「提督さん、提督さんと青葉で何か怖い話集めてるって聞いて…」
瑞鶴が執務室にやって来た。
「まあな、青葉に付き合ってというやつだな」
私は瑞鶴に紅茶とお菓子を出した。
「提督さんサンキュッ♪」
瑞鶴が早速手を出した。
「で、瑞鶴のはどんな話なんだ」
お茶とお菓子を一通り食べると瑞鶴が話しだした。
「艦娘寮2階のトイレなんだけど……一番奥の個室から深夜になると話し声が聞こえるだよね、みんなが恐がっちゃてさ」
瑞鶴はお茶のおかわりを一口飲むと、話しを続けた。
「でさ、私も調べようとして……その場所に行ったんだけどさ…」
瑞鶴が言葉を濁した。
「何かあったのか?」
私は聞いてみた。
「……確かに話し声が聞こえたんだけどさ、扉を開けても誰もいなかったんだよ、それでも話し声は聞こえていたの、私も怖くなって逃げちゃたけどね」
瑞鶴は笑いながら残りのお茶を飲んだ。
「瑞鶴……笑えない……青葉現地調査してみるか」
私の振りに青葉が喰い付いた。
「調査してみましょう!」
「それなら、本日の昼以降該当箇所のトイレの使用を禁止して調査にあたろう、瑞鶴、トイレ入口に使用禁止の張り紙を貼るように」
私は瑞鶴にトイレ入口に使用禁止の張り紙を貼るように指示した。
私と青葉、瑞鶴は昼食を終えるとそのトイレへと向かった。
「提督さん、此処よ」
艦娘寮2階の西側に位置したトイレだった。
「ウ~ン、今も何か聞こえる?」
私が瑞鶴に聞いたその時だった。
「ボソボソ……ボソボソ……」
その声は確かに聞こえた。
「!」
私も青葉も互いの顔を見合った。
「声からすると幼い感じなんで駆逐艦娘位な?」
そんな中、青葉は冷静に声を分析していた。
「下は倉庫だし上は普通に屋上だしな…駆逐艦娘寮は別棟だからなぁ…」
私は個室の内部を注意深く観察した。
「この扉は?」
私は便器裏にある1メートル四方の小さな扉が気になった。
「配管スペースですかね、明石さん呼んできます」
青葉が工廠に明石を呼びに行った。
それから程なくして青葉と明石がやって来た。
「提督お待たせ」
明石に事情を説明すると、
「ああこの扉は配管スペースの点検口ですね」
そう言いながら明石が鍵を開けて扉を開いた。
だがそこにあったのは配管ではなく何も無い暗闇が広がる空間だった。
「どういう事……」
当の明石も解らないという顔をしていた。
私は明石の持っていた懐中電灯で中を照らした。
「光が奥まで届かない……だと」
私は言い得ぬ恐怖を感じた。
「そんな事…」
勿論青葉も瑞鶴も同じ事を考えていたらしい。
「トイレの裏って談話室の自販機コーナーのはず……こんな広い空間存在する訳が……」
それもそのはず、両隣の個室にある配管スペースは奥行きがあっても三十センチくらいだったのだ。
「提督さん、話し声……この奥から聞こえる!」
瑞鶴が半分泣き声になりながら言ってきた。
「なにもないぞ!!」
私は声の聞こえたという方向を懐中電灯で照らしたが其処には漆黒の闇が浮かび上がるだけだった。
「提督、中に入って調査してみま「入るな!このまま封印する」」
何か嫌な空気を感じた私は明石が入ろうとしたのを止めると、トイレ全体を使用禁止とした。
「現時刻を以てこのトイレは使用禁止として完全封鎖する、明石速やかにこのトイレの止水と閉鎖の準備を」
私の指示で明石が動いた。
「青葉は速やかに使用禁止の告知を瑞鶴と行ってくれ」
私はその間に各便器の洗浄と洗面台に設置されていた備品を回収した。
それから明石がやってきて各個室を物理的に施錠閉鎖した。
「明石、窓も内側から封鎖してくれ、最終的には廊下側の壁に新しい壁材を取り付けて誰も入れないようにしてくれ」
私の指示を聞いた明石が直ぐに作業に取り掛かった。
「しかし提督……ここまで厳重にするなんて……」
明石の疑問も最もだった。
「得体のしれない何かがありそうでな、それならばと言う訳だよ」
その日の内に、その間場所は最初から何も無かったようにトイレの入口扉は新しい壁で隠された。
「しかしあの空間は何だったんだろうな、あの声といい……」
結局この答えは誰にもわからなかった。
異界への入口だったのでしょうか、それとも……