八神という人に会いに来たと言われた時は驚いてしまったがどうやらファンらしい。
まさかもう七年も絵なんて描いていないのにファンがいるとは思わなかった。今の時代だったら俺よりうまい人なんているのに律儀に俺なんかのファンで居てくれることは嬉しいものだな。
本当は少し話して見たかったけどしずくが「葵と話す事があるからそれが終わったら行かせるからそれまで待っててくれる?」と聞き、少し困惑だったけど了承していた。
「それで俺をここまで呼んで遅刻してくるとは一体どんな要件なんだ?しずく」
「遅れてきた事に関しては悪かったね」
「まあ、しずくが遅れるのはいつもの事だから別に気にしてはいないけどな」
しずくと約束をする時は絶対に予定通りに来ると思ってはいけない。こいつが遅れてこないためし何てないんだからな。
「それは失敬だな。私だって遅れない日ぐらい年に一度ぐらいあると……思う」
最後の方は自信が無さそうな感じだった。
「ないよ。俺が知る限りはね。もうこの話はここで切ろう。それで俺を会社まで呼んだ理由は?」
「そうだね。葵をここに呼んだ理由は一つお願いをしたくてね」
「お願い?」
こいつからのお願いなんて聞かなくても予想は付くけど聞くだけ聞かないと分からないしな。
「うん。.......もう一回ここに戻ってくる気はない?」
「何でだ?俺は家であっても仕事はちゃんとこなしているし、しずくなら気付いているんじゃないか?俺はここにいる時よりも仕事が早いと言うことを」
これは誰がなんと言っても結果という形で出ているはずだ。オフィスにいる時は周りへの配慮などをしていて予想以上に時間を消費してしまい仕事が遅くなってしまったりした事だってある。
「確かにそうだね。それは分かっている.....だけどそれを踏まえても戻ってきて欲しいんだ。葵は知っているか知らないか分からないけど..葵のいる時といない時で変わったことがあるんだよ」
変わった事.....そんなの変わるだろ。俺がここのオフィスに居たのは約7年前だ。7年経って変わらない事なんてないだろう。それに俺が居なくなったように中には退所したものや新しく入った人もいるだろうしな。
「そんなの変わって当然だろ。時代が変わったんだよ」
「そうじゃないよ。葵が居なくなってから社内の空気が悪くなったんだ。今ではその悪い空気は無くなりつつあるけどね。それは葵の重要性が形となって表れたんだと思ったよ。葵は多分、皆の心の支えだったんだと思うよ。昔は頼りになるしどんな人にでも人当たりが良いから評判も良かったしね」
「それはないと思うけどな。俺を別に頼りにしている感じは無かったと思うけどな」
「いや、葵がなんと言おうとあの時は葵を中心に回っていたんだよ」
しずくは決して譲る気はないらしい。ここはしずくの言う通りだと言わなければお互いに譲らなくて話が前に進まない。
「まあ、これ以上ここで議論しても話が一向に先に進まないからここはしずくの言う通りだとして俺に拒否権はあるんだろ?」
「まあね。強制は出来ない。だけど、葵も関わっているから勿論、知っているだろうけどFS3(フェアリーズストーリー3)はこれからが佳境だ。その時に葵がいるのといないのとでは違う。それに葵の地位は今年からメインプログラマー兼ディレクター。私のディレクターよりも権限は上で何かと会社にいないと不便になるのは目に見えているからね」
おい、急に新しい役職になるのかよ。何も知らせがきていないぞ、こっちには。
「そんな話聞いてないぞ」
「そりゃそうだよ。知らせてないんだから」
こいつは大事な事を知らせないんだから俺が余計にいつも苦労するんだよな。ちゃんと大事な知らせは言って欲しいものだ......まあ、俺がここにいれば良いだけの話なんだけどな。
「いや、知らせろよ。ディレクター兼メインプログラマーか。また、面倒な役職を振ってきやがって..」
