自衛官だったけどクローンになったのでジェダイを救ってみた 作:みどり色
<デス・スター 離着陸パッド>
高速走行のままシャトルはデス・スター内部の離着陸パッドに侵入する。
急制動を掛けるが勢いを完全に殺せる訳はなく、デッキに機体をぶつけるようにしながらブースターを逆噴射させる。
補助エンジンも使うがシャトルは止まることなく壁に衝突する。
衝撃で激しい頭痛がするが惚けている時間は無い。
俺達はスタック(※)を組んでシャトルから飛び出す。
離着陸パッドはバトルドロイドやストームトルーパーが配置されているが人数は多くない。
(※)主に室内戦などの近接戦闘で組む隊形。基本は縦列に隊形を取る。
「敵ダ、ヤッツケロ!(敵だ、やっつけろ!)」
「撃テ、撃テ」
B-1バトルドロイドの一声で帝国はブラスターを発砲する。
俺達は声を出さなくてもお互いの動きが手に取るようにわかる。
そして今回のように広い空間で縦列に隊形をとってもメリットが薄い為、シャトルを壁にするように広く展開する。
「K9、お前は出過ぎるなよ。無理のない範囲で援護してくれれば良い」
「了解しタ」
まあKXシリーズ・セキュリティー・ドロイドは歩く装甲車みたいな奴だからそこまで心配することもないか。
シャトルにあったDC-17ハンド・ブラスターを器用に使いこなしている。
ちなみに俺達の兵装はARCS装備だ。
3人はそれぞれの専用装備もあるし、俺はベスカー・クローントルーパー・アーマーを着ている。
ARCSの名は飾りじゃないんだ。
その辺のバトルドロイドやストームトルーパーにやられはしない。
因みにオーリーは2丁のDC-17ハンド・ブラスター、アディスは773ファイアパンチャー・ライフルを使っている。
不良分隊のクロスヘアーが使っている物と同型だな。
ヒュメルはというと・・・二振りの高周波ブレードを起動して敵をバッサバッサ斬っている。
よくブラスターに当たらんな()
「~~~♪」
俺とK9を何度か見比べた後に可愛らしい声を出しながらBD-1が肩に乗ってくる。
コイツ、一番頑丈そうなやつを選んだな()
「・・・撃たれないように隠れていろよ」
「~~~♪」
その心配は杞憂だったようで、BD-1は俺の動きに合わせて場所を移動している。
器用な奴だな()
◇
その辺のバトルドロイドやストームトルーパーなんかは相手にもならない。
5分もかからずに離着陸パッドを制圧する。
「アディス、オーリーはここにあるTIEファイターに爆薬を仕掛けろ。俺達がいない間に飛ばれても面倒だ」
「了解だ。2分で終わらせる」
「あいあいお任せを~♪」
二人はアーマーの背面に装備されたジェットパックを使って迅速に作業を進めて行く。
俺とヒュメルは二体のドロイドを連れてデス・スターの端末にアクセスする。
引き出した情報によるとやはり内部の工事はあまり進んでいないようだった。
基本的な階層やフロアは簡易的に工事を終わらせているようだったが、設計図と照らし合わせてみても内部の進捗は3割程度だろうな。
「ん? ここの階層だけやたら作業が進んでいるな」
「いや、階層というよりも巨大なビルに見えるぞ」
俺の発言に答えたのはジェットパックで近くに着地したアディスだ。
なんだ、仕事が早いな。
そんなことは置いておいて、確かに100階建てにもなる建造物だ。
高層ビルといって差し支えないだろう。
このデス・スターの最上部(北極部)に位置している。
「ここだけは作業が終わっているようだ。それだけ重要な場所という訳か」
アディスが腕を組みながらそう口にする。
デス・スターの内部よりも優先的に造らせたということは・・・
「全てを見下ろせるこんな悪趣味な場所に居るのは一人だけだろうな」
十中八九、いや十中十パルパティーンだろう。
っていうか劇中じゃ気づかなかったけどパルパってそんな所に居たんだな。
勝手にデス・スターの中心部付近だと思ってたわ。
でも確かEPⅢの冒頭、グリーヴァスのインヴィジブル・ハンドで捕らえられ()ていた場所も艦の最上部、観測用プラットフォームだったな。
他者を見下ろせる場所に居なきゃ気が済まないのかもしれない。
非常に特殊な癖をお持ちの様で()
