注:自分は鳥取の方言は分からないのでそれっぽい雰囲気の口調で書いています。
SIDE:カエル顔の医者(冥土帰し)
土砂崩れに巻き込まれたアメリカ人の男性――ロバート・テイラー君を武田家の屋敷に運んでから半日が経った。
美沙さんによって事態を知った武田家の人たちからすぐさま屋敷の一室を借り受けることが出来、そこで私はロバート君の治療を無事行うことが出来た。
ロバート君の術後は良好で、私のその後の役目は定期的な診察のみとなり、その間のお世話は鳥羽君と美沙さんに任せる事となった。
――後から聞いた話だが、どうやら美沙さんも看護師だったらしい。
ロバート君の治療を終え一段落着いた後、私はすぐこの屋敷の主である
智恵さんの私室に通された私は、まず開口一番に智恵さんにお礼を言った。
「緊急事態とは言え、部屋をお貸しくださりありがとうございました。ご迷惑だったかとは思われますが、そのおかげで患者を治療することが出来ました」
「なぁに、気にする事はねぇで。困った時はお互い様だがな」
そう言った後、智恵さんはロバートが完治するまでの間、私と鳥羽君をこの屋敷に滞在することを勧めてくれた。
私としてもロバート君の術後の様子も診ておきたかったのもあってその提案は好都合だった。
そうして、武田家から電話を借りて米花私立病院に帰る日取りが延びる事を伝えたそれからは、私たちは少しの間、この武田家にお世話になる事になったのである。
すると、それから数日と経たずして、私は庭を散歩する鳥羽君を見かけた。
鳥羽君はこの時間帯、ロバート君の看病しているはずなのでここでぶらぶらしているはずはないのである。
されど、彼女は性格はさておき仕事を投げ出すほどのさぼり魔でもないはずなので疑問に思いながら私は彼女に声をかけた。
すると、私に声をかけられた鳥羽君は苦笑を浮かべながら口を開いた――。
「いやぁ~、すみませんね先生。本当ならロバートの看病は私がやってるはずだったんですけど……。美沙ちゃんが
「美沙さんが?そりゃまたどうして?」
私がそう尋ね返すと、鳥羽君は意味ありげに「ンフフッ」と含み笑いを浮かべると、私に耳打ちをしてきた。
「ロバートと美沙ちゃん。……ここ数日で随分とまぁ
その言葉に私は素直に驚いた――。
――聞けば土砂で口の中を切って喋れないロバートとローマ字を使った筆談をしているうちにお互いに意識し始めたらしい。
ロバートは日本語は喋る事は出来たが日本の文字の読み書きは出来なかったため、結果会話をする時はローマ字を使った筆談となったのだが、その筆談中にロバートと美沙さんは相思相愛になったのだという。
それ故、ロバートの看病は自分に全て任せてはくれないかと、鳥羽君に美沙さんから要望があったのだ。
まぁ、彼女がそれを望むのなら断る理由がない私としては別にいいのだが、それだとロバート君が回復するまでの間は完全に鳥羽君が暇を持て余す事になってしまう。
この屋敷は山奥にあるため、暇をつぶすための娯楽などは無きに等しい。近場の街まで行くのにも車で片道数十分はかかる距離だ。
いっその事、私の車を鳥羽君に貸して先に病院に戻らせるという考えもあったが、それでは鳥羽君を雑にあしらうようであんまりだと直ぐに却下した。
はて、どうしたものかと悩んでいると、屋敷の正面を伸びる道の向こうから一台の車がやって来るのが視界に映り――。
――それからそう長い時間を置かずして鳥羽君の問題も解消されることになった。
――やって来た車に乗っていたのは、東京に在住し今は里帰りのためにこの屋敷に戻って来た、武田家の次男夫婦とその娘たちであった。
夫である
そうして龍二さんたち次男一家がやって来てから、鳥羽君は紗栄ちゃん絵未ちゃんの遊び相手をするようになった。
鳥羽君は性格に問題のある女性であるが、意外にも面倒見のいいところがある。
