マギレコRTA ワルプルギス撃破ルート脳筋傭兵チャート   作:スパークリング

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Side.更紗帆奈 混沌の裏側

 ああ、もう本当に本当に毎日が楽しいなぁ!

 

 あれからあたしはすぐに行動に移した。

 まず三人組の年長者である静海このはに暗示の力を使って幻覚を見せた。正確には幻覚じゃなくて、思い込みを利用した単なる妄想なんだけどさ。

 まぁそんな細かいことはいいんだよ。肝心なのはその効果なんだからさぁ。

 

 なんで静海このはを狙ったのかって? そりゃあ一番撹乱させると面白いからだよ!

 

 もうさぁ、ここに越してきてから数日観察してきたけどさぁ、やけに閉鎖的っていうか他人を信じようとしないとかさぁ……まんまかつてのあたしと似たような思想だったからびっくり!

 だからわかるんだよ! こいつが一番壊しやすいってさ!

 

 こういうタイプってのはとにかく自分が信じる世界に他人が入ってくることを拒むんだ。だからこそやりやすい。

 ほんのちょっと、仲間が傷ついている姿を見せればすぐに動揺する。そして、そうなる原因を作る要素を徹底的に潰しにかかるんだよ、どんな手を使ってもね!

 

 まぁでも? すぐに壊れてもらっちゃ面白くないし? ちょっとずつ、ちょっとずつ、忘れたと思った頃に幻覚を見せていく。そうやって心を揺らしていくんだ。

 もしかしたらこの幻覚通りの展開になるかもしれないって恐怖を植え付け、必死で自分の居場所を守るために他人と距離を取らせる。面白い具合に上手く行っちゃうからさ、笑いをこらえるのに必死だったよ。

 

 それにしてもほんっと、バカだよねぇ。

 いつまでもそのままの状態を維持し続けることなんてできないのにさぁ。

 他人と距離を置けば置くほど自分の居場所が狭くなって、自分以外の誰も信じられなくなって、いつか自分が信じてきた人達まで離れていって……。

 結局、自分ひとりが孤立するだけなのに、さ……。

 

 さてと、程よく揺さぶったところでちょっとした事件でも起こしてみようか。

 この後のお祭りの前のウォーミングアップってやつをさぁ。

 

 やることは簡単。噂を流す、それだけ。

 

 そうだなぁ。

 あんまり派手なのにするのは面倒くさいし、『魔法少女が誰かに襲われて、寝たきりでいる』『最近神浜で見かけるようになった魔法少女が現場の近くにいた』……なーんてものでいっか。それだけで充分。

 

 『暗示』の力を使って数人の魔法少女にその情報を植え付ける。当然、あたしのことは忘れてもらってね。それだけでいい。

 それだけで瞬く間に神浜中に、この噂が流れる。

 

 この際噂の真偽とかはどうでもいいんだよ。

 『自分も襲われるかもしれない』、そう思わせるだけで勝手に警戒するし、犯人として最有力候補のあの三人に疑惑の目が向く。それから数日経ってから……有名な魔法少女のチームのうちのひとりを軽く襲えば準備完了。

 目撃者がいる前で事件が起これば、もはやこれはただの噂じゃなくなって、歴とした事件になる。

 実際に昏倒したまま眠り続けている被害者がいなくても、みんな勝手に噂を信じて、ありもしない昏倒事件にビビっちまうっていう寸法さ。

 

 だからあたしは神浜の西のリーダーの七海やちよと偶然一緒にいた、十咎ももこを襲った。

 これで七海やちよが動くのが確定するし、噂の信憑性もグンと上がる。

 それに……あたしがだぁいっ嫌いな星奈百恵は『七海やちよの切り札』なんて呼ばれている。

 間違いなく七海やちよから連絡をもらって、事件の捜査を始めるだろう。一石二鳥ってやつだね。

 

 案の定すぐに七海やちよと星奈百恵が動いた。事件が起きた次の日にいきなり接触するなんて、本当に対応が早いよね。でもそうでなくっちゃ面白くない。

 問題を出す側は解く側が必死であれば必死であるほど、嬉しいものなんだよ。わかるかなぁ〜?

