殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~ 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「では行ってくる。留守を任せたぞ」
「了解しました!」
何人かの兵士に見送られ、護衛を連れた指揮官が馬車に乗り込む。
オートマタは、この護衛の中にシレっと紛れ込んだ。
他の護衛は、全員調教の毒牙にかかってるので疑われる事もない。
出発までの三日間で調教による魔の手は、なんと砦の全兵士の一割を陥落させるまでに伸びた。
三日でこの成果は凄い。
指揮官による呼び出し→先生ゾンビによるテレポート拉致→中ボス部屋でのリンチ。
この完全犯罪が、あまりにも上手く行った結果だ。
しかも、調教された奴には普段通りの振る舞いを強制してるから、異常を察知される事もないし。
我ながら恐ろしいコンボを考えてしまったものである。
そんな感じで、指揮官率いる(本当は私率いる)一行は砦を出発。
指揮官の上司へと今回の戦いの詳細を報告するべく、この国の首都を目指す。
当然、そんなのは、ただの建前だけど。
普通なら、そんな報告に指揮官自らが出向く事はないと思う。
けど、その詳細報告が凄く重要な物だと手紙に書いた上に、現在の指揮官は大怪我して戦えないというのが、良い感じの言い訳になった。
つまり、報告ついでに首都にいる高位の回復魔法使いに診てもらおうという訳だ。
当然、これもただの建前である。
実際は、指揮官に付いて行けば簡単に国の上層部に会えるんじゃないかという、私の策略だ。
で、そんな一行は馬車に揺られながら、ゆっくりと首都への道を行く。
先生ゾンビのテレポートで送る手もあったんだけど、それじゃ移動が不自然に早すぎて怪しまれそうだから却下。
それに、いざ調教の効果が解けた時の為に、こいつらにもあんまり手の内を見せたくないし。
同じ理由で、突発的に調教の効果が解けた時の対策として、熱血ゾンビと不死身ゾンビを召喚してオートマタの護衛に充てておいた。
こいつらは、ステータス的に使い捨てても惜しくないゾンビなので、外でも積極的に使っていくつもりだ。
それで、まあ、ゆっくりと馬車に揺られてれば、その間は暇になる。
なので、空いた時間で後回しにしていた魔王への報告をする事にした。
久しぶりに魔王との通信部屋のモニターを開き、マモリちゃん人形を起動させ、ミニ玉座に安直されてるカオスちゃん人形に話しかける。
「魔王様、ご報告があります」
「む、マモリか。なんじゃ? 今忙しいから手短に話してほしいのじゃが」
忙しいのか。
だったら好都合かな。
余計な詮索されなそうだし。
「では、手短にご報告いたします。
先日、アワルディア共和国の国境砦に勇者が現れ、攻め入っていた魔王軍と衝突。
その戦いにおいて、ドラグライトさんが討ち取られたそうです」
「……すまん、もう一度言うてくれ」
「先日、アワルディア共和国の国境砦に勇者が現れ、攻め入っていた魔王軍と衝突。
その戦いにおいて、ドラグライトさんが討ち取られたそうです」
「……マジか」
「マジです」
カオスちゃん人形が頭を抱えた。
一方、それを伝える私も内心では結構ドキドキしていた。
絶対にドラゴン殺しの犯人が私だと気づかれる訳にはいかない。
早急に話を進めてしまおう。
「おそらく、勇者は現在も国境砦に滞在していると思われますが、いかがいたしますか?」
「いかがって……えぇ……どうしたもんかのう……。
我が出向きたいところじゃが、今は別の国の攻略中で手が離せんし。
他の幹部を向かわせようにも、ドラグライトはあれでいて、ステータスだけならば幹部最強じゃった。
それを打倒したという事は、近くにいる幹部を向かわせても勇者には勝てんじゃろうし……マモリよ、何か良い策はないかの?」
いきなり私に頼るなポンコツ上司。
それ、世間一般では無茶振りって言うんだからね。
まあ、私は有能だから上司の無茶振りにも応えられるけどさ。
作戦も、現在進行形でやってるやつがあるし。
ドラゴンの話題が出ても困るから、さっさと話してしまおう。
「一応、現在私が手掛けている国を落とす為の作戦があります。
それを少し弄れば、勇者を叩く事は可能かと」
「おお! 本当か!」
「はい。……しかし、さすがに確実に討ち取るとなると難しいでしょう」
とりあえず、失敗も視野に入れて、発言に保険をかけておく。
実際、この作戦で神道を殺せる確率は決して高くないし。
万事上手く運んだとしても、殺害成功率は50%もないと思う。
まあ、神道は殺せなくても砦は落ちるだろうけどね。
「まあ、それは仕方あるまい。そんな簡単に勇者を殺せれば苦労はないしの。
……こうなってくると、前に取り逃がしたのが痛いのう。
おのれ、ウォーロック」
正直、前回のあれは魔王のせいでもあると思う。
口には出さないけど。
「では、ひとまずマモリの作戦とやらで行くとしよう。近場にいる魔王軍への命令権をお主に与えておく。国境近くの街にいくらか戦力が残っている筈じゃ。
回収して好きに使うがよい」
「わかりました」
とは言っても、命令権を渡すって、ダンジョン領域外にいるモンスターにどうやって指示を伝えるんだろう?
ああ、いや、もしかして国境近くの街とやらにカオスちゃん人形が置いてあるんだろうか。
あり得る。
その国境近くの街って、十中八九偵察任務の時に行った街だろうし、余裕があったら確認しておこう。
まあ、そこにいる魔物どもが役に立つかは微妙なところだと思うけど。
「他にも、多少であれば手伝えるが、何か必要な物とかあるかの?」
「では、勇者を相手に少しでも戦える戦力がいれば貸してください。無事に返す保証はありませんが」
「中々の無茶振りじゃのう……じゃが、わかった。手が空いておる幹部を何人か派遣する。国境近くの街で落ち合うがよい」
「ありがとうございます」
ダメ元で言ってみたんだけど、意外にも意見が通った。
言ってみるものだね。
それにしても幹部が数人かー。
できれば、勇者にぶつけた後でゾンビにしたい。
でも、今度こそバレるといけないから、そっちはできれば良いなくらいに思っておこう。
「他には何かあるかの?」
「いえ、特には」
「そうか。では、健闘を祈る!」
そうして、カオスちゃん人形は沈黙した。
……とりあえず、ドラゴンの話題に触れられなくて良かった。
その事実に、私はそっと胸を撫で下ろした。