マギレコRTA ワルプルギス撃破ルート脳筋傭兵チャート   作:スパークリング

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実は戦闘シーンを書くのが苦手だったり。
たぶんちょいちょい加筆していきます。


Side.更紗帆奈 のばしたてのひら

 さてと、ようやくここまで来ることができたねぇ。

 

 ずっとずっと待っていたけどさぁ。帰ってくるのを待ち続けようと頑張ってみたんだけどさぁ。やっぱダメだね。そういうのはあたしには合わなかったよ。

 

 あたしが出した問題を解いてもらうことならさ、いくらでも待つことができたよ。だっていつか、あたしの元に来てくれると思うことができたからね。

 

 でもこりゃ無理だ。

 だっていつまで経っても帰ってくる気がしないんだもん。

 

 最初こそ平気だったけどさ、二ヶ月も経つと不安になってきちまったんだよね。無事なのかな、元気でやってんのかなって不安になった。あいつの命が残り僅かなのは察しがついていたし、あたしだってあいつの意思を汲んで必要以上に心配しないようにしていたよ。

 でもさぁ、ここまで音沙汰なしだと心配になっちまうに決まってんじゃん? ずっとずっと神浜の表舞台で華々しい実績を積み上げてきたあいつがだよ? いきなり引っ込んじまって行方知れずになってさ、それが二ヶ月も続いたとなったら流石に心配になっちまうだろ?

 

 しかも、しかもさ。あいつの名前を知らないって言う魔法少女に遭遇したことがあるんだよ。

 ありえねーだろ、なんで神浜で活動していてあいつの名前を知らねーんだよ、モグリかなんかかって言ってやりたくなったよ。ブチギレそうにもなったよ。

 

 でもさ、それ以上に怖くなっちまったんだよ。いつかみんな、あいつのことを忘れちまうんじゃないのかって。

 

 休業ってなっているみたいだけど、あいつの仕事はないに等しくなったって聞いたことがある。顧客のほとんどが弟子の御園かりんに流れたらしくって、あいつには全くと言っていいほど回ってこない。夏休みの間はあたしの監視のために仕事を休んでいたのも相まって、あいつは引退したなんていう噂が流れるくらいだ。

 ずっと前まで、あいつは神浜の顔みたいな存在だった。みんながみんな、あいつのことを知っているし頼りにもしていた。

 でも今はどうだ。

 みんなあいつに頼らなくなった。あいつのことを知らないやつもいるようになった。

 だから怖くなったんだ。

 すぐに帰ってきてほしいと思った。そうじゃないと取り返しのつかなくなりそうな予感がしたから。

 

 そして……そんな不安な想いを抱き始めて一週間が経ったとき、七海やちよが来た。

 

 あいつが帰ってきてくれたと思って舞い上がったからさ、違うと知った時はガチギレしそうになったけどどうも様子がおかしかったし、なんで今になってここに来たのかが気になって中に入れた。追い返さなくて本当に良かったと思う。だって、あいつが無事に生きていることが分かったんだからさ。

 

 おかげであたしの中の不安が一気に消えた。

 死にかけているらしいけどそれは分かっていたから生きていてくれただけであたしは嬉しかったんだ。まだ帰ってきてくれる可能性があるとわかったからね。

 

 それで待ち続けていたんだけどさぁ……なんか様子がおかしいやつらに襲われて、やちよたちに協力して調整屋に行ったらさ、あいつが捕らえられていて、なんか変な怪物に取り憑かれているって聞いた時には頭が真っ白になっちまったよね。

 

 ふざけんじゃねえって思ったよ。

 

 あいつが寿命を全うして死んじまうならいい。それはあいつが望んでいたことだからさ。でもさ? あいつを危険な目に遭わせた挙句、封じ込めるついでに利用するだって? 冗談じゃない。

 

 だからあたしは決めたんだ。絶対にあいつを助けて連れ帰るってさ。

 

 もうあいつは疲れちまってんだ。

 ずっとずっと神浜の魔法少女たちを助けるために奔走して、体に限界が来ても戦い続けて、残された時間すらも魔法少女のために割いて、普段のあいつなら絶対に負けることのないような連中にやられちまうくらいボロボロになって、それで……。

 

「お主らが私と遊んでくれるのかの?」

 

 こんな姿にされても戦おうとして……!