そのためか双子ちゃんたちとはすぐさま打ち解け、かくれんぼや鬼ごっこなどをしているのを見かけていたので微笑ましく思えていた。
もちろん、それでも時間が空く事は多かったが、その時は大抵鳥羽君は、屋敷の周りを散歩したり深雪さんの家事手伝いなどをしていた。
こうして鳥羽君の方の問題は解決したが……実はその時、私の方で再び問題が起こっていた。
それは龍二さんが里帰りしてきた日、そのことを伝えるためにロバート君の看病を終えたばかりの美沙さんに会った時の事だ。
龍二さんが美沙さんに挨拶をして顔を見た瞬間、その顔をギョッと驚愕に染めて彼女に詰め寄って来たのだ。
「み、美沙ちゃん、どうしたんだい
少し取り乱しながらそう叫ぶ龍二さんの言葉に流されるようにして、私も彼女の顔を覗き込んだ。
するとそこには、前髪に隠れていてよくは見えていなかったが、龍二さんの言う通り目立つぐらいに大きな傷があったのだ。
ロバートの治療や屋敷の滞在などいろいろあった為、今の今まで美沙さんの顔にこんな傷がある事に気がつかなかった。
龍二さんにそう指摘された瞬間、美沙さんは明らかに狼狽した様子を見せた。
「こ、これはその……
前髪でその傷を必死に隠しにながらそう言い作ろう美沙さん。
目を泳がせながら暗い顔を浮かべる彼女に私はそれが……全てではないのだろうが、嘘なのだと直ぐに分かった。
そしてそれは龍二さんも同じだったらしく何とも言えない表情で美沙ちゃんを見つめていた。
私はそんな二人の間に割って入ると、美沙さんにある提案をした。
「美沙さん。……もしよければその傷、僕に治療させてくれないかい?僕なら
「ほ、本当ですか!?」
驚いた。私の提案にいち早く反応したのは、美沙さんではなくはたで聞いていた龍二さんだったからだ。
龍二さんは私の両肩をがっしりと掴むとそう詰め寄って来た。
「本当に……本当に美沙ちゃんの傷を治すことが出来るんですね!?」
「あ、ああ。本当だよ?僕に任せてくれれば数日で完治は可能だね。……なんだったら、この屋敷に滞在させてもらっている手前、治療費をタダにしてもかまわない」
迫力のある顔で迫り、そう尋ねて来る龍二さんは私の肩を揺らしてくる。
私はそれに面くらいながらそう答えて、視線を美沙さんへと向けた。
美沙さんは私からの提案に最初は目を丸くしていたが、やがて申し訳なさそうにコクリと小さく頷いた。
「……よ、よろしくお願いします」
そう呟く彼女の顔は先程までの暗い表情から幾分か明るくなったような気がした――。
「……チッ」
「……?」
微かに
そこには廊下の奥へと去って行く、龍二さんの兄でありこの屋敷で人形師をしているという
――そしてその日の夕食後、私は
部屋にやって来た私に信一さんは座布団を用意すると、私をそこに座らせ、自分も私の対面に座布団を敷いてその上にドカリと座った。
そして、険しい目で信一さんは私の事を睨んできたのだ。
この屋敷にやって来た当初の気のよさそうな雰囲気が無くなっており、何処か苛立たし気な表情で顔を歪め、鋭く目を細めて見て来る。
そんな信一さんに私は少し気おされながらも彼に尋ねた。
「……それで、一体何の用で僕を呼んだんだね?」
「……昼間、ちぃと耳にしたんだが……先生ぇは美沙の顔の傷をば治せる言うとったらしいが、ホントか?」
重く、感情が消えたような口調でそう聞いてくる信一さんに、私は素直に頷いて見せる。
「――チッ!そぉか……」
心底面白くなさそうにそっぽを向いて舌打ちをする信一さんに、私は「おや?」と首を傾げた。
――信一さんは、
美沙さんは彼と、彼の妻の
普通、父親なら娘の顔の傷が消える事に対して喜ぶはずなのに、逆に不機嫌になるというのはどういう事なのだろうか。
そんな疑問が頭の中で渦巻く私を前に、信一さんは深いため息を一つつく。