 

 で、そしたらさぁ、本題に入る前に星奈百恵が三人にいくつに見えるかって訊いたんだよ。

 そんなの難題もなにも無理ゲーだろ! あんたのことを19歳だって一発で答えられるやつはこの世にいねーよ!

 

 それに対して三栗あやめと静海このはが答えたんだけどさぁ……もう腹抱えて笑っちゃったよ! 小学生だとか三十路手前だとか……ボロクソじゃねーか!

 

 というか小学生はまだしも三十路手前はねーわ!

 静海このは! やっぱおまえ最高! そして歳を訊いただけで笑いを勝ち取る星奈百恵はもっと最高! 神浜最強は笑いの才能すら最強ってか!

 笑いすぎてちょっと魔法が解けそうになって焦ったじゃんか! それで事件解決とか冗談じゃねーからやめろよなぁ!

 

 はぁーあ。

 いやぁ、久しぶりに思いっきり笑ったよ。

 

 良い気分だったんだけどさぁ……ちょっと、七海やちよのことをを舐めていたよね。

 まさか魔法少女の魔力を記憶できる能力を持っているなんて、思わないじゃん? そのおかげであの三人の容疑が完全に晴れちゃった。

 

 しかもそこに追い打ちをかけるかのように、星奈百恵が神浜の重役たちに連絡しちゃったもんだからさぁ大変。

 

 あーあー、せっかく準備したのになぁ……。

 これは完全にあたしが悪いね。七海やちよの能力、そして星奈百恵のネットワークの広さを見誤った。さすがはベテラン魔法少女、難易度が高いね~。ま、それはそれで面白いからいっか。

 

 さてこれからどうすっかなぁ。

 こりゃあ、多少強引になっちゃうけど次のステージに……と思ったのも束の間!

 

「昨日の七海やちよと星奈百恵の件で、決定的に思ったことがあって……。それをふたりに相談したいの。……神浜から出ましょう」

 

 馬鹿だ! 筋金入りの石頭がここにいた!

 静海このはぁぁあああ!! おまえ本当に最っ高! もう本当に大好き! お礼に幻覚を見せてあげるよ!

 

 そっからあたしは、静海このはに幻覚を断続的に見せ続けた。そうしたらもう見る見るうちに情緒不安定になってさぁ、面白かったよね。

 でも星奈百恵のネットワークは広い。

 さらに三人が潔白なんだって事実を広げるために、また新たなサクラに連絡を取っていた。

 

 だからさぁ、さらに面白くするためにあたしが襲った十咎ももこのチームメイトのひとり……水波レナにも暗示をかけてやったんだ。

 こいつもなかなか面倒くさい性格をしているよね~。だからこそ見ていて面白いからさ、あたしは好きだよ!

 

 そしたら水波レナが静海このはに喧嘩を売っちゃってさぁ!

 七海やちよが乱入して……そしてここだってところでさぁ、三栗あやめを襲ってやったんだよ!

 そうしたらもう静海このはがガチギレしちゃった! 冷静なやつが感情的になる瞬間ってさぁ……ゾックゾクするよねぇ!

 

 それでこの神浜の全ての魔法少女を叩き潰すとか言っちゃってんの! 無理に決まってんじゃん!

 おまえなんかがあの星奈百恵に勝てるわけがない。あいつの強さは次元が違うんだ。あいつを敵に回したら一巻の終わりなんだよ!

 

 遊佐葉月が静海このはに楯突いちゃって、さぁさぁ面白くなってきたぞってところで……星奈百恵が来たんだよ。あっは! 最高! 最高のタイミングで来ちゃったよ神浜最強がさぁ! なーんか知らないけど常盤ななかも連れて!