「・・・どうする?」
アディスの言葉でヒュメルとオーリーの二人も俺に目線を移す。
『どうする?』というのは『殺るか?』という意味だ。
コイツらは俺が『行く』と言えばどこまでも付いてくる覚悟だ。
それが死刑宣告に等しいものであったとしても。
だが—————
「今回の目的はあくまでデス・スターの破壊だ。わざわざラスボス倒しに寄り道することもないだろう」
「・・・最終目標は奴だ」
ヒュメルは俺の言葉を正面から否定するようなことはしなかった。
だが簡潔にすべきことを口にする。
・・・そうだ。
デス・スターの破壊に成功しても皇帝を倒さなきゃ根本的な解決にはならない。
それはただ問題を先送りにしているにすぎない。
俺はオッド・ボールが目の前で死んだことを心のどこかで引きずっているんだろう。
だから無意識に仲間を危険から遠ざけようとしたんだ。
「デス・スターが破壊されればこの場にいる全ての生物は助からないだろウ。それは皇帝だったとしても同じことダ」
俺達の会話にK9が入ってくる。
奴の言うことは至極当然のことだ。
誰でもそう考えるだろう。
だが奴の死をこの目で確かめないと安心できないんだ。
『倒したと思っていたけど実は生きていて全てひっくり返されました☆』なんてことになったら目も当てられないし後悔してもし切れない。
「・・・このタワーに向かうぞ」
俺の言葉に三人は即座に同意する。
だがこの決定にK9は納得がいっていないようだった。
そりゃ効率だけ考えればどう考えても愚策だ。
だが俺達人間はそんなに出来が良くないんだ。
効率だけ考えて生きている訳じゃない。
◇
俺達はタワーに続くエレベーターフロアまでは問題なく辿り着いた。
ちょっとした体育館くらいの広さがあるな。
パルパが使うからって無駄に広くしなくても良いのに()
そんなことは置いておいて、あとはエレベーターに乗って最上階に着いたら衛兵とパルパルを排除すればミッション完了だ。
この戦争も終結する。
言うだけなら簡単だ。
言うだけなら・・・()
そして俺達はもはや呪われてでもいるのかと疑いたくなる程に毎回トラブルに見舞われる。
その元凶が目の前にいるベサリスクの大柄な男性だ。
黒い装甲服に身を包み、回転式ダブル=ブレード・ライトセーバーを二振り携えている。
「コマンダー・レイ!!! 使い捨ての消耗品の分際でここまで辿り着いたことは褒めてやろう、だがそれも終わりだ! 間もなくこのデス・スターが貴様らの艦隊を跡形も残らない程にバラバラにするだろう!!」
うぅ・・・声が無駄にデカい。
叫ばなくても聞こえてるって()
はい、もうお気づきですね。
みんな大好き()ポング・クレル大先生の登場です。
ん?
よく見たら右側の二本の腕は義手だな。
いつ切り落とされたんだろう?
(参照:第97話)
「これはこれはクレル大先生じゃないか。その腕は流行りか何かか? 随分似合っているな。折角だ、残りの腕も“オシャレ”にしてやるよ」
「ふんっ!! 相変わらず無駄口の多いクローンだ。二度とその口をきけなくしてやる!!!」
そう言うと、闇堕ちクレル大先生は腰部に携えていた回転式ダブル=ブレード・ライトセーバーを起動する。
セーバー自体の回転機能と、種族特有の四本腕を器用に使って物凄い回転を生み出している。
使い手がうるさいと道具まで喧しくなるという無駄な教訓を得る()
冗談は置いておいて、奴の実力は本物だ。
その体躯から生み出されるパワーと、ライトセーバー技術は脅威だ。
加えて奴にはフォースが味方に付いている。
・・・感応者だからと言って誰彼構わず力を与えるのやめてくれませんかねフォースさん?()
「お前ら、ここで終わらせるぞ」
「ああ、これ以上付き合ってはいられない」
「・・・斬殺刺殺銃殺爆殺」
「口数が少ない俺ちゃんアイツ苦手なのよね・・・パパっと倒してパルパルの所に急ぎましょ♪」
・・・・・若干二名に突っ込みたいところだが、もうそんな余裕ありません()
この戦いが終わったら絶対温泉入るんだから!
戦いの火ぶたが切られるその瞬間、後方のドアが開かれる。
おかしいな、増援が来ると困るからロックしておいた筈なんだけど・・・?
