マギレコRTA ワルプルギス撃破ルート脳筋傭兵チャート 作:スパークリング
ウォールナッツは今日も忙しい。
魔法少女になって、まなかこと胡桃まなかの家でもある洋食の名店『ウォールナッツ』をみんなに知ってもらうチャンスを見事に掴み、忙しい日々を送っていました。
このウォールナッツが提供する料理は正当に評価され、父親は出張の毎日。
そしてまなかも父親譲りの腕でウォールナッツを切り盛りしつつ、出張料理人としての仕事もこなし、お昼の弁当販売もやっていました。
当初は本当に叶えたかったこと――このレストラン『ウォールナッツ』にたくさんのお客様が来てほしいという願いと相反する結果になってしまったことから畳もうとしていた弁当販売と出張料理人の仕事でしたが……まなかのお弁当を求めて、泣いて喜んで食べてくれるちょっと変わったお客様を見て、続ける気になりました。
残念なことには変わりありませんが……それでも、本当に大切なのはウォールナッツという場所ではなく、そこにあった歴史のある素晴らしい料理だということに気づかされたまなかは、新たな試みとして料理教室を開くことにしました。
味や技術は評価されるも、時代が変わり、かつ神浜の北の奥地という立地もあまりよろしくないウォールナッツに直接訪れるお客様は少なくなりましたが、代わりとして同じ魔法少女の溜まり場にもなってきました。
一見すると値段が張りそうな店構えですが、価格はリーズナブルなものに落ち着かせているので、懐事情の厳しい魔法少女の皆さんにとっては嬉しいものだったのでしょう。
そんな魔法少女の皆さんに、そしてあわよくば一般の皆さんにも料理をする楽しさとウォールナッツの味を知ってもらうための試みとして、料理教室を開くことを決意したんです。
そして訪れた当日。
来てくれた人は四人。第一回目としてはまずまずな結果でしょう。
その内のふたりは常連さんである魔法少女の美凪ささらさんと竜城明日香さん。
前々からウォールナッツを贔屓にしてくれて、普通に料理もするらしい彼女たちが来てくれるのは予想こそしてはいましたが、それでも嬉しいものでした。
ただ……あとのおふたりがVIP中のVIPでした。
「立派なお店ね~」
「うむ、なかなか良い雰囲気のお店じゃのう」
神浜の魔法少女ならば知らない人がいないほどに有名な『中立』の二大巨頭……『調整屋』八雲みたまさんと、『傭兵』星奈百恵さんだったのですから。
魔法少女としても単純に先輩としても絶対に頭が上がらない大物ふたりがウォールナッツに来てくれました。
これはチャンスです。大、大チャンスです。
この超有名人たちに手解きをして料理の腕を上げるだけじゃなく、最後にこのまなかの、ウォールナッツの料理を振舞い、それを宣伝してもらえば……魔法少女だけでなく、その親御さんに。そしてそこから話を膨らませて伝播することができれば、もっともっとウォールナッツの味を広めることができる。
「時間になりましたので始めましょうか」
そんな夢の広がる未来が見え、気合を入れて第一回料理教室が始まりました。
おっと、その前にですね。
「あの、星奈さん?」
「む?」
「えっと、失礼を承知ですが、これを使いますか?」
持ってきた踏み台を星奈さんに見せます。
話には聞いていましたけどその……まなかよりも低い身長の彼女では料理するのに支障が出そうなので、一応声をかけてみます。
すると星奈さんはきょとんとした後、笑顔で受け取ってくれました。
「ありがたく使わせていただくとするかのう! 気遣ってくれてありがとうなのじゃ!」
……よし。とりあえず掴みはばっちりです。
印象は大事です。特に色んな魔法少女と接してきた大ベテラン相手なら余計に。
今日作る料理はオムライス。
このウォールナッツの看板であり一番人気であり伝統もある料理です。調理も奥深いですし、簡単すぎず難しすぎないいい塩梅の料理なので、料理教室で教える題材としてピッタリ。
是非とも皆さんにはこの自慢のオムライスを作っていただいて、おいしく召し上がっていただきましょう。
……とここまでは良かったんですよ。ここまでは。
ささらさんと明日香さんに関しては問題ありません。
ふたりとも普段から料理をやっているようですし、若干不器用な部分こそありますが、味などに支障が出ない程度のものなので普通に指導することができます。
星奈さんも問題ありません。というか手馴れていました。
付け合わせの野菜の皮は鼻歌を歌いながら綺麗に剥けていましたし、テキパキ動いてくれるので無駄が少なく他の皆さんよりも綺麗に、そしてコンパクトに場所を使っていました。
加減や調味料の配合などをちょくちょく聞いてきて熱心に、そして楽しく料理をしてくれていました。
……正直、育てたらかなり伸びそうですし、本人も料理が好きらしいので、アルバイトでもいいからここで働いてくれないかどうかを訊こうか真剣に考えています。多分傭兵の仕事やらなんやらで無理なんでしょうけど。
ここまでは良いんです。
この三人だけなら楽しい料理教室で終われたんですよ。はい。
……問題は最後の人でした。
「うーん……みんなと同じじゃ面白くないわよねぇ」
「同じで良いんですよ!? って、ああ!」
なにやらいろんな調味料を調合している問題児がいました。
おかしいんですよ、
包丁の使い方とかはできているのに、なんでまなかの言う通りに料理をしてくれないのか。
これは料理教室ですので、皆さんが同じものを作っている都合上、なるべく同じにならないといけないのに勝手にアレンジを入れているんです。しかも悪い方に。
最初は失敗から学ぶこともあるかと思って大目に見ていましたが、少し目を離した隙に悪化していくその惨状に我慢ができずついに口を挟んでしまいました。
こっ、これは……!?