 いいねぇいいねぇ! あたしが陥れてきたやつらが集まってきているよ! どうなるのどうなるの!?……って期待したんだけどさぁ……。

 

 はぁーあ……一気に萎えちゃったよ。

 まさかそんな、三栗あやめに友達ができたなんて理由で静海このはが正気に戻るなんてさぁ……。なんだよ本当、つまんねー。……でもさぁ。

 

 あたしが萎えちゃったのはさぁ、もっと違う理由なんだよね。

 一瞬だけど、思っちゃったんだよ。

 

 ああ、よかった。ってさぁ……。

 はぁー……本当に、ばっかみたい。

 

 結局その後は大人しく隠れていたよ。

 ちょっかいかける気になれなかったし、残って話をするらしい星奈百恵、七海やちよ、静海このは、遊佐葉月、常盤ななかの五人に興味を持ったから。

 

 話し合いはこの事件の真犯人がいったい何者なのか、という話から始まった。

 いろんな話が出ていたけど、最終的に犯人は魔女ではなく魔法少女だって結論がつけられたね。うん、正解。

 でもそんなんちょっと考えればわかるっしょ? こんな大層な面子が集まって出すような答えじゃないよねぇ……。

 

「私の方も色々調べてみたのじゃがの。妙なことが分かったのじゃ」

 

 とここで星奈百恵が口を開いた。

 そーいえばこいつ、最初に動いたっきり妙に大人しかったよねぇ。平たく言っちまえば、知り合いに連絡を入れていただけだし。

 なにを調べてたんだこいつ。

 

「この昏倒事件なのじゃがな……どれだけ探しても被害者の魔法少女がおらんのじゃよ。じゃからのう……襲われた魔法少女は昏倒して眠ったままという情報自体がデマである、ということが分かったのじゃよ」

 

 ……こいつ!

 そうか。こいつはあたしがデマで流した昏倒事件の被害者について調べていやがったのか!

 そして、その被害者が実際にはいなくて……昏倒事件なんてハナからなかったということを突き止めたんだ。

 

「……あはっ」

 

 いい……いいよ、星奈百恵!

 ああ、それでこそ、それでこそあたしが見込んだ女だ……!

 

 そう! そうなんだよ!

 それさえ調べれば解決できるように……あたしの狙いが最初から静海このはたちだってことがわかるように、わざと抜け道を作っておいてやったんだよ!

 なのにどいつもこいつも、『静海このはたち三人が犯人だ』っていう噂の出所ばかりを調べやがって……ちょっとムカついていたんだよね。

 噂はひとつじゃない。ふたつあっただろって声に出して言ってやりたかったくらいだ。

 

 でもこいつは……星奈百恵はそれに気付いて、ひっそりと調べていやがったんだ。

 ……やっば! 鳥肌が立っちゃう! さすがにまだあたしのところまでは辿り着かないだろうけどさぁ……ちょっとでも気を緩めたら後ろから首根っこ掴まれちゃいそうじゃん……!

 

 ああ、これだよこれ!

 追われている身特有のこのスリルが堪んない……!

 しかも追ってきているのが神浜最強って考えると……ゾックゾクしちゃう!

 やっぱりすごいなぁ、星奈百恵! かっこいいなぁ……。

 

 実に……実に気分が良いまま、あたしは帰ることにした。もうここにいる必要はない。

 あたしが仕掛けた問題の真相に、一番近づいていたのが星奈百恵だった。それだけ分かっただけで充分だった。

 

 それからちょっと時間を空けて……あたしは再び事件を起こした。

 言ったかもしれないけど、前回はあくまでウォーミングアップ。

 

 ……今回は本気で行くよ。

 

 手始めにあたしは、木崎衣美里、胡桃まなか、春名このみの三人の魔法少女を襲った。

 今回は本当に眠らせた。本当に昏倒事件を起こしたんだ。

 

