「『北 芳雄』海軍少佐、離島観測所勤務を命ず」
俺は1枚の辞令を受け取った…辞令という名の左遷か…。
「一応は東京都なのか…」
其処は一応東京都に属する南海の孤島だった。
俺は竹芝桟橋から出ている連絡船で最寄りの八丈島迄向かうことにした。
「此処まで11時間、此処からは…ヘリコプターで40分かよ…」
どうやら青ヶ島よりも更に先にあるらしい。
「北少佐、到着しました」
俺はヘリコプターを降りると、管理棟へと向かった。
「観測所っていうか…」
俺は眼の前にある何処から見ても工事現場の事務所みたいな建物を見て呆れた。
「嘆いても仕方ないか…」
俺は中に入ると内部を見て回った。
「執務室に給湯室、仮眠室、個室が4部屋と食堂と厨房に風呂か…まさか俺だけなのか」
俺は此処で1人孤独に勤務するのかと嘆いたが、
「ちわー北上さんだよ」
なんとも間延びした挨拶が背後から聞こえた。
「北上お前なのか」
「そうだよ〜大井っちもね」
「不本意ですけど…」
どうやら以前の勤務地での問題児2名も飛ばされてきたようだ。
「そうか…まぁまた宜しくな」
「ほーい」
「…」
大井だけは何故か顔を赤らめながらそっぽを向いていた。
「執務室に行くか」
俺達は執務室へと戻る事にした。
「ったく何をどうやって観測するんだかな…」
「まぁのんびりでいいんじゃない」
北上らしい意見だった。
「そうだな、レーダーが有るわけでもない、双眼鏡も無い…となると毎日暇潰しが…」
俺と北上がそんな事を言っていると、
「釣り道具なら有るみたいですけど…これで釣りでもしてろと?」
大井が執務室の片隅のロッカーから釣竿と色々な道具を出していた。
「おいおい…まさか自給自足しろとでも?」
俺が呆れていると、
「芳雄〜、こんなんあったけど」
北上が引き継ぎ書類らしき物を持ってきた。
「何々…食糧等は週に1回ヘリで輸送、任務は通信の中継が主であとは灯台の管理…ふざけやがって!!」
どうやら本当に左遷と云うか島流しにされたようだ。
「あの子達の言ってたの本当だったんですね」
大井が何やら納得したような事を口にした。
「何か聞いているのか?」
俺は大井に聞いた。
「ええ…離島にある観測所は軍令部にとって目障りと云うか自分達の地位を脅かしそうな人物を潰すためって…」
どうやらくだらない権力争いに巻き込まれた結果の様だった。
「此処で朽ち果てるまで飼い殺しっていうことか」
俺は机を殴った。
「北少佐…聴こえるか」
無線機から聞き覚えのある声が聞こえた。
「何だ」
「すまない、だがこの人事発令は君の…いや君達3人の安全の為だ理解して欲しい…少し其処で休んでいてくれ…軍令部の大掃除が終わるまでの辛抱だ」
それだけ言うと無線は切れた。
「そういう事か…」
まぁ休んでいていいなら俺は休むことにした。
「成る程これは休暇か…ガチのサバイバルでの」
俺は北上と笑った。
「なら早速休暇らしく釣りでもするか」
俺は北上を誘った。
「いいねぇ、この北上様に挑もうって?」
俺と北上は釣り道具を持って岩場へと向かった。
「私は厨房のお掃除をしておきます」
大井が厨房へと向かった。
「結構釣れるじゃねぇか」
大物が入れ食いだった。
「こりゃ今晩はご馳走だねぇ」
北上が呑む仕草をした。
「戻るか」
「そうだねぇ、頃合いだしね」
クーラーボックスの中を見るとカンパチ、アジ、タイで一杯になっていた。
俺と北上はクーラーボックスいっぱいの釣果を下げて戻ることした。
「お~い大井戻ったぞ」
俺が声を掛けると、エプロンをした大井が厨房から顔を出した。
「冷蔵庫や厨房の掃除終わってます」
流石大井。
「じゃ早速捌くか」
俺は刺身に出来そうな魚を捌くことにした。
「それならこれは塩焼きします」
大井が隣で塩焼きを作り出した。
「こうしてまた3人揃ってのんびり出来るとはな…」
その日の夜は3人だけの豪華な夕食となった。