「総員おこーし、5分前」
………
「総員おこーし!」
6号車に牽引されている宿泊用車両の車内に総員おこしの声が響き渡った。
「総員18名異常なし!」
扶桑が私の前に来ると報告した。
「楽に休め………」
私は安めを掛けると全員を見た。
「本日午前9時をもって作戦開始とする、先ずは司令部を確保する、その後に港湾施設、工廠、待機所、格納庫の順に捜索を行う」
そこで一旦区切ると、
「此処までで質問はあるか?」
「有りません」
扶桑からの返答を聞くと、作戦説明を続けた。
「マドックスは3機1班とし多摩、北上、大井の編成と天龍、龍田、球磨の編成とする、なおX10は適時どちらかのマドックス編成に随伴とする………単独行動は厳禁とする、最後に兵器開発局のお二人は港湾施設の偵察をお願いします、それと我々も司令部確保後は港湾施設の確保に向かいますのでそちらで合流としますから、偵察後は港湾施設で待機していてください」
「了解」
全員が揃って私に敬礼で応えた。
「それでは簡単ではあるが、朝のブリーフィングを終わる、このあとは各自朝食とし作戦開始迄は自由時間とする……以上解散」
各員はそれぞれ分担に分かれて朝食の準備を始めだした。
「提督、今の処異常なしです」
青葉が当直での監視を終え報告に来た。
「そうか、朝食迄まだ時間がある少し寝ておくと良い」
「そうさせてもらいます」
青葉はフラフラと指揮通信車である6号車へと戻っていった。
それから2時間後
「提督どうぞ」
大淀が出来上がった朝食を私に持ってきた。
「ありがとう、済まないが青葉を起こしてやってくれ」
「了解しました」
大淀が青葉を起こしに行った。
「提督おはようございます」
青葉が寝ぼけながら起きてきた、
「朝食ができてるぞ」
「………頂きます」
寝ぼけ眼で青葉が朝食を食べ始めた。
「よし、時間だな」
私は時計を見ると、大淀と青葉を見た。
大淀は黙って頷くと、
「総員集合!」
号令をかけた。
「全員揃ったな…只今より作戦を開始する、各隊は作戦指示に沿って捜索を開始せよ、改めて云う、単独行動は厳禁とする以上」
最終区画の閉塞扉が開かれた。
「大淀は管制員席に、青葉は引き続き監視カメラと動体検知センサー並びにあの二人の監視を、衣笠は5号トレーラーを」
「了解」
「提督、鎮守府側閉塞扉開きます」
大淀が鎮守府側閉塞扉をリモートで操作した。
「我々も前進する」
明石が頷くと、99式特型牽引車を前進させた。
「天龍より提督へ、海底トンネル出口付近は異常なしだぜ」
「了解した、明石前進だ」
私は明石にトンネル出口迄進むように指示した。
トンネルを抜けると、マドックス隊とX10が待機していた。
「提督、周囲20m圏内に動体反応無し」
青葉がセンサー画面を見ながら報告していた。
「わかった、それでは我々は第1目標である司令部の確保に向かう」
兵器開発局の二人が見えなくなった頃、もう1台の99式特型牽引トレーラーがやって来た。
「提督、ノースカロライナ到着しました」
ノースカロライナがマドックスの予備機を積んで来た。
「よし、手筈通りに作業を開始せよ」
天龍がエイリアンの尻尾をマドックス予備機の腹部に突き立てた。
「提督、こんなもんか?」
「あと盛大に血糊をぶちまけてくれ」
「了解」
天龍が腹部周辺に血糊をぶち撒けだした。
「提督、こっちはこれでいいかしらぁ~」
龍田がエイリアンの濃硫酸の血液をマドックス予備機にかけていた。
「そんな感じで大丈夫だ…龍田、自分にかけるなよ」
「は~い」
撃破され濃硫酸の餌食となった機体を私と明石の指示で演出すると、天龍は私に向かって頷いた。
「何だよ!アレ………残り一匹じゃねえのかよ、何匹居るんだ!」
「天龍ちゃん後ろ!」
天龍と龍田が迫真の演技を始めた。
「てめぇ、龍田になっ!」
「天龍ちゃ…」
天龍と龍田の無線は其処で途切れたように切った。
「天龍うまいじゃないか」
「まあな」
天龍が顔を赤らめ照れていた。
「こっちくなクマー…天龍と龍田が殺られたクマ」
次は球磨達だった、
「提督…やばいクマ…彼奴等増えているク………」
球磨との交信も途絶えた。
「天龍!龍田!球磨!応答しろ、何が起きている!!」
私も逼迫した状況の演技をした、隣で青葉が口元を抑え笑いを堪えていたが突然真顔に戻ると。
「提督、多摩からも通信途絶しました………北上さん応答してください、大井さん何が起きているんですか?」
「マドックス隊全機並びに足柄、即時撤退しろ!」
「………」
「………」