 なんでこの三人を選んだかって言うと、前回の事件の時にこの三人は星奈百恵の口となって、噂の火消しをしていたから。

 今回も静海このはたちを犯人に仕立て上げるつもりだったから、星奈百恵の厄介な協力者たちを先に消した。これで星奈百恵の手札を削いだ。

 

 星奈百恵の一番弟子の御園かりんも狙ったんだけど……あいつ、見た目以上にしっかりしているやつだった。

 隙が全く無くて、移動中も鎌に乗って飛んでいやがるから襲いづらいんだよ。面倒くさかったから、やめておいた。

 

 それからはずっとあたしは静海このはたちに張り付いた。

 拠点を変えて潜伏しても、肝心なあたしが一緒に移動しているんだから意味なんてまーったくない。まぁ、静海このはたちを追いかけている魔法少女たちから逃れるにはいいかもしれないだろうけどね。

 

 そしてあたしは、『暗示』の魔法を使って三人の意識に介入して……三栗あやめに、友達に会うのに静海このはと遊佐葉月から了承を得たと思わせ、静海このはと遊佐葉月に、三栗あやめが勝手に出ていったと思わせた。

 これでまたこの三人の仲をぐっちゃぐっちゃにしてやる。

 

 そぉーれぇーでぇー!

 ついでに三栗あやめと夏目かこの仲もぶっ壊してやろう!

 

 夏目かこは常盤ななかと通じているし、ここで仲違いをさせれば静海このはと常盤ななかがぶつかる。

 そうしたらさぁ……星奈百恵はどっちに付くんだろうねぇ……。楽しみだなぁ……。

 

「……ただいま……」

「あやめっ! ちょっと! どこ行ってたの!?」

「……え?」

 

 ああ、始まった始まった! まずはこの三人だよね!

 遊佐葉月が三栗あやめを問いただしているよ。「勝手にどこに行ってたの」ってさぁ。

 酷いなぁ、三栗あやめはちゃんと言ったのにぃ。

 

 それに対して三栗あやめはさぁ、「出かけるって言ったもん」「OKしてくれたじゃん」の一点張り!

 いや確かに出かけるって言ってたけどさぁ、遊佐葉月も静海このはも許可してないのに勝手に出かけちゃダメだよぉ?

 

 まぁ、ぜぇーんぶ、あたしが『暗示』の力を使って錯覚させてたんだけどさぁ!

 疲れたんだよぉ? あんな連続して能力使うのはさぁ。しかもタイミングもばっちり合わないとバレちゃうからさぁ、簡単なように見えてすっごく繊細で難しいんだわさ。

 

 おーよよ、三栗あやめが泣いちゃったぁ。

 こりゃあ、さすがに三栗あやめが本当のことを言っているって気が付くかなぁ? こんなしょーもない嘘を吐くようなタイプじゃないもんね〜。

 

「……あやめが嘘を吐いているようには思えないわね……」

 

 お、静海このはナイスパス! じゃあここだね!

 

「……そうかな?」

「は、葉月! 信じてくれないの……!?」

 

 はい、ここで解除ぉ!

 

「え? 何が?」

「葉月、あちしが嘘ついているって……!」

「はい? アタシが?」

「言ったよ!」

「ええ~!? い、言ってないよ!」

 

 あっは! 揉めてる揉めてる!

 そうだよねぇ、あんたら全員嘘なんか吐いていないもんねぇ。だからおかしなことになってるんだもんねぇ。

 

 そっから遊佐葉月がどんどん深みに嵌ってくれたよ。

 今自分たちが誰かにコントロールされていることに気が付いてさぁ! もしかしたら会話だけじゃなくて行動まで操られているんじゃないかってさぁ! それで自分が三人を襲っちゃったんじゃないかってさぁ!

 

 いやいや無理無理、無理だから! 『暗示』の魔法、そこまで万能じゃないから! やろうと思えばできなくはないけど、そうなる前にあたしの魔力が尽きて終わりだから! これ自分に使うならともかく他人に使うと結構魔力食うんだよ?