振返るとそこには黒いローブに身を包んだ人物の姿があった。
その人物は徐に腕を突き出す。
するとフォースを身に纏って身体能力を上げたクレルが壁まで吹き飛ばされる。
隙を突いて俺たちに向かって高速で接近していたのだ。
・・・あぶねぇ、初歩的なミスだ。
敵から目を離すなんて自殺行為だからな。
「っぐ・・・貴様は?」
膝を突きながら新たな侵入者に目を向けると、謎の人物はフードを取り払う。
そこには黒い布で目隠しをしたアナキンの顔が現れた。
「どうやら間に合ったようだね」
「・・・随分遅かったじゃないか、親友」
先の戦いで視力を失い、一時は戦意を喪失していたがどうやら立ち直ってくれたようだ。
っていうか目見えないのにどうやってここまで来たんだ?
・・・まあ、フォースがあるから何とでもなるのか()
「すまない、ここからは僕に任せてくれ」
「いや、お前は上に向かってくれ。やることがあるだろう?」
アナキンは少し驚いたような表情を浮かべながら俺に顔を向ける。
別に格好つけている訳じゃない。
アナキンは向き合わなければならない筈だ。
それに“奴”と戦えるのは彼だけだ。
どちらにせよ、俺達が上に行っても無駄死にだっただろうからな。
「・・・わかった。無事でいてくれ」
それだけ言うとアナキンはエレベーターまで歩き出す。
だが、それを黙って見ているだけのクレルではなかった。
力強く跳躍すると、アナキンに向かって赤い光刃を振り下ろした。
しかしアナキンにその攻撃が当たることはなかった。
まるで木の葉のように、振り下ろされた斬撃をギリギリのところで回避する。
さらに目にも留まらぬ速さで抜刀し、義手の一本を切り落とす。
クレルは叫び声を上げながら地面に倒れ込む。
俺達は目の前で起こった出来事を口を開けてただ見ているだけだった。
ちょ、強すぎませんか・・・?
「それじゃあ後でね、レイ」
エレベーターに乗り込んだアナキンは扉が閉まる前にそれだけ言うとまるで風のように去って(?)行った。
『そんなに強くなっているならクレルにとどめを刺してからでも遅くないだろう』と考えたのは俺だけではない筈だ。
「くっ、あの若造がぁぁぁぁ」
うわー
完全に頭に血が上ってるよ・・・
どう見ても激おこぷんぷん丸だ。
え、死語?
そうなの・・・?(真顔)
「やれるだろ、レイ?」
「俺ちゃんやる気満々よ♪」
「・・・抹殺」
突っ込み担当は俺だけなのか?
どう考えても俺の実力では捌ききれない。
戻れ、レイ!
K9、君に決めた!
モ〇スターボールって便利だよね。
無機物に仕えるなら重量物の運搬に便利だし、有機体にしか使えなくても重要人物の誘拐にも使え・・・やめておこう()
「次から次へと邪魔ばかりしやがって! お前たちを片付けた後にあの若造を血祭りにあげてやる!!」
クレルは四本・・・じゃなかった、三本の腕を使ってライトセーバーを回転させている。
驚異的なことには変わりないが、やはり先程までの威圧感ではない。
何とかなるかも・・・いや、何とかするしかない。
ここで俺達が死ねば、仮にアナキンが皇帝を倒したとしてもデス・スターの破壊が間に合わないかもしれない。
時間との勝負なんだ。
この場にいる連合国艦隊が壊滅すれば、次の標的は間違いなくコルサントだ。
そうなれば連合国に未来はない。
正史通り、帝国がこの銀河を支配することになる。
「があああああ!!」
クレルは雄叫びを上げながら大きく跳躍する。
奴との戦いも何度か経験している。
どう動くかもある程度なら予測できる。
俺達はクレルが動き出すタイミングで四方に散る。
まずは標的を定めさせないことだ。
ジェットパックを用いて散開し、それぞれの武器の安全装置を解除する。
クレルが着地した瞬間を見逃さず、俺達は空中にいながらブラスターを発砲する。
バトルドロイドの単調な射撃とは違う。
訓練された兵士の射撃技術を駆使すれば、そう簡単に光弾を射手に弾き返すことはできない。
それでも連合国でトップの練度を誇るARCSの集中砲火を受けても、クレルは倒れるどころか捌き切っている。
俺のフォース・ツッコミよりも捌きが上手いとは中々やりよる()
冗談は置いておいて・・・
おかしいだろアイツ!