「みたまさん、これはなんですか?」
「うっふふ、卵に決まっているじゃなぁい」
「卵は緑色になったりしませんよ!?」
いったい何を入れたらこんな色に!?
そもそもこんな色になるような食材、ここになかったはずですよ!?
「オムライスの卵って甘い方がいいじゃない? だからぁ、これを使ったのよぉ?」
「ど、どこからメロンソーダを……!」
「ここに来る途中の自販機でね。喉が乾いちゃって」
まさかの食材持ち込み! しかも飲みかけ!
「みたまさん。料理教室に食材の持ち込みはしちゃいけません。次からはここにあるものだけを使ってくださいね」
「うーん? わかったわぁ」
不思議そうな顔で了承してくれるみたまさんに危機感を覚えつつ、全員の進捗を確認。
とりあえずできていることを確認してから、次の指示を出します。
「先生、ちょっとよろしいかの?」
「はーい、今行きます」
今やその容姿と素直に楽しんで料理してくれる姿を合わせてまなかの癒しになっている星奈さんから声をかけられたので向かいます。
今作ろうとしているのはチキンライスですので、火加減のやり方を見たいとのことです。
確かにこれは言って聞かせるよりもやって見せた方がいいかもしれません。
一旦作業を止めてもらって、まなかのところに皆さんを呼び出し、少し難しいところを説明します。
「わかりやすかったのじゃ! やってみるから見ていてくれないかの?」
ふたつ返事をして星奈さんのところに向かい、彼女の動きを見ます。
やっぱり早いですし、正確です。まなかの言う通りに料理してくれています。
そして上手くできたかどうかキラキラした瞳で見つめてきます。アホ毛も左右に揺れています。
なんでしょうか、この可愛い小動物は。
失礼に当たるので頭を撫でるようなことはしませんが、とってもほっこりしました。さっきまでの惨劇を忘れてしまうほどに。
とりあえずしっかりできていることを
ささらさんはほとんど完璧です。
ちょっと火加減で慌てていましたが、最初はみんなそうなので慣れていけばできるようになります。
明日香さんも大丈夫そうです。
ただ正確にやろうとしていて気を張りすぎていますね。もっとリラックスして料理をするようにだけ言っておきましょう。疲れてしまいますから。
……そして。
「み、みたまさん……」
みたまさんのフライパンの上を見て……おそらくまなかは人生初めて、料理という分野において恐怖に歪んだ顔をしたと思います。
他の人達は多少の差異はあれど綺麗なオレンジ色のチキンライスがフライパンの上にありました。
ですが……みたまさんのものは紫色です。
チキンライスが、紫色です。黒味の強い、紫色です。
……なんで!?
「こ、これはいったい……。……はっ!」
さっきの持ち込み食材を確認します。
……やっぱり! 減っています! というか空になっています! メロンソーダが!
この人またメロンソーダを混入させています! しかもよりにもよってチキンライスに! 卵だけなら……一万歩くらい譲っても「甘いから」で済ませられたかもしれないのに!
これはとんでもないものが出来上がってしまうのでは?