 でぇーもぉー、そんなことこいつらの知る由もないからねぇ。

 

「ヤバいよ……足元が崩れていくよう感じだ……。自分はやってないのに……! やってないんだ!……でも……ほ、本当はアタシが……?」

 

 あっははははは! 壊れ始めちゃっているよ!

 

 にしてもさぁ、遊佐葉月がこんなになるなんてねぇ。

 頼りになる参謀って感じだったのにさぁ、ちょっと揺さぶっただけでここまで崩れるものなのかぁ。

 ウォーミングアップの時に一皮剥けやがってさぁ、いち早く広くなった視野を使って事件を追いかけていたあの遊佐葉月が取り乱していやがるよぉ!

 やっぱりいいなぁ。普段は理性的でしたたかなやつがさぁ、感情的になって制御不能になる姿を見るのはさぁ。

 

「葉月! 大人しくしなさい……」

 

 ……お? そういえばやけに静かだったな静海このは。

 こいつほとんど喋ってなかったし、今だって取り乱した様子もない。前までなら真っ先に疑心暗鬼に陥っていたはずなんだけど?

 

 そっから静海このはは……なんか遊佐葉月の頭を撫でまわした。わしゃわしゃわしゃーってさ。

 

「……はい、もう大丈夫」

 

 ……えーっと? なにが?

 ちょっとよくわからなかったけど……この静海このはの行動は混乱していた他ふたりを落ち着かせるには充分だったらしい。

 なんでもこいつらが児童養護施設にいた時に、泣いてたり落ち込んだりしたら、こいつらが慕っていた院長先生とやらにこうやって頭を撫でられていたらしい。そうすると不思議と落ち着いて、元気が出てくるんだってさ。

 

 ……はぁーあ? なにそれ。意味が分かんないね。

 なんで頭撫でられただけで安心できるのさ。

 そんなことされたって、なーんにも解決できていないってのにさぁ……。

 

「失礼するわ」

「どうも。聞いてはおりましたが、なかなかこれは枯れた趣がある場所ですわね」

「……来たわねふたりとも」

 

 おっとぉ? このタイミングで七海やちよと常盤ななかが来た?

 って、おっかしいなぁ。七海やちよはともかく常盤ななかまで? さっきの三栗あやめの一件でちょっと距離を取ると予想していたんだけどなぁ?

 

 静海このははこいつらが来ることがわかっていたみたいだし……まさか、静海このはが呼んだのか?

 もしそうなら、それは……三栗あやめが出かけた時に連絡を取り合ったってことだ。対応が早すぎる……っていうことは!

 

 あっは、やるじゃん! あたしの尻尾を掴むためにわざと泳がせたっていうことか!

 だから静海このはは取り乱していなかったんだ。最初っから仲間のふたりを囮にしてあたしの仕掛けを見破るために!

 

 そしてそれは常盤ななかも同じ!

 多分どこかに隠れていたんだろうね、三栗あやめと夏目かこのやり取りを見ていて、あたしの魔法を見切ったんだ!

 それで七海やちよに連絡して一緒に来たってわけだ!

 

 いいねえいいねえ。あたしとしたことが一杯食わされたよ。

 まさか全部あたしを誘き寄せるための罠だったなんてねぇ。やってくれるじゃん!……でもさぁ。

 

 なぁーんで、あいつが来ていないかなぁ?

 

「マジカルかりん、ここに参上! なの!」

「……待たせたのう」

 

 って言ってるそばから来た!

 そうだよおまえをずっと待っていたんだよ星奈百恵ぇ!

 

 楽しみだったから敢えて無視していたけどさぁ、弟子と一緒に事件を調べてたってか。

 

 多分静海このはと常盤ななかは状況証拠を揃える係で、星奈百恵がより確実な情報を集める係で、七海やちよはどっかり腰を据えて静観する係だったんだろうね。それで全ての情報が出揃ったから、こうして一堂に会したってことだ。

 有能共が役割分担をするとこんなにもあっさり解決できちまうんだなぁ。あたしが昏倒事件を起こしてからまだ三日しか経っていないってーのに。もうちょい捻った方が面白かったかなぁ。

 ……まぁいっか!

