元魔術師の付き添い人になりました   作:つりーはうす

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幕間3

フェジテへ向かい始めて5日目。

二人はイグナイト卿の追手を逃れて人気のない道を歩んでいた。

 

 

 

「もう大丈夫ですよ、リディアさん」

オダは追手を片付け、隠れていたリディアを呼んだ。

 

 

 

「オダ君・・・大丈夫?少し休んだ方がいいんじゃ・・・」

「大丈夫ですよ、リディアさん。早く進まないと追手が・・・っっと!」

リディアを心配させまいと声を掛けたはずが、蹌踉めいたことで飽水と化した。

 

 

 

「オダ君?」

「少し躓いただけです、大丈夫ですよ。さあ先に・・・」

「オダ君?」

なぜだろうか、リディアは笑っているはずなのに目が笑っていない、そんな有無を言わさぬ圧迫感でオダに近づく。

 

 

 

「・・・なんでしょうか、リディアさん」

「今日は休む、いいわね?」

「ですがフェジテまでまだ距離が・・・」

「いいわね?」

「・・・はい」

これが多くの英傑が在籍する特務分室を指揮していた女傑の力、ただの地方で働く一公僕のオダに反抗することなど出来ようもなかった。

 

 

 

歩いた先にある小さな廃屋で休息を取る。

だがなぜだろう、休憩をしているはずが、まるでこの場が尋問室に感じるのは。

 

 

 

「で、オダ君。いつからこの状態なの?」

「昨日からですよ、ですから・・・」

「この状態でずっといたの!!!」

驚くリディアが見た先は、オダの足だった。

慣れない戦闘と行軍で足に負担がかかったのだろう。

足の血色は悪く、具合が良くないのは明らかだった。

 

 

 

「大丈夫ですよ、怪我は治療魔術で治りますし、この程度の不具合なんて大したこと・・・」

「少しは自分を大切にして!!!」

オダと出会い、始めて声を荒げたリディア。

このことにオダは大いに驚いたが、そのことなど気にせずリディアは話を続ける。

 

 

 

「魔術戦において、一つの隙が命取りになるのよ!あなたがいくら魔術戦に慣れていても本職じゃないじゃない!」

リディアの言及に押し黙るオダ。

 

 

 

「そもそもオダ君・・・人を殺したのは初めてよね?」

「!!!」

オダが今まで目を逸らしていたことを突きつける。

 

 

 

「オダ君の前職については私も少し話を聞いたわ。西部方面の国境警備、あそこは他の国境警備と比べて比較的平穏な場所よ。そんなところで働いているオダ君が人を殺す経験なんてしたことがない。現に・・・」

話しを止め、オダの目を見つめるリディア。

 

 

 

「オダ君、寝ている時魘されているわよ」

オダは知らない事実を突きつけられた。

 

 

 

「命を賭けた魔術戦、慣れない行軍、そして人を殺める・・・今のあなたの精神状態はとても不安定よ。そんな状況で次追手と闘うとなると、生き残れるかわからない・・・これで分かった?今休息する必要性が」

ここまで理路整然と言われると反論する余地はなく、リディアの言う通り休息を取り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも確かに今の行軍速度は不味いわね・・・」

「そうなのか?」

休憩中今後のことを話しているとリディアが現状を呟いた。

 

 

 

「そりゃそうよ。追手からしたら速度が遅い分直ぐに見つけやすいんだから」

「じゃあこんなとこで休憩をしている場合じゃ・・・いえなんでもありません」

リディアの鋭い目線を受けて、言い止めるオダ。

 

 

 

「そうね・・・オダ君、加速/加重系統の魔術は得意?」

「加速/加重系統ですか?どうして?」

「いいからいいから」

「・・・まあ学院レベルでしたら習得していますが」

「よし、じゃあいけるわね」

そう言うとリディアは立ち上がり、体を解し始める。

 

 

 

「あの、リディアさん・・・何をしてるんですか?」

「何って・・・ああオダ君は知らなかったんだ」

リディアは説明をし始める。

 

 

 

「軍直伝、負傷者運搬法(ストレッチャー)よ」

 

 

 

説明するとこうだ。

負傷者に重力系の魔術をかけ、負傷者の体重を軽減させる。

そして運搬者は自身に身体強化系の魔術をかけ、負傷者を運ぶ。

 

 

 

「まあ私は魔術が使えないから、自分でかけてね。大丈夫、私も軍で鍛えられてるから身体強化の魔術がなくてもオダ君を担ぐくらい・・・」

「まてまてまて!!!」

リディアの話を遮るオダ。

 

 

 

「どうしたの、オダ君?」

「つまり?俺は?リディアに担がれて移動するということか?」

「その通り♪」

「ぜっっっぅたい嫌だ!!!」

断固拒否、それもそうだろう。

男性が女性に、しかもリディアという美女に背負われて移動するのだ。

普通の感性を持っている人ならば恥ずかしいことこの上ないだろう。

後に残るのは黒歴史という悲惨な現実だ。

 

 

 

「もう、我儘言わないの!このままだと体力が弱まって、追手に殺されてもいいの?」

「っう!」

「そもそもこんな人気のない道、誰も通らないんだし、誰からも見られないじゃない」

「・・・でも」

「戦場では小さな自尊心で命を落とすこともあるのよ。オダ君、お願い・・・」

「・・・わかりました。ですがリディアさんが少しでも疲れたら降りますからね」

「はーい」

 

 

 

その後リディアは一切疲れを見せず、僅か2日でヨークシャー地方まで辿り着いてしまう。

このことに男としてのナニカを失ったオダと、その数年後、妹()()にこの話を聞かせると、貴族の淑女として無警戒であるとされ、正座で説教を受けるリディアであった。

 

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