殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~ 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
さて、魔王への報告を終えた訳だけど。
何故か、私は一部の魔王軍への命令権を得た。
しかも、そいつらがいる国境の街には、私への増援として幹部まで派遣される事になった。
さすがに、それだけの戦力を放置して作戦を進める訳にはいかないでしょう。
という訳で、指揮官率いる部隊に一時待機を命じて、オートマタは先生ゾンビのテレポートで国境近くの街へ。
念の為に不死身ゾンビを護衛に付けておく。
まあ、本当に念の為だけど。
こいつなら使い捨てても惜しくないし、肉壁くらいにはなるでしょう。
で、やって来た国境近くの街は、相変わらずの地獄絵図だった。
死体は散乱してるし、ゴブリンとかオークが女をズッコンバッコンしてるし。
でも、魔王の言った通り命令はされてるみたいで、オートマタに襲いかかってくる魔物はおらず、命令すれば素直に従った。
キラーウルフとかの獣系モンスターなんか、お手、お回り、チンチンまでやってみせる服従っぷりだ。
そんな街で待つ事、約一日。
魔物どもに案内されて見つけたカオスちゃん人形の所に、遂に幹部と思われる二体の魔物が転送されてきた。
「では、仲良くするんじゃぞ。シロ、ニコ」
「畏まった、魔王様」
「はーい!」
カオスちゃん人形の言葉に対して、真面目そうな声で答えたのは二足歩行の白い狼。
逆に、元気な声で軽く答えたのは、下半身が巨大な蜘蛛になってる10歳くらいの少女。
すぐに鑑定を使う。
ーーー
フェンリル Lv105
名前 シロ
HP 20500/20500
MP 19980/19980
攻撃 18000
防御 17740
魔力 18400
魔耐 18650
速度 19070
ユニークスキル
『真装』
スキル
『神狼:Lv105』『HP自動回復:Lv75』『MP自動回復:Lv80』
ーーー
アラクネ Lv81
名前 ニコ
HP 9995/9995
MP 15500/15500
攻撃 6000
防御 5245
魔力 13000
魔耐 10450
速度 16600
ユニークスキル
『真装』
スキル
『怪物蜘蛛:Lv81』『HP自動回復:Lv30』『MP自動回復:Lv80』『隠密:Lv49』
ーーー
思ったより強いのが出てきた。
特にフェンリルの方はドラゴンと大差ない程の強さ。
魔王軍って、どれだけ人材が充実してるんだろう。
これ、私がどれだけ強くなっても、魔王軍全体には勝てないような気がする……。
もし敵対したら、おとなしく籠城だね。
その時は、リーフを居住スペースに入れる事も検討する。
「マモリよ、こやつらが今回お主に協力する幹部じゃ。
一応、お主の指示に従うよう言ってはおいたが、何分我の強い連中じゃからのう。
頑張って上手く手綱を握ってくれ。
では、我は我の仕事に専念する故、ここで失礼するぞ」
なんか不穏な事を言ってから、カオスちゃん人形は沈黙した。
……なんか物凄く不安なんですけど。
「お前が例の新幹部か。俺はフェンリルのシロ。魔王様の忠実なる
そんな私の不安を吹き飛ばすかのように、フェンリルはオートマタに向かって手を差し出してきた。
握手だ。
「……こちらこそ、よろしくお願いします」
思ったより随分とまともな対応に面食らいつつ、私はオートマタを操ってフェンリルの手を握り返す。
ちなみに、このフェンリルは狼なのに、手の形は人間と同じだ。
人化状態なんだろうから当たり前だけど。
あ、でも、爪と肉球はあるな。
「お姉ちゃん! あたしはね! あたしはアラクネのニコっていうの! よろしくね!」
「……こちらこそ」
そして、反対の手をアラクネが握ってきて、ブンブンと上下に振り回す。
オートマタの関節が嫌な音を立ててるけど、対応自体はまともと言って差し支えない。
不気味だ。
「では、マモリよ。敵はどこだ?」
「ここから数日歩いた距離にある砦に居ます」
「そうか。ならば早速行くとしよう。出撃だ」
そう言ってフェンリルが歩き出す。
……え?