 もう、いいじゃんか。あんたは充分戦い続けてきたじゃんか。

 あたしを含めたここにいる九人を、ここにいないたくさんの神浜の魔法少女をさ、ずっとずっと助け続けてきたじゃんかよ。

 だから……いい加減さ。もう、休めよ。なぁ? 休んでくれよ、セーナ……!

 後はあたしらがなんとかするからさ。あんたがやろうとしたこともやってみっからさ。だからもうひとりで走るなよ。抱え込むなよ……!

 

(みんな、行くわよ!)

 

 やちよから念話が来た。これが開戦の合図。

 今、助けるからね……セーナ!

 

(ななかとこのはさんで牽制、私が合わせるわ!

 みたまとみふゆはふたりを、まなかさんは私のフォローを!

 葉月さんは百恵の体を調べて弱点を探って!

 かりんは葉月さんをフォローして!

 帆奈は待機していてちょうだい!)

 

 実に的確な指示が来たね。

 

 この戦いでセーナに勝つ必要はない。セーナからウワサを引き剥がしちまえばあたしたちの勝利。そして、セーナからウワサを引き剥がすにはセーナと心と心を通じ合わせることが絶対条件。その条件を満たすための鍵があたしだ。

 相野みとから受け取った『心を繋ぐ』魔法。こいつを発動することさえできれば、セーナからウワサを剥がしやすくなる!

 だけどこの魔法には発動条件がある。あたしがセーナの手を繋がないと使うことができないんだ。これが一番のネック。

 

 本当ならあたしも突っ込んでいって無理矢理にも手を繋ぎに行った方がいい。だけどそれをするには相手が悪すぎる。

 最強の魔法少女であるセーナはオールラウンダーだけど、最も得意とするのは接近戦。あのバカでかい剣に斬られたり突かれたりしたら一巻の終わりだし、あのセーナが簡単にあたしを間合いに入らせてくれるはずがない。

 下手に突っ込んであたしが戦闘不能になったらこの戦いは負けたも同然だ。だからあたしはみんながセーナの隙を作ってくれるのを待って、そのチャンスをものにしないといけない。

 

「久しぶりの実戦だけどぉ……今のわたしは冴え渡っているのよ。わたしは大丈夫だから、みふゆさんも好きに動いていいわ」

「わかりました。行きますよ!」

 

 陽動班の八雲みたまと梓みふゆが不規則な動きでセーナに向かう。

 

「百恵さん、参ります!」

「今助けますよ、百恵先生!」

 

 そしてそれに続くように常盤ななかと静海このはが駆けだした。

 梓みふゆが幻惑の魔法を駆使して分身体を作り出し、その間を縫うように八雲みたまがその手に持つ布を広げてセーナの視界を奪う。常盤ななかたちが充分に近づけたことを確認すると魔法はそのままに邪魔にならない場所まで退避する。

 

「良いコンビネーションじゃ。じゃが甘いな」

 

 だけど静海このはの薙刀はセーナの持つ大剣に、背後を取った常盤ななかの日本刀はセーナの左腕によって阻まれた。

 

「みふゆよ、私はお主と何回模擬戦をしていると思っておる。前にも話したであろう? お主と分身体とは微妙に魔力の大きさが違うのじゃ。慣れてしまえばどれが本物かなぞ目を瞑っていても分かるぞ。

 そしてみたま。お主にその技術を仕込んだのが誰か忘れたか。種が割れとる手品など披露するな。大火傷をするぞ。

 お主たちもじゃ。なんじゃこの温い斬撃は。特にななか、お主はなぜ首でなく背中を狙った? 敵を倒すなら急所を狙う。そんなのは基本的なことじゃろうて?」

 