「はぁ……まぁええわい。そげぇな事よりも先生ぇ、アンタに頼みたい事がある」
「……?」
何だろうと耳を傾ける私に向け、信一さんは信じられない一言を言い放ってきた――。
「DNA鑑定ちゅうモンをしてもらいたい。……
――その言葉に私は絶句する。
どういう事だ。つまり、美沙さんの父親は信一さんではないというのか。
愕然とする私を前に、信一さんは再びそっぽを向きながら苛立たし気に口を開く。
「……この前、病院に言った時にかかりつけの医者が口を滑らせて偶然知ったんだわ。……ワシは元々、
忌々し気にそう吐き捨てる信一さんに、私は声を出すことも出来なかった。
それが本当なら、美沙さんはまず間違いなく信一さんではなく、
でも何故そんな……。
そんな私の想いとは裏腹に、信一さんの話が続く。
「……じゃがその医者はそれ以上の事を話さず頑なに口をつぐみよって、絹代の相手の男が誰なのか分からずじまいじゃったが……今日の昼間、美沙の傷が治るっちゅう話を立ち聞きした時、ようやく分かったんだわ――」
「――
怨嗟の籠ったようなその言葉に、私は無意識に息を呑んだ。
そして、私の脳裏にも美沙さんの実の父親が誰なのかはっきりと分かった。分かってしまった。
――あの時……傷の治療を私が提案した時。美沙さん本人よりも先に反応し、私に詰め寄って確認を繰り返し、彼女以上に深く安堵していた、
そう言えば、先程の夕食の時。
――恐らく、夕食前に絹代さん本人から信一さんに
そんな事を考えていた私に、信一さんは座ったまま上半身を前のめりに傾け、感情の抜けた顔で静かに呟く。
「……じゃが、確証は持てど証拠が無けりゃあ逃げられっかもしれん。そこでアンタの出番だわ」
信一さんはおもむろにポケットからハンカチを取り出すと、そこに包まれていた
「……
そう言って信一さんはその髪の毛をハンカチごと私の手に握らせた。
反論を言わさぬその言葉に、私は二の句が継げなくなり無言で渡されたそのハンカチを見下ろす。
そして数秒の沈黙後、私はため息を吐きながら信一さんに向けて口を開いた。
「……分かったよ。ただ、検査結果を出すには少し時間がかかってね。数日待ってはくれないだろうか?」
……本当は私の腕なら
私の言葉に特に疑問も持たず信一さんは「ああ」と了承してくれた。
それを見た私は、静かに立ち上がるとすごすごと信一さんの部屋を後にする。
去り際にふと、
「……最後に一つ、聞きたいんだがね。……美沙さんのあの顔の傷。……まさかとは思うが、あれは本当は
私のその質問に、信一さんは一言――。
「……さぁ、どうだかね……?」
――そう……不気味な笑みを浮かべながら答えていた。
「はぁ……いやはや参ったね、これは」
縁側に座った私は、信一さんに持たされた例のハンカチを手に深々とため息をついていた。
あれから数日。私は未だに
これを信一さんの言われた通りに鑑定するべきなのか、私の中でまだ決めあぐねていたのだ。
だが頼まれてそれを承諾した以上はとりあえず鑑定だけでもしておくべきだと思いなおし、私は深くため息をつきながら縁側から立ち上がった。
武田家から借りている自分の部屋に向かう途中、私はロバート君の方にも考えを巡らせる。
今やロバート君は怪我はほとんど治り、屋敷の中を歩き回ったり武田家の人たちと普通に会話もできるようになった。特に紗栄ちゃん絵未ちゃんとも仲が良く、美沙さんとも冗談半分な会話をして一緒に笑っている姿を見るようになった。
もう何時でもこの屋敷を出ることが出来る。
しかし、私たちは――少なくとも私はまだこの屋敷に留まらなければならない用事がある。
先にロバート君をこの屋敷から出させようかと考えていると、背後から聞き慣れた声が私にかかった。
「先生、ちょっといいですか?」
