しずくからは今日から仕事だと言われたけどどこに行けば良いんだ。あいつは誰かに呼ばれてどこかに行ってしまったからどこに行けば良いのかまるで分からない。
まあ、まずはキャラ班のところにでも行ってみるか。あの新人の子も気になるし久しぶりに古巣を見てみたいしな。俺はその足でキャラ班のブースまで向かった。
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思っていたよりも変わっているところは無かった。まあ、内装は変わっていたりはしたけどそれぐらいでほとんど変化は無かった。知らない人が居たりはしたけどそれは七年も経てば仕方のない事だろう。
だけど一つ大きく七年前で違うのは..俺に向けられている目だ。訝し気な目をしていたり期待のような目で見ていたり様々だった。
そしてひと際、目立っている女性が居た。その人は俺も知っている...金髪の女性だ。
目立っていると言っても何か特殊な事をしているからとかでは無くて俺の後ろを付いて来ているだけだ。それだけでも目立つ要素だ。後ろを付いて来ているのが小学生とかだったら話は別だけど成人女性がそんな事をしているんだから目立たない保証はないだろう。
俺はそろそろかなぁと思い後ろを振り返るとそこには思っていた通り金髪の女性がいた。
「何で付いて来ているんだ?」
すると金髪の女性はもじもじとしていてこちらを見ようとしない。
「何か俺に用でもあるのか?それだったら聞くんだが」
「....はずきさんとの話しは終わったんですか?」
「ああ。終わった」
最後の方はかなり雑談をしてしまって予想よりも時間をくってしまったがな。
「ど、どんな話をしたんですか?」
「そうだな~....ここでもう一度働く話とか君の話とかかな」
「わ、わ、わたしの話?」
「うん!君が俺のファンとかの話とかね。俺は嬉しかったよ。もう描いていないのに今でも俺のファンがいるとは思わなかったからな」
「......私は葵さんの絵を見てキャラクターデザイナーになろうと思ったんです。誰よりも上手くて綺麗な葵さんのキャラを」
「おう、嬉しい事を言ってくれるね」
やっぱり自分の絵やキャラを褒められるのは今でも昔でも変わらなく嬉しいものなんだなと俺は改めてここで再確認した。
「だから正直な事を言うと葵さんと仕事をしてみたいです!入社したら一緒に働けると思ってたけど葵さんは自宅で仕事をしているからほとんど来ないって言われてショックでした。でも、いつかは会えると思っていたんですけど今日まで会える機会が無くて.....」
かなり緊張をしてしまっているようだ。まあ、自分で言うのも何だけど憧れの人らしいから緊張してしまうのだろうか。正直、俺も初対面の女性に関しては得意じゃないからかなり緊張しているんだけどな。
「なら今日からは同じ職場だからいつでも会えるな。まあ、俺はキャラ班じゃないから席は遠いだろうけど同じ職場なんだから話せない事もないしな」
「......同じ職場?」
「ああ。今日から俺もここに復帰する事になった。自宅での仕事も良かったがさすがにこのままという訳にもいかないからな」
この決断が良かったか悪かったか何て今は分かりはしないけど......多分、半年後には答えが出ているんだろうな。
「ほ、本当ですか!?????」
「ああ.....そんなに詰め寄るな。だが、俺はキャラ班じゃないから同じとはいかないな」
「でも、同じ職場に葵さんが......私、今まで以上に頑張ります」
宣言するように金髪の女性は言った。
「これから同じ職場の同僚として改めて自己紹介するよ。俺の名前は鯉塚、葵だ。FS3(フェアリーズストーリー3)ではメインプログラマー兼ディレクターという役職に就くらしい」
「...私は八神 コウと言います。FS3(フェアリーズストーリー3)ではキャラ班の班長をしています」
そうか。こいつがFS3(フェアリーズストーリー3)のキャラ班のリーダーだったのか。
「あ..よろしくな!」
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そんな感じで八神と話をしているとやっとしずくがやってきて俺の事を皆に紹介してくれた。そして今は自分のブースに腰を下ろし仕事を開始している。一時間前までこんな事になるとは全く思わなかった。