 ……滅茶苦茶なこった。普通ならさぁ、今の四人のコンビネーションが決まったらお終いなんだよ。

 でもさぁ、そっちばっか注目しちゃあダメだよセーナ。

 

「ななか、このは! 離れて!」

 

 大魔法の発動の準備ができたやちよの言葉を受け、ななかもこのはもセーナから離れる。

 

「お手伝いしますよっと!」

 

 御園かりんと一緒に大鎌に乗ってセーナの弱点を探っていた遊佐葉月が何本もの雷をセーナ目掛けて落とす。この天候だし、こうして雷を生み出すのはいつも以上に簡単なのかもしれないね。

 

「ふん、そんな大技を受けるはずが……むっ?」

 

 さらにセーナの周りに霧が立ち込める。

 あれは静海このはの魔法。霧を発生させて幻覚を見せる効力がある。これでセーナはどこに雷が落ちてくるかわからないだろうし、大魔法を発動しようとしているやちよの場所さえわからなくなった。完全にセーナの視界が潰れた。

 

「いっきますよ!」

「アブソリュート・レイン!」

 

 やちよの魔力によって形成された十本の槍が、まなかの伝播の魔法を受けて一気に50本近くまで複製され……それらはそれぞれ全く違う軌道を描きながらセーナに向かう。

 遊佐葉月の雷が地面に落ちてスパークして間もないしないうちに、50本の槍が全方向からセーナが立っていた場所に突き刺さっていき砂埃を上げる。

 

 さぁ、これでどうかな?

 

 ここまで撹乱されて幻覚も見せられている状態で、雷と槍の雨を受けたんだ。一撃くらい入ってくれていてもいいんじゃない?

 攻撃力に関しては他の魔法少女の追随を許さないセーナだけど、半面防御力に関してはびっくりするほど低い。弱体化の兆しが見え始めていた時ですら、由比鶴乃の攻撃が一発あたった程度でノックダウンしてしまうほどに打たれ弱い、どこまでもアンバランスな魔法少女なんだ。だから今の攻撃がどれかひとつでも喰らっていてくれれば充分なんだけど……。

 

 砂埃が立ち上っていく。地面が抉れ、いくつもの小さなクレーターが作られているけど……肝心のセーナがどこにもいない!

 

「どこに……。……っ!」

 

 嵐による強風とは違う熱風を感じた方向……砂埃によって灰色に染まる空を見上げてみると、そこに小さい影があった。

 晴れていくと……そこにいたのは異形の姿に変化したセーナだった。

 

 炎に包まれて翼のように羽搏(はばた)かせている三倍以上に伸びた両腕、牙のように伸びている犬歯、簪によって尻尾ヘアーに纏められていた少しウェーブがかかった長い真っ赤な髪の毛は解けて風に揺れ、身長並みに長い赤い尻尾の先には武器である大剣がテラテラとした光沢を放っている。

 まるで人型のドラゴンのような姿になった、セーナがあたしたちを見下ろしていた。

 

「なにを呆けておる。私はウワサと合体しているのじゃぞ。飛ぶことなぞ、造作もない」

 

 そうかもしれないけどさぁ……こんなのあんまりすぎんだろうが……!

 バケモンみたいな強さをしているとは思っていたけどさ……何も本物のバケモンになるこたあねえだろうがよ……!

 

「見事なものじゃな。じゃがのう、やはり甘いな。

 ひとつアドバイスしておこうか。私に勝ちたいのなら殺すつもりでかかってくることじゃ。殺意のない優しい攻撃で沈められるほど私は弱くはないぞ。

 どれ……少し危機感を抱かせてやろうか」

 

 セーナの右腕……というより右翼が上がっていく。って、これはマズい!