でかい図体のくせして隙がない。
三本の腕とライトセーバーに備わっている回転機能を用いることで、アイツの周りをまるでライトセーバーのバリアが守っているように錯覚してしまうほどだ。
出し惜しみをしている場合ではない。
俺達は全力を出して、今まででもっとも危険な敵に立ち向かう。
アディスは牽制射撃をしながら遥か後方へと距離を取り、専用装備の【アイギス】を起動する。
バックパックに収納された無数の小型球体が展開され、クレルを包囲するように散らばって行く。
オーリーは中、近距離から正確無比な射撃を行いながら専用装備である【ラース】を起動する。
高度なAIが搭載された2本のマニュピレーターが展開され、今はDC-17ハンド・ブラスターが装着されている。
ヒュメルはバックパックでクレルに急接近すると、専用装備の【ベルセルク】を起動する。
アーマーの随所に高速域に達する為に設置された加速装置により、ヒュメルは人間の限界を超えた速度を発揮する。
ARCSそれぞれの専用装備の特徴としては以下のようになる。
アイギスは強力な分、一つ一つの燃費が悪いという弱点があり、内包されているエネルギーを使い果たしてしまうと、再びアディスの専用バックパックに格納され、再チャージが完了まで使用不可能となってしまう。
加えて、展開中は神経をすり減らすような集中力を要し、使用後にはとてつもない疲労感が使用者を襲う。
ラースは2機の独立したアームには、それぞれ高度なAIが搭載されており、自動で敵を索敵、射撃を行う事が出来る。
さらにオーリーの癖や経験を共に学習していくことで、より最適な判断を行うようになる。
このラース最大の長所は、その完成度の高さにある。
最も後期に開発された兵器で、他の専用兵器に存在する重大な欠陥と言える使用上のリスクが無く、状況によって装備を変更することが可能なため、作戦内容に合わせて最適な装備で任務にあたることが出来る。
しかし、兵器としての完成度を求めた結果、他の専用兵器に比べると性能面ではあきらかに劣るものとなってしまっている。
ベルセルクは身体に装着している各アーマーの随所に高速域に達する為の加速装置が設置されており、任意で自らを加速させることを可能にする。
起動中は身体全体を電磁パルスによる磁場が覆っている為、他の電子機器は使用できなくなるが、ブラスターやライトセーバーへの耐性を備えている。
しかし、人間が生み出せる限界を超えた異常な急加速を続ける事から、使用者への負担が大きく、使用時間によっては大きな苦痛を伴う事になる。
専用装備は強力な分、デメリットを抱えていることも確かだがそれを考慮しても余りある恩恵がある。
文字通りこの世に生を受けてから共に生きて来たのだ。
4人はそれぞれがどう動くか、それが瞬時に理解できた。
ヒュメルの近接戦闘におけるヒット&アウェイを軸に、オーリーの近、中距離における射撃、アディスの遠距離からの狙撃、俺の指揮統制、囮、爆薬などを使った戦術行動により、文字通り鉄壁の布陣が完成する。
だが長引けばこちらのリスクが増大する。
火力集中、速度重視の短期決戦を狙ってクレルの反応速度を超えるしかない。
俺はファーストライン(腰回りの装備)からフラッシュバン(閃光手榴弾)を取り出し、クレルの足元に向かって投擲する。
安全装置が外れたフラッシュバンは約1.5秒で非常に強力な閃光と音を発生さえ、クレルの集中力を削ぐ。
本来は部屋などの閉所空間に使われるが、今回は少し注意を削げればいい。
フラッシュバンが炸裂すると同時にヒュメルが一気に距離を詰める。
彼の両腕に格納されている長剣は特殊な合金によって生成されているのに加えて高周波が流されている。
さらに電磁パルス発生装置が内蔵されていることから、ライトセーバーとの戦闘にも耐えうる性能を誇るのだ。
フラッシュバンを受けたクレルだったが、フォースによる先読みと驚異的な反射神経でヒュメルの斬撃を防ぐ。
しかしそんなことは想定済みだ。
すぐさまヒュメルはその場から離脱しようとするが、クレルの反撃が迫る。
そのタイミングでオーリーの早撃ちと、専用装備である【ラース】のマニュピレーターが正確に射撃を行う。
様々な任務をオーリーと共に経験してきたAIはまさにオーリーと一心同体だった。
オーリーの癖や隙を完全に把握しており、完璧な援護をしている。
ヒュメルに斬撃を放とうとしたクレルだったが、オーリーからの射撃を受けて防御に回るしかなかった。
強制的に距離を取らされたタイミングでアディスの専用装備である【アイギス】の全方位攻撃がクレルを襲う。
攻撃が得意だと思い込んでいたが、クレルが防御に専念するとここまで堅いとは・・・
【アイギス】の全方位攻撃を防ぎ切っている。
だがこれも想定済みだ。
予想は常に悪い方に想定しておくものだからな。
俺はファーストラインからサーマルデトネーターを手に取り、クレルの足元に転がす。
数秒後にサーマルデトネーターに内包された高威力の爆発が炸裂する。
賞金稼ぎなんかが使っている物は威力が高すぎる為、俺が持っている物は半径5メートルほどに威力を発揮するものだ。
しかしクレルを襲うはずだった爆発は、奴が全方位にフォースを解放したことでその役割を全うすることはなかった。
それだけではなく、周囲に拡散した爆発のエネルギーが少なくない数のアイギスを破壊してしまう。
もうやだ、フォース使うヤツ!!