誰からも応答が無かった。
「足柄!羽黒!応答しろ!」
少しの間を置き、
「こちら羽黒………左前脚をやられました、何とか後退を開始します、足柄姉さんは………分かりません、前席との通信が途切れました」
と此処まで迫真の演技をすると、青葉が艦娘通信で全員に後退指示を出していた。
「提督、全員問題無しです」
私は静かに頷いた。
「それでは予定通り海底トンネルへ各自移動してくれ、あの二人には見つからないように」
その後我々は彼らに気が付かれることなく撤収を完了した、勿論エイリアンとの遭遇戦を演出し撃破されたマドックスと輸送トレーラーを残して。
ーーー兵器開発局蒔田と里谷視点ーーー
「おい、里谷今の無線!」
「ああ、一匹だけじゃなかったのか…話が違うぞ!」
「どうする、鎮守府の奴らは全滅したみたいだが…」
俺は同僚の里谷の顔を見た。
「蒔田………兎に角奴らが拠点にすると言っていた司令部へ行ってみよう」
「そうだな………」
俺は里谷と司令部に向かうことにした…。
「おい蒔田…アレみろ」
里谷が指さした先には、下半身を引きちぎられ、頭部バイザー部を何かで刺し貫かれた血塗れの上半身部分が転がっていた。
「この機体番号は天龍か…」
「そうすると…此れは龍田だな」
もう1機頭部を潰され腹部に大穴の空いたマドックスの残骸が転がっていた。
「ひでぇ有り様だな………遺体は無しか…回収したようだな」
俺達はその後も奴等に襲われて破壊されたマドックスの残骸を横目に見ながら司令部を目指した。
「全滅か………X10はどうなった?」
俺は里谷に聞いてみた、
「確か前脚をやられたと報告していたな、艦娘の片方は生死不明らしいがな」
里谷がそう答えた。
「おい………」
司令部に辿り着くと、其処は酷い有り様だった。
「指揮車両も司令部もこの有り様か………」
俺達の眼前には炎上し今だに燻ぶり続けている車両や、何かの爪で引き裂かれたり半分濃硫酸で溶けたような装甲シャッターを晒す司令部があった。
「ひでぇ有り様だな…この様子だと生存者は無しだろうな、玉袋様に至急報告をしないとならねえな」
ーーー艦娘サイドーーー
「奴等安心して馬脚を表しましたね」
大淀が彼等の通信を聴きながら笑いを堪えていた。
「まさかな、こうも簡単に引っ掛けるとは思わなかったけどな」
私も通信を聴きながら笑いを堪えていた。
「提督、玉袋への通信を確認しました」
私はヘッドホンを受け取ると、彼等の通信を傍聴した。
「それと、此れをみてください」
青葉が動体検知センサーの画面を私に見せた、
「アレの反応が現れました、彼らに接近しています」
「セントリーガンスタンバイ」
私はX10で待機している足柄にリモート機銃の準備を指示した。
「発砲のタイミングは足柄に一任」
「了解よ、任せなさい」
暫くの間の後に、
「あの二人の反応が消えました、セントリーガン発砲確認!」
モニターやセンサーの監視をしていた青葉が報告してきた。
「提督、エイリアンの反応も消失を確認!」
青葉が続け様に報告してきた。
「24時間様子を、その間に動きがなければ再度鎮守府内へ再進入する、それまでは交代で休憩とする以上」
結局のところ玉袋の手先二人も殺られたようだった。
ーーーーその後ーーーー
エイリアンの犠牲となった艦娘と工廠棲姫の遺体が回収され荼毘にふされた。
「で、結局のところ玉袋はどうなったんだよ」
天龍が聞いてきた。
「玉袋シンパは全員極刑だそうだ…国家転覆罪を無理矢理に成立させたらしい」
「でも、此処はどうなるのかしらぁ~」
龍田が跡地について聞いてきた、
「慰霊碑建立の後、地下は全て埋めて、その上で連絡橋は撤去、海底トンネルは完全閉鎖、此処は慰霊祭の日以外は立入禁止とするそうだ、まぁ私達はキタガミ食品工業跡地と大堰川造船をそのまま新しい鎮守府として運用することで決定している、追加人員としてノースカロライナ以下オクラホマ、アリゾナ、ネバダ、レパルス、フッド、シカゴ、ブルックリン、エンタープライズ、バターンも正式に配属となる」
私の説明に、
「街中だから便利なのよねぇ~えっあらあの娘達も配属なのねぇまた賑やかになるじゃない、楽しみねぇ」
龍田がニコニコしながら言った。
「エイリアンってホントに全滅したのかニャー」
多摩がふと疑問を口にした。
「恐らくは…一応うちの鎮守府で監視するのも任務として割り振られている…監視カメラと熱源センサーによる遠隔監視ではあるが…」
こうして私の鎮守府を襲った一連の事件は解決の日を迎えた、多数の犠牲者を出して。