SIDE:高木渉
「れ、連絡も無しに急に来るなんて、どうしたんですか伊達さん!?」
唐突にタクシーから降りてきた自身の先輩であり教育係を務めてくれている刑事を見て、僕は反射的にそう声を上げると、当の本人――伊達さんはきょとんとした顔で口を開いた。
「あん?……どうしたって、応援に来たに決まってんじゃねぇか。……まぁ連絡しなかったのは悪かったが、俺も突然、
「……え?佐藤一課長が伊達さんをここに寄こしたんですか?」
伊達さんの話を聞いて僕は首をかしげる。
目暮警部では無く、何故佐藤一課長が直接伊達さんにここに行くように指示を出したのか。
それに、今日一課長は娘の佐藤さんと一緒に所用とかで仕事には来ていないはず……。
何故、ここで起こったコンビニ強盗事件の事を知っているんだ?
そう不思議に思っていると、伊達さんは僕の隣に立つ千葉に声をかけていた。
「……それよりも千葉。車の後部座席にいんの、例の強盗事件の容疑者たちなんだろ?……いいのか?車に残したまんまで」
「え?あ、そうでした!すみません、今行きます!」
そう言って慌てて車に戻って行く千葉。
確かにあの容疑者たちの中に例の強盗犯人がいるのは間違いないのに、見張り一人つけずに車から出て行ったのはまずかった。
だが幸いな事に、千葉が車に戻るまで容疑者たちは律義にそこに残って待っててくれていたようだ。
(……まあ、僕たちが車から離れている隙に逃げでもしたら、それはもう自分が強盗事件の犯人ですと言っているようなもんだしなぁ)
僕が呑気にそんな事を思っていると、伊達さんが杖をつきながらつかつかと僕に歩み寄って来た。
「……おい、高木。あん中にそのコンビニ強盗犯がいるのは間違いねぇんだな?」
「ええ、はい……。と言うか、どうして佐藤一課長が伊達さんをここに……?」
さっきから、疑問に思っていた事を伊達さんに尋ねてみると、当の伊達さんは呆れた顔で頭をかいて見せた。
「かーっ!……その顔。やっぱお前、宮本からのメール見てねぇんだな?」
「え?由美さんからの?」
「いいから、今すぐ見てみ」
伊達さんにそう促され、僕は直ぐに携帯を開き、メールを確認する。由美さんからのメールが一通入っていた。
「えーと……『美和子大ピンチ!見合い会場の水都楼から事件にかこつけて彼女を奪還せよ! 由美』……」
メールの内容を小声で復唱し、そしてそれを更に脳内で復唱してみる……。
……………………………――。
「――えええええええええええーーーーーーーーッッッ!!??」
――さ、佐藤さんが……見合いぃぃーーーーッ!!??
思わず口と脳内で同時に絶叫する僕。路上で突然叫んでしまった僕に伊達さんが慌てて声をかけてきた。
「ばっか!一刑事が公然の場で大声出してんじゃねぇ!!」
「す、すみません……」
慌てて両手で口を塞ぎ周囲をうかがう。通行人の何人かが怪訝な様子でこちらを見ていたが、直ぐに興味を失ったのかそのまま歩き去って行った。
それを確認した伊達さんはため息を一つ付くと、真剣な顔で口を開く。
「……とにかく落ち着け。
「……に、日没までってどういうことですか?」
「佐藤が見合い相手の条件を飲んだんだよ。……日が沈むまでに事件を解決して、お前が迎えに来なければ、相手のプロポーズを受けるってな」
「――ッ!??」
――そ、そんな……!!
