元魔術師の付き添い人になりました   作:つりーはうす

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13話

フェジテで戦いの音が鳴り始めた同時刻、オルランド郊外。

イグナイト卿の別荘から約3千メトラ離れた丘の上にオダは立っていた。

「なるほど・・・邸宅の周りには約数十人の完全武装の魔術師と道がない茂みには魔術式の(トラップ)か。見たところ非魔術の(トラップ)は見えないな。さすがは魔術を心酔している貴族ってとこか?」

 

 

 

オダの右目には小型の照準器(スコープ)が装着していた。

なんとその照準器(スコープ)の性能は5千メトラ先まで覗くことが出来、夜間でもまるで日中のような精度で見れ、さらには100メトラ以内で使うと建物の中まで透視することが出来るというとんでもない化け物照準器(スコープ)である。

これだけでも驚くべき性能だがそれだけではなく、魔力探知、熱探知といったこともできるため、どこに、誰が、何があるか一目でわかり、かつ、位置の特定(スポット)もできるという軍の狙撃手が聞いたら唾を垂れて欲しがる性能である。

しかしこの照準器は世には出ていない。

なぜなら・・・。

 

 

 

「まったくあの天災教授。普段発明している時は使い物にならないのしか作らないくせに、ふととんでもないものを発明するな」

そう何を隠そうアルザーノ魔術学院が誇る?天才教授(オーウェル)による個人的な発明であるからだ。

作られた経緯はなんでも身分差の恋に落ちた青年がその女性の家に行くまでの・・・なんだったけ?くだらなすぎて思い出せないオダであった。

少し昔の思い出に耽っていたオダだが、気を引き締める。

索敵できてもそれはスタートラインにしか立っていないのだ。

今からが本番である。

 

 

 

先程いた丘から下り、イグナイト卿の別荘付近。

オダは自身に隠密潜行系の呪文を付呪しているが、それで気づかれないほどイグナイト卿の子飼いは甘くない。

戦闘が始まると気づかれるのは大だが、一人でも削るため、行動を開始する。

 

 

 

まず一人、魔銃に音声遮断魔術(サプレッサー)を付呪し、無音の弾丸が敵魔術師を撃ち抜き、無力化する。

完全に音は消したはずなのだが、どうやら敵魔術師同士お互いに意識を同調していたらしく、すぐに居場所が突き詰められた。

事実、すぐさまその場所に攻性魔術(アサルトスペル)()()()()()()()()()、オダがその場を離れた数秒後、魔術が着弾してあたりは火の海と化した。

 

 

 

「せめて味方の生存ぐらいは確認すべきだろ」

オダは一人愚痴ったが、敵は待ってくれない。

おそらく敵全戦力なのだろうか、素早くオダの周りを取り囲む。

さすがはイグナイト卿子飼いの手練れ、動きに全くの無駄がない。

敵魔術師はそれぞれ魔術を発動させ、炎が、凍気が、雷が、嵐がオダの元へと駆け巡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、少し時間がかかったな」

なんとか敵魔術師をすべて無力化し、ようやく邸宅が目の見える範囲にまで近づけることが出来たが、その様子を見て不思議に思う。

なぜなら照準器(スコープ)で覗くと、建物内には一人しかおらず、さらには(トラップ)すらないからだ。

(一体どういうことだ?)

オダは警戒して邸宅に近づくとなんと正面玄関(エントランス)がゆっくりと開く。

まるでオダを歓迎しているかのように。

オダは照準器(スコープ)だけでなく、自身の索敵魔術をも使用したが屋内には他の人間の存在がない。

オダはゆっくりと警戒して建物の中へ入っていった。

 

 

 

「安心したまえ。罠などないよ」

別荘の一角、アゼルがいるであろう部屋から声がかかる。

「初めましてというべきかな、それともようこそというべきかどちらがいいかね?オダ君」

部屋の奥にはアゼル=ル=イグナイト卿本人がいた。

オダはアゼルに向け銃口を突きつける。

 

 

 

「その前に何か聞きたいことがあるんじゃないかね?まあ座り給え」

その声を無視し、オダはアゼルに向かって発砲した。

「ふむ・・・上官の命令を無視して発砲か」

弾丸は顔の横を掠め通り過ぎたが、アゼルは平然としてオダを見ていた。

「最後のチャンスだ。二度は言わん。大人しく座って話を聞け」

先程までの温厚とした表情とは打って変わり、厳しい目、いや人を人として見ない目でオダに強い口調で話しかけてくる。

 

 

 

「これがあなたの本性ですか?イグナイト卿?」

「ふん、平民、いやそれよりもしたの下賤の者が殿上人である私と対面して話せるのだ。まあそんな些細なことはどうでもいい、それよりもだ」

オダの言葉を躱し、アゼルは本題に移る。

 

 

 

「貴様、イグナイト家に仕えろ」

急な提案に押し黙るオダ。

アゼルはオダのことなどお構いなしに話し続ける。

「貴様の実力は書類を通して把握している。リディアという荷物を抱えて私の追ってから逃げ果せ、挙句の果てには私の部下を倒す実力がある。そして最後にはありえないと思っていたが、配備していた私の子飼いを倒してこの邸宅を落とすまでに至るその実力。本当なら貴様はリディアと共に消す予定だったが、これほどの人材を消すには少々惜しい。リディアを差し出し、貴様のすべてを我がイグナイト家に捧げるのであれば、これまでの出来事は不問にしてやる。なに我がイグナイト家の力を使えば無知な平民どもは貴様の評価などすぐに忘れよう。さあ私の手を取れ。下賤の者にとってはこの上ない栄誉であろう」

 

 

 

この男は何を勝手に話し始めたのだろうか、そうオダは思った。

オダにとって一番の関心ごとはそれではない。

「そんなことより一つ聞きたいのですが」

「下賤の者の分際で私に質問だと?貴様、調子にのって・・・」

「孤児院を襲ったのはあなたですか?」

オダはアゼルの話を遮って質問した。

本来なら私の話を遮るなど不遜だとして怒るはずのアゼルだが、珍しく質問に答えた。

 

 

 

「そうだ」

アゼルが何の躊躇いもなく肯定する。

「貴様を釣るには餌が必要だからな。まあ孤児なんていうのはこの国にとって不要な者だ。貴様らを見つけるための最後の奉公をしたにすぎん」

アゼルはさらに続けて話したがオダの耳には何も届いていない。

オダがすべきことはただ一つ。

 

 

 

「さて貴様の質問には答えてやった。今度はこちらの番だ。仕えるのか、仕えないのか、どっち・・・」

アゼルが言い終える前にオダは弾丸を放った。

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