草薙 章(42歳主人公の父親)
イスラエル軍メルカバ戦車兵
デボラ中尉(25歳車長)
スーザン軍曹(23歳装填手)
レイチェル曹長(24歳砲手)
サラ伍長(22歳操縦手)
消えた子供と…①
「圭…此処がイスラエルだぞ」
父親に連れられて僕はイスラエルに来ていた。
「パパ、あの黄色い戦車は?」
幹線道路に停車していた戦車を僕は指差してパパに聞いた。
「あれは、イスラエルのメルカバっていう戦車だよ」
パパが教えてくれた。
「何で黄色いの?」
僕はその色について聞いた、
「戦車の色は国によっても違うからね、例えば日本は緑との茶色の2色が基本的な塗装だね」
僕とパパが話していると、1人の女の人が近づいてきた。
「宜しかったら写真撮りましょうか?」
「宜しいのです?」
パパが驚いて女性兵士に聞き返していた。
「ええ大丈夫ですよ、このメルカバは初期型なのでこれと言って機密も無いので車内を撮影しなければ問題ないですよ」
「それじゃあお言葉に甘えて」
パパが持っていたカメラを女性兵士に手渡した。
「中尉殿、自分が撮ります」
近くを歩いていた歩兵が名乗り出てきて、僕は戦車に乗っているお姉さん達と写真を撮ってもらうことになった。
「君、名前は?」
名前を聞かれたから、
「圭………草薙 圭です」
僕はしっかりと名前を言った。
「君は何歳なのかな?」
髪の短いお姉さんが僕の歳を聞いてきた。
「10歳」
「ちゃんと答えられたわね、えらい」
僕は頭を撫でられた。
「それじゃ圭君は此処に座って…そしたらこれに掴まってね」
僕は何か輪っかの付いた物に掴まるように言われた。
「それでは撮ります」
カメラを構えた兵隊さんが合図すると、お姉さん達が僕を中心に写真に収まってくれた…。
ーーー父親視点ーーー
「ありがとうございます」
私は写真を撮ってくれた兵士に礼を言うとカメラを受け取ろうとした瞬間だった。
「なっ!!」
いきなり息子とメルカバ戦車、それに搭乗員4名のいる場所が歪んだかと思うと綺麗に消えてしまったのだった。
「いったい何が!」
私と兵士はただ呆然としていた。
「兎に角、司令部に報告します目撃者としてご同行お願いします」
「わかりました」
私は兵士について司令部のある基地へと向かうことにした。
ーーー圭視点ーーー
「いったい何が起きたというの?」
デボラお姉さんが頭を振りながら周囲を確認していた。
「中尉、子供もいる事ですし、一度車内に」
「そうね、レイチェル軍曹…全員乗車、圭君はこっちに来て」
僕はデボラお姉さんに連れられて戦車の後ろに連れてゆかれた。
「此処から中に入って、中なら安全だからね…それにすぐ前に私達もいるから安心して」
デボラお姉さんが車体後ろにある扉を開いて僕を中に入れてくれた。
「うん」
僕はその扉から中に入ると、さっきのレイチェルお姉さんが中で手を振っていた。
「自己紹介まだだったね、私はレイチェルで一番前に座っているのがサラ、それで今入ってきたのはスーザン、で最後はデボラよ、宜しくね」
名前を呼ばれたお姉さんが軽く手を振ってくれた。
「宜しくね」
僕がお辞儀をすると、
「さて、此処は何処なのかそれを調べるのが先決ね」
デボラお姉さんが辺りを見廻していた。
「赤いレンガ造りの倉庫群に大型クレーン…見たことない建物ね…雰囲気からしてもヨーロッパではないわね」
デボラお姉さんが見たままを周囲に語っていた。
「デボラお姉さん…赤いレンガ造りの倉庫ってこんなの?」
僕は持っていたスマホに予想した建物を表示させた。
「…そうね、こんな感じ、これは何処の国の建物なの?」
レイチェルお姉さんが聞いてきた、
「これは日本の建物で…昔の海軍施設でよく建てられた倉庫ににているんだけど…」
僕がパパから聞いた話をした。
「その情報が正しければ…私達はイスラエルから日本に跳ばされたという事かしら?」
デボラお姉さんが呟いた。
「圭君、見てもらってもいい?」
僕はレイチェルお姉さんに抱きかかえられて、ペリスコープと呼ばれるガラス越しに外を見せてもらった。
「こっちに近づいてくる兵隊さんがいるよ…格好からだと…多分旧海軍の偉い人?…でもなんだろうあとは女の人ばかりだけど…?」
僕はペリスコープから視えた光景を伝えた。
「えっ?」
デボラお姉さんもペリスコープから覗くと首を傾げていた。
「確かにあの制服だと佐官クラスね…というかここって軍事施設なのよね?…どう見ても君と同じ位か、少し上の娘達ばかり…どういう事?」
「あっ!」
僕はあるアニメを思い出した。
「パパが見ていた艦これって言う漫画に出ていた人達と同じ格好だ!」
「そんな事が…じゃあ私達は漫画の世界に跳ばされてきたの?」
レイチェルお姉さんが驚きの声を挙げた、そして静かにデボラお姉さんが話し始めた
「いい、此処が何処であれ今私達がやらないといけないのはこの子を護ることいいね、先ずは平和的に相手と交渉する事ね」
「了解」
デボラお姉さんが僕の方を向くと、
「外の人達と話してみるわね、英語通じるといいけど…私英語苦手なのよね」
デボラお姉さんが不安げにハッチを開けた。
「じゃあ外に出るわよ」
デボラお姉さんが車長ハッチから外に出た、レイチェルお姉さんやスーザンお姉さん、サラお姉さんもあとに続いた、僕は安全が確認されるまでメルカバ車内に残る様に言われた。