振り返るとやはりと言うか、鳥羽君が立っていた。
鳥羽君は「ちょっと、こっちへ」と言って私の手を取り、人気のない場所まで連れて行った。
怪訝な顔を浮かべる私を前に、鳥羽君は周囲に人がいないことを確認すると、私に向けてポケットから小さな袋を取り出して見せた。
「……先生、これを見てくれませんか?」
「?」
そう言って鳥羽君が差し出した小さな袋は透明で、その中に少量の
それを認識した瞬間、私はハッとなってその袋を鳥羽君から受け取ると、袋を開き小指の先にチョンチョンと中の白い粉をごく微量くっつけるとそれをぺろりと舐めた。
舐めた瞬間、私は目を大きく見開き、と同時に慌てて鳥羽君に詰め寄った。
「鳥羽君!これを何処で!?」
内心血相を変えながら私は鳥羽君にそう問いかける。
何故ならその袋に入っていた白い粉……それは正しく――。
――麻薬であったからだ。
SIDE:三人称視点。(鳥羽初穂)
鳥羽が麻薬を手に入れるきっかけになったのは、少し前の夕食の席で武田信一ともう一人――
「へぇ~っ、信一さんと
いつものように初対面の人間相手に猫かぶりをしながら、鳥羽は信一と、この屋敷に住み込みで働いている信一の仕事仲間の
鳥羽が猫をかぶるのはもはや半ば癖となっている。最初は相手に好印象を持たせ信頼を得るための処世術として鳥羽が会得した生き方だったが、今の米花私立病院に勤めるようになってから幾分か肩の力が抜けるようになった。それもこれも、あのカエル顔の医師のおかげと言ってもいい。
しかしそれでもこうやって武田家を相手に猫をかぶり続けるのは、下手に自分の本性をさらしてしまう事でカエル先生にまで悪印象を持たれないようにするためだった。
彼女のその猫かぶりな言葉に二人も気分を良くしたようでお酒を飲みながら鳥羽との会話を楽しんでいた。
「ああ、そうともさ♪んでも、それでも人形を買ってくれる客は多くてなぁ。客足が絶えるって事はねぇんよ」
「逆に商売繁盛過ぎて、注文の納品が追い付かんで困りもんよ」
信一のその言葉に根岸がそう同意する。
それを聞いた鳥羽は更に言葉を続けた。
「へぇ~、ならもう何人か人を雇ってはどうですか?そんなに繁盛してるなら今は良くてもいずれ手が足りなくなると思いますし」
「そうだなぁ~。だが、こんな山奥まで仕事しに来る
酔って赤くなった顔で苦笑を浮かべて根岸がそう言うと、信一が口を開いた。
「まぁ、一人ぐらいなら当てはあるけぇ、心配はねぇんよ。……末の弟に
「そうですかぁ。それなら仕事もいくらか楽になるかもしれませんね♪」
「ああ。まずは簡単な組み立てから教えていこうと思うてます」
鳥羽の言葉に信一がそう言い、更にお酒を一口煽った。顔にさらに赤みがさしたように見える。
それを見た鳥羽は「もう少し好感度上げとくか♪」と軽い気持ちで内心舌を出しながら、人形の話題にもう少し踏み込んでみた――。
――それがとんでもない事実を引き出すきっかけになるともつゆ知らずに。
「いいなぁ。そんなに売れ行きが良いなんて、とても良く出来た人形なんでしょうねぇ~。私も一体欲しくなっちゃいましたぁ♪」
鳥羽にそう言われながらお酌された二人は心底機嫌を良くするも、信一さんは笑いながらパタパタと手を振って口を開いた――。
「あっはははははっ!悪いこと言わんから止めといた方がええで?売れ行きが良いと言っても買ってくれるんはほとんど金持ちばっかやけぇ、値段もそれなりに付くんよ――」
「――何せワシが作る人形は一体およそ100万。修理費、70万はするけぇなぁ」
「………………。へぇ~、そうなんですかぁ♪」
胸を張って言う信一のその爆弾発言に流石の鳥羽も一瞬、
(……え、なにそれ?人形一体100万な上、修理費70万?……高ッ!!?いくら何でも人形一つにぼったくりすぎるだろ!!私ですらドン引きの破格だよ!?)