だが、一つおかしなところがあるとすれば何で俺の真後ろのブースには銃を飾ってある。こういう趣味の人が居ても良いと思うが会社のブースにまで飾るものなのか。別に内の会社は自分のブースであれば飾りつけをしたりしても別に問題はない。それを許可しているのは自分のモチベーションを高めるためであったりする。マスター前は忙しすぎてヤバいからそう言う時に少しでもモチベーションを高めるためだろう。
真後ろの奴は席を外していたから挨拶の時に居なかったからどんな奴なのか分からない。
まあ、特殊な奴である事は確かだろうな......うまくやっていけそうな奴だと良いな。
仕事は自宅でもやっていたから問題はないがディレクターとしての仕事が多すぎる。会議も午後から何個か予定されているしそれ以外にもメインプログラマーとしての仕事もやらなければならない。
そして後、もう一つ大事な仕事をしずくから言われている。それは涼風の教育係だ。普通は同じ部署の奴がやるのが普通だ。なのに何で俺がとは思った。
だが、しずくによると「葵じゃなきゃダメなんだそうだ」。まあ、教育係と言っても俺はキャラ班の班長でもないからキャラ班においては何か決定権を持っているわけではない。ディレクターとしてものを言うことは勿論出来るがそんな事をする必要はないだろう。
教育係として涼風に何をすれば良いのかとしずくに聞いて見たら「涼風くんが何か困っていたり悩んでいたりしたら助けてあげて欲しい」と言われている。それは教育係と呼ぶのか....。只の相談相手じゃないか。
そして、ブースまで少し遠いし態態、行くのは面倒だけど教育係と言う仕事を任されている以上、放棄するわけにもいかないしな。と言ってもこの仕事が終わるまでは行けないしこの仕事が終わるごろには昼休みに入っているかもしれないな。さすがに昼休みに入る前には涼風にも挨拶をしておきたいしな。涼風の方には俺が教育係と言う事は知らせてあるとしずくが言ってくれているらしい。
でも...この仕事は今日中に上げないといけないんだよな。午後はスケジュールが全部、埋まっているし。
「もう!!何でこんなに忙しいんだよ!!!オフィスで仕事をするのは久し振りなんだから少しぐらい仕事を少なくしてくれても良いじゃねぇか!!!」
その後は死ぬ気で仕事を進めてやっと終わると思った頃には昼休みに入っていた。
「この程度の仕事が昼まで終わらないとは俺も実力が落ちたか」
まだ、飲んでいなかった10秒〇ャージを口に銜えながら俺は必至に仕事を片付けている。初日から酷い有様だなと思っていると誰かが肩を叩いてきた。
「誰だ?」
そこに居たのは...健康的な日焼けをした女性だった。
「あなたの真後ろの席の阿波根うみこです!今日からあなたの部下になりました。うみこと呼んでください」
名前の苗字の方がうまく聞こえなかったけどまあ、問題ないだろう。それにしてもこいつがガンマニアか。見た目からはあんまりそういう印象は抱かないけどな。
「そうか。俺は鯉塚葵だ。よろしく頼む」
それだけ言って俺はパソコンの方に向き直りすぐに仕事を再開した。暇があれば少しぐらい部下とのコミュニケーションに使いたいところだが今はそうも言ってられない。
そしてそれから10分もしないうちに今日のノルマを達成した。これで今日はプログラマーとしての仕事は終わりにするか。俺は腕時計を見ると打ち合わせの時間まで1時間ぐらいの空きが出来た。
今は昼休みだから涼風も自分のブースにいるとは限らないな。折角、キャラ班まで行くんだったら確実にいる時間帯が良いんだよな。
でも、そんな事言ってたら会えるものも会えないか。
「..うみこ」
「はい」
「これからちょっとキャラ班まで行ってくるからもし、俺に用がある奴が来たらキャラ班のところまで来るように言ってくれるか?」
「はい。分かりました」
キャラ班に行ってみるとほとんどの人が居なくてガラガラだった。やっぱり昼食の時間帯だしな。勿論、目的の人物がいるはずもなかった。
「折角の一時間の休憩なんだから何か困った事があったら助けてあげたかったんだがな」
涼風がここに居ないと言うことは誰かと食事にでも行っているのかもしれないな。それならキャラ班にも馴染めてきているという事だろう。教育係としては何もやっていないけど嬉しいものだな。
「あ...今朝はすみませんでした!」
何だ何だ、誰かがどこかで謝ってる。何か間違えてしまったのだろうか...。
居ないならここに長居するのも悪いから帰るかと思って180度回転すると...何故か俺の方を向いて頭を下げている女性が居た。ここら辺には俺とこの人しか居ないって事は俺に謝っているって事か?
