艦これ《思い付くままに……》   作:屋根裏散歩

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リビングデッド②

「この階段を上がれば工廠事務室に出る」

 

隊長がタブレットの画面を見ながら進んだ。

 

「隊長、出た瞬間に鉢合わせは勘弁ですよ」

 

まだこの時兵士たちは気楽だった。

 

「よし、扉を開けるぞ」

 

先頭の兵士が階段室へ抜ける扉に手を掛けた。

 

「どうだ?」

 

隊長が声を掛けた。

 

「この世の地獄とはこのことでしょうね」

 

私は兵士のヘルメットにつけられたカメラからの映像を隊長とタブレットで見ていた、其処にはゾンビ化した工廠作業員が多数生者を求めて彷徨っていた。

 

「M202で一気に焼き払うか…」

「確かにあれは焼夷弾ですから」

 

隊長が頷くと一人の兵士が扉を開けた瞬間にもう一人の兵士がM202をゾンビに向けて発射した。

 

私達は焼け焦げたそれに警戒しながら明石が立て籠もる部屋へゾンビを排除しながら向った。

 

「丁度いい事に医務室に立て籠もっていたようですな」

 

隊長が部屋のプレートを指差した。

 

「それなら一石二鳥で明石の保護と医薬品の回収を同時進行で行えるな、そうすると残すは溶接機の確保だな」

 

「明石無事か?」

 

私は扉をノックすると声を掛けた。

 

「提督…噛まれてないですよね?」

「どこもな、扉を開けてもらえるか」

 

部屋の中で何か重たい物を動かす音がすると程無くして扉が開いた。

 

「提督ご無事で…」

 

明石と夕張が抱きついてきた。

 

「大淀が……犠牲に…」

 

私は大淀が奴らの犠牲になった事を話した。

 

「そうですか…大淀…」

「泣くのは後だ、今はセーフポイントまで下がるぞ、必要なものはあるか?」

 

私は泣きそうな明石を強い口調で留まらせた。

 

「RQ-11を持っていきましょう」

 

夕張がドローンを持っていくことを提案してきた。

 

「隊長どう思う?」

 

私は隊長に聞いてみた。

 

「確かにドローンがあると偵察や生存者捜索がやりやすくなります」

 

私は隊長の意見を聞くと明石と夕張に指示を出した。

 

「RQ-11運用に必要な機材を直にありったけ確保してくれ」

 

私の指示を受けると明石と夕張は数名の兵士を連れて工廠奥のドローン保管庫へと向った。

 

「提督おまたせしました」

 

明石と夕張がちょっと大きめのラジコン飛行機位の物を持って戻ってきた。

 

「後はアンテナが工廠の屋上にありますから有線ケーブルを「ちっと待て、工廠の入り口は彼処だけか?」」

 

私は眼の前の鋼鉄製の大扉を指差した。

 

「はいそうですが、窓は天井と中二階部分にしか無いので」

 

私はある事を考えた。

 

「隊長、地下の武器弾薬庫にある物をすべて此処に移せないか、入り口を封鎖してしまえばこっちの方が」

 

私が言わんとしたことを隊長は理解していた、

 

「確かにそのとおりですな、ここなら問題ないでしょう、おいお前ら地下から武器弾薬すべて持ち出してこい、それとお前たちは、作業員の遺体を建物の外に運び出せ」

 

部下の兵士に指示を出した。

 

「入り口扉は閂で外から開かないようにできるが…壁は何で出来てるのですか」

 

隊長が明石に確認した。

 

「一応は二重の耐火レンガの間に3センチ厚の鋼板を挟んで出来てますけど」

 

「問題ないか……」

 

その時だった、内線が鳴った。

 

「鳳翔です、扉を開けてください!」

 

無線から聞き覚えのある声が聞こえた

 

「鳳翔さん無事でしたか、今から向かうところでした」

 

扉を開くと目の前に2台の2t車が飛び込んできた。

 

「直に扉を!」

 

兵士達がトラックが通過するが早いか扉を閉め閂を掛けた。

 

「提督さん…良かった」

 

トラックの助手席から伊良湖が降りてきた、もう一台からは間宮と瑞鶴が降りてきた。

 

「鳳翔、間宮、伊良湖、瑞鶴…4人共無事で何よりだ」

 

私は4人を抱きしめた。

 

「明石さんに夕張さん、鳳翔さんに間宮さん、伊良湖さん、瑞鶴さん……よく御無事で」

 

隊長以下の兵士達も喜んでいた。

 

「あと何人無事な娘が残っているか……やってみるか」

 

私は工廠の事務室に向かうと、予備の放送設備を起動させた。

 

「あー、私だ、もしこの放送を聞いたら工廠を目指せ、倉庫の屋根伝いに来れば工廠の事務室に直接入れる」

 

私は繰り返した。

 

「何人が生き残ったのでしょうか」

 

隣の兵士が首に掛けたロケットの中の写真を見ていた。

恐らくは彼女なのだろう、一人の女性が微笑んでいた。

 

「羽黒…」

 

それは妙高型重巡洋艦4番艦の羽黒だった。

 

「今は祈るしかないな」

 

そして日が暮れた。

 

 

ーーーーーーーー鎮守府内の屋根裏ーーーー

 

