天才の復活   作:主義

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歓迎会

遠山とのやり取りから一週間が経った。本当に遠山は頑固な人だ。俺の食生活なんだからあんなに必死にならなくても良い気がするけどな。まあ、俺の事を心配してくれているんだろうけど…まるで母のようだな。

 

だけどあれからというもの遠山は昼食の度に俺のブースに来るようになってしまった。

 

 

 

そしてそれは今日も同じで遠山は俺のブースに来て色々と話している。

 

 

「本当にお前も飽きもせずに毎日よく来るな」

 

 

 

「それは鯉塚さんがちゃんと食事を取っているか確認をするためです」

 

本当にあの日から一日も欠かさずに来ているわけだから凄いとしか言いようがない。

 

 

 

「俺は来なくてもちゃんと食事を取っているよ。もういい年なわけだから健康管理ぐらいは自分で出来てるよ」

 

 

「いや、出来ていないです!!!」

 

このやり取りを一週間、ほぼ毎日続けている気がする。

 

 

 

「はぁ……もうこの話はいいや、他の話でもしよう」

 

 

 

「他の話ですか?」

 

 

「うん。そうだな、青葉はどうだ?」

 

 

又聞きのような感じで葉月からは聞いたりするが遠山や八神からは聞いたことが無かったからな。やっぱりこういうのは教えている本人たちから聞くのが一番良い。

 

 

「青葉ちゃんはとても飲み込みが早いですよ。今日辺りからこうちゃんが仕事を振るような事を言っていましたから」

 

 

 

「そうか。まあ、大丈夫そうなら良かった」

 

 

 

「ああ、それで思い出しまいました!!!今日、青葉ちゃんの歓迎会をするんですけど鯉塚さんもご一緒にどうですか!?」

 

 

歓迎会か…今日は別に仕事が忙しいわけでもないから行こうと思えば行けるが……こういうものは仲の良い者同士でいくのが普通ではないか。そこに俺のような部外者がいくのはあまり良いとは言えない。

 

 

 

「いや、今日は少し仕事が忙しくてな。悪いが行けそうにない」

 

 

「そうですか…」

 

あからさまにガッカリされると俺にも罪悪感があるな。

 

 

 

「まあ、楽しんでくると良いよ。会社の方が負担してくれるなんて事はこういう事がないとあまりないんだから」

 

 

 

「はい……」

 

 

 

 

------------------

 

あっという間に外は暗くなり社内も少しずつ人が減っていく。遠山にはあんな風に言ったが今日は忙しくないためこれ以上残ってもやる事はないだろうし、どうしようかな。

最近は泊まり込みが多かったし、久しぶりに帰るのも悪くないかもしれない。そうと決まれば帰るか。

 

 

「うみこ、今日は上がらせてもらうよ」

 

 

「お疲れ様でした、ちゃんと休んでください」

 

 

 

「うん、わかった」

 

 

 

 

家に着くとシャワーを浴びて適当に食事を取って、すぐにパソコンの前に腰を下ろした。家であろうと職場であろうと俺はほぼパソコンの前にいる。でも、さすがに自宅で仕事をする訳ではなく『絵』を描く。絵を描いてサイトに投稿する。投稿し始めたのは二年ぐらい前からで最初は出来心だったんだけど予想以上に面白くて今でも『アオ』という名前で描いている。

 

 

 

気が向いた時にしかやらないけど二か月に一度ぐらいのペースで行っている。絵を描くには三、四時間もあれば完成する。仕事でない分、手を抜いたとしても良いし、自分が描きたい者が書けるから良い。

今日は思っていたよりも順調に進み、二時間を過ぎた時点で完成まであと一歩というところまで来ていた。

 

 

最後の仕上げに掛かろうかと手を動かしたほぼ同時に電話の着信音が部屋中に響き渡った。こんな良い時に誰だと思いながらも端末を取り表示されている名前を見て『こいつか』と思い、端末を耳に当てる。

 

 

 

「こんな時間に何か用か?しずく」

 

 

 

「遠山くんに聞いたよ。「仕事が忙しいから」って青葉くんの歓迎会を欠席したんだって」

 

 

 

「……そうだがそれがどうした?」

 

そんな事を態態、言うためにこいつは連絡を取ってきたのか。もし、それだけだったらすぐにでもこの電話を切りたいんだが。折角、絵が完成しかけているんだから。

 

 

 

「遠山くんと八神が見てわかるほどに落ち込んでいたよ」

 

 

「………」

 

 

 

「どうせ、キャラ班でもない俺が行ったとしてもとか思って行かなかったんだろう。君は何事も考えすぎなんだよ。後輩が誘ってくれたんだったら快く行ってあげるのも先輩の仕事じゃないかな。それに君は青葉くんの教育係なんだから」

 

考えすぎ・・・ね。逆にしずくは考えなさすぎだけどな。

 

 

 

「…先輩としてか……後輩にそれを言われるとね。思いもしなかったよ」

 

 

「それじゃもう少し先輩らしくしてください」

 

電話越しでも分かる。絶対にしずくは今、満面の笑みを浮かべながら言っているな。こいつとも長い付き合いになってきたからな。

 

 

 

「お前がそんな言葉遣いを俺にするところ久しぶりに聞いたよ。いつの間にか、ため口が当たり前のようになっていったからな」

 

 

「今からでも敬語にした方が良いかい?」

 

 

 

「いや、良いよ。もうこれが当たり前だしな」

 

 

「そうだね。次からはちゃんと行ってあげるといい。特に八神と遠山くんには何か埋め合わせのような事をした方が良いよ。本当にかなりへこんでいたからね」

 

そこまでへこんでいたのか。まあ、遠山に関しては目の前でへこんでいるところを見たからな。

 

 

 

「分かったよ。何か埋め合わせをしておくことにするよ」

 

そしてしずくとの電話を切ってすぐに絵をまた描き始めてその一時間後には投稿が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、上がってる!!!!やっぱりアオさんの絵は上手いな!」

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