あまりにもショックなその話の内容に、僕の頭の中が一瞬真っ白になる。
しかし、直ぐにその脳天に伊達刑事のチョップが炸裂し、僕の意識は強制的に現実へと引き戻された。
「いでッ!?」
「ばっか、呆けてる場合か!それが嫌なら、とっととこの事件のホシ挙げて、佐藤の奴迎えに行ってこい!」
「は、はい……。でも、誰が犯人なのか全然わからなくて……」
「……一課長から聞いたが、どうも目撃者の証言がバラバラだって話みたいだな?……詳しく話せ」
――伊達さんから事件の詳細を聞かれ、僕は数時間前に起こった今回の事件を語りだした。
事件は、僕と千葉が事件の聞き込みをしている時に偶然すぐそばで起こった。
コンビニから女性従業員の悲鳴と共にヘルメットにコートを着込んだ男が飛び出し、人込みをかき分けて逃走したのだ。
それを見た僕と千葉はすぐさまその男の後を追うと、とある公園の前で老人が倒れているのを見つける。
老人の話だと、ヘルメットにコートを着た人物が突然ぶつかってきて公園のトイレの方へ逃げ込んだというのだ。
それを聞いた僕と千葉はその公園のトイレの前まで来ると、近くの茂みの中に脱ぎ捨てられたヘルメットとコート、そして手袋とカバンを発見する。
犯人がトイレの中にいる事を確信し、トイレから出て来るように声を上げると、中から出てきたのは男性二人に女性一人の三人であった。
「――んで、トイレから出てきたっつーその三人ってぇのが、今車の後部座席に座っている奴ら、と」
「は、はい……」
そう言いながら車の中に座る三人に視線を移動させた伊達さんにつられるようにして僕も答えながら車の中に視線を向ける。
車の中で退屈そうにしているその三人を見つめながら、僕は一人一人順番にその三人の事を伊達さんに説明し始めた。
「――まず、後部座席の一番右側に座る青いセーターを着た長身の男性は
――続いて後部座席の中央に座る黒いパーカーを着た茶髪の女性は
――そして最後に、座席の右側に座る緑色のトレーナーを着て眼鏡をかけた男性は
「ふぅん……性別も年齢も身体的特徴も見事なまでにバラバラだな。……んで、同じようにバラバラだっつー目撃者の証言ってのは?」
伊達さんにそう促され次に僕は目撃者の証言内容を口にする。
「……最初に聞いたのはさっき話しました公園の前で犯人とぶつかったという老人です。残念な事に犯人とぶつかった拍子に眼鏡を落としてしまい、顔は見ていないようでしたが『コートの下に青い服を着た女性』である事は分かったようです」
「……女性っつったら真ん中に座っている越水っていうねえちゃんしかいねぇよなぁ。けど服の色はどう見ても黒だろ?」
「そう、ですよねぇ……」
「……っつーかその老人は何で犯人が女性だって分かったんだ?ヘルメット被ってコート着てたんだろ?コートがめくれて偶然下に着ていた服の色が青色で、眼鏡を落とした裸眼状態でそれが見えたとしても納得いくが、顔隠している状態で性別が分かるとは思えねぇぞ?……ぶつかった拍子に
「さ、さぁ?そこまで尋ねなかったもので――」
「――ばっか!何でそこまで踏み込んで聞かねぇんだ!」
「す、すみません……」
うぅ……今日だけで伊達さんに「バカ」って言われるの何度目だろう?やっぱりまだまだ未熟だ僕は。
しゅんとなる僕に伊達さんは深いため息をつくと再び口を開いた。
「……まあいい。話を続けろ」
「はい……。二人目の目撃者はコンビニ近くの洋服店で買い物をしていた女子高生でした。……買い物の最中に店の窓越しに犯人の姿を見ていまして、『人込みの中を頭一つ抜きに出ていたから身長は180センチ以上あり、コートがめくれて一瞬、緑の服が見えた』と証言していました」
「……このコンビニの近くで洋服店っつーと……ああ、
「はい……?」
意味ありげに独り言をつぶやく伊達さんに、僕は怪訝な顔を浮かべる。
それに気づいた伊達さんは軽く手を振って答えた。
「いや、何でもねぇ。……それより、目撃者はそれで全員なのか?」
「いえ、もう一人。……コンビニ近くにある喫茶店のマスターも犯人の姿を目撃しています」
「あん?
「え?伊達さん、マスターと知り合いなんですか?」
「ああ、まぁな。……で?