とりあえず……火加減の仕方や調理器具の使い方は完璧にできていますので問題ないです。はい。できているんですよそこは。
あとは素直に材料を使えば美味しいオムライスができるのに……なぜそこで致命的なアレンジを入れてしまうのでしょうか。
これはもう、みたまさんは置いておくとします。
本当に危ない――すでにいろんな意味で危険ですが――事故に繋がらないかどうかだけを心配するとしましょう。
それからもしばらく料理教室は続き……やってきました。というよりやってきてしまいました、評価の時間です。
「…………」
「…………」
「…………」
「♪♪♪」
参加者四人の内ひとりは笑顔でいますが、残り三人がある一点を見て顔を真っ青にしています。まなかも正直、三人と同じ心境です。
そしてまなかは……まなかは……!
「え、えーと。皆さんお疲れ様でした。それでは皆さんのオムライスを少しずつ小皿に移してですね、このまなかが評価していきたいと思います。皆さんももしよろしければ、それぞれ作ったオムライスを試食してみてください」
しばらくは他三人の料理で時間を稼ぎます。その間に覚悟を決めるとしましょう。
大丈夫です。きっと、うん、大丈夫です!
まずはささらさんのオムライスから。
見た目は良好です。盛り付けもきれいに整えられています。
味は……うん。うん、なるほど。少し卵に火が通りすぎていますが、ほとんど問題ないです。
ケチャップが気持ち多い気がしますが、それも個人差が出るところですし、本人の好みの影響もあると思いますので良しとしましょう。
総合的に見て、若干癖はありますが、好きな人は好きなオムライスに仕上がっていると思います。まなかも好きな方です。
次に明日香さんのオムライス。
見た目は……少しきっちりとしすぎていますね。真面目な明日香さんらしいですが、もう少し崩した方がよりおいしそうに見えると思います。
味は……問題ないですね。ほとんど再現できています。
ですが、少しおこげが気になりますね。火加減に集中しすぎてフライパンの中身を少し疎かにしてしまったのでしょう。
もっと料理に慣れて気楽になれたらきっと素晴らしい料理上手になれます。
お次は……星奈さんのオムライスです。……おお!
まず見た目は完璧ですね。盛り付け方がうまいです。しっかり主役のオムライスを前面に出しつつ、デミグラスソースも卵の黄色い部分を八割以上残しながら、オムライスの前半部分にかけられています。食欲を刺激させられる盛り付け方の基本を押さえています。
付け合わせの野菜が星形になっているあたり洒落が効いていますし、余裕も感じられます。
そして肝心の味は……こ、これは……!
「これは凄い逸材です……」
ほとんどまなかの作るオムライスと同じでした。
卵の口溶け感、広がる香り、そして各種調味料の配合。すべてが似ています。
唯一違うところはお米が少し硬めなところですが、これは相当のグルメやセレブの方ではないと見抜けないレベルです。
「これがウォールナッツのオムライス」として出しても普通の人はわからないほどの完成度でした。
「凄い……神浜最強の傭兵は料理の腕も最強なの……!?」
「あの手際の良さといいこの味といい、感服いたしました……!」
これにはささらさんも明日香さんも笑顔で褒め称えています。
ささらさんはこのウォールナッツで舌が肥えていますし、明日香さんに至っては家が名家な都合上、上質な料理を食べるのが当たり前です。
そんな人たちが認めるということは、相当の腕前ということです。
とてもただの料理好きな人の腕じゃあありません。
「大袈裟じゃよ、そう褒めるでない。照れるではないか」
頬を少し赤らめながら照れている星奈さん。
食べた人を笑顔にさせ、幸福を感じさせる料理。それこそ最高の料理だとまなかは思います。
ですから真面目に、そして楽しみながら料理をしてくれた星奈さんは間違いなく料理人の才能があります。
これは本格的にここの就職を考えてもらいたいですね。
少なくとも本人が料理の道に進もうとするのなら、真っ先にここに連絡してもらえるようにしていただかないと。他の店に行ってしまわれると困ります。
