「海軍大佐『桑名 雅人』鎮守府提督を命ずる」
俺は総長から辞令を受け取ると、任地の鎮守府へと車を走らせた。
「彼処で昼飯食っていくか…」
俺は途中のファミレスで昼食を取りながら鎮守府の情報をみていた。
「戦艦は『扶桑』『山城』『長門』『陸奥』の4人か…
で重巡は『青葉』『衣笠』『妙高』『那智』『足柄』『羽黒』『高雄』『愛宕』『最上』の9名、軽巡は『天龍』『龍田』『川内』『神通』『那珂』『大淀』『夕張』の7名、空母は『千歳』『千代田』『飛鷹』『隼鷹』『鳳翔』『祥鳳』『瑞鳳』の7名、駆逐は『吹雪』『白雪』『初雪』『深雪』『浦波』『磯波』『綾波』『敷波』『時雨』『夕立』『陽炎』『不知火』『黒潮』『秋雲』の14名と補助艦『明石』『間宮』の総勢43名か…」
俺はファミレスを出ると、一路鎮守府を目指した。
「此処か…」
俺の眼の前になんとも言い難い建物が建っていた。
「桑名大佐ですね」
大淀が守衛詰所の前に立っていた。
「ああそうだ」
大淀は俺を睨みつけると、
「提督はこれから案内する場所と、この外部に通じる通路以外は立ち入らないでください、立ち入った場合は命の保証はしませんから…」
大淀がとんでもなく不安な事を口にした。
「おい、どういう意味だ」
俺は大淀に詰め寄った。
「馬鹿ですか?そのままの意味ですが」
俺はその後も大淀と睨み合いながら執務室に連れてこられた。
「1階の駐車場奥の階段から上がった此処が執務室で、この上は提督の休憩室です…それと提督は此処に坐っているだけでいいですから、何もしないで」
大淀はそれだけ言うとさっさと行ってしまった。
「成る程な、俺の決裁が必要な書類のみ回されてくるのか…」
俺は机の上に置かれたパソコンの画面を見ながら電話を取ると、総長へと電話をした。
「総長、一体全体この鎮守府で過去に何が起きていたのですか?執務室以外は決められたルート以外に行ったら殺すと言われましたが…」
俺の問いに、総長からの答えは…、
「彼女達がそう言うならその通りにしたまえ、それが君にとって最善策だ」
どうやら俺は形だけの提督の様だ。
「俺の存在は…形だけか…」
士官学校を卒業して直ぐにこの人事だ…思い当たる節が何も無かった。
「誰か来る?」
駐車場から誰かが階段を上がってくるようだ。
「雅人…」
執務室の扉が開かれ…其処には俺の実姉である扶桑が立っていた…そして少し遅れて双子の姉の山城も入ってきた。
「姉さん…」
「雅人が着任って…まったく…」
「姉貴…」
俺は2人に抱き着いた。
「何時までも子供なのですね」
俺は先程の大淀の事を話した。
「大淀後で絞める…として、暫くは大淀の言う通りにしておいて」
山城が不穏な事を口にしていた。
「姉さん達に任せるよ、やることもないから買い物に行ってくるよ」
俺は姉達にそう告げると駐車場へと階段を降りていった。
「ここいらで一番デカいスーパーか…」
俺は駐車場に車を停めると、店内に入った。
「おい、お前、提督だな…」
背後からそう声を掛けられた…だが振り向くより早く、後頭部を何か硬い物で殴られた。
「………!」
俺はなんとか振り向くと…其処には、
「お前らは…」
恐らくは店員や街の住民だろうと思われる一団が手に角材やビール瓶を持って立っていた。
「出てけ、お前に売るものはない」
俺は買い物をする事も出来ずにスーパーを出る羽目になった。
「痛え…」
俺はまだ痛む頭を押さえながら、鎮守府からかなり離れた街のスーパーで買い物をする羽目になった。
「今度から姉貴についてきてもらうか…」
俺は姉貴を護衛についてきてもらうかと考えていた。
「まだ痛む…」
俺は休憩室に入ると、食料を冷蔵庫にいれると、買ってきた氷で頭を冷やす事にした。
「前任の奴…何やらかしたんだよ…」
俺は其処で意識が途絶えた、多分殴られた際に出血していたのかもしれない。
ーーーーーー扶桑視点ーーーーーー
「雅人帰ってきたみたいね」
私は駐車場に車が停まるのをみると、雅人の部屋に様子を見に行くことにしました。
「雅人、入りますよ」
私が部屋に入ると…
「雅人…雅人…しっかりしなさい」
私が室内に入ると床に倒れている雅人の姿が目に入った。
「明石、直ぐに提督休憩室に来て…雅人が!!」
私は直ぐに明石に来るように連絡をすると、山城も呼んだ。
「山城、直ぐに休憩室に来て、雅人が倒れている動かないの」
それから山城は直ぐに来ましたが、明石は一向に来る気配がありません。
「扶桑姉さま、雅人は私がついています、明石を引っ張ってきて」
私は雅人を山城に託すと、工廠へと向かいました。
「明石…何故来てくれないの?」
私の問いに明石は、
「提督なんて死んでくれたほうが私達の為で…」
明石のその言葉に、私は明石に掴みかかっていました、
「明石、雅人に何かあったら…絶対に許しません」
私は明石の首根っこを押さえると休憩室へと引き摺って行きました。
「さっさっと治療しなさい」
私と山城に睨まれた明石が恐る恐る診察を始めました。
「頭部に打撲痕…何者かに頭部を殴られています…動かさずに救急車を呼んだほうがいいかと…」
明石が私達に怯えながら救急車の手配をして始めました。
「この辺りのスーパーは…彼処ね、扶桑姉さま、雅人をお願い」
山城が雅人の車の鍵を手にすると、車で出ていってしまった。
「あの…扶桑さん…提督との関係って…」
明石が怯えながら聴いてきました。
「私と山城の実弟です」
明石の顔色が蒼白になっていくのがわかりました、
「そんな…私、救急隊員誘導してきます」
救急車のサイレンが聞こえ途端、明石が慌てながら外に出ていきました。
「誰ですか救急車なんて呼んだの」
大淀が不貞腐れながらやってきました。
「私ですが、何か文句でも?」
明石に続いて、大淀も私をみると顔面蒼白になっていた。
「ご家族の方ですか?一刻を争う状況です」
私は救急隊員に促されるまま救急車に乗り込みました。
「明石、私は雅人に付き添って病院に行っています、山城が戻ったら伝えなさい」
「はいっ!」
明石と大淀が直立不動の姿勢で答えた。