元魔術師の付き添い人になりました   作:つりーはうす

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幕間2

帝都オルランド郊外、軍の演習地には今年新たに任官された、軍、警察、国境警備隊、宮廷魔導士団の新人(ルーキー)が集められた。

毎年恒例、各組織の新人研修期間が終わる時期に行われる新人合同訓練(レクイレーション)である。

 

 

 

「・・・なぜ毎回こんなものに参加せねばならんのだ」

そう呟き、彼らを見下ろしているのは女王府国軍大臣兼国軍省統合参謀本部長、アゼル=ル=イグナイト卿。

多忙な日々を送っている彼といえども、この訓練が国軍省主催なため、毎年冒頭のみは現れている。

この後いつも通りすぐ帰るのだが、そんなことは知らない新人(ルーキー)たちは是非自分の顔を知ってもらおうと意気込んでいた。

 

 

 

「リディアよ、後は頼んだぞ」

「はい、父上」

合同新人訓練、開幕である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の訓練で周りから注目されている新人(ルーキー)がいた。

その名はオダ、それもそのはず彼のアルザーノ魔術学院を首席で卒業した逸材である。

そのため本来なら羨望の眼差しで見られるはずだったのだが、名誉ある宮廷魔導士団に入らず、この場で最も格が低い国境警備隊に入隊した変わり者とし、周りからはもちろん身内からも浮いていた。

 

 

 

「諸君、傾注!」

この場でもっとも階級が高いであろう将校が話し始めた

 

 

 

「諸君らもすでに聞いていると思うが、今回の訓練内容は生存戦(サバイバル)だ。期間は5日間、()()()()()()が条件だ。相手を死なせないのならどんな手を使っても良い。一人で参加するのも、部隊を組むのも構わん。ただし部隊の人数は分隊規模の10名まで、そして部隊で参加するものは、指揮官が討たれたらその場で全員脱落である。これを踏まえて部隊を組むものはこの後本部まで部隊人数を申請すること、一人で参加する者を同様だ。以上だ。では諸君、明日に備えて準備したまえ」

 

 

話しが終えると、皆は一斉に生き残りをかけて部隊を集め始めた。

もちろんオダは誰からも誘われず一人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この子一人で参加する気?正気なの」

この訓練の責任者の一人であるリディアが申請書を捲っていると、どこの部隊にも参加しない例の新人(ルーキー)の書類を眺めていた。

 

 

 

「彼は首席だけど・・・それで乗り越えられるほどこの訓練は甘くないわ。特に宮廷魔導士団と当たったらどうなるか」

彼女は不安を覚えたが、既に賽は投げられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練初日

広大な敷地を有するこの演習場といえども、全員が一堂に会した初日は至る所で魔術戦が行われていた。

一人で参加しているオダはというと・・・

「ふう・・・もう少しでバレるところだった」

絶賛隠れん坊の真っ最中である

 

 

 

このような作戦は他の参加者からは弱腰と見られるが、監督者目線で見たら評価の高い作戦である。

なぜならこの訓練の達成目標は生き残ること、多くの敵を倒すことではないからだ。

オダは初日から3日間まで隠れ、逃げに徹することで、一人ながら生き残ることが出来た。

 

 

 

4日目

ここまで来ると新人という名を被った天才か、魔術ギルドや魔導省、軍から帝国宮廷魔道師団へ入団という名義上新人と扱われている猛者しか残っていなかった。

そして、ここまで残っている多くの者は部隊を組んでおり、一人(ソロ)で参加していた者は全て退場しているはずなのだが、逃げに徹していたオダはなんとか生き残っていた。

 

 

 

「君が例の首席か・・・悪いがここまでだな」

三人一組(スリーマンセル)一戦術単位(ワン・ユニット)が三個、指揮官一人という教科書通りの分隊がオダの目の前に展開されていた。

この部隊はおそらく軍から宮廷魔導士団へ入団した手練であり、実力も全員がC級相当の腕の持ち主である

 

 

 

「悪いことは言わない、降伏したまえ。いかに君といえども一人で分隊を相手では勝ち目が見えないと思うのだが?」

その答えに対し、オダは拳銃嚢(ホルスター)から魔銃”ジムノペディ”を手に取り、拒否を示した。

 

 

 

「まったく・・・勇敢と蛮勇をはき違えているようだな。総員、攻撃開始」

指揮官の命令により攻撃が開始した

灼熱の炎が、凍て付く冷気が、雷閃がすさまじい勢いでオダを襲う、万事窮すかと思われたその時

 

 

 

敵の魔術をすべて相殺してしまった。

 

 

 