「そう言うなよ。上も君の働きに見合った役職に振ったんだと思うよ」
「それなら只のプログラマーで良いんだよ。変に役職が増えると色々と忙しくなるんだから」
今までプランナー兼メインプログラマーでもかなりの重労働だったのに..ディレクターって余計に疲れるじゃん。
「まあ元々、葵は役職に興味がない人だからね」
「それを知っているなら上の奴らにそう言ってくれよ」
「..まあ、それほどこの会社に貢献してくれたって事なんだから文句はその辺にしてね」
実績を上げなければ昇進は出来ないからな。そこら辺を考えると嬉しい事なんだけど....忙しすぎて自分が倒れないと良いなと俺は密かに願った。
確かにディレクターをやる事になると家からじゃ不便だな。
「それに、葵のファンの子も多いんだし。その子たちにとって葵と一緒に仕事が出来ると言うのはそれだけでモチベーションが上がるものだと思う」
「それなら家からだとしても変わらないだろ」
「いや、違うよ。目に見えて自分の手の届くところにいるのと手の届くところに居ないのとでは天と地ほど違うと私は思うよ」
そういうものなんだろうか。俺は憧れの人とかは居ないから分からないけど....。
「良い例が八神だ。あいつはずっと前から君のファンで会えることを今まで楽しみにしていたんだ。だから、今日君が来ていると聞いて飛んできたんだろう」
八神.....あ..さっき会った金髪の女性の事か。そんなに俺に会うのを楽しみにしていてくれたんだな。もう俺の事を知っている人なんて居ないだろうと思っていたが案外、いるんだな。
「そうか...。それでもし、俺が肯定的な返事をした場合、俺はいつからこっちでの仕事になるんだ?」
「今日から」
「今日!?そんなに早く用意なんて出来ないだろう」
「いや、そこら辺の事はもう大丈夫なんだ。後は君の肯定的な返事だけだ」
「早!....用意周到すぎるだろ」
そこまでやられると断るにしても断れない。でも、ここ辺りが見切りどきかもしれないな。
元々、一年ぐらいを目途に戻ってこようと思っていたのに家での方が快適に仕事が出来るからここまで長くなってしまった。それの性で迷惑を掛けている事も分かっているし余計な仕事を増やしてしまっている事もある。しずくからは今まで戻ってきて欲しいと言われなかったからそれに甘えて戻る事は無かったけどここら辺が限界だろう。
「分かった。戻るよ」
「...まあ、君が戻りたくない気持ちは分か.....ってええええええええ、ほん.本当に良いの!??」
「まあ、いつまでも戻らない訳にもいかないしな」
これを気に会社での仕事に戻すのも悪くないだろうしな。
「き、君がそう言ってくれると助かるよ!!...正直なことを言うと君は帰りたくないと言うと思ってたんだ。だからもっと長く時間が掛かると思ってたんだ」
俺を駄々をこねる子供とでも思ってのか。
「.....このままで良いとは言えないからな。それにしても良くキャラデザの方に戻れと言わなかったな。お前なら言うと思ってたんだけどな」
「確かに言いたいよ。葵がキャラ班に戻ってくれれば私としても助かるしね。それは会社全体としてもね。でも、それはあくまでもディレクターとしての私はね。葵の友達の私としては無理はして欲しくはないんだ」
昔のことを思い出しているのか少し暗そうな顔をしながらしずくは言っていた。
「...お前にそんな事を言われると調子が狂うから止めてくれ」
「本心だよ。葵に無理はさせられないからね。まあ、そう言ってもディレクターになっちゃったからこれまで以上に忙しくなるとは思うけどね」
「それはそうだな。でも、まあ頑張ってみるよ」
全然、話が先に進みません。
後、感想などもよろしければお願いします!
誰が一番好きですか?
-
涼風青葉
-
八神コウ
-
遠山りん
-
葉月しずく
-
その他のキャラクター