確かに手作りの一点物であるのなら数十万の値段が付く事もあるくらい鳥羽も知っていた。
しかし、この値段は明らかに法外の域に達している。歴史的文化遺産じゃあるまいし。
内心叫ぶようにそうツッコミを入れる鳥羽に、酒に酔った二人は気づいていない。
すると今度は根岸が声を上げた。
「ちぃとばっかし値は張るが――」
(ちぃとってレベルじゃねぇよ!)
「――それでも中には十何回も修理を頼みなぁ人もおるけぇなぁ」
(どんだけ粗末に扱ってんだよその客!?修理だけで1000万近く飛んでんぞ!?)
「特に
(複雑な構造の絡繰り人形より、構造が単純な糸繰人形の方が値段が上!?え、値段の付け方間違えてねぇか!?)
根岸が得意げにそう言う傍ら、鳥羽の中ではツッコミのラッシュが続く。
もはやツッコミだけで気力が全て持っていかれそうだ。
しかし、そんな心境を鳥羽は決して顔には出さない。意地でも。
「ってなわけやけぇ。悪い事言わんから止めといた方がええで?もっとも、それでも買いたい言うんやったら、もう止はせぇへんけどな」
「うぅ~、そうですねぇ……。今の私の貯金じゃあ手に負えそうにありませんし……。残念ですけれどそうさせていただきます(……心より丁重にお断りさせてもらうよ金の亡者共!!)」
信一の言葉に、鳥羽は心底残念そうに諦める素振りを見せつつも、内心では信一と根岸に強い嫌悪感を感じ、彼らに向かって中指まで立てていた。
――そして、そうこうしている内に夕食が終わり、信一と根岸はほろ酔い気分で人形を作っている作業場へと戻って行った。
去って行く二人の背中を密かに睨みながら、鳥羽は彼らに対して怪しさを爆発させていた。
(……人形一体に対してあのぶっ飛んだ価格……何かあると思わない方がおかしいだろ……!)
SIDE:カエル顔の医者(冥土帰し)
「――それで、流石におかしいって感じて、二人がいない時を見計らって作業場に忍び込んだら、完成した人形から作りかけの人形まで
「……なんてこった」
鳥羽君の話を聞いて、私は頭を抱えた。
私もそうだが、彼女もまたこの屋敷が抱える闇を垣間見てしまったのだ。
「とりあえず作業場に忍び込んだ痕跡は先生のその手に持った袋以外、全て消してきたんで直ぐに気づかれるって事は無いと思いますよ?……早めに警察に通報した方がいいんじゃないですかね?」
鳥羽君がそう言って来たので私はそれに素直に頷く。
「……ああ、そうだね。でもその前にまず、この屋敷の主である智恵さんに事の仔細を全て話した方が良いかもしれない。恐らく麻薬に関わってるのは信一さんと根岸さんだけだと思うし、独断で行動せず
「ええ、分かりまし――ん?『問題共々』って……もしかして先生、そっちでも何かあったんですか?」
そう尋ねて来る鳥羽君に対し、私は深々とため息をつきながら答えた。
「……ああ、あったとも。それもキミの方の問題に負けず劣らずの、重たい問題がね――」
そうして私も、鳥羽君に自分に起こった事実――その事のあらましを全て打ち明けた。
そして、それを聞いた鳥羽君は麻薬のみならず、美沙さんの思わぬ出生の秘密を聞かされ――。
「マジかよ……」
――そう、素で驚きながら声を漏らしていた。
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次回は武田美沙編の最後となります。