とある探偵世界の冥土帰し   作:綾辻真

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毎回の誤字報告、及び感想ありがとうございます。

このエピソードはこれが最後ですが、ざっくりと簡潔にまとめて行こうと思います。

そのため、本文は今までで一番短いモノになっていますが、ご容赦のほどお願いいたします。


番外:『悪意と聖者の行進』(伊達航視点編)【4】

SIDE:伊達航

 

 

それからの展開は、予想以上にスムーズに運び、そして呆気なく幕引きとなった。

 

俺と眼鏡の坊主の推理通り、予告文を送って来た犯人一味は日が暮れた時刻に郵便局へと押し入り、そこにある五十日(納金日)のために保管されている大金を盗み出そうとしたのだ。

 

――そう。犯人たちの目的は最初からそれだった。

 

大金を手に入れるため、五十日前日である今日この日に郵便局を襲う計画を立てた犯人たちは、たまたまその日が局員が少なくなる日曜(休日)であり、同時に東京スピリッツの優勝パレードが行われる日である事に目を付け、FAXや爆弾を使って三年前の爆弾犯を装い、警察をおびき出した。

そして次に電話ボックスを爆破した事でスピリッツへの嫌がらせだとみせて警察をかく乱。パレードのコースに警察を向かわせ、その隙に前もって乗っ取っておいた郵便車で郵便局を襲撃する算段だったというわけだ。

 

……まぁその途中、円谷の坊主がポストの近くでビデオカメラを回しているのを見かけて、その時既に乗っ取っておいた郵便車が時間通りに回収に来ていないのが映像に残り、それが警察によって調べられるのを恐れてビデオテープを盗もうとしたのだが……それがきっかけで、今回の事件の真相を突き止めることが出来、奴らの計画が水泡に帰すこととなった。

 

計画通りに郵便車の郵便局員を人質にして郵便局を襲撃しに来た犯人たちを、あらかじめ郵便局の中で待機していた俺たち警察が迎え撃った。

犯人たちは拳銃を所持していたが、犯人達(向こう)は四人に対し警察(こっち)は数十人で同じく拳銃所持。

多勢に無勢とばかりに数で威圧してやると犯人たちはあっさりと降伏し、人質になっていた郵便車の郵便局員も無事保護することが出来た。

その後、別の場所で爆弾の設置を担当していた犯人一味の残党も逮捕することが出来、事件は終幕を迎える事となったのである――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「……あ~、結局引き止められなかったか」

 

建物の物陰から高木と佐藤が分かれるのを目にしながら、俺はポツリと一人そう呟く。

事件解決後に佐藤が高木に話していた『後で話がある』と言う言葉が少し気になり、二人が帰ろうとしているのを尾行していたのだが……どうやら俺同様、二人の様子が気になっていた奴らが他にもたくさんいたらしい。

車の影には眼鏡の坊主を筆頭に少年探偵団と阿笠博士の面々。他の車の影には宮本をはじめとした俺と同じ捜査一課の刑事たち(バカども)

そして……さっきちらりと視界に映ったんだが、とあるビルの屋上には白鳥の奴が立っており、俺たち同様、高木と佐藤の様子を見下ろしていた。

 

そうして、例の『話』に関して佐藤が伝えたのは――デートの取り止めの言葉だった。

 

歩き去って行く佐藤の背中を高木が静かに見送っている。

俺がいる場所からは高木の後姿のみで顔は見えなかったが、とても寂しそうな空気を纏わせていた。

それを見ていた俺も、心なしか少し居心地の悪い気分になった。

何とかしてやりたい気持ちもあったが、こればっかりは二人の問題故、俺がおせっかいにどうこう言うわけにもいかない。

 

ため息をつきながら俺はすっかり暗くなった夜空を見上げる。

 

(……()()()()()、か)

 

二週間後の11月7日――。

その日は俺にとって……いや、()()()にとって忘れがたき日である。

志半(こころざしなか)ばでこの世を去っていった二人の親友……そいつらの()()が、また――。

 

 

 

 

――やって来る。




最新話投稿です。

ぶっちゃけ今回のエピソードは伊達刑事視点で原作に沿って進行しただけなのでほとんど変化はありません(そのため、軽いキャラ説明も無しです)。
ならばなぜ、このエピソードを書いたのかと言うと、この話自体が原作での次の大事件(エピソード)に続く前日譚であるため、そのプロローグ的な位置づけで書かせていただきました。

次回は引き続き長編連載をお送りいたします。
少しネタバレさせていただきますと次のエピソードは、今回と同じく伊達刑事の視点がメインになりますが、原作で人気の『トリプルフェイス』の()()()()もがっつりと絡んできます。

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