とある探偵世界の冥土帰し   作:綾辻真

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毎回の誤字報告、及び感想ありがとうございます。


番外:『本庁の刑事恋物語4』(佐藤正義編)【2】

SIDE:佐藤正義

 

 

「……なるほど。つまり君たちは宮本君から私の娘が今日、お見合いをすると聞いて物見遊山でここまでやってきた、と」

「そ、そういう事になりますね。あ、あははははは………………ごめんなさい」

 

私の言葉に()()()()()()茶色のボブカットの髪の上にカチューシャを付けた女子高生――鈴木園子(すずきそのこ)君がそれに答えながら誤魔化し笑いを浮かべる。しかし、仁王立ちして見下ろしてくる私が笑っていないのを見ると直ぐにしゅんとなって項垂れ、謝罪して来た。

 

「本当に申し訳ありませんでした、佐藤一課長さん……」

 

そう言って園子君の隣に座る毛利蘭(もうりらん)君も一緒になって私に頭を下げる。

実は蘭君とは彼女の父親が私の()()()だったこともあり、その繋がりで娘の蘭君だけでなく彼女の友人である園子君とも顔見知り程度には知り合いであった。

そのため、思わぬ形で知り合いである彼女たちとばったり会う事となってしまった私は、彼女たち四人を横一列で正座させて『事情聴取』を取り、そこで彼女たちが美和子のお見合いに野次馬根性を持って水都楼まで乗り込んできたことを知った。

……全く、一介の女子高生たちが何をやっているのか。

おまけに今回、初顔合わせとなるが同じ帝丹高校に勤務しているという保健医の新出(あらいで)先生や毛利君が預かっている小学生の江戸川(えどがわ)コナン君まで一緒になって巻き込むなんて。

 

「まあまあ、佐藤一課長さん。興味本位でここまで押しかけて来てしまった事には僕からも謝ります。……ですが、毛利さんたちとあなたの娘である美和子さんとは親しい間柄だと聞きます。その美和子さんが好きでもない人とお見合いをすると突然知ったのですから、彼女たちとしても居ても立っても居られなかったのでしょう。……ここは一つ、穏便に済ませてはもらえませんか?」

「むぅ……」

 

新出先生からやんわりとそう説得され、私は小さく唸る。

確かに、彼女たちがやった事は覗き見程度の軽犯罪、別に私たちに実害が出たわけじゃない。

せいぜい厳重注意をして終わる程度のモノだ。

しかし……その物見遊山で覗いていたのが私の娘のお見合いだったのが父親としてなんだか釈然としない。

どうにも納得できず一人内心悶々としていると、唐突にコナン君から声がかかった。

 

「ねぇ、一課長さんはどうして僕たちのいるこの部屋に来たの?」

「……え?それは、娘のいる隣の部屋の様子を見るために……ちょっとこの部屋を貸してくれないかと仲居さんに聞いたらここに通されて来たんだよ」

 

まさか、一介の警察官である私が君たち同様に嘘をついてこの部屋に通されたなど素直に言えるわけも無く、ちょっと言葉を詰まらせながらそう返答し、続けて口を開いた。

 

「……君たちも宮本君から聞いている計画に、どうやら支障が出たみたいでね。……さっきから美和子が携帯をチラチラ見ながら焦った顔を浮かべてるんだ。私が美和子から頼まれたのは妻にこの計画の事を暴露しないでほしいという事だけだったから、自分から動くわけにもいかない。……だから、美和子が今後どうするのか先に客間を出てここで様子を見ようと思ったんだ。……そろそろ予定では美和子と白鳥君を二人きりにするために、二人以外の関係者は退室する予定だったからね」

「ふ~ん」

 

私の説明にコナン君がそう相づちを打った時だった。

唐突に隣の部屋の障子が開かれ、そこから廊下へ二人分の足音が出て行くのが聞こえた。

……おっと、どうやら言ってるそばから妻と鴨井さんが退室する時間が来てしまったようだ。

 