完璧な流れだったのに魔法で全てひっくり返される気分は最悪だ。
え、フォースは魔法じゃない?
それは実際にフォース感応者とやり合ってから言ってください。
あんなの一般人からすれば便利な魔法みたいなものだろ()
「すまんアディス」
『気にするな、どちらにせよ再チャージが必要だ』
俺はヘルメットに内蔵されたコムリンクでアディスに無線を入れる。
便利な分、アイギスは専用装備の中で使い勝手が一番悪い。
一つ一つが小型な分、燃費がすこぶる悪いのだ。
加えて使用者の集中力も滅茶苦茶すり減らす。
脳みそ筋肉の俺には向いていない()
「この複製ごときがぁぁぁぁ!!」
「・・・それは聞き飽きた」
クレルの絶叫がフロア内に響き渡る。
だがヒュメルはそんなことはお構いなしに攻撃を仕掛ける。
しかし種族特有のパワーと、フォースによる肉体強化は脅威だ。
いかに【ベルセルク】で強化しているといっても“地の力”が違う。
加速力と回転を加えた斬撃をクレルは防ぎ切るばかりか、そのまま力強く弾き飛ばす。
さらに追撃しようとするが、またしてもアディスとオーリーに阻まれる。
「【アイギス】が無くても俺には“これ”がある」
アディスはメイン・ウェポンであるスナイパーライフルを使ってヒュメルを援護する。
元々、クローンの中で最高の腕を持つスナイパーなのだ。
「絶対に、何があっても、死んでもヒュメルちゃんは殺らせませんよっ!」
「オーリー、どうしてヒュメルは殺らせないんだ?」
「そりゃヒュメルちゃんの次は俺ちゃんになっちゃうでしょ? 順番的に?」
俺の質問にサラっと答えるオーリー。
奴の言う順番とは恐らく各々が担当している“距離”の話だろう。
ヒュメルの次に戦闘距離が近いのが自分だから、次に狙われる可能性が高いということだろう。
「でも死んだら同じことじゃね?」
「・・・・・!!! レイレイ天才?!」
・・・こんな時でもブレない俺達にクレル大先生はご立腹のようだ。
でも仕方ないじゃん、全部オーリーのせいです!
