、あんたはいったいどっちに付くつもりなんだ。きっと何も考えていないに違いない。
考えれば考えるほど星奈百恵という魔法少女は、あたしが嫌いな要素がすべて詰め込まれた、聞くだけで不愉快な存在だった。
瀬奈は会いたいと言っていたけど、あたしは全力で拒否した。
面倒くさい以前の問題として星奈百恵にかかわりたくなかった。だからあたしは拒絶した。
「……まぁ、本当にどうしようもない時は自分に連絡をしてほしい。自分が星奈の窓口をやっているからな。星奈は必ず助けに来る。この町に住む魔法少女のためなら、どんな者にも手を差し伸べる。あいつはそういう存在だ」
瀬奈と連絡先を交換した和泉十七夜はそのまま帰っていった。
あたしも瀬奈と別れて、和泉十七夜を追い、魔法を使って記憶を封じた。
実験は成功だった。……成功だったんだけど、あたしの気分は晴れないままだった。
いつかは瀬奈とふたりでこの世から姿を消して自由な人生を歩む。それがあたしの秘かな計画。
その足掛かりとなる魔法の開発に成功したのに……。
瀬奈も瀬奈で……その星奈百恵のことを聞いてから、より一層魔女退治に熱を入れるようになっていた。最強の存在が自分と似ている名前であることがよっぽど嬉しかったみたいだ。漢字一文字合っているだけでよくもまぁ……。
でも、そんな瀬奈だからこそ、あたしは救われたんだ。
でもさぁ……。
「あのさ、ちょっとペース落とさない?」
最近は使い魔ばかりで魔女も見つからない。
神浜にいる魔法少女が意外にも多いことをあたしは知っている。
魔女は基本的に見つけたもの勝ち。早い者勝ちの恨みっこなしって言うのがこの神浜の掟だ。だから魔法少女の数が多ければ多いほど、生き残っている魔女を見つけるのが困難になる。
それにあの星奈百恵の存在もある。
やつは西の魔法少女でありながら東でも平然と活動しやがる。
仕事終わりに寄り道感覚で魔女を狩っていくハンターだった。
そして……神浜最強の肩書きが伊達じゃないくらい、あいつは強い。
偶然、この近くであいつが仕事をしているところを見つけたんだ。
本当にあいつが最強なのかよって思うくらいチビで、あの和泉十七夜に負けないくらい変な喋り方をしていやがった。
どんなもんなのか、嫌いとはいえ好奇心が勝ったあたしは後をつけてみることにしたんだ。
したらさ、あいつ魔女の結界に入って数分で出てきたんだよ? 意味が分からない。
魔女との戦いは15分以上かかるのが普通なのに、あいつはその半分にも満たない時間でクリアしやがる。
そうして仕事が終わった帰り道に、魔女が見つからなくてグリーフシードに困っている魔法少女を見つけた時には、なんとタダでグリーフシードを譲って浄化していやがった。
あたしたちのソウルジェムを浄化するグリーフシードは、必ずしも魔女を倒せば出てくるわけじゃあない。運が悪ければ何体魔女を倒しても手に入れることができないほど希少なものを、あいつは平気な顔で渡していた。
「なぁに、困ったときはお互い様じゃ。なにかあったら私に頼るがよい。力になるからの」
その言葉を聞いた時は……なんでだろうなぁ。
あいつのことが大嫌いなはずなのにさぁ……凄い良い人だなって思っちゃったんだよ。
あいつの仕草や表情を見て、そして声を聞いてわかった。いや、本当は今日偶然あいつを見つけて、つけていた時から気付いていたんだよ。
あいつは本気で他人に寄り添って、心配をして、味方になろうとしているんだなってさぁ……。
虐待もいじめを受けていたからわかるんだよ。
薄っぺらい正義感とか同情とか、そんな犬の餌にもならないつまんねーものを掲げて、善人面して近寄ってくるような連中のことをさぁ。
でも、あいつはそいつらと圧倒的に違う。
軽い世間話や自分の話ばっかして相手の心を開いて、その上で話を聞いて……その全てを肯定していた。直接的な物言いは絶対にしなかった。
なぜ、どうして、そんなすぐに答えを求めるようなこともしないで、否定することも、あやふやにすることもせずに、ただただ、優しく受け止めていた。
あいつなら、こんなあたしも……。
そんな考えが浮かんで、気が付いた時にはあたしは自分の部屋にいた。バカだなって思ったよ。
いつだってこの世界はあたしに冷たい。そんな世界があたしにとって都合のいい人間を二度も用意してくれるわけがない。
欲張らない。あたしには瀬奈がいればそれで充分。
ロクに喋ってなくて、遠巻きに見ていた他人の温もりなんて必要ない。
瀬奈さえいれば……。
話が長くなっちゃったね。
そんな事情もあってさ、あたしは瀬奈にペースを落とすように提案をしたんだよ。
瀬奈はいつだって全力だった。
魔女だけじゃなくて使い魔相手にも毎度毎度全力で……どう見ても無理をしているようにあたしには思えたんだ。時々しんどそうな顔をしているしさ。