ちょっと待って。
こいつまさか、無策の上に単騎で突撃するつもりなの?
「待ってください」
「む? 何故だ?」
「何故だじゃありません。無策で攻め込もうとしないでください」
「人間風情を相手に、策など不要だろう」
脳筋か!
ああ、いや、そういえば前に幹部は脳筋揃いだって魔王が言ってたような……。
こういう事か!
「という事で出撃!」
「おー!」
「待ってください。ニコさんも乗らないで」
「ニコでいいよ、お姉ちゃん!」
アラクネも、こいつマイペースだな!
フェンリルに負けず劣らずの脳筋、というか、精神年齢が外見通りな感じがする。
「他の場所ではどうだか知りませんが、今回は私の指示に従ってください。
砦攻めの決行は数日後、私が合図を出してからです」
「何故だ?」
「私にも準備というものがあります。それに今回の相手は勇者。ドラグライトさんを倒した相手です。
無策では犬死にしますよ」
「奴より俺の方が強いぞ」
いや、弱いでしょ。
というか、そういう問題じゃない!
「とにかく、勝手な行動は慎んでください。さもなければ魔王様に言いつけますよ」
「ぬ……それは困るな。魔王様を困らせるのは本意ではない」
「では、私の指示に従ってくださいね」
「致し方あるまい。了解した」
ふう。
なんとか説得に成功したか。
最初からこれじゃ、先が思いやられるなぁ。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん! あたし、早くお人形さんで遊びたい!」
「いきなりなんですか。お人形?」
フェンリルと話がついたと思ったら、今度はアラクネが何か言い出した。
人形がなんだって?
「うん! あたしね! お人形さんが大好きなの! こうやって遊ぶんだぁ!」
そう言って、アラクネは指の先から高速で何かを射出した。
糸だ。
注意して見ないとわからないくらいに細い糸。
オートマタの反応速度では対処できない程の速度で飛んで行ったその糸は、ゴブリンにズッコンバッコンされている女に絡み付いた。
そして、その女は奇っ怪な行動に出る。
なんと自分で自分の目を抉り出した。
「ああああああああああああああああ!?」
女が絶叫を上げる。
しかし、糸で操られた女の動きは止まらず、今度は顔の皮を剥ぎ取り、指を食い千切り、最後は自分の首を絞めて絶命した。
突然の事態に、さっきまでお楽しみ中だったゴブリンですら唖然としてる。
「ね! ね! おもしろいでしょ! 楽しいでしょ! もっと元気なお人形さんだと、もっともっと楽しいんだぁ!」
そんな狂気に満ちた言葉を、屈託のない笑顔で語るアラクネ。
これまた、どぎつい個性が出てきたよ。
まあ、私も人の事は言えないんだけどさぁ。
「だからね! あたし、早く新しいお人形さんがほしいの! 待ってるなんてやだ!」
「……わかりました。なるべく早く決行できるように頑張りますよ」
「わーい! お姉ちゃん大好き!」
そう言いながら、オートマタに抱き着いてくるアラクネ。
ボキボキと嫌な音が鳴ってるんですけど。
修復もただじゃないのに。
その後、なんとか作戦の中でやってほしい役割を二人に説明してから解散となった。
作戦決行の日までは、この街で待機してもらう予定だけど、急がないと勝手に動き出す予感がヒシヒシとする。
こいつら、なんて扱いにくいんだ……。
魔王の忠告が身に染みる思いだよ。
勇者一行にダメージ与えた上で討伐されてくれないかなぁ。
そんな感じで、魔王に戦力をねだった事を若干後悔しつつ、私はオートマタをダンジョンに戻し、そこから先生ゾンビのテレポートで指揮官率いる部隊の所へと送った。
さて、こいつらに作戦を台無しにされないように急がないと。
なんで、私がこんな苦労をしなくちゃいけないんだろう……。
やっぱり、仕事って大変。
そう思った一日だった。