とにかく星奈さんの料理は素晴らしいの一言に尽きます。
これからも料理教室を開くことがあったら是非通っていただいて腕を上げてほしいです。
……さて。
「最後はわたしのオムライスねぇ~」
食・べ・て♪
かわいく言っていますが……悪魔の声にしか聞こえません。
ついに恐怖の時間がやってきてしまいました。
他の皆さんもこれまではお互いの料理を小皿に取り分けて意見を出し合いながら美味しい美味しいと食べていましたが……これに至ってはまなか以外、取り分けようとしていません。
皆さん若干腕を伸ばしている辺りチャレンジしようとしてくれているのはわかりますが……その一歩が踏み出せないのでしょう。わかりますよ。まなかだって逃げ出せるのなら逃げ出したいのですから。
ですが、まなかには開催者としての責任があります。
しっかり仕事を果たさないといけないという矜持がありますし、相手は神浜魔法少女の重鎮のひとりである八雲みたまさんです。
なんとしてでも乗り切らないといけません。
まず見た目。……とりあえず盛り付けだけ見てみましょう。
完璧です。盛り付け方は星奈さんと同じくらい上手です。
みたまさんも料理することは好きなようですし、そこのセンスに関しては問題ないのでしょう。……しかし。
その素晴らしい盛り付けを台無しにするオムライスと付け合わせの見た目が最悪です。
オムライスはなぜか卵が緑色、チキンライスは紫色になってしまっています。これだけ見せられてオムライスと言われても「!?」というリアクションになること間違いなしです。そもそも、これが食べ物であることを理解できるかすら怪しいなにかがお皿の上に鎮座していました。
付け合わせの野菜たちも、本来は綺麗な葉っぱ色やオレンジ色だったはずなのになにかに漬けておいたのか、黄色くなっていたり赤くなっていたりと、もうわけのわからないことになってしまっていました。
「で、では……いただきます」
覚悟はもうできています。
意を決して一口サイズ分のオムライス(?)を取り分け、口の中に入れます。
ささらさんが口に手を上げながら小さく悲鳴を出したり、明日香さんがおろおろしていたり、星奈さんの顔が引きつっていたりしていますがもうどうにでもなれです。
卵の部分とチキンライスの部分、両方しっかりと放り込みました。
「!?!? うぐっ……!?」
な、なんですかこの……味と味のぶつかり合いは……!
全部の味の自己主張が強すぎです。主に調味料とメロンソーダの。卵とご飯の味はどこに行ったのでしょうか。
って、冷静に味わっている場合ではありません。
まなかの口がこれを胃の中に入れることを拒否し始めています。
それはつまり……。
そ、それだけは! それだけはできません!
料理人のまなかが食材(?)を粗末にすることなど許されないんです!
もはや意地と、プライドで、口の中のモノを一気に胃の中に押し込みました。
もう体調が最悪です。冷や汗が止まりませんし、寒気までしてきました。鳥肌も立っています。
「こ、これはとても……斬新な味ですね。さ、参考に、させてもらいます、ので、まなかが全部食べちゃいますね」
これはとても他の人には食べさせられません。
ですのでここは星奈さんにこのまなかの雄姿を見てもらって、ウォールナッツの宣伝をしてもらえるように取り計らってもらいましょう。その広告料と考えれば……安いもの、です! きっと!
ええいままよ! まなか、逝きます!
目をかっ開いてこの劇物を一気に平らげてしまおうと動いた時――その皿が隣から伸びた手に奪われてしまいます。まなかの握るスプーンが空振りました。
「え?」
「よく、頑張ったのう。もうよい」
その皿を握っている人……星奈さんは優しく笑いながら、まなかを見ていました。
ですが顔色が悪く、手も震えてしまっています。
……まさか。
「誘われたとはいえ、みたまを連れてきたのは私じゃ。……責任は私が取ろう。――いざ!」
吐き捨てるように、そして気合を入れるように呟いた瞬間――星奈さんはみたまさん特製オムライス(?)を一気に掻き込んでいきます!
もうそれはそれはすごいスピードです。
がつがつと勢いのままにオムライス(?)を口の中に消していきます!