 

 あたしを探すためだけにこいつらはガチになって問題を解いてくれたんだ。

 しかも一番調べてくれたのは誰でもない……星奈百恵だ。

 きっとあいつはわかっている。この事件の犯人が、その能力が、その名前が……!

 

 星奈百恵が無言で弟子の御園かりんに手をやって促した。多分調査結果を報告しろっていう意味なんだろう。

 欲を言えばあんたの口から聞きたかったんだけど……まぁ、それはいいや。

 

「この事件の犯人は『暗示をかける魔法』を操る魔法少女なの。それを使うのは――サラサハンナ」

 

 ……あはっ!

 ちょっとだけ魔法を解く。するとほぼ同時に、七海やちよ、常盤ななか、そして星奈百恵が変身した。

 僅差だったけど見逃さなかったよ。一番変身するのが早かったのは星奈百恵だった! やっぱりいいよあんた!

 

 そして静海このはが振り向いて……後ろにいたあたしに攻撃を仕掛けてきた。

 いいよ、それくらい。受けてあげるよぉ……。

 

「よしっ……!」

「みんな、広がって包囲を!」

「了解なの!」

「い、いるの? いるの?」

「姿を現しなさい!」

「…………」

 

 そして見えていないはずのあたしを取り囲むように、この場にいる十人の魔法少女が動いた。

 どいつもこいつもそれなりの腕を持つ実力者たち。いいねぇ……ゾックゾクしちゃう!……あ~……。

 

「……あっは……! あっはあっはあっはははあっはあは! あっはははははあっはあっはあっは! あっはははあっはあはああっははは! あひはははははあっはあっははあは! あはははははあっはあっはあっはは!」

 

 思いっきり笑った! 笑ってやった!

 嬉しい嬉しい! ようやく見つけてくれた! 見つけてくれたんだあたしを!

 この冷たい世界で、だぁーれも気に留めてくれなくて、ぞんざいに扱われたあたしを!

 今、神浜で輝いている魔法少女たちが見つけてくれたんだぁ!

 しかもその中には……最強がいる!

 

 星奈百恵が……来てくれたんだ、積極的に探してくれたんだ! このあたしを!

 

 やっとだね……。

 やぁーっとあたしのこと、見つけることができたね……!

 あっは……いくよ……。

 

 あたしは自分にかけていた『暗示』を解いた。

 これで……あたしの姿をこの場にいる全員が認識できる!

 

「どーもどーも! はじめまして……でもないか……。え~、あたしがお目当ての……更紗帆奈だよ~っと! あっはー!」

 

 ずっと誰にも認識されない裏の世界にいたあたしは、ついに表舞台に降り立った。

 それで意気揚々と出てきたのは良いんだけどさぁ……。

 

 そっからはさぁ……もう質問の嵐。

 やれどうしてこんな事件を起こしたんだとか、自分たちに降りかかった災いの元凶なのかだとか、瀬奈はどこに行ったのかだとか……もう、ほんっとうにうるさくてしょうがない!

 

 矢継ぎ早にバンバン人に訊いてきやがって! 少しは自分で考えろってんだ! どいつもこいつもすぐに答えを知ろうとしやがって!

 

 ……まぁ、でも? 気分が良いし? それに唯一、星奈百恵だけはあたしに質問を投げかけてこなかったしね。

 いいよ。星奈百恵に免じてひとつだけ答えてあげちゃうよ。

 

「まあまず、ひとつだけ言っておくけど……ほぼ、あたしが犯人で~す!」

 

 はい! これで質問タイムしゅ~りょ~!

 あとはさぁ、あたしと遊んでくれたら答えてあげるよ!