『……では、我々はしばらく席を外しますので』

『後は二人でごゆっくり……フフフフフフフッ♪』

 

鴨井さん、そして次に妻の弾んだ声が聞こえ、その直後に障子の閉まる音が耳に届いた。

それを合図にしてか、正座をしていた園子君たち四人が反応して美和子と白鳥君の二人がいる客室の襖の方へと集まって聞き耳を立て始めた。

それを見てやれやれと肩をすくめそうになるも、何分私自身も気になっている身。ここは同席させてもらおうと彼女たち四人と一緒に襖の向こうに耳を傾け、聞き耳を立てる。

しばらくすると、白鳥君の声が襖の向こうから聞こえだした。

 

『はは~ん。……なるほど。誰かがこの【魔王】から、美しい【姫】を救い出しに来る手はずになっているんですね?』

 

……あぁ、やっぱりバレてたか。

 

『ば、バカね。何言ってるのよ!』

 

白鳥君に図星を突かれ、明らかに動揺した美和子の声が続けざまに聞こえた。

これで美和子の計画はおじゃんか?……と、私がそんな事を考えた次の瞬間、白鳥君から驚くべき提案が出されて来た。

 

『……では、こうしましょう。もしも()()()()駆けつけて来たなら、この場は潔く身を引きますが……彼が怖気づいて来なかった時は、貴女には僕のワイフになっていただく』

「なぁっ!?」

 

白鳥君が唐突に提案してきたその内容に思わず声が漏れてしまい、慌てて自分の口を塞ぐ。

 

(……おいおい、白鳥君。いくら何でもそんな……!流石にそれは(父親)としても許容できんぞ……!)

 

美和子の未来をこのような勝負事で決められるのは流石に許すわけにはいかない。

白鳥君に対して沸々と憤りを感じ、文句の一つでも言いたい気分にかられたが、それよりも先に白鳥君が先程言った言葉の中に()()()()()()が入っていた事に気づき、いったんその怒りを抑える。

 

(……何故、ここで高木君の名前が出て来るんだ???)

 

怒りと入れ替わって疑問が頭の中を支配し、私は首をかしげた。

美和子も同じ事を思ったのか目を丸くして口を開く。

 

『え?……どうして、高木君なの?』

『いけませんか?』

『…………』

 

逆に白鳥君にそう聞かれて美和子は沈黙したようだった。

 

「何故、高木君の名前が……?宮本君が言っていたという迎えの刑事って高木君の事だったのか?」

 

怪訝な顔で私がそう独り言をポツリと零す。すると、それを耳にした園子君が驚いた顔で私に声をかけてきた。

 

「え、知らなかったんですか!?最近、佐藤刑事と高木刑事の二人、結構イイ感じなんですよ?」

 

その事実を知って私は目を見開いて大いに驚く。

――まさか。()()あの子に気になる異性がいたとは……。でも、よくよく思い返してみれば、美和子と高木君が一緒にいる所を仕事中によく見かける。

家にいる時だって、よく高木君の事を話題にしていたような気もするし……()()()――。

 

そこまで私が考えた時、襖の向こうで白鳥君が笑いながら声を上げるのが耳に入った。

 

『アッハハハ!ジョークですよジョーク!……ちょっと貴女を困らせてみたかっただけ――』

 

……な、なんだ冗談だったか。

そう思ってホッと胸をなでおろそうとした私の耳に、唐突に美和子の爆弾宣言が飛び込んで来た。

 

『――分かったわ。……OKよ』

「「「「「えぇっ!?」」」」」

 

これには私のみならず、そばで聞いていたコナン君たち四人も驚きに声を漏らしていた。

そして、それに驚いたのは提案をした白鳥君も同様だったらしい。

 

『……OKって。……分かっているんですか?自分が言ってる事』

『ええ、分かってるわよ。高木君が私を迎えにここに来れば、この見合いはご破算。即撤収。……来なければ、私はアナタと結婚し、妻となる。……無制限なのもなんだから、日が暮れるまでっていうのはどう?』

 

……おいおい、本気なのか美和子!?

