TASリメイク   作:とくめい

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プロローグ

 世界にある数多の都市伝説のうちそのほとんどが、誰かが、こうであった方が面白いと考え作り出された眉唾であり。

 世界滅亡、陰謀論、UMA、UFO、宇宙人。これらは、何か不審な事件が起こるたびに、こうであった方が面白いと話を作られ、その面白さに共感した人間が様々な手段で広める。

 こうして、一つの神話とも言えるような、とんでもない話なんかが広まってしまうわけだ。

 

 

 しかし、ほとんど――いや、絶対にだれも信じていないであろう、ネタ。都市伝説ですらない面白いネタなんかもあるわけで。

 

 

 曰く――――TASは金髪幼女であると。

 

 

 

 

 TAS。ツール・アシステッド・スピードラン。もしくは、ツール・アシステッド・スーパープレイ。

 簡単に言うと、ツールを使って、理屈上実機で再現可能だが、普通の人間では到底再現できないほどのゲームプレイをするものだ。

 

 

 動画投稿サイトに頻繁に上げられ、かつて自分が苦戦したゲームをまるで舞うように突破していく様は見ていて清々しいものであるが。

 

 しかし、独りとても異質な動画を投稿する者がいた。動画のタイトルはいたって普通で、『○○(ゲーム名)のTAS』

 

 

 

 先ほど言った通り、TASの動きは人間にも再現可能ではある。ただそれは理屈上の話だ。ゲーム以外でも、例えば現実で。人間は理屈上水の上を走る事が出来るし、壁をすり抜けることだって理屈上は可能である。しかし、それを実際にやった人間は存在しないだろう。

 

 理屈上可能という言葉は、それこそ普通はできない、ありえないことをいう時に使う言葉である。

 

 だが、その動画投稿者の作った動画は、TAS動画と銘打ちながらも人間アピールを盛大にしながら、普通は不可能な動きでクリア。最速記録を塗り替えることも少なくない。

 初見でクリア不可能ともいえる鬼畜ゲームをあっけなく初見で突破し。

 とあるガチャの排出率が厳しいゲームを乱数調整といってしばらく待ってから引くと、簡単に最高レアリティ―を引き当てる。

 動画だけならいくらでも偽装はできそうなものだが、生放送でも同じようなことをやってのける。映像に加工のたぐいはないと、わざわざ専門家に調査してもらったらしいネットユーザーは言う。

 

 そもそもの話、オンラインゲームなどで対戦してぼこぼこにされたというものが多くいるのだから、ゲームの実力がピカイチであることに偽りはない。

 

 いったいどうしてこの投稿者が、こんな人間離れした芸当を難なくこなすのか、最近では、もう本当に肉体を得たTASさんなのだという意見が一番真実味があると嘯かれている。

 

 その動画投稿者のユーザー名は『ようじょ』であったこと。そして、生放送の際に人間アピールなのかカメラを起動してしまった時に、一瞬だけ映った金色の髪。

 

 もし本当に、その投稿者がTASが人化した存在であったならば。幼女であったならば。そして、金髪であるのだから。

 

 故に――TASは金髪幼女であると、言われている。

 

 

 

 ☆

 

 

 薄暗い六畳の部屋。複数のPC、漫画、ゲームのパッケージが積み重ねられて、使える場所は一畳程度だろう。

 

(三……二……一……)

 

 長い金の髪をおさげにした小学生高学年ほどの幼女が、手をおかしな角度へまげて、グルグル回している。

 心の中でカウントを取りながら、自らの望んだ結果を探り、引き寄せる。

「今」

 

『ガチャを引きますか? はい/いいえ』

 

 スマートフォンに移ったその表示。はい、のボタンを押すと、虹色のオーブがくるくると回る。最高レアリティの演出だ。

 

「ふー、やっぱり現実の乱数調整は難しいですね。疲れちゃいました」

 

 おかしなことを呟きながら幼女は、狙い通りの、今日から追加された最高レアリティのキャラクターが出たことを確認し、SNSにその結果を載せる。載せて数十秒待って、更新してみるとすでにたくさんの妬み、怒りのコメントが投げられてきていた。

 

 ――この速度は待っていましたね。期待に応えれてよかったです。

 

 実装されてすぐに新キャラを出すことはいつものこと。不正は一切ない。たとえこれが不正だったとしても、現実がそれを認めたからこそ、この結果がある。

 『ふざけるな』、『うらやましい、妬ましい』といったコメントには、自らを『すごい』と讃える気持ちが隠されている。それを感じて、幼女はご満悦。思わず笑みを浮かべてしまう。

 

 幼女がメールに気が付いたのはそんな時だった。

 

「? 動画投稿用のメールアドレス? メーカーからのゲーム紹介とかだったら楽しいんですけどね」

 

【新着一件。件名――『ようじょ』(十二歳)へ】

 

「ふむ……どうして年齢ばれてるんですかね?」

 

 適当に書いてみたのがたまたま当たってしまったのか。それとも――、

 

「アンチウィルスでスキャンして……」

 

 マウスカーソルをそっと合わせて、ほんの少しだけもう一度開けるべきか悩んでから、クリック――。

 

【君は、生まれる世界を間違えたと感じたことはないかい?】

 

 

 

 

 

 

 結果として、幼女は激戦の末にチェスでの勝負に勝利した。

 

 ネットでは、TASが肉体を得たのだとうわさになっている幼女であるが、実際はそれ以上のことだってできる。

 現実の乱数調整、解析、演算、現実のデバッグモードに入ることだって可能。

 

 しかし――。

 

「このソフト作った人間……いえ、人間なわけありませんよね」

 

 わけがわからないことに、このチェスソフトは、幼女の力のそのすべてが通用しなかった。

 早々に幼女はチェスソフトをどうにかするのではなく、解析する対象を、『現実世界のチェス』そのものに移した。

 ゲームの内容やルールが、そのソフトだけの存在であればわからなかったが、チェスはこの世界でありふれたものだ。現実世界を解析すればいくらでも見つけられる。

 チェスは最善手を打ち続ければ負けることはない。幼女は、相手が動くたびに、現実世界のチェスゲームのパターンを解析。最善手を打ち続けた。

 

【おみごと。それほどまでの腕前、さぞ世界が生きにくくないかい?】

 

 ――……

 

「生憎と、この世界を普通に生きていないので、生きにくいも何もないんですが――」

 

 ちょっとした違和感。不変的でなければならない世界のルール、法則のたぐいが、この周辺だけ変わっているような錯覚。いや錯覚ではない。間違いなくこの周辺だけはこの宇宙の物理法則から浮いている。

 

 そっと幼女は小首をかしげて。

 

「あれ? ひょっとして『間』に誰かいます?」

 

 おもむろに伸ばした幼女の手は、水ににじむインクのように空間に溶けて。

 

 

 

 世界と世界の間という壁を抜けた。




リメイクしたが続くかはわかりません。
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