「それから…どうなったのですか?」
大淀が聞いてきた。
「私としても気になったのでこの地で過去に起きた事故について調べたのだよ…」
私は少し間を置くと、
「今から65年前のある夏の日…近隣高校の水泳部員76名のうち47名が港出口で泳いでいたそうなのだが…いきなり全員が溺れだした…そして近海で戦闘になろうとしていた艦娘と深海棲艦の両艦隊は一時的に溺者救助の為に休戦し協力して救助作業にあたってくれたそうだ…」
私の話を青葉と大淀は黙って聞いていたが、
「溺者救助に敵味方協力して…」
大淀が少し涙目になっていた。
「問題はここからだ…溺者救助に向かった潜水艦娘とカ級からの報告だったのだが…水中から無数の小さな手が生えていてそれが水泳部員達を水中に引きずり込もうとしていたそうだ…堤防で休んでいた部員も同様に視えたそうだ…」
「嘘でしょ…」
私の話に青葉が震えていた。
「この時の被害者は泳いでいた水泳部員47名中45名、水上艦娘13名、深海棲艦水上艦娘18名、深海棲艦潜水艦娘4名の合計80名だった…生存者は水泳部員2名、潜水艦娘2名、深海棲艦潜水艦娘1名のたった5名だけだった…」
大淀が生存者の件を聞いて顔面蒼白になっていた。
「だがな…この話にはまだ続きがあって…さらに遡ること76年前、つまりまだ人類同士で戦争をやっていた時の話が発端らしい」
私は調べた話をする事にした。
「太平洋戦争末期にこの地で起きた虐殺事件が発端の様なのだ…郷土資料によると44年8月、近隣の国民学校…今で言う小学校だな、3年生の児童80名が校外学習でこの港に来ていた時に敵機の機銃掃射を受け全員死亡するという痛ましい事件が起きたそうだ…」
私は一旦話を止めると、お茶を飲んだ。
「そんな…何の罪もない子供に…」
青葉が愕然としていた。
「私もそう思う、当然戦後に事実確認をしたそうだが…うまく逃げ回っているそうだ…此れは最近になっていた某社会主義国から付近で撮影していたニュース撮影の職員からといって当時の映像が政府に渡されたそうだ…勿論かなりの低空飛行で機銃掃射をしていたらしく、機体番号や所属する母艦名やパイロット名も確認できたらしい…この話は今回は置いておいて、どうやらこの時の犠牲者の霊が浮かばれずに仲間を求めて…の可能性が高いな」
私が口を噤むと、
「もともと両件共慰霊碑が建立されていたらしいのだから、どうやら忘れ去られていたがために…思い出してほしくて今回出てきたと供養の為に読経をあげてくれた僧侶が言っていたな…でも今でも彷徨い出てくるらしく、警備基地の半分近い敷地は使えないそうだ、今でもな」
「そんな事が…って、まだ現在進行系じゃないですかっ!取材行かせてください!!」
青葉が喰い付いてきたが…、
「行っても構わないが…アレの仲間に引きずり込まれたら知らんぞ」
私が少し脅すと、
「やめておきます…」
青葉は素直に諦めた。
「提督…その警備基地って…まさかとは思いますけど、まさかあそこなんじゃ…」
大淀よ、感の鋭い娘は嫌われるぞ。
「さあな…かもしれないし違うかもしれない」
どうやら大淀は何処にある警備基地なのか気が付いたようだ。
「特に青葉、再度警告しておく…絶対に行くなよ、実はな今でも肝試しで立ち入った若者が年に数人行方不明になっているらしい、その中に青葉の名前加えるなよ」
私は再度青葉に警告をした、
「はい…」
まぁ此処まで脅せば行かないだろう…流石の迷カメラマン青葉もこの時ばかりは殊勝にも頷いていた、だがこの話はこれでは終わらなかった。
数日後………。
「提督…警備基地の吹雪さんからお電話です」
大淀が電話を取り次いだ。
「吹雪か元気そうだな、どうかしたのか?」
私は電話をスピーカーモードにすると会話を始めた。
「実は…」
どうも歯切れが悪いようだ。
「その…3日前に着任した新しい司令官が…その…私達の話を信用してくれなくて…その…青葉さんを無理矢理連れ出して深夜に旧寮を調べに…それから二人共帰って来なくて…司令部に報告しても諦めろとしか言われなくて…私、どうしたらいいのか」
吹雪の話では、どうやらその新任司令官は人の忠告を聞かずに…自業自得だが、巻き込まれた青葉が不憫でならなかった。