頭を下げていて顔が見えないから分からないが俺は誰かを今日は叱っていない気がするんだが。それに俺が誰かに怒る何て事は無かったと思う…………。
「え..俺に謝ってるの?」
「そうです」
「俺、別に怒ってないし、まず何で謝られているのか分からないんだけど?」
俺がそう言うと頭を上げてこちらを見ながら服のポケットから紙を取り出して俺に見せてきた。その紙は.....あ..そう言うことか。この人が誰なのかは分かったけど何で謝っているのかは分からない。
「今朝は失礼な態度を取ってしまってすみませんでした!」
そんなに失礼な事をされた覚えは全く無いんだけど。もしかして俺が忘れているだけか.....記憶力は良い方だと自負しているんだけどな。
「..まあ、俺は別に失礼な事とは思っていないから大丈夫」
正直何が何だが思い出せないから何が失礼な事なのかも全く分からないんだけどね。
「ありがとうございます!....それで今日は何の用でこちらまで来たんですか?」
「ああ、涼風の教育係になったから挨拶でもしておこうと思ったんだけど...いない見たいだからまた、後で来ようと思っているよ」
「...急ぐ必要がないのでしたら少しここでお話しませんか?」
話...?急ぐようもないし打ち合わせまでなら大丈夫だろう。
「良いぞ。あまり話したことがない後輩ばっかだからな。少しでもコミュニケーションは取っといた方が良い気もするしね」
後輩の方から誘ってくれる何てあんまりないだろうしここは快く受けるべきだろう。
俺は適当な近くの椅子に座った。
「では、改めて自己紹介します。私は遠山りんという名前でFS3(フェアリーズストーリー3)ではADをやらせてもらっています」
ADか...。俺もかなり前に一度だけやった事があったな。もう思い出せないくらい昔だけど...。
「そうか。それじゃどっちにせよこれからも顔を合わせる機会は増えそうだな」
ADとなると会議とかにも顔を出すだろうしな。俺が会議をサボらない限りは会うだろう。
「鯉塚さんはディレクターでしたよね」
「ああ、そうだよ。正確にはメインプログラマー兼ディレクターかな。仕事が多すぎて困ってるよ。今はどうにか仕事を片付けて休みを取ってるけど午後からは仕事詰めだよ」
「大変そうですね....」
「もう大変だよ。これじゃマスター前はどうなるのか今から思いやられるよ」
マスターが終わったころには俺は瀕死状態かもしれないな。
「確かにこれからは忙しくなりそうですしね。でも、なるべく休める時に休んでおいてくださいね。青葉ちゃんの事なら私たちもなるべくサポート出来るように頑張るので」
「ありがと!だけど一応、教育係を任せられているからな。なるべく顔を出せるように頑張るけど毎日、顔を出せるか分からないからそういう時はサポートをしてあげてくれ」
正直、毎日ここに来れるか分からないからな。忙しければ顔を出せないかもしれないからな。
「はい!それで聞きたいんですけど...もう絵は描かないんですか?」
「...君もよく知ってるな。俺が絵を描いていたのはかなり前の話なのに...。まあ、描かないかな。俺はもうキャラ班じゃないからね。でも、仕事以外だったら極稀にだけど描く事はあるよ。たまには描かないと勘が鈍っちゃうからな」
しずくはかなり心配しているようだけど..俺は別にもう描けないわけではない。昔の事は昔の事だからな。俺はもし、今回キャラ班に配属されたとしても文句を言う気はなかった。
でも、しずくは俺が思っているよりも気を使ってくれているようでキャラ班には配属されていなかった。
「描いてるんですか!!!」
何故か遠山は前のめりになって聞いてきた。そんなに気になる話題だったか。俺としてはサラッと流してくれて良いと思うんだけど。
「...ああ......気分転換をしたい時とかにな」
「........見せて貰えたりしませんか?」
「見せる?今はないから無理だけど」
「そうですよね......」
目に見えて落ち込み始めてしまった。俺がどんな絵を描いていたのか興味でもあるのかもな。
「まあ、じゃあ明日にでも持ってくるよ」
落ち込むほど見たいんだったら持ってきてあげても良いだろう。そんなに手間の掛かる事でも無いしな。
「本当ですか!??」
「ああ、別に減るもんじゃないしな」
そんな会話をしていると涼風とその同僚たちが昼食から帰ってきた。涼風を俺を見つけると誰だろうと顔をした後であ...と顔をしてこちらに近付いてきた。
「あの今朝、会った方ですよね」
「そうだが...」
「今朝は挨拶をし忘れてしまって。私は今日からこの会社に勤める事になりました、涼風青葉です!よろしくお願いします!」
俺に向かって深々とおじぎをしてきた。
「ああ、よろしく。俺は鯉塚葵だ。担当はプログラマ系だからあまり関わる事はないと思っていたんだが...どうやらこれから少しの間はかなり関わる事になるとは思う」
「かなり関わる?」
「ああ、俺がお前の教育係なったらしい」
「そ..そうなんですか!???」
この反応はどうやら知ら無さそうな反応だな。
「聞いてないのかよ.....あいつは知らせたと言っていたんだけどな。まあ、今日は元々挨拶だけのつもりだったからこれで帰るとしよう。じゃあな」
初日のとても忙しい午前中はこうやって終わりをつげ、午後も会議とか打ち合わせとかたまにキャラ班に行ったりして終わった。
誰が一番好きですか?
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涼風青葉
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八神コウ
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