「妙高姉さん、今のは!」

「えぇ、提督さん無事なようですね、それならば私達も工廠に向かいましょう」

 

そう言うと、妙高は羽黒を起こした。

 

「羽黒起きなさい、移動しますよ」

 

羽黒ムックリと起き上がった。

 

「はい…」

 

しかしその表情は暗かった。

 

「足柄姉さん…」

 

この場に足柄の姿は無かった、なぜなら妙高と羽黒を逃すためにゾンビの餌食となっていたのだった。

 

ーーーー鎮守府内のとある一室ーーーー

 

「パーンパカパーン、私達も行きましょうよ」

 

長い金髪をたなびかせてその艦娘は隣でへたり込んでいた艦娘を起こした。

 

「そうですね、神通動ける?」

 

高雄が隣でぐったりしている神通に声を掛けた。

 

「大丈夫です、提督無事だったんですねホッとしました」

 

 

ーーーーーーーー

 

「提督、愛宕さんからで高雄さん、神通さんと共に合流するそうです!」

 

いきなり鳴った内線に出た兵士が報告してきた。

 

「高雄さんも無事でしたか」

 

隊長さんが安堵の表情をした。

 

「提督、倉庫屋根上に妙高さんを確認…那智さんと羽黒さんも一緒です!」

 

私は兵士からの報告を受けると隊長と現在までの人員を確認した。

 

「我々20名と提督、明石さん、夕張さん、鳳翔さん、間宮さん、伊良湖さん、瑞鶴さんとこれから合流する高雄さん、愛宕さん、神通さん、妙高さん、那智さん、羽黒さんの33名ですか…もう少し生き残っていて欲しいですな」

 

 

最後に隊長が呟いた。

 

「我々は待つしかない…定期的に放送をしているから徐々に増えてくるとは思うが」

 

私は鳳翔を呼んだ。

 

「鳳翔、店にはまだ食料残っているか?」

「……残ってはいますが、取りに行くには」

 

そうだった、輸送手段が必要だったのだ……。

 

「提督、冷凍冷蔵車ならありますよ4トンで良ければ……」

 

明石が裏に工廠で使う薬品の保管用に冷凍冷蔵車を持っているとの事だった。

 

「中の積荷を全て降ろして、鳳翔の店に食料確保に向かう」

 

私の指示を受けた兵士達が明石と共に積荷を下ろすと鳳翔の店へと確保に向った。

 

それから少し経って、外では銃声が派手に鳴り響いていた。

 

「負傷者なし、これから戻るそうです…それと新たな生存者確保との事です」

 

無線による工廠到着の報告を受けると扉が開かれ冷凍冷蔵車が工廠内に滑り込んできた。

 

「提督、只今戻りました」

 

明石が報告した、

 

「鳳翔さんの店で籠城していた陽炎、不知火、黒潮、時雨、夕立、吹雪、深雪、隼鷹、飛鷹、千歳、千代田を保護」

 

陽炎達はトラックから降りると床にへたり込んだ。

 

「11人かよく生き残っていてくれた」

 

私は一人ひとり抱き締めると頭を撫でた。

千歳が赤城達の最後を伝えてくれた。

 

「提督、残念な報告が…その赤城さんと加賀さん、蒼龍さん、飛龍さん、翔鶴さんは私達を逃す為に囮となって…瑞鶴さんは…みていません」

「そう…か………瑞鶴なら鳳翔達と一緒に居たぞ、無事だ」

 

その時だった、

 

「あのよろしいでしょうか」

 

不知火が口を挟んだ。

 

「どうかしたか?」

「はい鳳翔さんのお店に立て籠もる前に会ったのですが、金剛さん達が艤装保管室に立て籠もるって言っていました」

「本当か!」

 

明石がは隊長の持っていたタブレットを借りると艤装保管室の位置を示した。

 

「提督、ここです…彼処は確か放送聞こえないんです」

 

其れは工廠のすぐ脇の建物だった。

 

「此処なら工廠の2階から連絡通路で行けます」

 

私は夕張の案内で艤装保管室に向った。

 

「このドアの向こうが保管室です」

 

私は一応ノックしてみた。

 

「……誰?」

 

この声は恐らくは霧島だろう、

 

「私だ、開けてくれ感染者は居ない」

 

少しの間を置いて扉が開かれた。

 

「無事か?」

 

しかし目に映ったのは、柱に縛り付けられゾンビと化した長門の姿だった。

 

「私達は無事だけど……長門が」

 

陸奥が今にも泣き出しそうな顔をしていた。

私は長門の額を撃ち抜いた。

 

「せめて一発で…」

 

ついに陸奥が泣き出した。

 

「兎に角だ、全員隣の工廠へ」

 

私は金剛達を工廠に避難させた

 

「夕張、保管室と外部への扉は全て溶接並びに補強して破られないように!」

 

私の指示で夕張が扉と窓を厚めの鋼板で溶接していった。。

 

「さて、金剛、比叡、榛名、霧島、陸奥、扶桑、山城君達だけでも無事で良かった…艤装も無事確保できた…」

 

私は生存者が増えた事に少しだけ安堵した、とはいえこれでも艦娘全体からすれば四分の一だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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