余計な心配しないでよって怒られちゃったけどさ、それでも心配なんだよあたしは……。
「そ、それにさ! 聞いたんだけど星奈さんって、一日に何体も魔女を倒せちゃうらしいんだよ?」
「へ、へえ。そうなんだ……」
怒っちゃったことに申し訳なく思ったのか、瀬奈が話題を変えてくるけど……知ってるよ、そんなこと。だってあの時、最低四体は仕留めたところを見ていたから。
でもあれはあまりにも……規格外すぎる。
なんていうか、普通じゃない。絶対にあの強さの裏になにかがある。なにか……得体のしれないなにかが、さ。
「でもさ、あたしたちはまだ魔法少女になって一年も経っていないペーペーじゃん? 目標が高すぎるんじゃないか?」
「目標は高い方がいいでしょ! それよりもさ! また団地の方、探しに行こうよ!」
結局あたしの言葉に耳を貸してくれなかった瀬奈の勢いに負けて、あたしたちは神浜大東団地に行くことになったんだよ。
成果としては使い魔を見つけただけでお終い。戦いもあっさりと終ったんだ。
でも……問題は、その後だったんだよ。
戦いが終わった後、瀬奈はボーっとしていたんだ。
ここから見る景色が好きって言っていたからさ、いつものことかと思ったんだよ。
でも、すぐに様子がおかしいことに気が付いた。
突然悲鳴を上げて苦しみだす瀬奈。
助けてと手を伸ばす。あたしはすぐに、崩れる瀬奈を抱きしめて……瀬奈のソウルジェムを見て絶句した。
真っ黒だった。
グリーフシードがないのにもかかわらず全力で戦い続けた結果、瀬奈のソウルジェムの輝きが完全に消えて濁り切ってしまっていたんだ。
そこからはさぁ……もう地獄だったよ。
瀬奈のソウルジェムに皹が入り始めて変形しちゃってさ、変化が終わった時には……グリーフシードに変わっちゃっていたんだ。
そしてあたしはこの時、隠されていた魔法少女の真実ってやつを目の当たりにしたんだよね。
魔法少女の行きつく先は……魔女だって……!
なによりも大切だった、ずっと一緒にいたいと思えたあたしの大切な存在が、あたしの目の前で、魔女になった。
一周回って冷静になれたあたしは魔法を使って瀬奈だった魔女を追い払った。
倒してはいない。ただ……追い払うことしかできなかった。
その後に出てきたキュゥべえからあらかたの話を聞いた。
エネルギーがどうとか小難しい話をパーッとね……。
あたしは頭が悪かったけどそれでも分かったことは、魔女は魔法少女の成れの果てってこと。
そっかそっか……そういうことか……。
じゃあさぁ……。
「ねえキュゥべえ? それはさぁ……あの星奈百恵も知っていることなの?」
「? なぜここで星奈百恵が出てくるんだい?」
「いいから答えてよ」
「……そうさ。星奈百恵はこの魔法少女の運命を知った上で魔法少女になった、極めて珍しいタイプの魔法少女だよ」
「そっかそっか……うん……そっか……。……そうなんだぁぁぁぁぁ!」
あたしは何度も頭を床に打ち付けた。
並外れたこの身体能力も!
怪我をしてもすぐに回復するこの体も!
なんでも思うままになると思っていた『暗示』の魔法も!
手に入れられると思っていた……夢のようなあたしの世界も!
全部全部偽物だったと……ただの張りぼてだったと知ったから!
そんな幻を打ち砕くために! あたしは頭を叩きつけたんだ……!
それにあたしは……星奈百恵が許せなかった。
わかってんだよ。星奈百恵は何も悪くないってことはさぁ。これはあたしの八つ当たりだ。
キュゥべえにあいつがこの真実を知っているのか聞いたのも、少しでもあいつに非があると思い込みたかったからってことはわかってんだよぉ!
それでも……それでもさぁ!
どうして……どうしてなんだよぉ……!
どうして瀬奈を……あたしを……ちくしょう……。
ひとしきり頭を叩きつけて笑い飛ばして……それからはさぁ、なんかもう色々と吹っ切れちゃったんだよね。
なんていうかそう……目の前がパーッと開けた気分ってやつ?
そう! もうスッキリ!
なーんかさぁ、もうどうでもよくなっちゃった。
だって行き着く先がわかっちゃったんだからさぁ、だったら楽しんだ方がいいでしょ? 思いついたことをせーんぶやって、バーンッて弾けるんだ!
え? 星奈百恵に喧嘩を売る? まぁ、それもいいかもね!
でもさぁ……それはメインディッシュじゃん? まだまだ早いよね。
だって今のあたしが仕掛けたところでさぁ、多分一瞬で制圧されて終わりっしょ。
『暗示』の魔法は万能じゃないんだ。ちゃんと口に言葉を出さないといけないし、意外と繊細なんだよ。
それしか武器がないあたしが神浜最強に嚙みついたところで速攻で組み伏せられてお・わ・り! そんなのはつまらない。
もっともっと強くなって……そして、この神浜の全てを巻き込んだドデカイ事件を引き起こして、その上で……あいつの手にかかる! それがあたしの目標!