「どうも、ランチタイムのメニューの見本を店先に出してる最中に見たらしいです。『身長は170センチ前後でコートの下に黒い服を着ていた』と言ってました……」
「…………」
僕からそこまでの話を聞いた伊達さんは俯きがちに思案顔になり、しばらくの間沈黙する。
だが、一分もしない内に顔を上げると、僕に向かって問いかけてきた。
「……なあ、俺がここに来るまでの間に、あの三人から一通りの事情聴取はしたんだろ?その時、何か気になる事とか誰か言ってなかったか?」
「と、言われましても別に……。――あ。強いて言えば、事情聴取の最中に
「……腕時計?」
「話の流れでちょっと……いや、でも、腕時計なんて特に事件とは関係ありそうにないですし――」
「――待て。……その腕時計の話、詳しく話せ」
特に無関係だと思ってさらっと笑って流そうとしていた僕に、伊達さんは鋭い目つきで待ったをかけた。
そんな伊達さんに僕は首をかしげながら声を上げる。
「そんなに重要な話では無かったと思うのですが……」
「そいつぁ、俺が判断する事だ。……それに、こう言ったたわいの無い話の中にこそ、案外事件解決の重要な手掛かりが転がっている時だってある。ま、空振りする事も多いがな。……だが、それでもホシを見つけるため、どんな些細な事でも見聞きを
そう言って最後に伊達さんは「――まぁ、今回は俺の刑事の『勘』ってぇのが大きな理由だがな」と、そう付け足して笑って見せる。
それにつられて僕も「あはは……」と苦笑を浮かべると、仕切り直しとばかりに真剣な顔に戻して早速その『腕時計の話題』について伊達さんに話し始めた。
「――事情聴取中、越水さんが腕に二つ腕時計を付けているのを見つけまして気になって尋ねて見た所、海外に彼氏がいるらしく変な時間に電話をするのを避けるために日本時間のと海外時間用の二つを付けていると言ってました。……それに続いて座間さんも昔、中学の先生に良く遅刻するからと言われて二つ付けられていたらしいです。……ですが逆に紙枝さんは、塾の講義中は生徒たちに時間を気にせず授業に集中してほしくて腕時計を外すように言っているらしいです。その一貫で教室にかけられている時計も外しているとも……」
「…………」
それを聞いた伊達さんは再び黙り込んで何かを考える仕草をする。
やがて、何かに気づいたように小さくハッとなると、ニヤリと口元を吊り上げた。
「……そういうことか」
「な、何か分かったんですか伊達さん?」
僕がそう尋ねると伊達さんはしっかりと頷き口を開く。
「ああ。少なくとも、
「ほ、本当ですか!?じゃ、じゃあ、やっぱり犯人はあの三人の中に?」
「ああ、そうだ。……だがその確信を深めるために、まずはバラバラになってる目撃者の証言の問題を先に片づける必要がある。……行くぞ」
そう言って伊達さんは歩き出す。一足遅れて僕もその後を追いかけ始めた。
僕は伊達さんの背中を追いかけながら彼の背中に慌てて声をかける。
「い、行くって何処へ!?」
「喫茶店のマスターの所だよ。まずはあの人の証言から崩しに行く。……豆原さんの事だから今頃、客相手に自分が犯人を目撃した事を自慢げに話してるだろうなぁ。ったく、あの人は気さくで良い人なんだがおしゃべりな所が玉に
やれやれと歩きながら肩をすくめる伊達さんのその言葉を聞いて僕は、ああそう言えば自分がマスターが犯人を目撃したという情報も、たまたま通りがかった通行人がマスターがそれを自慢げに話していたのを聞いたと話してくれたのがきっかけだったなぁ。とぼんやりと思い返す。
そこでふと気になって伊達さんの背中に声をかけて尋ねてみた。
