そして川内が戻ってから数日後の事。
「今日の業務はこれで終了だ」
俺は川内にそう言うと、執務室をあとにし官舎へと戻った。
「此処までは、前提督の……私が記憶している、最後の姿です…この後、何が起きてああなったのかはわかりません」
大淀は其処まで話すと、少し冷めたお茶を飲んだ。
「そして、翌朝総員起こしが掛かっても起きて来ない提督の様子を確認しに行った所……部屋中に血が飛び散っている中で前提督が……正確には首から上のない姿でしたが……遺体を発見しました……それから軍警察の調査が入って……そのまま封印する事にしたのです」
私は着任早々に、大淀から提督官舎の使用禁止と言われた理由をやっと理解できた。
「そんな事が……だが、前提督を殺害でいいのか、犯人はどうなったのだ?」
私は犯人について大淀に聞いてみた。
「軍警察の話では、官舎の鍵は公式には3本なのですが、1本目は執務室の鍵保管庫、2本目は提督自身で、3本目は警備部に…そして後の調査で判明したのですが……提督から複製を貰っていたらしく川内が持っていました……そしてこの事件後、鍵を見た者はいません、川内と共に…犯人は……軍警察の見解では川内ではないかと、その痴情のもつれから殺害に至ったのではないかと……」
私は大淀の話を聞くうちに背筋が寒くなるのを感じた。
「一体何が…川内は何処に……」
大淀も此処まで話すと口をつぐんだ。
「とはいえ、決定的な証拠も無い以上は川内犯人説は……推測に過ぎないなか…官舎の検証は何処までやっているのか知ってるのか」
私は大淀に聞いてみた。
「私が聞いたのは寝室と居間を検分したとしか……」
「成程……となるとそれ以外は手付かず担ってるのか……」
私は考え込んだ。
「提督…どうかされましたか?」
大淀が私を覗き込んだ。
「まあな、それより官舎の鍵はまだあるのか?」
「はい、まだありますが……一体何を?」
「川内の捜索と真犯人を暴き出す、まぁ夜は流石にあれだから昼から官舎に入って調べてみるさ」
「提督、あまりに危険です!」
私はそう言うと、しぶる大淀から鍵を受け取った。
「私の感が正しければ……川内も官舎内で死亡している……神通と伊勢、日向を呼んでおいてくれ」
私は大淀と伊勢、日向と官舎へと向った。
「ならば、入るぞ」
私は玄関扉の鍵を開けた。
私は暫く官舎内を歩き回ると、
「この下に何かあるな…」
私は足で床を叩きながら歩いた。
「地下室なんて聞いてないですが……」
伊勢がダイニングテーブルをどけると、そこには床下収納に偽装された地下への階段が姿を現した。
「いつの間に」
大淀も知らないらしい。
「神通、懐中電灯を」
私は神通に階段を照らさせた。
「かなりの深くまで降りてますね……」
神通が懐中電灯で階段やその下を照らした。
「降りてみる」
私も懐中電灯を点けると階段を降りた。
「行き止まり?」
先頭の神通が立ち止まっていた。
「いや、神通右に引き戸らしきものが有る」
日向の言葉に神通は右を懐中電灯で照らした。
「ありました……でも何かの腐敗臭が……」
「神通下がれ…私が確認する」
神通を下がらせると、私は右側の引き戸を開けて室内を確認した。
「やはりか……」
その隠し部屋とも云える空間には、想像通り川内と思しき遺体があった。
「川内も首が無いか……やはり川内犯人説は消えたな」
私達はこの事を軍警察に報告する為に一旦執務室へと戻る事にした。
ーーーーーーーー数日後ーーーーーーーー
「神通、大淀これから川内の検死に立ち会う……」
私は二人を連れて軍警察病院へと向った。
「川内について確認する、直近での負傷の有無と程度だが……」
「確か、左手腕に直撃弾を受けて……」
私は神通からの返事を聞きながら病理解剖室へ入った。
そこには解剖の為に全裸の川内と思しき女性の遺体が横たわっていた。
「やはりか……」
私は川内と思しき女性の左腕を確認した。
「きれいなものだな傷なんか無いか、替え玉だな……建造後間もない新造の川内を身代わりにしたか、となると提督の遺体も怪しいな」
「一体何を……」
大淀が疑問符を頭に浮かべながら聞いてきた。
「何簡単なことだ、身代わりの遺体を2体用意して、愛の逃避行と言う事だ、おそらくな……提督の遺体は、恐らくはクローンだろうな、艦娘建造の技術を使えば簡単なことさ、何処かで川内と二人幸せに暮らしているのだろう……今の話は口外を禁止する、たとえ警察相手でも……」
翌日ーーーー
「大淀、君を含む霧島、鳥海、明石、夕張、北上の6名を会議室に呼び出してくれ」
私は大淀にそう指示を出すと、会議室へと向った。
「提督、揃いました」
それから程無くして全員が揃った。
「先ずは明石、建造についてだが……提督一人でも可能か?」
私は明石に最初の質問を投げかけた。
「秘書艦がいれば可能ですね」
「……となると明石や夕張がいない深夜に建造したか……明石、此処半年間の解体施設の稼働状況を調べてくれ、夕張は霧島と建造ドックの稼働データ解析を」
「了解しました」
明石と夕張、霧島が解析作業に掛かるべく執務室をあとにした。
「鳥海と北上は此処半年間の電力消費量の確認をしてくれて、建造すれば資材については誤魔化せても電力消費は誤魔化せないからな、その日だけ大幅に増加している筈だからな」
「はいよー」
北上がユルユルな返事をすると鳥海と管理課に向った。
「大淀は私と二人の検死報告書を再調査する」
私は事前に明石から前任者の身体的特徴を聞いていた。
「確か、盲腸の手術をしたと言ったのだな」
「はい、川内からそう聞いていますが……」
私は大淀からの話を聞くと遺体写真の下腹部を注意深く確認した。
「ウ~ン、それらしき傷痕はないなぁ」
「提督、川内の遺体も戦傷が見当たりません」
大淀から分かりきっていた答えが返ってきた。
「遺体は二人共身代わりなのは確定的だな、後は確証が欲しいところか…大淀……外出する、同行を」
私と、大淀は私服に着替えると鎮守
「これから行く場所については口外を禁止する、いいな」