ーーーデボラ視点ーーー
「話し合いがしたい」
私は指揮官らしい男性に英語で話しかけた、なんとか通じたようで、向こうも英語で返してきた。
「勿論だ、こちらも争う意思はない」
私は彼の言葉を信じ、部下にも外に出るよう合図した、勿論民間人で子供である圭君を戦車内に残して。
「イスラエル陸軍戦車教導隊451号車車長デボラ中尉です、こっちは砲手のレイチェル曹長、装填手のスーザン軍曹、操縦手のサラ伍長です…それと我々が保護している日本人の少年1名…身の安全が確保されるまでは安全な戦車内に留まらせています」
私が保護している日本人事を話すと、
「この戦車を見た限り…俄には信じられないが…だが子供を保護しているのなら……君達の事は保証しよう」
指揮官が疑問を口にしたがなんとかなりそうだ。
「圭君出てきてもいいわよ」
私はメルカバの後部ハッチを開けると圭君を外に出した。
「君の事教えてくれるかな」
指揮官がしゃがむと圭君目線で話しかけていた。
「僕の名前は『草薙 圭』、パパとイスラエルに旅行に来ていて…この戦車の前でお姉さん達と写真を撮っていたら、ここに来ちゃった」
指揮官が立ち上がると、
「それではデボラ中尉君達の事を話してくれ」
そう言うと私達を会議室に案内した、そしてある程度話が済むと、
「デボラ中尉…う~む、かなり君達の話と世界の歴史が違うようだな…これは推測だが、多分君達は時空の歪みに落ちたのだと推測される…つまりこの世界は君達のいた世界とは別の時間軸上の世界という事だ…その証拠に、人類は第二次世界大戦以降何処の国も戦争はしていない…イスラエルでいえば建国以来何処とも戦争していない」
そう言うと指揮官は1枚の写真を見せた、
「この写真は現在のアメリカ陸軍の主力戦車だ勿論イスラエルも使っている」
その写真には1台の戦車が写っていた。
「あっM48A5パットンだ!」
圭君が写真をみるなりその戦車の名前を口にした。
「ずいぶん詳しいね」
指揮官が圭君の事を感心していた、
「パパがプラモデルでいっぱい作ってくれたから…パパに会いたいよぅ」
其処まで言うと圭君は泣き出した。
私は圭君を抱き寄せると落ち着かせた。
「大丈夫きっとまた会えるから、それにお姉ちゃんたちがついているから安心して」
圭君が泣き止むまで指揮官も待っていてくれた。
「君達の戦車…えっとメルカバと言ったかな」
「はい、パットンは第1世代型に分類され、私達のメルカバは第3世代若しくは第3.5世代に分類されます…主砲は何方も同じM68 105mmライフル砲ですが射撃に関する機材が格段に違います」
私は話せる程度の性能を話した。
「成る程…聞く限り性能自体かなり違うようだな…」
指揮官が唸り声を上げていた…多分理解に苦しんでいるのだろう。
「提督、失礼します…あのメルカバって子凄いです!」
ピンク色の髪の毛の娘が会議室に飛び込んできた。
「明石…お前なぁ、許可もなしに他国の戦車を勝手に触るなよ…国際問題はごめんだぞ」
明石と呼ばれた娘が興奮しながらこちらを見た。
「あの戦車に乗っていた人達ですよね!中とか見てもいいですよね」
明石が執拗に迫った。
「写真撮影とか分解しないで、私達の立ち会いの元で見るだけなら…」
「やった!夕張ちゃん許可でたよ…行きましょう、ほら早く」
明石が近くに座っていたスーザン軍曹を連れて行ってしまった。
「やれやれ…済まない、あとでお説教はしておくよ」
指揮官がこめかみを押さえていた、どうやらあの2名は問題児なのだろうか?
「君達の事だが、デボラ中尉以下はこの鎮守府警務隊に所属し私の身辺警護を主任務としてもらう、住居も敷地内に部屋を用意する、草薙君についてはどうするかね、君達と同室にするか個室にするか」
私は少し考えると、
「私達と同室でお願いします、この子も知らない土地で1人になるのは嫌でしょうから」
指揮官が圭君に確認していた、
「草薙君はどうしたい?」
「お姉ちゃんたちと一緒がいい」
圭君の返事を聞いた指揮官が何処かに電話をかけ部屋を用意させていた。
「それと草薙君についてだが年齢的にも義務教育の年齢だからね…デボラ中尉達が保護者となって市内の小学校へ転入してもらう、無論必要な手続きはこちらで行うが構わないかな?」
「それでよろしければお願いします」
私は指揮官の提案に同意した。
「最後になるが草薙君が頼れるのは同じ世界から来た君達だ…不安もあるだろうからケアを頼む、それでは話はこれで終わりだな、メルカバ戦車はこの司令部に併設されている倉庫に移動させてほしい」
指揮官から指示を受けるとサラ伍長が敬礼するとメルカバを移動させる為に会議室からでていった。
「圭君の保護者か…お母さん達元気かな…」
私はまた会えるか分からない両親の事を考えていた。
「デボラ…しっかりして、私達がしっかりしないでどうするの」
レイチェルが小声で私を叱咤した、
「そうね、私達がしっかりしないとね…少なくてもこの世界にいる間は圭君は私達の弟みたいなものだしね」
等と考えていると…
「忘れていたが、君達は明日からこの世界についての勉強をしてもらうから宜しく」
指揮官が私達にこの世界について教育をすると伝えてきた。
「うへぇ………また勉強」
サラが項垂れていた。