「……伊達さんは、マスターの豆原さんとは古い知り合いなんですか?女子高生が言っていた洋服店の事も店名を聞かずにどこの店か直ぐに分かったみたいですし……。もしかしてこの辺りによく来るとか?」
「よく来るも何も、俺は元々ナタリーと結婚する前まで
「えぇっ!?」
何とでもないかのように言った伊達さんのその発言に僕は大いに驚く。全くもって初耳だ。
そう言えば思い返してみても、初めて会った頃から伊達さんとは時間があればカラオケやら居酒屋やらに行った記憶はあるが、僕が伊達さんの家に直接遊びに行った事なんて今まで無かった。
あの頃から恋人のナタリーさんと暇さえあればちょくちょくデートを重ねたり自宅に招き入れたり……逆に彼女の方の自宅に押し掛けたりしているのを知っていたから、その過程で自然と伊達さんの家に行くのを遠慮していた。
また、一年前のあの交通事故で伊達さんが退院した後は、伊達さんを心配したナタリーさんが一緒に同棲するようにもなり、邪魔しちゃ悪いと更に行きづらくなっていたのである。
(住所ぐらいは教えられてたかもしれないけど、すっかり忘れていたなぁ……)
僕がそんな事を思っている間に、豆原さんの喫茶店の前に到着する。
そして、伊達さんを先頭にして僕たちは店内へと足を踏み入れた。
「いらっしゃ――ああ、伊達ちゃん!久しぶり!」
「ご無沙汰してます。豆原さん」
店に入って来た伊達さんを見た途端、
それを見た伊達さんも軽く会釈をする。
二人のその様子を見るに、昔からの知り合いというのは本当のようだ。もしかして伊達さんはかつてこの喫茶店の常連だったのだろうか。
僕がそんな事を考えていると豆原さんが口を開いた。
「もしかして伊達ちゃんもあそこのコンビニ強盗の事件の捜査に来たのかい?」
「ええ。それで豆原さんからもう一度犯人を目撃した時の状況を聞かせてほしいと思いまして」
「う~ん、そうは言ってもねぇ。……そこにいる若い刑事さんに犯人の特徴とか知ってる事は全て話したはずなんだけどなぁ」
「…………」
豆原さんがそう言う前で、伊達さんは再び考え込むそぶりを見せる。
……いや、ちょっと違うか?さっきまでとは違い、考えている仕草とは少し異なっている。これは……
「……?」
伊達さんの視線に気づいたのか、豆原さんも怪訝な顔で伊達さんを見る。
すると伊達さんがおもむろに豆原さんの
「……時に豆原さん。
「え?……ああ、違う違う」
伊達さんにそう問われた豆原さんは一瞬キョトンとした後、直ぐに声を上げながら眼鏡を取って見せる。
「これは
「ああ、通りで。ついこの間見かけた時は、
更に伊達さんに問いかけられた豆原さんは手にした眼鏡を掲げながら答えて見せた。
「いや実はさぁ、この眼鏡のレンズには『調光レンズ』ってのがはまっててね。屋外に出て紫外線を受けると15秒ほどで
そこまで言った途端、豆原さんは何かに気づいたように声を上げ、続いて「しまった」とばかりに頭を抱えて見せた。
それを見た伊達さんはニヤリと笑い、同時に僕も豆原さんの
「じゃ、じゃあアナタが目撃した強盗犯の服の色は、
僕がそう問いかけると、豆原さんは両手を合わせながら謝罪して来た。
「いやぁ、すまない刑事さん。犯人を目撃した事で浮かれてたせいか眼鏡の事、すっかり忘れてたよ。……だが、犯人の身長が170センチ前後だっていうのは間違いないぜ?」
豆原さんの言葉に僕は小さく唸る。
確かに、服の色は伊達眼鏡で違って見えていたのかもしれないが、身長の方は別の目撃者――洋服店にいた女子高生が180センチ以上あったって証言がある。この食い違いは一体?