もし、それで白鳥君と結婚する事になったら、例えお前が納得したとしても私は納得できんぞ!

 

「……何か面白く、おっと……大変なことになって来たわね」

 

……園子君。君今、「面白くなってきた」って言いそうになってなかったかい?

ジト目で向けて来る私の視線に、園子君はとぼけ顔でそっぽを向く。

すると今度は蘭君が不安げな声で口を開いた。

 

「でも、どうなるんだろう。……もし、高木刑事が来なかったら……」

「う~ん……もしかしたら、佐藤刑事って結構玉の輿を狙ってたりして。……白鳥警部って、ウチのパーティーによく来る資産家の御曹司だし」

「いや、それは無い」

 

園子君のその推測を私はバッサリと一刀両断する。

 

「私も妻も、美和子をそんな性格の娘に育てたつもりは一切ないよ?あの子は玉の輿に何て全く興味なんてないし、今までの会話からしても美和子が白鳥君に『その気』が無い事も直ぐに分かる。……何せ父親だからね?」

「で、ですよねぇ~……」

 

()()()()()()()()でニッコリと笑いかけてそう言う私に、園子君の方も顔を引きつらせながらも笑ってそう答え返してきた。

すると、そんな私たちの間に入るようにして蘭君が再び不安げに口を開く。

 

「なら、どうするんだろう佐藤刑事……。高木刑事とイイ感じに見えてたのに……」

「……まぁ、彼女があれだけ言い切ったんです。何か勝算があるんでしょう」

 

顔を曇らせる蘭君に新出先生が励ますようにしてそう言うと、襖の向こうで白鳥君の声が再び聞こえてきた。

 

『……分かりました。じゃ、いいんですね?』

『ええ!女に二言は無いわ!』

 

彼の問いかけに美和子はしっかりと了承して見せる。

 

(……おいおい、大丈夫なのか美和子。これでもう後戻りはできなくなったぞ!?)

 

胸中が不安でいっぱいになる中――私は内心、美和子にそう問いかけずにはいられずにいた。

こうなってしまってはもう、迎えに来る高木君が一分一秒でも早くここに来てくれるのを祈るばかりだ。

 

――だが、現実は早々上手くいかないものである。

 

そう願った直後に、私は高木君たちの方で予想外のアクシデントに見舞われている事を唐突に知る事となった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほぅ……?コンビニ強盗ですか……。ああ、いえ……ちょっと、高木君に聞きたい事がありまして……では、目暮警部。しっかり頑張るよう、彼にお伝えください』

 

今現在の高木君の動きを知るために、白鳥君は目暮警部経由で彼の様子を確認するために電話をかけたのだが、目暮警部から伝えられた彼の現状は、白鳥君や美和子のみならず私すら予想外なものであった。

目暮警部との電話を終わらせた白鳥君が携帯を切ると同時に、美和子が慌てて白鳥君に声をかけていた。

 

『ちょ、ちょっと何よ。コンビニ強盗って……。高木君、今日は事件の聞き込みのはずでしょう?!』

『その聞き込みを一通り終えた後で、コンビニ強盗に遭遇したそうです。……容疑者を三人に絞り込んではいるようですが……。目撃者の証言が、バラバラらしくて……』

『バラバラってどういうこと?被疑者は一人なんでしょ!?』

『さぁ……僕に言われても』

 

美和子と白鳥君の会話を襖越しに聞きながら、私は頭を抱える。

――なんてこった。肝心の高木君が事件に遭遇して来られないとは……!

