元魔術師の付き添い人になりました   作:つりーはうす

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8話

「貴様がオダだな」

襲撃者が声を掛けてきた。

 

 

 

「違いますといったらどうなるんですか?」

「殺すだけだ」

ここは仕方がなく相手の問いに答えるとしよう。

 

 

 

「そうですがあなたは?俺の知り合いにはいきなり狙撃で挨拶をしてくる人はいないと思うんですが」

「一度目で死ねばそれでいい。もし死ななければ貴様を勧誘しろと言われた」

「へえ、ちなみに誰に頼まれたんですか?」

「答えると思っているのか?」

一縷の望みをかけ、話しが長引かせることで隙が見つかると思っていたのだが、どうやらなさそうだ。

 

 

 

「勧誘してくれるのはありがたいのですが、俺と彼女はこれから行かなければいけないところがあるので退いてくれませんか?」

「勧誘には乗らない、か」

男はオダの返事を聞き、臨戦態勢になる。

今や一触即発、どちらが先に動くか、お互い腹を探っているその瞬間。

 

 

 

意識外から腹部に鋭い衝撃を受けた。

オダにとっては全くの不意打ち、死角からの攻撃。

自己透明化と音遮断の呪文の付呪(エンチャント)という、完璧な隠密潜行からの奇襲。

ここまでされるとたとえ精鋭の宮廷魔導士団が索敵魔術を展開したといえども絶対にこの奇襲を防ぐ手段はない。

話しを長引かせていたのは、オダに気づかれず背後に部下を展開させるための時間稼ぎだったようだ。

まんまと相手の術中に嵌り、腹部を射抜かれたオダはその場に倒れ込み、意識を手放した。

 

 

 

そこで映像は終了する。

右後方に一人、左後方に一人、距離は約20メトラ。

これなら間に合う、そう判断し、オダは手の中に隠していた魔晶石を発動させた。

正義の魔法使いを目指している男の子に頼み、彼の固有魔術(オリジナル)を刻印してもらったその小さな魔晶石。

 

 

 

術式起動(ブート) 愚者の世界」

半径50メトラ以内の領域では魔術起動を完全封殺するという魔術師にとって天敵ともいえるオリジナル。

先に発動された以上、いかなる魔術師でもその領域下では魔術を行使することが出来なくなる。

予唱呪文(ストック)の軍用魔術による魔術射撃で標的を射止める矢先に、魔術が封じられたことに焦る二人だが、此方の場所はまだ割れておらず、もう一度立て直そうとしたその瞬間、

 

 

 

銃声、銃声

 

 

 

二発の弾丸が二人の目尻に命中した。

絶対に気づかれるはずがないのに、そう思いながら背後の二人は意識を失った。

 

 

 

目の前の男も同じことを思っていたのだろう。

自分の部下の居場所を完璧に気づかれていたこの事実に驚愕したが、さすがは暗殺者(プロ)

オダに反撃の一手を与えないように、すかさず呪文を唱え、殺そうとしたが、

 

 

 

「ま、魔術が発動しないだと!!!」

もちろん目の前にいる彼らが固有魔術(愚者の世界)の影響を受けていないはずがない。

そして魔術が発動できず混乱に陥っている敵を、オダは待つほどお人よしではない。

 

 

銃声が木霊した。

実弾による8連装全弾掃射。

目の前のこの集団の隊長格であろう人物以外の急所を魔銃(ジムノペディ)で射抜き、速やかに無力化する。

このあまりにも素早い出来事にリディアも目を見開き、驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、じゃあゆっくり話そうか」

奥歯に仕込んでいた自決用の毒を取り出し俺は尋問を開始する。

 

 

 

「オダ君、尋問は得意なの?」

「いえ、初めてですよ」

リディアが尋問の経験があるのか聞いてきたのでオダはしたことがないと答えた。

この返事に、目の前の男は少し安堵した表情を浮かべた。

 

 

 

「でも俺以外の人は得意なんですよね」

「俺以外って、私もそんなに得意じゃないんだけど」

リディアがそう言うと、オダは男の前に魔晶石を取り出し起動させた。

 

 

 

術式起動(ブート) 精神崩壊(マインド・ブレイク)

魔術学院で変態講師と名を馳せた精神系魔術の大家である教授に頼んで刻印してもらった魔晶石。

それを起動させ、一旦奴の精神を攻撃し、精神状態が脆くなったところで尋問を開始した。

 

 

 

オダが尋問を開始しようとする同時刻、約4千メトラ離れた先、遠目の魔術で見える限界間際の場所から先ほどの二人(狙撃手、観測手)が眺めていた。

 

 

 

「撮れたか?」

「ええ、撮れましたよ。しかし加勢に行かなくていいんですか?」

標的(ターゲット)の実力を見ただろ、あれは俺たちじゃ手が出ん。俺たちはこの情報を主人に渡すことが最優先だ」

「了解」

彼が手に持っている魔晶石。

その中には先ほどの戦闘の映像が記録されていた。

オダが情報を得ようとしているその時、オダ自身の情報も流れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「・・・」」

尋問を終え、すぐにその場を離れた二人だが、口を閉ざして沈黙したままだった。

それも無理はない。

リディアについては暗殺させるために修道院へ送ったこと。

先日の事件に居合わせたオダについては引き抜くか、出来なければ殺せという命令が出ていること。

追手を叩きのめした二人はこれから逃げるか、死ぬかを選ばなけらばならない。

最初に狙撃をしてきた二人はおそらく今頃今回起きたことの報告を依頼主(アゼル)にしているところだろう。

早く次に移らないと新手が追ってくる。

 

 

 

「・・・オダ君、これからどうしよっか?」

沈黙を破ってリディアが話しかけてきた。

いつもの元気がない。

それもそのはず、実の父親に命が狙われているのだ。

余程の衝撃であろう。

オダも命を狙われていることに代わりはないが、リディアほど未だ追い込まれてはいなかった。

 

 

 

「そうですね・・・このまま修道院に行くのは危険すぎる。なんせ殺すために貴方を修道院に送っているんですから。罠やさっきとは比べ物にならない凄腕が手をこまねいて待っていてもおかしくはない」

オダはこのまま修道院へ行くことには反対した。

 

 

 

「じゃあどうするの?修道院に行っても殺され、帝都に戻っても殺される。もう私たちの居場所なんてないじゃない・・・」

確かにリディアの言う通り、これはいわゆる詰み(チェック)と言う奴ではないのか。

この状況を打破するにはどうすべきか。

イグナイト卿が送ってくる魔の手を子ども扱いできるそんな魔術師が・・・いた。

 

 

 

「リディアさん。フェジテに行きます」

「フェジテ?あの魔術学院がある所になんで行くの?」

「あそこには大陸最強の魔術師がいる。それでわかりませんか?」

この状況を打破するにはあの魔女の協力を得るしかない。

オダは座っているリディアの手を引き、フェジテへと歩み始めた。

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