「やーせーんー」
いつもの如く川内がまとわりついてきた。
このままにしておくと何時までも夜戦と煩いので、
「それなら今晩出掛けるか?」
俺の言葉に川内の目が輝いた。
「やったー夜戦だぁ!」
それから川内は大人しく執務を始めた。
ーーーーそしてーーーー
「今何時だ」
俺は時計を見た、
「21時か……そろそろ出掛けるか」
俺はリビングでゴロゴロしていた川内に声をかけた。
「川内そろそろ出掛けるぞ」
「うん、でどこ行くのさ」
「秘密」
俺は川内と愛車のレンジローバーに乗ると、とある場所を目指した。
「随分山奥に行くけど……」
川内が少し不安になったのか車外をしきりに気にしだした。
俺はそろそろかと行き先を教えた。
「これから行くのは……とある廃墟なんだけど……曰く付きで……過去に何人か探索に来た奴が帰ってこないなんて噂がある場所だ……」
俺の説明に川内が少しだけ怯えた。
「げっ、そんな場所大丈夫なの」
勿論俺はそんなもの信じてはいない。
「事前に調べたが唯の廃屋なだけだ……タブン」
川内は小声で言った部分に反応した。
「最後の小声気になるなぁ」
等と話している間に、車は目的の廃屋に到着した。
「何人か来てるみたいだな」
廃屋周辺の空き地に車が何台か駐車されてきた。
「それじゃ入るぞ」
俺は懐中電灯を持つと川内の手を取り廃屋へと足を踏み入れた。
「かび臭ぁ」
川内がマスク越しに呟いた。
「仕方ないだろう廃屋なんだから」
とは言ったものの、至る所で床は抜け、壁も崩れていた。
「ねぇ、さっきから気になったんだけど……」
「どうした?」
「何台か車来てたよね…それなのに誰とも会わないなんてあり得る?」
確かに川内の言うとおりだ、あの台数なら最低でも10人位は居るはずなのに、話し声はおろか気配さえもないのだ。
「嫌な予感するな…川内、一旦出るぞ」
俺は川内の手を握り直すと、屋外へと向った。
「どういうこ……」
「へっ?」
俺と川内の目の前には……俺のレンジローバー以外は廃車の山があるだけだった。
「確かに普通に駐車していた筈……川内ヤバいぞ」
俺は川内を車に乗せるとエンジンを掛けた。
「おいてかないでよ……」
それはいきなりだった、川内が車外から窓を叩いていた。
「なっなっ……」
俺は助手席を振り向いた、そこには……川内ではない何が座っていた、俺の意識はそこで途切れた。
「っ!」
どれ位経っただろうか、俺は目を覚ました。
「川内……」
助手席に川内の姿は無かった、俺は川内を探す為に再度廃屋へと足を踏み入れた。
…………
…………
…………
「川内何処に……」
廃屋内に川内の姿は無かった、無論携帯も出なかった。
その日を堺に川内は姿を消した、俺はその責任をとることとなり、停職処分を受け自宅待機を命じられた。
それから数日か経ったとある日の事だった。
「提督ですね」
自宅で拘束されている俺を訪ねてきた男は海軍特捜と名乗った。
「あなたの部下である川内行方不明事件について進展がありましたので、お話をしに来ました」
「川内がみつかったのかっ!」
彼は俺に話しだした、
「見つかりはしたのですが……あなた方が探索に行った廃屋から更に山奥にある鉱山跡で…衰弱はしていますが……ただあの日の夜の事は廃屋に入るまでしか覚えていないそうです」
この日を堺に俺は提督へ復職した、勿論川内も戻ってきたが……。
俺はあの日の事を口にする事は無かったし川内もあれ以降夜戦と騒がなくなった。
結局の所助手席にいたあれは何だったのか、あの廃屋で過去に何があったのか、それは今でも謎のままだ。
当然あんな事のあった車はあの後すぐに売り払い新しく買い直した。