 

「かりん! 今すぐ着陸しなさい! そして全員、息を吸って屈みなさい!」

 

 言われるまでもない!

 口の中に空気を目一杯含んだあたしは頭を抱えてうつ伏せに倒れる。

 

 瞬間、鈍い風を切る音が耳に届く前に激しい熱風が通り抜け、あたしの背中を焼いた。熱い……けどこれならまだ耐えられる。

 もしも起きた状態で無防備にこの熱風を喰らっていたら全身火傷以前に酸欠で戦闘不能になる。空を飛んでいた御園かりんたちはもっと悲惨な目に遭っていただろうね。

 

 あたしたちを無力化させる一撃を、腕を振るうだけで現実にすることができるあたり、セーナを支配している『神浜最強のウワサ』とやらはセーナとの親和性が強いらしいねぇ……。

 

「も、もう少しでも着陸が遅れていたら死んでいたかもしれないの……」

「あっぶなかった……」

「……葉月、どう? スキャン、できたかしら?」

「……そうだ、大変! 大変なんだよ!」

 

 セーナの弱点を探っていた遊佐葉月が慌てた様子で立ち上がった。

 

「百恵さん、完全にウワサと一体化しているんだけどさ、あの姿になってから見る見るうちに力が弱まっているんだよ! さっきまでは安定していたのに!」

 

 は? あの姿に変化してから力が弱まっている? って、いや、ちょっと待て。『神浜最強のウワサ』って確か……。

 

 嫌な感じがしたあたしはセーナの方を見る。

 セーナはいまだに上空を飛んでいるけど……翼の炎が小さくなっていやがる! 三倍以上の長さだったのに今はもう倍ほどしかない! しかもちょっとずつだけど、炎の勢いが落ちてきている!

 

 『神浜最強のウワサ』の一説には、命の業火という単語があった。これが本当なら、業火というのはセーナの命。それが燃え尽きるということは……。

 

「降りてきてよセーナ! このままじゃおまえ、死んじまうよ!」

 

 あたしは叫んだ。

 

 畜生め……『マギウス』のやつら!

 セーナのことを嫌っていたとは聞いていたけどさ、まさか利用した挙句殺すつもりだったのか。ワルプルギスの夜のせいで嵐になることくらいは知っていただろうからそれすらも利用して!

 セーナを倒そうとすれば怪物化したセーナの命が削られ、それを避けるために攻撃をやめれば『マギウス』の計画をあたしたちが止めることができなくなる。どっちに転んだとしても『マギウス』にとって都合がいい結果になるって仕組みだ。

 やつら……セーナの命を盾にしてきやがった!

 

「敵の命を心配している場合か、愚か者」

 

 返ってきたのは突き放すような罵倒の言葉。でもこれはあたしを突き放しているわけじゃない。自分を突き放しているんだ。

 こんなことをしている間にも雨に打たれて風に吹かれて見る見るうちにセーナの翼が小さくなっていく!

 

「モモちゃんやめて! お願いだから降りてきて!」

「断る。すべては魔法少女のためじゃ。私が犠牲になったからなんじゃ。これからワルプルギスの夜によって量産される死者がひとり増えるだけじゃろうが」

「なぜここまでする必要があるんですか……魔法少女の解放は御自身の命を使い果たしてでも成し遂げなければならないことなのですか!」

「そうじゃ。私が頑張れば世界中の魔法少女を救うことができるのじゃぞ。どうせ老い先短い身じゃ。ならば有効に使った方がよかろうて」

 

 なんてこと言ってんだよ……。

 セーナ、あんた……なんでそこまでして魔法少女のために戦っているんだよ……!

 ウワサと融合すると心の奥底に眠っている本人の欲求が出てくるって説明を受けたけどさ……セーナの場合は魔法少女の救済が自分の命以上に大切なことってことなのかよ!?

