「初期艦は五月雨か…」
俺は書類から目を離すと五月雨を呼び出した。
「五月雨まいりました」
五月雨が扉をノックして入室してきた。
「五月雨、君の軍籍票を出してくれ」
俺はそう言うと五月雨から首から下げている軍籍票を受け取った。
『五月雨 S-Y18524』
軍籍票にはそう刻印されていた。
俺は艦娘簿で確認した。
「3年前に横須賀で建造……五月雨に確認する、艦娘の権利や鎮守府の運営について何か知っているか?」
俺は五月雨に確認してみた、帰ってくる答えは何となく予想はしていたが。
「はい…」
五月雨はよどみなくスラスラと答えた。
俺は電話を取ると猿渡警視に報告をした。
「まだ可能性なのですが、新規建造艦に於いて不正が考えられます」
猿渡警視への報告を終えると、明石達を非常呼集したそして五月雨に部屋の準備を指示した。
「大本営から明石、青葉、衣笠、天龍、龍田、川内、神通、那珂の緊急着任がある、部屋の準備を」
五月雨が敬礼して……やっぱり転んで退出した。
ーーーー数日後ーーーー
「明石以下7名到着しました」
明石が真面目に到着の報告にやって来た。
「よく来てくれた、早速で悪いがこれからこの鎮守府についての調査を行うので資料に目を通してくれ」
執務室に紙をめくる音だけがしていた。
「まさか…そんな事が」
衣笠の疑問も仕方のない事だった。
「不可能じゃないわね、鎮守府にて建造若しくは海域での保護艦娘の場合、軍籍番号を設定登録しないと大本営では存在が把握出来ないのよ、だから不正が行われても把握不能若しくは困難なの」
明石が代わりに答えた。
衣笠はそのままに黙ってしまった。
「衣笠、天龍、龍田、那珂は鎮守府所属艦娘への着任日を聴き取り調査を頼む、青葉は記録の調査を、明石は俺とこい」
俺は明石に指示を出した。
「了解」
明石達は敬礼すると直ぐに取り掛かってくれた。
「必要とあらば鎮守府の艦娘を招集しても構わない」
執務室隣の会議室は鎮守府中から集められた各帳簿で溢れた。
「巧妙に隠されてましたけど……」
神通が内容を見て表情を曇らせた。
「捨て艦作戦はしていないようですが……不正売買はかなりです」
俺は帳簿を見た限りでは建造後の記載に不審な点を認めた。。
「建造失敗……………有りえないな」
俺は建造台帳から失敗の項目を見ると机の上に投げ出した。
「資材の増減、資金の不自然な増減…上げれば切りが無い」
俺達は一週間缶詰となって鎮守府中から集めた帳簿と格闘した、勿論鎮守府所属の艦娘も招集しての上でだ。
「東雲警部!提督執務室の床下から」
鎮守府所属の大淀が長門達と捜索していた提督執務室から何かの帳簿を複数見つけてきた。
「これは!」
帳簿の中にはどの艦娘を何処の誰に幾らで売却したと記載されていた。
「大淀でかしたぞ!」
俺は直ぐに猿渡警視に電話をかけて、提督の逮捕状の発行を請求した。
「クズ提督……………待ってろよ今貴様の首にロープを括り付けてやるからな」
数日後、鎮守府の提督は憲兵隊により緊急逮捕された。