最っ高にぐっちゃぐっちゃに掻き回して、そして神浜最強に殺されてジ・エンド。
あっは! なんて愉快で素敵なあたしの最期……!
あたしは、あたしが少しでも心を許しかけた相手に殺されて死ぬんだ……!
瀬奈がいないこの世界で生きるのはもううんざり!
ならせめて……一瞬とはいえ、気の迷いとはいえ、信じてみたいと思った存在に殺されてフィナーレを迎えよう!
ああ、それまではいっぱい戦って強くならないとなぁ! いっぱい魔法を使って研究しないとなぁあ!
なんでだろう! 今がすっごい楽しい!
瀬奈が魔女になった時は絶望のどん底だったのに、生きる気力がぐんぐん湧いてくる!
「すっごいなぁ……これが星奈百恵の『力』かぁ……! あっは!」
さて……手始めになにをしようかなぁ……?
そうだ、とりあえず瀬奈だった魔女に暗示をかけてこの団地に居座ってもらおう。元々ここに住んでいたし、住み慣れているでしょ? 適当に厄災振りまいて楽しく暮らしなよ! 時々会いに来るからさ~!
それからあたしは毎日のように魔女との戦いに明け暮れたよ。
『暗示』を自分にかけて姿を消して、誰にも気が付かれないようにひっそりと、そして星奈百恵と会わないように気を張りながら着実にねぇえ!
あいつは本当、いろんなところで仕事しているからさぁ……時々鉢合わせそうになって焦るんだよね~。まぁ、それもスパイスになるから楽しいんだけどさ!
こんなことであたしを楽しませるなんて、本当に最高の魔法少女だよね星奈百恵!
それでさぁ、次にやったのは魔女をペットにすることだよね~。本当に便利なんだわ、これがさ!
『暗示』の力は魔女にも効くからさぁ、魔女に悪さをさせたりグリーフシードを回収したりとなにかと便利! 暇潰しにもなるしさぁ……。
でも気を付けないと星奈百恵に狩られちゃうから、わかりづらい場所に隠してあるんだぁ。
まぁ、それでも気付かれて何体か狩られちゃったんだけどさ! でもぜーんぜんムカつかないのさ! むしろよく見つけられたねーって褒めてあげたいくらい?
しかもあたしがペットにしている魔女は大魔女になるまで成長しているような個体ばっかりなのにさぁ、あいつそれをたったの二振りで倒しちゃうの!
見たんだよこの目で! 一振りで使い魔を全滅させて、二振りで魔女を倒す星奈百恵を!
魔法を使って完全に気配を消して、特等席で見たんだ!
綺麗だったなぁ、鮮やかだったなぁ、格好良かったなぁ、強かったなぁ……。
やっば! あんな大きい剣に真っ二つにされて、あたしは死んじゃうんだ! ゾックゾクしちゃう!
それから、なんか澄ました顔したやつ……ああ、そうだ常盤ななかって言ったっけ?
そいつの実家に魔女を放ってやったっけね? 人生を滅茶苦茶にされたとき、あの澄ました顔がどんな風に歪むのか、想像するだけで楽しかったよ!
はぁーあ。そんな予行練習しながらさ、あたしは力を付けたよ。
『暗示』の魔法だって、弱点があるとはいえもうあたしの手足のように使える。潜伏しているときなんて、あの星奈百恵にすら気付かれなかったんだよ。
さってと……それはさておきだよ。
なーんか最近はおかしいことが相次いでいるんだよねぇ。
変なフードを纏った連中が暗躍しているし?
星奈百恵もなーんかちょっと様子がおかしーんだよねぇ?
覇気がなくなったっていうかさぁ……。あとなーんか知らんけど、白髪になってっし?
だぁーかぁーらぁー、もうやっちゃおう!
時は来た。
今こそ……今、この最高のあたしが、この神浜をぐっちゃぐっちゃに引っ掻き回すその時なんだ……!
てぇーはぁーじぃーめぇーにぃー……神浜に引っ越してきたあの三人組! あいつらを滅茶苦茶にしてやろう。
そこから少しずつ大きくしていけば……星奈百恵が動く!
あたしのために、動いてくれるんだ!
「待っているよ……。星奈百恵ぇ……」
ああ、早くあたしのところに辿り着いてくれないかなぁ……楽しみだなぁ……。
書いていて思った。なんやこいつ!?
そして思った。めっちゃ楽しい!
絶妙なキャラですよね、更紗帆奈! いい感じにぶっ飛んでいるとこ、私は好きです。勝手にキャラが動くのですっごい書きやすかったです。
そして走者、致命的なネーミングガバ! ホモちゃんの交友関係に名前はないのに、更紗帆奈にゲーム開始以前から目を付けられているという異常事態が起こっていました! まずいですよ!
次回もシナリオから始まりますよー。