そんな事を考えていると、伊達さんが声を上げた。
「そこまで分かれば十分だ。……豆原さん、ありがとな。アンタの証言、十分参考になったよ」
「え?そ、そうかい?そう言ってくれりゃあ証言したかいがあったってなもんだ」
「そんじゃあ、俺らはこれで。……またコーヒー飲みに来ますんで」
「ああ、待ってるよ」
そう言って豆原さんに別れを告げると、伊達さんはそのまま店を後にする。
その後を追って僕も豆原さんに軽く会釈だけ済ませて店の外に出た。
外に出ると伊達さんは犯行のあったコンビニの方へと歩いて行くのが視界に入る。
コンビニの前には容疑者たちと千葉が乗る車がある。すぐさまぼくは伊達さんに追いつくと声をかけていた。
「伊達さん、車に戻るんで?」
「いんや、違う。コンビニの手前にある洋服店まで行く。……次はそこにいたって言う女子高生の証言の謎を暴くぞ」
「あ、はい……!」
「……と言っても、こっちの方はもうある程度予想はついてんだけどな」
「え?」
予想外な伊達さんのその発言に、僕は一瞬面食らう。
そうこうしている内に僕と伊達さんは洋服店の前に到着した。
洋服店の建物を見上げながら伊達さんが口を開く。
「高木。お前らがコンビニから逃げる強盗犯を見たのは何時ごろだ?」
「え?えっと、確か――」
伊達さんの問いかけに、僕は直ぐその時刻を答える。
すると予想通りと言わんばかりに伊達さんが鼻を鳴らしてほくそ笑んだ。
「やっぱり、そういう事か」
「何がやっぱりなんです?」
訳が分からず首をかしげながらそう問いかける僕に、伊達さんが説明を始めた。
「高木、ちょっとさっきまでいた喫茶店の方へ振り返って見な。何が見える?」
「へ?」
伊達さんにそう言われて僕は背後へと振り返る。
そこには、少し遠くの方にさっきまで僕たちがいた喫茶店があり、その手前から僕らの方に向けていくつかの建物が並んでいた。
そしてその中の一つに、
「見えるよな?あの人の出入りが目立つ所」
「ええ……『地下鉄のりば』、ですね」
伊達さんの言葉に僕はそう答えた。
さっきの喫茶店とこの洋服店に挟まる形で地下鉄のりばの出入り口がそこにあったのだ。
その出入り口を見ながら伊達さんが話し始める。
「……今俺たちが立つこの歩道はなぁ、地下鉄の出口からバス停までの通り道になっていて
「え?どう、って……」
唐突に伊達さんにそう問われ、僕は一瞬困惑するも直ぐにそれに答える。
「……人を避けながら通りますね。普通に」
「それじゃあ、早くに通れないと思ったら?」
「…………」
更に重ねて伊達さんにそう問われ、僕はしばし沈黙する。
(……車道に飛び出せば往来する車に
「――あっ!」
そこまで考えた瞬間、僕は唐突に声を上げていた。
そばで見ていた伊達さんが僕の様子を見てニヤリと笑って見せる。
「……ま、そう言うこった。たまたま犯行時間が地下鉄のりばが混雑する時間帯で、逃走する犯人は地下鉄のりばから歩道一杯にやって来る人込みを見て思わず
「な、なるほど……」
感心する僕を前に伊達さんは言葉を続ける。
「ジグソーパズルみたいなモンだ。……見た目はバラバラで歪なピースでも、回転させたり角度を変えれば必ずはまる。……目撃者たちの歪な証言は、俺たちが完成させようとしてる
す、すごい。確かに伊達さんの言う通り、一見するとバラバラな証言故にまるで犯人が複数いるような状況に見えるけど、その目撃者たちの証言を一人一人訂正していけば、だんだんと一つの答えに収束していくのが分かる。
少しずつ事件の謎が解けてきたのを感じ取りながら、僕は高まる興奮を抑えつつ伊達さんに向けて声を上げた。
「伊達さん。あと残るは公園で犯人にぶつかったあの老人の証言だけですね!」
「ああ、そうだな。……しかもだ高木、実は目撃者たちの証言の中でその老人が証言した内容が一番重要でな。それと事情聴取で聞いたっつー『腕時計の話』とを組み合わせりゃあ、自ずとあの三人の容疑者の中から犯人を絞り込むことが出来ちまうんだよ……!」
そう言って伊達さんは、僕の眼の前で自信満々に歯をむき出しにすると不敵に笑って見せたのだった――。
最新話投稿です。
次回、コンビニ強盗事件、解決です。