 

「あたしと『鬼ごっこ』しよー! 百まで数えたら追いかけてね……」

 

 はい、これでもうこいつら全員本当に百まで数えないと動けない!

 馬鹿だよねぇ。あたしのこの口が動く限りさぁ、『暗示』の魔法を警戒しないとダメだって。せっかく調べて、能力まで知ったのにさぁ。

 んま、あたしも十人相手に同時に使ったからちょっと魔力の消耗が激しいんだけどさ。グリーフシードもないし、使える回数も限られちゃうんだけどそんなことはどうでもいいんだよ。

 

 どうせあたしは今日で……盛大に弾け飛ぶんだからさ!

 

「うぐっ!」

「これは……」

「体が……動かない……!?」

 

 それじゃあねぇ~。バイバーイ!

 誰が最初に追いつくかな~……てぇ!?

 

「はっ? あんた動けるの!?」

 

 さっきまであたしがいた場所に、星奈百恵が移動してきていた。

 『暗示』の魔法が効いていないのか、普通に動いている星奈百恵があたしに掴みかかったんだ。あっぶないなぁ、もう少しで捕まるところだったじゃん。

 

 ていうか、なんで? なんであんた動けるの?

 もしかしてあたしの『暗示』の力が効いていない? いや、そんなはずはない!

 何回も使い込んだ魔法だ、もう元の持ち主の瀬奈よりもこの魔法を知り尽くしていると言っても過言じゃない!

 じゃあなんで……。

 …………!

 

「って……それは!」

 

 星奈百恵の耳元をよく見てみると……そこには小さな機械が付いていた。

 あれは……イヤホン! 無線式の携帯イヤホンが装着されていた。

 なぁるほどねぇ……! やってくれんじゃん星奈百恵!

 

「あっは! さすが神浜最強の魔法少女! 対策もばっちりってことか!」

 

 あたしの『暗示』の魔法はあたしが直接言葉を口にして、それを聞き取ってくれないと効果を発揮しない。つまり聞こえなければなんの効果も表れない!

 

 こいつ……多分あたしの魔法の対策として、大音量で音楽をずっと聴き続けていやがったのか! そして、変に喋ればあたしにバレると踏んでずっとだんまりだったってことだ! 御園かりんに報告させたのも喋るのを嫌ったから!

 なるほど! 仲間との会話なら念話で済ませればいいからデメリットが軽減されているのか!

 

「あんた本当滅茶苦茶! 神浜最強はなんでもありってねぇえ……! あっは!」

 

 ああ、やっぱりこいつだ!

 あたしのためにこんな対策まで用意してくれるこいつこそ、あたしの最期を飾るに相応しい……!

 

 でもさぁ……あたしの声が聞こえないってのはいただけないなぁ!

 もっとお話ししたいのにさぁ! あたしだけくっちゃべってるのは寂しいじゃんか!

 

 それにもっと、もっとあたしは遊びたいんだ! 楽しみたいんだあんたとの時間をさぁ! だからあっさり捕まってやるかってーの!

 

 あたしはここに隠していた魔女を一斉に解き放った。わざわざ呼び寄せて、丁寧に隠しておいてよかったよ。

 星奈百恵にとっちゃあ雑魚も同然だろうけどさぁ、あたしの暗示にかかっているやつらにとっては充分脅威だろうさ! そして正義の味方であるこいつはそいつらを放っておくわけがない!

 

 すぐに武器であるでっかい剣を取り出して、魔女を殲滅させていく。やっぱ強いなぁ。

 でもさぁ、あたしのとっておきの一体を除いた全部のペットにしている魔女を解き放ったんだ。使い魔だってわんさかいるし、動けないやつらを庇いながら戦えばさすがに時間がかかるっしょ。

 

「あっはー! じゃねー!」

 

 というわけでちょっとびっくりしちゃったけど、計画通りあたしはこの場から逃走した。そしてちょっと離れた廃ビルの中に身を潜める。魔法を使って気配を消してね。

 きっとみんな、手分けしてあたしを探してくる。だからきっと、ここにも来る。

 

 誰が来るのかなぁ、楽しみだなぁ。星奈百恵だったらいいなぁ……。

 

「どう?」

「いないね……」

「こっちも……」

「ここじゃないか……」

「そうかなぁ……?」

「ぶわぁぁぁっ!」

 

 残念、静海このはたちだったね~。

 ちゃんとここにいるってのに見当違いなこと言ってから出てきてあげたらドッキリ大成功! そういうリアクション好きだよ、三栗あやめ!