 

「……ガァ……」

「え?」

「百恵さん?」

「グァアァ……! ガァ……!」

「えっ!? モモちゃん!?」

「先生!」

 

 突然セーナが頭を抱えて苦しみ始めた……。炎の翼が消えたり出てきたりして安定していない。

 

「ちょっと待って……百恵さん、ウワサとの融合が不安定になってる!」

 

 なんだって?

 

「どういうこと? 百恵の中でなにが起こっているの!?」

「百恵さんの中にあるウワサが暴れているんだよ!」

 

 ウワサが暴れている? っていうことは、セーナがウワサのルールを破ろうとしているってこと?

 『神浜最強のウワサ』は魔法少女を救済するウワサのはず。だからセーナがやろうとしていることはルールに違反して……ちょっと待て! 違うぞ!

 セーナは自分を犠牲にして魔法少女を救おうとしている! でもそれを……魔法少女であるセーナが犠牲になることを、全ての(・・・)魔法少女を救おうとしているウワサが許すはずがない! だからウワサが暴れているんだ!

 

「ウワサがどんどん百恵さんの身体を侵食していってる……! このままじゃ、ウワサが完全に百恵さんに成り替わっちゃう! もう元の百恵さんに戻らないかもしれないよ!」

 

 ふっざけんなよ! 何もかもが矛盾していやがって!

 セーナの想いも、ウワサのルールも、『マギウス』の思惑も、ワルプルギスの夜も、全部が全部、セーナを苦しめる要因になって複雑に絡まっていやがる!

 

「アアアァァァ――――ッッッ!!!」

 

 苦悶に歪んだ表情で怪獣のような叫び声を上げるセーナ。だけどそれは、あたしには悲鳴に聞こえた。

 一刻も早く、セーナからウワサを引き剥がさないと取り返しのつかないことになる!

 

「もう待てねえ。御園かりん、あたしを連れていけ」

「え?」

「おまえじゃねーとセーナの所にいけねーんだ。あたしの魔法でセーナとウワサを引き剥がす決定打を見つける。隙だらけになって苦しんでいる今がチャンスなんだ。だから早く。時間がねーんだ。やちよもいいよな?」

「……そうね。かりん、帆奈を連れて行きなさい」

「待ってください!」

 

 息を切らしたまなかが割り込んできた。

 

「まなかも行きます。まなかの魔法は『伝播』。帆奈さんが魔法を発動したタイミングで魔法を使えば、手を繋いでいない皆さんも一緒に百恵さんの深層世界に行くことができることができるかもしれません」

「……かも?」

「はい。確証はありません。でも多分、できると思います! だからお願いします! 連れて行ってください!」

 

 苦しんでいて隙だらけとはいえ、それでも暴れているセーナにあたしを乗せて接近するのは、ベテラン魔法少女の御園かりんにだって至難の業だろうさ。そこにまなかまで追加されちゃあ成功率が落ちる。しかもまなかの提案は確実なものじゃない。成功するかどうかも分からないし、もし失敗したら足を引っ張るだけ。

 

 ただリターンは大きい。

 このままあたしが魔法を発動させたところでセーナの深層世界に行けるのはあたしと御園かりんだけだ。でももしここにいる全員で行くことができたらウワサを引き剥がせる確率はグッと上がる。

 まなかを連れて行くかどうかは、ハイリスクハイリターンを取るか、ローリスクローリターンを取るかの選択になる。この一刻も争う状況で選択すべきなのは、成功する確率が最も高い選択肢。

 だからあたしは……。

 

「……御園かりん、いけるか?」

「……うん! 大丈夫、ふたりまでならいけるの!」

「よし、それじゃあ行くか、まなか!」

 

 まなかを連れて行くことを選んだ。

 

「いいんですか?」

「いーんだよ、御園かりんが問題ねーって言うんだから。それにさ、言ったろ? ある程度はあたしがフォローするからさ、好き勝手にやりたい放題しなよってさ。まなか、あたしはあんたを守る。そして役目を果たす。安心しな、あたしも御園かりんもつえーんだ。だからまなかはみんなを連れて行ってくれよ」

