元魔術師の付き添い人になりました   作:つりーはうす

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15話

魔銃"ジムノペディ"から放たれた弾丸を確認するとオダはその場で倒れた。

いやよくぞここまで命が持っていたことだ。

奇跡に値するものであろう。

それより撃たれたアゼルはというと。

 

 

 

「馬鹿な馬鹿な馬鹿な」

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まるで無傷、オダの命を賭けた攻撃は失敗したかのように見えたが、攻撃を受けた当の本人は違うらしい。

「なぜだ、傷は負っていないはず。なのになぜ私が滅びる!」

この場にその問いを応える者はなく、アゼルの体は徐々に崩壊していく。

「くそ!これからなのに。真理を得た私のような存在が、頂点に立つべき私がこのような所で・・・嫌だ嫌だ嫌だ」

地面を這い蹲い、アゼルの命が燃え尽きようとするその時。

 

 

 

「他人の命は見捨てるくせに自分の命は捨てないんですね、イグナイト卿?」

なんとオダがアゼルを見下ろしていた。

 

 

 

「き、貴様!なぜ生きている!!!」

「いいえ、俺もすぐに死にますよ。条件起動式の魔術が発動しただけです。まあ一種の一時的な蘇生術ですよ。俺程度の技量では数分も持たないのですのでさっさと済ませますね」

「ま、待て」

「地獄で懺悔しろ」

オダがアゼルに向け、残っていた弾丸をすべて撃ちつくす。

帝国に多大な影響力を保持していたアゼルの最後にしてはあっけないものだった。

 

 

 

「・・・仇を殺したのにたいして何も感じないな」

アゼルを討った後、オダは倒れ、発動していた蘇生魔術の効力も失われ始めて生命活動が終焉しようとしていた。

この場に凄腕の法医師がいたとしても、もはやオダの命を救うことは不可能であろう。

思い起こすことはない、いや、最後にあの人と会っておきたかったな。

そう思いオダはゆっくり目を閉じる。

意識が遠のいていく中、空から聞きなれた人の声が聞こえた。

 

 

 

 

後日、イグナイト卿、死去という衝撃的な訃報が帝都に流れた。

第一発見者はなんと行方不明であったイグナイト卿の娘、リディア=イグナイト、そして彼女を保護した魔女セリカ=アルフォネアとその弟子グレン=レーダス。

イグナイト卿の死因は公表されなかった。

リディア=イグナイトに関しては宮廷魔導士のオダに誘拐されたと報じたが、それは誤報で、実は反政府組織の手によるものからオダが守ったこと、オダに殺されたと思われた魔導士もその反政府組織によるものでオダに罪を擦り付けたことが判明。

このことからオダは護衛対象者を一人で守り抜いた英雄として評価を一変させる。

そのオダに関してはリディア=イグナイトを逃がすことに成功した引き換えに敵魔術師と相討ち、その場で死亡したと公表された。

帝国政府はオダをレザリア国境方面で殉職した一人の国境警備隊職員の横に殉職者として埋葬される。

孤児院の火事については周りから忘れられたそうで誰も触れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5年後。

帝都郊外、ついこの前までイグナイト家の立派な別荘があった地には地面が少し焼き焦げた跡以外は何も残っていない。

その場を現女王府国軍大臣兼統合参謀本部長リディア=ル=イグナイトがゆっくりと、何かを噛みしめるように眺めていた。

 

 

 

「閣下、またここにいらしたのですか」

リディアを呼んだのは腹違いの妹、イヴ=イグナイト。

帝国宮廷魔導士団特務分室室長としてリディアの跡を継ぎ、この若さで特務分室を取り仕切っている俊才である。

そしてリディア自ら見出した、今年特務分室に入隊した執行官ナンバー18”月”のイリア=イルージュと供に、姉でありイグナイト家当主のリディアを迎えに来た。

 

 

 

「なあにイヴ、イリア?」

「閣下、陛下がお呼びです。フェジテで”天使の塵(エンジェル・ダスト)”が目撃されたことに関しての会議が始まります。早くいらしてください」

「そうですよ、我があるじ。いつも時間通りにこなくて周りの老害どもが怒っていますよ」

「あ~もうそんな時間か~。それとイヴ?公式の場じゃ無いときは閣下って呼ばないでっていつもいっているじゃない。あとイリアもそんな言い方しないの」

「すいません、姉さん」

「わかりました~我があるじ」

リディアは二人に軽く注意すると、その場を心地よい静けさに包まれた。

少し経ってから、イヴが話しかける。

 

 

 

「姉さん、いつも僅かな時間が空いたらよくここに来ますね。やはり父上のことが・・・いえ、なんでもありません」

「私も聞きましたよ、我があるじ。あんな国家のゴミなんてさっさと忘れればいいのに。やはりお優しい方ですね」

あの日の真実は関係者以外箝口令が敷かれた。

もちろん妹のイヴや側近のイリアにも真実を伝えていない。

でもあの事を忘れない、いや忘れてはいけない、その気持ちでリディアは時間を見つけたらここに来ているのかもしれない。

 

 

 

「ねえイヴ覚えている?イグナイト家の家訓を教えたあの日のことを」

「はい、覚えてますけど・・・それがどうかしたんですか?」

「ん~じゃあイヴ、もう一度聞いて。私はこれから世の人々のため、暗き闇を払い、行先を明るく照らし導く者になる。イグナイトの正義と理想を実現させるわ。だからイヴも手伝ってね?もちろんイリアよも」

「もちろんです、姉さん!」

「かしこまりました、我があるじ〜」

リディアはもう一度自分に対して、二人の妹に対して、そして亡き彼に対して誓う。

二度とイグナイト家は道を外さない、そうリディアは心に秘め、三姉妹は帝都へと戻った。

 

 

 

「さてと帝都に戻りながら久しぶりのスキンシップをしないと。ねえ、イヴ。あの子とはどんな感じなの?」

「グレンとは何の関係もありません!」

「誰もグレン君のこととはいっていないのに・・・やっぱり気になっているのね!」

「そりゃ室長は先輩が辞めてからもいつも気にかけていますからね。でもこのペースだとセラさんにとられますよ?ただでさえ遅れているのにセラさんを先輩が務めている学院に派遣するなんて。危機感ないんですか?」

「イリアは余計なこと言わない!!!」

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