「こんにちは院長先生、お久しぶりです」
「おや、オダ君じゃないですか。元気にしていましたか?」
久しぶりにあった院長は、元軍人とあってか昔から変わらない筋骨隆々の体つきではあったが、年には勝てないようで髪は薄っすらと白髪が目立ち始めた。
オダは、リディア=イグナイトの護衛をせよ、との辞令が渡されたその後、空いた時間を利用して実家である孤児院を訪れていた。
いかに帝国の政治経済の中心地であるオルランドとはいえ、光があるところに影がある、というように外延部は貧民街と化しており、中心部の静寂さ、華やかさとはかけ離れているところに孤児院はひっそりと建っていた。
「髪は少し伸びたようですね。背も伸びましたか?体つきもすっかり良くなりましたね」
「髪は伸びましたが、背はそんなに変わっていませんよ。まあ毎日鍛えているので良くなってもらわないと困ります」
身長も院長と同じ180cm台に到達してからはそんなに伸びていないと感じているが、他人から見たら少しは伸びているのだろうか。
体つきも学生時代の線の細い体と比べて引き締まり、大人の体格へと変わっていった。
「昨年の
「すいません。実は仕事が立て込んでいてこの後すぐに発たなければいけないんです」
「おやおや。そんなに国境警備隊は忙しいのですか?」
「いや・・・実は今回国境警備隊から宮廷魔導士団へと転属になりまして」
オダの報告を院長先生が聞くと目を見開き、彼の手をとり喜んだ。
「やったじゃないですか!オダ君。あの宮廷魔導士団に入ることが出来るなんて。こんな機会めったにないですよ」
「でも今以上に忙しくなります。それに孤児院にも足を運べなくなりますし」
「気にしなくていいんですよ、オダ君。今でも多くのお金を送っているんですし、孤児院のことは気にせず少しは自分にもお金を使ってください。自分を大切にして始めて他者にも目を配れるんですよ」
「はい院長先生」
その後、二人はしばらく雑談に耽っていた
「そういえば食べる時間はあるのですか?私特性の咖喱は」
院長が話しかけたことで気づいたようで、いつの間にかこんなに時間が経っており、待ち合わせの時間が刻一刻と近づいていた。
「もう時間が厳しいので今度にします。そういえば子供たちはどこにいったんですか?」
「ああそういえばオダ君が来たのはちょうど昼食後のお昼寝の時間でしたね。いつもはもっと早く起こしていたんですがどうやらオダ君と話し込んでいてすっかり忘れていたようです」
院長先生・・・俺としては嬉しいんだけどガキどもにとってせっかくの遊びの時間を昼寝で過ごしてしまうとは。
オダは遊び盛りの子供たちにすこし同情した。
「そろそろ子どもたちも起き始めると思うのですが・・・」
「あ~兄ちゃんだ!」
院長が言い終えそうなときにちょうど起きたのか、子供たちがオダに向かって駆け寄ってきた。
「兄ちゃん兄ちゃんいつまでいるの?」
「お土産は~?」
「魔術教えてよ~」
一斉にオダに向かって話しかけ、彼が少し困っているのを見かねたのか、院長が子供たちを諫めた。
「こらこら。オダ君はお仕事の合間に来てくれてもう帰るんですよ。迷惑をかけないように」
「「「え~つまらな~い」」
いや、院長先生が起こしていたら少しは遊ぶ時間も作れたのだが・・・。
まあそれは言わないのが愛嬌というものだ。
「そういうことだ、悪いなまた今度だ」
「またね~兄ちゃん」
「ばいばい~」
子供達の様子を見てオダは笑みを浮かべた
この光景を守っていこう、そう誓い孤児院から立ち去った。
辞令に書かれている集合場所となっているオルランド駅前、帝都の玄関口とあってか、人通りがとても激しい箇所で有名な場所である。
ただの観光で利用するなら少し鬱陶しいだけで特に支障はないのだが、今回は護衛。
護衛として、いまにもどうぞ暗殺してくださいと言わんばかりの混雑さはとても問題である。
本当にここでいいのか?もう一度辞令を見直したその時、
「あの・・・オダさん、ですか?」
後ろから声をかけられ振り返ると、先日国境付近で治療を施した女性がいた。
まさか・・・
「あの・・・まさかと思うのですが護衛対象者であるリディア=イグナイトさんですか?」
「はい、リディア=イグナイトです」
まさかの護衛対象者本人のお出ましである。