すると、私と同じように美和子と白鳥君の会話を聞いていた蘭君が園子君に話しかけてきた。

 

「……何か、高木刑事の方も大変なことになってるみたいだね」

「んもぅ、コンビニ強盗なんて他の刑事さんたちに任せてこっちに来りゃいいのに。……高木刑事、ちゃんと()()()()()()()()()()()()()()()?」

「さぁ、どうだろう?……ひょっとしたらまだ見てないとか?」

 

その会話を聞いて私は、宮本君がお見合いの事をメールを使って高木君に伝え、そして彼をここに連れて来る算段であったことを今になって察した。

……だとしたら、高木君はまだそのメールを開いていないのだろうか?いや、この場合メールを開いていようがいまいが、目の前で事件が起こった以上、刑事としては事件を優先するのが当然だ。

うん、私も重々分かってはいる。分かってはいるのだが……事、今回は美和子がある意味危機的な状況なため、刑事としてのその『当然』が今は少々煩わしく思えて来る。

 

すると今度は襖の向こうで、しびれを切らした美和子が声を上げていた。

 

『……いいわ!私が直接高木君に――』

 

美和子がそう言っているのと同時に、携帯のボタンのプッシュ音が聞こえだした。

高木君に美和子が直接電話を入れようとしている。そう私が気づいた瞬間、そのプッシュ音が唐突に止まった。

 

『――あっ!?』

『貴女から彼に連絡を取るのは、ルール違反。……あまりにも、僕に不利すぎる』

 

どうやら美和子が高木君に電話をかけようとするのを白鳥君が止めたようだ。

襖の向こうで白鳥君の言葉が続く。

 

『……ま、大丈夫ですよ。きっと彼は、コンビニ強盗を挙げた後でここに来るつもりなんでしょう。……それとも、彼が信じられないとか?』

『そ、そんな事……』

『……もっとも、警察官が事件捜査中に現場を放棄してこんな所に来れば……服務規程違反(ふくむきていいはん)懲戒処分(ちょうかいしょぶん)(まぬが)れない。……確か、彼は前に一度、減給処分(げんきゅうしょぶん)を受けていましたよね?』

『あ……!』

 

白鳥君の言葉に、美和子もハッとなって声を漏らす。

それとほぼ同時に、私もそう言えばそんな事(単行本第30巻、テレビアニメ240~241話『新幹線護送事件』参照)があったなぁ。と、今更ながらに思い出していた。

 

『彼が二度目の懲戒処分を受けてまで、ここへやって来る度胸があるのなら……僕も、男として彼を認めますがね』

「…………」

 

美和子に向けてそう言う白鳥君の言葉を聞きながら、私は思考を巡らせる。

この際、別の刑事を呼んでその人に迎えに来てもらおうかとも最初に一瞬思ったが、美和子と白鳥君がはっきりと高木君を指名した上、美和子に黙って私の勝手な独断でそれをするわけにもいかないと、この案は直ぐに没にした。

となると、やはり高木君が美和子を迎えに来てもらうのが最善手だろう。

だが、その高木君がコンビニ強盗の事件で動くに動けない状況である。……ならば――。

 

――そのコンビニ強盗事件を早期解決し、直ぐに高木君をこちらに向かわせるのが得策だ。

 

 

 

 

(……よし!)

 

これからの方針を固めた私は、すぐさま()()()()()()()に連絡すべく、ポケットから携帯を取り出していた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE:江戸川コナン

 

 

「何か、ますます大変な事になってきちゃったわね!」

「んもぅ、他人事だと思って面白がっちゃって!……佐藤一課長さんもいるんだよ?」

「シッ!静かに……」

 

ニヤニヤしながら声を上げる園子に蘭が注意をし、その二人に声を抑えるようにと口元に人差し指を当ててそう窘める新出先生の声を聞きながら、俺はそっと部屋を出ようと動き出した。

 

――目的は、トイレに移動してそこから高木刑事の携帯に蝶ネクタイ型変声機で『工藤新一の声』で事件解決のアシストをするためだ。

 

このままでは佐藤刑事が白鳥警部と『賭け事』による敗者という形で結婚する事となってしまう。

そんな事は、例え気丈な佐藤刑事と言えど、それで白鳥警部と結婚なんて本心では望まないだろう。

ならば、高木刑事には急いで事件を解決しこっちに来てもらわないといけない。

 

