元魔術師の付き添い人になりました   作:つりーはうす

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7話

朝になった。

オダは念のため一晩起きていたが、何も起きずに夜が過ぎた。

「おはようございます、オダさん。よく眠れましたか?」

「護衛がよく寝ちゃダメでしょ!」

つい突っこんでしまった。

すると彼女は口元を押えて笑っていた。

 

 

 

「なにか笑うところはありましたか?」

「いえ。オダさんの素の表情はこんな感じなのかなって。移動中は私に対して一歩距離を置いていたようでしたし」

そういわれるとオダにも思うところがあったのか居心地が悪そうにしていた。

 

 

 

「これから長い付き合いになると思うんだしさ、呼び方変えてみない?オダ君」

「呼び方を変えるって・・・もう変えているじゃないですか」

「ほらほら私は変えたんだしさ、オダ君もね」

「・・・リディア」

「なるほど・・・呼び捨てで攻めてきたか~。未婚の女性に呼び捨て、大胆だね〜オダ君は」

「あなたが呼び方を変えてみてって・・・いえ、もういいです。早く行きますよリディアさん」

「あ~、さん付け禁止~」

一晩で何かが吹っ切れたのだろう。

まあ適度に無視すればいいか、オダはそう思いリディアを無視して食堂へと向かった。

 

 

 

朝食を取り、目的地の修道院に向かうため馬車停に行く。

しかし・・・

「え、修道院までの馬車がないんですか?」

「すまんね、兄ちゃん。なんでもえらい貴族様がこの辺で狩りをするっていうんで馬を全部持って行っちゃったんだよ。俺たちもそれは困るて言ったんだけど、その貴族様はふだん俺たちが一日で稼ぐ金の倍の料金を払ってくれたんだ。それに馬を借りるのも2,3日という短い間だけだし、その日ごとにも同じ額の金を払うっていう気前のいい貴族様でさ。だからここら辺の馬は全部その貴族様が借りてんだ。だから当分は馬車には乗れないよ」

 

 

 

まいったな、馬車でさえ半日はかかる距離を歩いてか・・・俺は何とかなるとしてリディアさんは大丈夫か?

 

 

オダは今後の予定に不安を思い、現地の人から説明されたことをリディアに伝えると、

「オダ君私は大丈夫よ。これでも元軍人なんですから」

腕をまくって自信げに伝えた。

 

 

 

いやなぜ腕をまくる必要があるのか不思議に思ったが、オダはそれには言及せずさらに続けた。

「でもリディアさんはまだ怪我が治って間もない時期ですし長距離の移動はあまりよくないんじゃ・・・」

「私は魔術機能は失ったけど、体の機能は取り戻したわ。あの時受けた傷も誰かさんの治療のおかげですっかり塞がっているし」

「・・・分かりました。ではゆっくりと歩きますので疲れたら言ってくださいね」

「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駅から出発して数時間後、二人は人里離れた場所を歩いていた。

 

 

 

「でねーオダ君。イヴったら私にね、ありがとうって言ったのよ。普段は素直じゃなくて本音を滅多に言わないあの子がありがとう、よ。凄く嬉しくて感傷に浸りたかったのに、あの時アイツらが乱入してきて・・・」

薄々気づいていたがこの短時間でオダは確信した。

本人は自覚していないがリディアは筋金入りの姉妹愛(シスコン)だということを。

全くよく話題が尽きないな、オダがそう思っていると・・・

 

 

急に映像が視えた。

足元の木の枝をリディアが踏んだ直後、目の前が一瞬にして血で真っ赤に染まった光景が。

狙撃だ。

周りを警戒していたオダが気づかないとなると、よっぽどの遠距離から狙撃をされたのだろう。

狙撃手(スナイパー)は1ミリも逸らさず二人の後頭部に命中させ、二人が倒れた後も確実に仕留めるためか二発、三発と二人の急所を射抜く。

オダが最後に見たのはリディアの周りが血で染められ、背徳的な、何とも言えない光景だった。

その光景を見た直後、オダの視界は暗転する。

 

 

 

映像はそこで途切れ、二人が歩んでいる目の前には先ほど視た木の枝が落ちていた。

リディアが木の枝を踏みかけるその瞬間、

 

 

 

「リディアさん!すみません」

「え、きゃあ!」

オダはリディアを横から押し倒し、その反動で近くの茂みの中に潜り込むとほぼ同時に、先ほど二人が歩いていた場所には一筋の閃光が通り過ぎていった。

瞬時に遠目の魔術を発動し、狙撃された方向を見ると、薄っすらとだが二人の人影が見える。

この状況から考えると狙撃手(スナイパー)観測手(スポッター)だろう。

オダの視線を感じたのだろうか、二人は素早くその場から立ち去った。

 

 

 

この超長距離を狙いすまして標的に当てる技術、標的を外すと分かるといなや、すぐに撤退を決断できる判断力。

おそらく、いや明らかに専門家(プロ)の仕事だ。

二人はあの時確実に死んでいた、俺の異能がなければ。

 

 

 

「な、何」

「リディアさん、落ち着いてください。敵襲です」

いま俺たちは襲われている、その現状を理解すると彼女のその後の頭の回転はとても速かった。

さすがは元特務分室室長、魔術能力を失っても数々の修羅場を掻い潜ってきたその戦闘センスは未だ健在のようだ。

 

 

 

「どこから狙撃されたか分かる、オダ君?」

「ちょうど真後ろ、距離でいえば約2、3千メトラといったところですかね。おそらくさっき落ちていた木の枝で距離感を図っていたとしても、この距離からあんな精密な狙撃をするなんて、一体何者でしょうか?もう去っているようですが、おそらくあの丘から狙撃してきたようです。見えますか?」

 

 

 

オダはリディアに魔術で視覚を共有しようとしたが・・・

「ごめんなさいオダ君。私魔術能力を失っているから共有出来たとしても見ることは出来ないの。もちろん肉眼でも見えないわ」

 

 

 

オダは彼女の置かれている状況をすっかり忘れていた。

「すみません」

「いいのよ、気を使わなくて。それよりも周りの敵に集中して」

そう言われ、周りに索敵用の魔術を展開する。

 

 

 

「どう?敵は?」

オダは索敵用の魔術を終了させた。

「リディアさん、囲まれています」

そう言い終えると周りから顔を隠した数人の魔術師が現れた。

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