「か、神浜最強の傭兵は料理の腕どころか胃まで最強だっていうの!?」
「な、なんと! なんという豪気、そしてなんという覇気! これが神浜最強の傭兵の底力……!」
これにはさすがのふたりもびっくりです。
唯一みたまさんだけがにこにこと嬉しそうに、オムライス(?)を平らげていく星奈さんを見つめています。
やっぱり悪魔です。
星奈さんは三十秒ほどでオムライス(?)を食べつくしました。
野菜(?)も米粒(?)一粒残さずぺろりと全て。
食べ終え、皿とスプーンを静かに机に置いた星奈さんは……。
「きゅぅ……」
目をぐるぐる回しながら倒れてしまいました! あ、危ない!……セーフです。
なんとか頭が床にぶつかるまえにささらさんが星奈さんを支えてくれました。こ、これは相当無理していましたね。
顔色が最悪ですし、目がバッテン印になってしまっています。ぴんと立っていたアホ毛も萎れてしまっています。
たった二回の攻撃で魔女を倒すと評判の破壊力を誇る神浜最強の傭兵すらも撃沈させるほどの破壊力とは……八雲みたま、恐るべしです。
当の本人は「お腹いっぱいで寝ちゃったの?」と見当はずれな心配をしていますが。
「なんていう無茶を……」
せっかく足を運んでくれたのに……ほとんどまなかのせいではないとはいえ、これはあんまりです。
ウォールナッツの思い出をこんな形で締めさせたくないと思ったまなかは、気絶した星奈さんをソファに寝かせて厨房に行きます。
感謝と謝罪の気持ちを込めて、まなかは腕を振るいます。
そして完成したのは、いつもここで提供している特製オムライスです。
……うん、いい出来です。
出来るだけ美味しい状態で食べてほしかったまなかは静かに星奈さんの体をゆすります。
するとまるで悪夢から覚めたように「はっ!」と星奈さんは上体を起こしました。
「い、今私の死んだ祖父母と姉妹が川の向こうで手を振っていたような気がするのじゃが……」
「生きてます! 星奈さんはまだ生きてますよ!」
「お、おお……! お? あ、ああ、そうか。思い出したのじゃ」
記憶が飛んでしまっていたらしいです。
……それくらいのインパクトは確かにありましたよね、アレには。
一口とはいえ口にしたまなかにはわかります。
「星奈さん、先程はありがとうございました」
「む? ああ、よいのじゃよ。みたまの料理の腕がアレなのは知っておったからのう。まさか、ここまでとは思いもよらなかったがの」
「その……これはまなかからの感謝の気持ちです。どうぞ、ご賞味ください」
星奈さんの前にオムライスを置く。きっとお腹いっぱいだと思います。
試食の時も食べていましたし、アレも結構なボリュームでしたから。
でも、そうだとしても食べてほしいと思いました。
「では、いただこうかの」
星奈さんは嫌な顔どころか、一切の躊躇いもなくまなかのオムライスを口に入れてくれます。その仕草は先程の勢いに任せたものとは程遠く、まるで良家のお嬢様のように品のあるものでした。
星奈さんがオムライスを口にしたとき、萎れていたアホ毛がピンと伸びてみょんみょんと動き始めました。
「! これはお主が作ったのかの!?」
「え、ええ、まぁ。お味はいかがでしょうか?」
「文句なぞあるわけなかろう!」
満面の笑顔でまなかを称賛した星奈さんは、そこで言葉を中断させてオムライスを味わって食べ始めました。そして十分も経たないうちに、ぺろりと食べ終えました。
ただただオムライスを食べていただけですが、あまりにも美味しそうに食べてくれるものですから見ていて飽きなかったですね。料理人冥利に尽きます。
隣の席に座っている他の参加者三人も笑顔で咀嚼する星奈さんを微笑ましく見ていました。
「御馳走様なのじゃ! とても美味しかったぞ!」
「……ありがとうございます」
そしてその言葉は、料理人として感無量に尽きる言葉でした。
残さず綺麗になったお皿、「御馳走様」の挨拶、そしてシンプルながらも最高の感想。
これがあるだけでも、料理を作り続けようと思うことができます。
「お主は凄いのう! まだ幼いのにこんなに美味しい料理が作れるとはの! 今後も、料理教室を開くのなら是非とも呼んでほしいのう。私はお主に、先生に料理を教わりたいのじゃ」
「! は、はい! もちろんです!」
……やった! やったやったやった!
神浜魔法少女の重鎮に認められた上に、今後も通うと言ってくれました。
連絡先まで交換できましたし、仕事の際にこのウォールナッツのことも話題に出すとも言ってくれました! 大成功です!
「あら~。じゃあ私もまた来ようかしらぁ~」
そんな最高の気分のまなかに水を差す
星奈さんはこっそりと口元に人差し指を立てていました。内緒にするから呼んでほしい、と言っているみたいです。
是非、お願いします。
お互い、もうあんなものを食べたくありませんもんね。
波乱万丈はありましたが……第一回料理教室は大成功を収めました。
料理教室は今後も続けていきます。
ウォールナッツの料理教室の名物が、とある界隈では有名人でもある、おばあちゃんのような小さな少女になる日が訪れるのはそう遠くない未来の話です。
……思ったんですが、ホモちゃんは火属性の魔法少女との相性がいいですね。