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<デス・スター エンペラーズ・タワー最上階>
デス・スターの最北端に建造された100階建てにもなるこのビルは、パルパティーン皇帝支配の象徴と言えた。
この展望フロアからは連合国艦隊と帝国艦隊の激しい戦いが確認できる。
さらにこのフロアで目を引くのは巨大なエネルギーシャフトだ。
このシャフトはデス・スターの心臓部、メイン・リアクターと直結している。
エレベーターが到着すると、中から現れたのはアナキン・スカイウォーカーだ。
赤い装甲とローブ、仮面を装備した二人のインペリアル・ロイヤル・ガードが彼の到着を出迎える。
ガードは争う気などさらさら無いようだ。
そもそも皇帝の忠実な僕として帝国の中でも特別な存在である彼らにとって、主人の命令以外に重要なことなどないのだろう。
二人のロイヤル・ガードは静かに振り返り、フロアの奥に進んでいく。
アナキンも逆らうことなどせずに静かに追従する。
進んでいくと展望ガラスの前に玉座が存在した。
その玉座が回転すると黒いローブに身を包み、フードを目深に被った皇帝の姿があった。
視力を失ったアナキンはその姿を直接確認できる訳ではなかったが、思い出されるのはインヴィジブル・ハンドの展望デッキでの出来事だった。
『貴方がシスの暗黒卿だと言う事はわかっています。どうして滅ぼすべき存在である僕に良くしてくれたのですか?』
『・・・余の存在に気が付いていたとは、予想よりも飛躍的な成長を遂げたようだな、選ばれし者よ。其方は強いフォースの使い手・・・いずれ余すらも打ち倒し、必ずや無敵のシスとなるだろう。こうしてシスは長きに渡って力を蓄え、もはや死さえも超越した存在となったのだ・・・。アナキン、今一度問う。奴らを倒し、我が弟子となるのだ。そうすれば、愛する者を死の淵から救う術すらも我が物に出来るのだ!』
『・・・残念です、議長』
『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!』
(参照:第61話)
アナキンはシディアスの誘惑に打ち勝った。
その瞬間から共和国と分離主義者の戦争が終わり、連合国と帝国の新たな戦いが始まったのだ。
長きに渡る戦争も終わりが近い。
この二人の行く末により、銀河の運命が決まるのだ。
「アナキン・スカイウォーカー、よく来た我が友よ」
決して大きくはない声。
だがその声は心によく響くものだった。
「これが最後だ友よ・・・フォースの暗黒面を受け入れるのだ。そして余を主と認め、弟子となれ。共に連合を滅ぼし、この銀河を支配するのだ」
「議長、僕の答えは知っている筈です。ここに来た目的も」
シディアスは口を挟むことなく、静かにアナキンの言葉を待つ。
しかし二人のガードは主人の意を汲んだように臨戦態勢を整えているようだった。
「貴方は本当に良くしてくださった。真意が他にあったのだとしても、感謝していた僕の気持ちに偽りはありませんでした。ですが、僕が貴方の下に行くことは決して無い。投降してください」
「・・・ここまでだな、ジェダイよ」
皇帝の言葉と共に、控えていた二人のインペリアル・ロイヤル・ガードが動き出す。
懐から長い筒状の物体を取り出したかと思うと、その両側から真紅に染まる光刃が発生する。
ダブル=ブレード・ライトセーバーを駆る二人のガードは常人には決して出すことのできない速度でアナキンに接近する。
大柄なガードはアナキンの後方へと跳躍し、もう一人は正面からセーバーを振るう。
息の合った連携の前に、普通のジェダイなら対応することができずに絶命していたことだろう。
しかし、その一撃必殺の斬撃がアナキンの命を刈り取ることはなかった。
洗練された足運びと上体を逸らすことによって、二人の刺客による攻撃を完璧に避ける事に成功する。
続けざまの攻撃もアナキンの身体を捉えることは叶わない。
二人のガードはその現実に怒り、暗黒面の力を増大させる。
特に大柄なガードは冷静さを欠くほどの憤怒で、もう一人のガードを巻き込むことも気にせずにライトセーバーを大きく振り抜く。
しかし、またしてもアナキンはその攻撃を空振りさせ、いつの間にかその手に持っていたヒルトから青い光刃を出現させる。
刹那—————
大柄なガードはその場に倒れ込む。
その衝撃で仮面が外れ、そこに現れた顔はザブラクの男性、サヴァージ・オプレスのものだった。
「サヴァージ!!」
もう一人のガードが悲鳴にも似た声で叫び、倒れ込んだガードに駆け寄る。
しかし、サヴァージ・オプレスは既に事切れていた。
「・・・・・役立たずばかりだな。最期の慈悲さえ活かすこともできぬとは」
残されたガードは恐怖していた。
主人である皇帝に、目の前のジェダイ騎士に。
文字通りレベルの違う二人を前に、このガードは既に戦意を喪失していた。
「恐怖で人の心を縛ることが、恒久的な銀河の平和に繋がると本当に信じているのですか?」
アナキンは皇帝に向き直る。
彼はまだ信じたいのかもしれない。
パルパティーンの中に善の心が残っていると。
「この銀河の全てを統べる余こそが理・・・この愚か者めが!」
シディアスは激高すると同時に、その強大な暗黒面の力を振るう。
その両手から眩い閃光と共に稲妻が発生する。
突然の攻撃だったがアナキンは冷静に自らのライトセーバーで防御する。
稲妻に照らされたアナキンの表情は酷く悲しいものだった。