 

 こいつら三人のコンビネーションはまぁ強い強い。良い連携だよ、本当。仲が良いんだなぁって思うよ、うん。

 

 ……でもさぁ、あたしだって負けてないんだよ!

 これでもたったひとりで今日まで生き延びてきたんだ。昔の弱っちかったあたしはもうどこにもいねーんだよ!

 

 『暗示』の力を絡めて攻撃を受け流して、隙ができたところをはいどーん!

 こっちだってねぇ、星奈百恵以外には勝算があるからここにいるんだよ!

 

「じゃあ次は二百まで数えてね~。バイバーイ!」

 

 さて、今度はどこに隠れようかなぁ……って思ったのも束の間!

 

「ようやく見つけましたよ。逃がしません」

 

 今度は常盤ななかのチームが来た!

 このチームも面倒くさいんだよなぁ。結成して一年くらいなのにコンビネーション抜群だし、単純に人数も多いから捌ききることも難しいんだよねぇ。

 んまぁ、魔法少女としての質なら静海このはのチームより劣るんだけどさぁ、数の暴力ってあんまり美しくないと思うわけよ。

 

 だぁーかぁーらぁー! こいつらにはあたしのとっておきをプレゼントしてあげる!

 

 あたしはこいつらの攻撃を受け流しつつ目的地に向かって移動した。

 途中で静海このはたちのチームが合流してきたけど、そっちはまた止めておいた。

 全く無粋だよね。今は常盤ななかのチームと遊んでいるんだからさ、邪魔しないでよ。

 

 で、目的地って言うのは……あたしが隠していた最後の魔女がいる場所。あたしが育て上げた最高傑作。こいつをこの四人にプレゼントしてあげる!

 嬉しいでしょ?

 だってこいつこそ……おまえらのチームがずっと探し求めていた、『飛蝗』なんだからさぁ!

 感動の再会だねぇ! ゆっくりしていっていいよ!

 

 はぁーあ。さってと、ちょっと疲れたし、あたしもちょい休憩しよう。

 あたしは神浜大東団地の屋上の給水塔の裏に隠れた。

 

 楽しかったけどくたくただよ。あいつら、普通に強いから梃子摺っちゃった。

 ソウルジェムも……ちょっと濁しすぎちゃったかなぁ。

 

 そういえばここだったなぁ……和泉十七夜と会ったのは。

 そして……瀬奈が魔女になったのはさ。

 

 瀬奈はここから見える夕方の景色が好きだって言ってたけど……。

 

 あたしは辺りを見渡す。

 今はすっかり日が暮れちゃってあたりは真っ暗。もう夜だ。ここから見える景色は……いい。神浜全てを見渡せる綺麗な夜景があたしを癒してくれる。

 やっぱりあたしは夜の方が好きだね。

 電気が点いて明るくなった家が星みたいでさぁ……。

 

 

 

「みぃーつけた。待っておったぞ、お主よ」

 

 

 

 そんなことを考えていたあたしの耳に、今一番会いたいと思っていたやつの声が届いた。

 

 

 

 

 




あと一回だけ、続くんじゃ……。

更紗帆奈……おまえ、どんだけ筆者に文章を書かせれば気が済むんや……?
これで終わりにするつもりだったのに……(ガバ)。
そして次回、ようやく百恵ちゃんと帆奈ちゃんが激突します。まだ碌に喋ってすらいねぇ……。
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