それに……この手の事に、奥手で不器用な二人を見てると……()()()()()()()()()()()()()()()

 

脳裏に()()()()()()()()()()()()の事を思い浮かべながら俺は部屋を出ようとするその直前、俺の視界の端で佐藤刑事の父親である佐藤一課長さんがポケットから『何か』を取り出す所をとらえた。

 

「……?」

 

思わず足を止めて佐藤一課長さんへと視線を向ける俺。

見ると佐藤一課長さんが取り出したのは携帯でおもむろにその携帯のボタンを押して何処かへと連絡を入れようとしているようだった。

少し気になった俺は、佐藤一課長さんに尋ねてみた。

 

「佐藤一課長さん。高木刑事に電話でもするの?」

「ん?……ああ、違うよ。警察官である手前、流石に私も高木君に仕事ほっぽり出してこっちに来るようになんて言えないからね。……でも、美和子と白鳥君の結婚を阻止するためには、やはり高木君には早急に事件を解決してこっちに来てもらう必要があるんだ……」

(!……へぇー、佐藤一課長さんも俺と同じことを考えていたのか)

 

佐藤一課長さんの言葉を聞いて俺は内心そう思っていると、一課長さんは言葉を続ける。

 

「そう、だから……彼の所に()()()()()()()()()()()()()

「応援?」

「捜査一課の中にこういう時、とても頼りになる刑事を私は一人知ってるんだよ」

 

そう言って俺の前で佐藤一課長さんはその刑事へと通話を開始する。

携帯を耳に当て、電話の向こうにいる刑事の名前を呟いた――。

 

 

 

 

「――ああ、もしもし。伊達君かい?」

 

 

 

「!!」

 

その名前を聞いた途端、俺は目を見開いて驚き……そして直ぐに小さく笑みを浮かべた。

 

(へぇー……()()()を高木刑事の元に向かわせるのか。……なら、そのコンビニ強盗事件とやらで()()()()()()()()()()()()

 

()()()の推理力は俺も一目置いている。()()()が乗り出すのであれば、まず早期解決は確実だろう。俺が出しゃばる必要性もなさそうだ。

 

(……そんじゃあ、後は頼んだぜ?)

 

佐藤一課長さんと電話をしている『相手』に向けて、俺は心の中でそう呟くと両手を頭の後ろで組みながら踵を返し、蘭たち三人の元へと戻って行った――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE:三人称視点。

 

 

「オイ、刑事さんよぉ!いつまでこんな車の中に閉じ込めておくんだよ!?」

「日が暮れちゃうわよ!」

 

事件が起こったコンビニ前の道路上に停まる車の中――その車の後部座席にて容疑者三人の内の男女が騒ぎ出していた。

それを聞いた運転席にいる高木は彼らを慌てて宥める。

 

「ああ、だからもう少し待っていて下さい」

 

口ではそう言うものの、高木自身この状況を打開する手立てが全く見当たらない事を理解していた。

そしてそれは、助手席に座る千葉刑事も同じであった。

容疑者であるこの三人をここに留めておくのももはや限界に近い。

解放するしか、ないのか?高木と千葉の脳裏に同時にそんな言葉がよぎった。すると――。

 

 

 

 

――キキィッ……!

 

 

 

――高木刑事たちが乗る車の前に、唐突に一台のタクシーが止まり、その後部座席から一人の男が降りてくる。

 

「!……た、高木刑事、あれ……!」

「え?……あ!」

 

タクシーから降りてきた人物を視界に収めた瞬間、千葉と高木は同時に声を上げ、ほぼ反射的に車から降りてその男の元に駆け寄っていた。

そんな二人に男は()()()()()()()()をニカリと歪めると気さくな声を上げる。

 

「よぅ!来てやったぜ、二人とも!」

 

そんな男の声に、半ば呆然としながら高木は口を開いていた――。

 

「れ、連絡も無しに急に来るなんて、どうしたんですか――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――()()()()!?」




次回から『佐藤正義編』から『伊達航編』へと切り替わります。

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