「天龍を連行してきました」
警務隊員が手錠を掛けられた天龍を連れて会議室に入ってきた。
「天龍の手錠を外せ、先程も言った筈だが」
警務隊員が慌てて手錠を外した。
「天龍、昨日の逮捕される迄の事を話してくれるか?」
天龍が頷いた。
「どの辺りから話せば…」
天龍は怯えているのか言葉遣いがやけに大人しかった。
「18時くらいからで」
「わかりました…俺…私と龍田は提督から御子息の夕食のお世話を頼まれて…部屋で調理を始めたのが18時でした、御子息が部屋にやって来たのが18時25分位でした…それで料理が出来て食べ始めたら…警務隊が部屋にやってきて逮捕されました…御子息がずっと一緒だったと説明しても聞き入れてもらえず…」
天龍が逮捕までの流れを話した。
「天龍確認だが、艤装保管庫から寮の1階にある更衣室で着替えをしてから此処に戻るまでに掛かる時間はどれくらいだ?」
俺の質問に天龍が少し考えると、
「本館の何処を通過するかで多少の誤差はありますけど…15分位は必要かとは思います」
実地見聞をした神通からも同様の報告がきていた。
「となると、時間的にも合わない、先ず第一に君達の部屋の履歴は18時に天龍が龍田の部屋への入室以降御子息を招き入れた時迄の解錠迄無い、それと各階のエレベーターホールの監視カメラ映像にも二人は映っていない、第二に18時25分の時点で仮に御子息を一人残して執務室へ向かったとしても、往復30分掛かるはず…つまり警務隊が部屋に行った時間には二人は不在でないとおかしい、違うか?」
俺は途中から警務隊員に話し相手を切り替えていた。
「ですが、秘書官の赤城さんは確かに天龍と龍田だったと…」
俺はやれやれと溜息をつくと、
「赤城が見たのが本当ならな…」
俺が話を一旦止めると、タイミングよく川内からの電話が掛かってきた。
「何か解ったか?」
「はい、赤城が見たのは後ろ姿だけだそうですが…」
「そうか…引き続き頼む」
「了解」
俺は警務隊員に向き直ると、
「天龍姉妹を見たと言っているのは現時点では赤城のみだ…しかし時間的に無理な話だがな」
俺は改めて天龍に向き直ると、
「天龍、執務室から艤装保管庫、寮1階の更衣室経由で部屋に戻るルートを教えてくれ…」
「おう、任せろ」
安心したのか何時もの口調に戻っていた。
「本館3階と4階は戦艦、重巡、空母の寮だから無理、理由はサロンには必ず誰かしらいるからだな、1階は警務隊の事務所や食堂だからここも駄目だな、理由は3階と同じでだ、執務室エリアの2階も同じだな…やっぱり外を通ってしか無いけどょ…窓の下を人知れずに通過するとなると、それなりに時間もかかっちまうけど…」
俺は天龍の話を聞くと、
「確かに天龍の言う通りだな…其処から考えられるのは、ニセ天龍姉妹は艤装保管庫に潜んでいるか…向かうフリをして何処かに潜伏しているか海から逃げたか…だな…」
俺は泊地施設課から借りた泊地各施設の図面を再度確認していた。
「寮に地下階があるが、此処は?」
俺が警務隊長に確認した。
「寮の地下階は駐車場です」
俺は図面見ながら、
「駐車場の本館寄りに幾つかの小部屋も存在しているが?」
「確か倉庫です、中をご覧になりますか?」
「頼む」
警務隊長が施設課員に鍵を持ってるように指示を出した。
「お待たせしました、一応地下倉庫の鍵とマスターを持ってきました」
施設課員が気を利かせて必要になるであろう鍵を総て用意してくれた。
「助かる」
俺は鍵を受け取ると、
「天龍一緒に来てくれるか、それと施設課員も」
天龍へ同行を頼んだ。
「おう」
「わかりました、それなら自分が行きます此処が出来てからいますから」
泊地が出来てから居るという施設課員が名乗り出た。
「そいつは助かる、それと警務隊は銃火器携行で付いてきてくれ、万が一にも犯人と鉢合わせなんてことも考えられるからな」
「了解しました」
警務隊長が無線で部下に指示を出した。
「ガンロッカーの解錠を許可する、小隊は装備A−2で地下駐車場に集合」
数分後、シールドとSMG装備の警務隊員が6名やって来た。
「報告、舘脇軍曹以下6名装備A−2で集合終わり!」
「了解」
警務隊長が俺の下にやってくると、
「準備完了しました」
そう報告してきた。
「舘脇軍曹、警務隊を3名づつに、天龍と隊長は俺に同行、施設課員は俺と衣笠の所に其々付いてくれ」
俺の指示で2つの班に分かれた。
「先ず俺の班で扉の解錠をし内部検索を行う、その後衣笠達が調査に入ってくれ」
「了解」
衣笠が答えた。
「それでは行くぞ」
俺は倉庫1と書かれたプレートが掛けられた扉を開けると警務隊員がフラッシュライトで室内を照らし、突入していった。
「ルームクリア!」
警務隊員が何もないことを報告していた、
「照明つけます」
1人の警務隊員が壁のスイッチを入れた。
「空きの様です」
室内には何も無かった。
「次行くぞ」
俺は隣の部屋へと移動した。
結果から云うと、4部屋の倉庫総てに隠し扉的なものは発見されなかった。
「寮には何もなしか…次は本館だな」
俺達は一旦会議室へと戻った。
「本館の艤装保管庫側に何かないか?」
俺はまた図面をみていた。
「ニセ天龍姉妹が此方側に逃げたとなると…何か隠れる場所があるのかと…」
施設課員も図面を穴が開くように見ながらそう呟いた。
「此処には監視カメラは無いようだな」
俺は保安図面を見ながらそう呟いた。
「付いているのは1階と2階は廊下の両側とエレベーターホール、3階と4階はエレベーターホールについているだけです…画角が広いカメラを取り付けているので映らないでは不可能です」
保安図面には各監視カメラの画角も書き込まれていた。
「確かに…となると階段でとなるが…」
と考え込んでいた時だった、青葉がやって来た。
「警部、セキュリティ関係の調査終わりました…それでなんですが」
青葉が俺の耳元で小声で結果を報告してきた、
「実は極秘に取り付けられた監視カメラが数台ある様で、録画されていた映像を確認する限りでは事件発生時刻の前後で2階執務室から出てきた人物は居ませんでした…まだ証拠が無いので大きい声では言えませんが秘書官の通報自体が怪しいと睨んでいます」
俺は青葉の報告を受けると、
「赤城は今何処だ?」
同じ様に小声で確認した。
「自室に居ると加賀から聞いています」
「…」
俺は少し考えると、
「赤城の身柄を確保「警部、提督が意識を取り戻しました!」!」
衣笠が報告してきた。
「提督によると、赤城に襲われたととの事です!」
俺は其処まで聞くと、
「赤城の身柄確保を!」
その場にいた施設課員以外が速やかに行動を開始した。
数分後…。
「被疑者確保!」
警務隊からの報告が入った。
「提督を刃物の様な物で刺した事を認めました!」
どうやら観念したようで、その場で自供したそうだ。
「犯行理由は…痴情の縺れ、自分の好意に頷かない提督ならとの事です」
その後、憲兵隊が到着すると赤城は護送車へと乗せられて行った…憲兵による厳しい取り調べが待っていることだろう。
「フタヒトマルマル撤収!」
俺は撤収を宣言すると泊地を後にした。