「な、なんだと!」

驚くのは無理もない。

なんせ一人で分隊の攻撃をすべて相殺させるなど本来ならあり得ないことが目の前で起きているのだから。

おそらく20、いや30以上の予唱呪文(ストック)を、すべて連続起動(ラピッド・ファイア)させても一人で全て防げるかどうかわからないだろう。

彼らは魔術に精通していることから、このことを理解してしまった、ありえない、と。

そのような超人的な行為を、卒業して間もない目の前の新人(ルーキー)がしたことに驚き、混乱していると、敵が浮足立っているのを前に何もしないわけがなく、僅か57秒、1分も掛からず、一人で分隊を撃破した。

 

 

 

「嘘でしょ・・・」

遠目の魔術で覗いていたリディアはこの結果に驚愕していた。

ここ3日間例の新人(ルーキー)が現れなかったため、すでに脱落したと思っていたが、思わぬ結果に口が閉じない。

予唱呪文(ストック)に関しては彼が持っている魔銃だとリディアは判断した。

リディアの同僚にも同じような凄技をする仕事中毒(ワーカーホリック)の執行官がいるため、出来ないことはないのだろうが、学院を卒業したばかりの新人(ルーキー)にそんなことは出来ないと結論付けた。

それよりも彼の戦闘慣れの異常さに戦慄を覚えていた

()()()()()()()()()()()()()()()()常に次の最善手を迷いなく移し、最短で遂行する。

熟練の兵士でも僅かな者にしか出来ないことを、学院を卒業して間もない彼が出来るなんて本来ありえないのだ。

一体どこで学んだのか?それともこれが才能だろうか?

とんだ新人(ルーキー)が現れたものだ、そう思っているとすでに彼は移動したようでその場からいなくなった。

 

 

 

新人合同訓練(レクイレーション)終了

あれ以降、戦闘を避けたオダは他の部隊とともに生き残れた。

逃げに徹し戦闘を避けるその手法には他の参加者からは異議も唱えられたが、監督者からはこれこそが生存戦(サバイバル)であると評価され、一同の前で褒められた。

元来自分の出自が原因でこのようなことは経験してこなかったオダにとって、これが一番の痛手であったのかもしれない。

 

 

 

1人で参加し、最後まで生き残るということを初めて成し遂げたこの前代未聞の結果に多くの人が驚愕したが、その僅か1年後、軍士官学校を歴代最短で卒業し、14歳にして帝国宮廷魔導士団に入団した赤髪の女性魔導士がなんと一人で敵を全て打ち倒して生き残るという偉業を成し遂げることにより、この記録が色褪せることは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、オダがあの時相手した部隊の一人に連れられ、帝国宮廷魔導士団の本部、業魔の塔へと足を運んだ。

どうやって分隊規模の攻撃を掻い潜ったのか話を聞かせてほしいと必死に言われたのでついて行くことにした。

 

 

 

「この部屋にみんながいるんだ、入ってくれ」

「ああ分かった・・・だがなぜ鍵を閉めるんだ?」

「!!!」

部屋に入ると否やすぐに後ろの扉が閉まる()()()()()()オダは案内してくれた人に聞いた。

 

 

 

「へえ?どうやら勘だけは良いようじゃないか。さすがは生存戦(サバイバル)を闘わずして生き残ったってわけか」

部屋の中から声が聞こえたので見ると、あの時の指揮官と隊員が完全武装でオダの目の前に立っていた。

 

 

 

「いったい何の用だ」

「なぜ国境警備隊みたいな奴に負けたんだ?と考えてな。どうせあの魔道具みたいな銃のおかげなんだろう?あれからお前の評価はうなぎ登りだ。それを祝って俺たち流の歓迎をしてやらないとな、と考えてな。何、この部屋では中は一週間たっていても外ではたったの1日しかたっていない。さあ、魔道具なしで自分が持っている本来の実力で思う存分やり合おうではないか!」

そう言うと彼が率いる部隊は魔術を発動させた

 

 

 

「"刻隔ての間"の使用を出したかって?私は出してないわよ」

リディアの元にこのような連絡が届いた。

気になったので見に行くと、例の新人が部屋から出てきた

 

 

 

「ちょっと君、この部屋は宮廷魔導士以外立ち入り禁止よ。どうやって入ったの!」

「どうしてといわれても・・・中にいる人達に聞いてください」

リディアは部屋の中を見ると、死屍累々に重なっている魔導士がいた

 

 

 

「これ・・・まさか、あなたが!」

「本人に聞いてください」

そう言うとオダは足早にその場から立ち去った。

リディアは追いかけ、問い詰めようとしたがまずは彼らの手当が先と考えた。

 

 

 

その後、両者とも多忙な日々を過ごす中、あの日顔を合わせたことは記憶の彼方へと追いやられたが、その時は1年後に再び会い見えるとは思ってもいなかっただろう。

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