「……本当にできるかわからないんですよ?」

「絶対にできるの!」

「御園さん?」

「前に先生が言っていたの! 魔法少女は『願い』を力に変えるって! だから……先生を助けたいって強く願えば、絶対にできるの!」

 

 こいつ……良いこと言うじゃんか。さすがはセーナの唯一の弟子だ。

 

「決まったようね」

「ああ。行こうぜ、まなか。かりん(・・・)

「はい!」

「うん!」

 

 かりんの大鎌に跨ったあたしたちはセーナ目掛けてまっすぐに飛ぶ。

 暴れまくっているせいで熱風が不規則に吹きすさんでいるけど、大鎌をしっかりと握りしめてコントロールしているかりんのおかげで最短距離で向かうことができている。

 

「ガァ……ア?」

 

 紫色の眼光があたしたちを捉えた。お願いだからさ、今だけは大人しくしていてくれよ!

 あたしは必死に手を伸ばす。お願いだ、掴んでくれよ。あたしの……あたしたちの手を、掴んでくれ! 掴んでよ!

 

 ドラゴンのような赤い鱗と鋭い爪が生えたセーナの右手があたしたちを引き裂こうと振り下ろされる……その瞬間、あたしはその動きが恐ろしくゆっくりと感じた。

 

 見える。この腕がどこに向かっているのか。

 わかる。どれくらいの力で振り下ろされたのか。

 

 だから……!

 

 あたしの右手がセーナの振り下ろされた右手の平を掴んだ。

 相っ変わらずすげー力だったけどさ、9月に貰ったセーナの魔法のおかげでさ、ちったあ力強くなっていたんだよあたしは! だからそんな暴れるだけの適当に力が込められた攻撃なんて相殺できんだよ!

 やっとだ……。やっと、掴めた。

 

「つぅーかぁーまぁーえーたあぁぁーっ! やるぞ、まなかあぁぁーっ!」

「はい!」

 

 セーナとまなかの手をしっかりと握りしめたあたしは、相野みとから受け取った『心を繋ぐ』魔法を発動させた。

 視界が暗転し、気が付いたら何もない空間にあたしたちはいた。

 

「ここは……」

「どうやら、成功したみたいですね」

 

 他のみんなも来ている。

 ということは常盤ななかの言った通り成功したんだ。全員でセーナの深層世界に来ることに。

 

「なんじゃ、こんなところにみんなして」

「!」

 

 驚いて声がした方を見ると、そこにはセーナがいた。ウワサに取り憑かれていない状態の、いつものセーナが。

 

「これは相野みとの魔法じゃな。お主の仕業かの?」

「ああ、そうだよ」

「全く……手を繋がれるような隙を晒すとは、本当に老いたもんじゃのう」

 

 そんなことを言ってカラカラと笑うセーナは、本当にあたしたちが知っているセーナだった。

 

「さて……まあ、こうしてきた以上、ただで帰ってもらうわけにはいかんよな」

「当たり前じゃないの」

「何を知りたいのかの?」

「全部よ。あなたの全てを、本当の気持ちを知りたいわ百恵」

「そうか……よかろう」

 

 やちよの答えを聞いて薄く笑ったセーナ。その笑顔は今までの諦めたようなものじゃなくて、少し嬉しそうなものだった。

 

「モモちゃん、いいの?」

「……ああ。もうよい。折角みんな、私の為にここまで来てくれたんじゃからの。ずっと黙っていてくれてありがとうなのじゃ、みたま」

「……いいのよ、そんなこと」

「それじゃあ、暫くお付き合い願おうか。……私の過去への旅にな」

 

 ここであたしたちは知ることになる。

 セーナの過去を。

 魔法少女になった理由を。

 そして……今のセーナが抱いている想いを。

 

 

 

 

 




次回、星奈百恵、魔法少女ストーリー。
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