殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~ 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「《フォトンブレード》!」
「《タートルガード》!」
「くそっ! 硬い!?」
魔王がこの場を去ってから、まだ数分。
決死の足止め作戦は、それなりの成果を上げていた。
神道は未だに亀を倒せず、魔王を追えない。
なんとかサポートしようとする十二使徒も、生存本能で多少の連携を取り始めた幹部に押されて手一杯。
結果、膠着状態が続いていた。
「ぶひぃいい!?」
でも、代償は発生する。
今もオークロードが神道に下半身を消し飛ばされた。
あれはもう助からない。
という訳で、コッソリと介錯して死体をダンジョンに送っておいた。
こんな感じで、魔王軍の方は消耗が激しい。
まだ数分しか経ってないというのに、幹部がもう5体は殺られた。
ミスリルゴーレムも何体も壊されて、新しいのを転送した。
まあ、残骸は回収してゴーレムメーカーにぶち込んでおいたけど。
対して、向こうはほぼ脱落者なし。
正確には真装使いを何人かと十二使徒を一人殺せたんだけど、すぐに真装使いの一人が新しい十二使徒になってしまった。
しかも、殺せた奴は他者強化型の奴ではない。
向こうの損害は軽微だ。
逆に、魔王軍はあと10分もすれば全滅すると思う。
私が敗北までのタイムリミットを計算したその時。
ズガアアアアアアン!
というもの凄い爆音を立てて、街の中心にあった巨大な建物が崩壊した。
「大聖堂が!?」
敵の何人かが、その光景を見て悲鳴を上げた。
そして、次の瞬間には死体になった。
この状況で余所見するからそうなる。
それはともかく。
どうやら魔王は上手くやってるらしい。
大聖堂にも防衛戦力くらいいたんだろうけど、さすがに魔王を止められる程ではなかったみたいだ。
あとは、魔王があの下にあるっていうダンジョンの攻略を終えるまで持ちこたえれば魔王軍の勝ち。
いや、魔王軍が全滅しても、魔王が目的を達成すれば勝ちなのか。
「ふぉっふぉっふぉ。魔王の嬢ちゃんは順調のようじゃのう。頑張っとる甲斐があるわい」
「ッ! 《フォトンインパクト》!」
「おっと!」
神道が光の魔法を亀に打ち込んだ。
威力は凄いけど、なんか歪な感じの魔法。
多分、焦って発動が上手くいってないんだ。
そんなんじゃ、魔法の威力も下がる。
事実、亀は割と余裕で耐えてた。
「ふぉっふぉっふぉ。この程度で心乱すとは若いのう。ほれ、チャンスじゃ。やってしまいんさい」
「《フェンリルロア》!」
「《ブラッディレイン》!」
「《破滅のメロディー》!」
「《フェニックスフレア》!」
「《スカイスラッシュ》!」
「クソッ!?」
その焦りにつけ込むように、十二使徒を振り切って手の空いた幹部達が、一斉に遠距離攻撃を炸裂させる。
ダメージ自体はそんなでもない。
それどころか『
それでも、確実に足止めにはなってる。
「勇者様、落ち着かれよ! 焦れば焦る程、奴らの思う壺ですぞ!」
「……はい!」
十二使徒の一人に言われて、神道の動きが変わる。
少しは冷静さを取り戻してしまったらしい。
めんどくさい。
「……とはいえ、このままではマズイのも事実。致し方ない。民や兵に被害が及ぶ故、使いたくはなかったが」
ん?
十二使徒の一人がブツブツと呟きながら、防壁の下に飛び降りていった。
魔物の群れがひしめく場所に。
自殺だったら嬉しいんだけど、そんな訳ない。
あいつの真装の能力は鑑定済みだ。
何をやるのか、予想くらいはできる。
「行くぞ! 我が禁じ手を食らうがいい魔物どもよ! 《クリエイト・ジャイアントゴーレム》!」
下からそんな声が聞こえた。
それと同時に、防壁の外側の地面が盛り上がり、超巨大なゴーレムとなる。
その全容は山よりも大きく、亀よりもデカイ。
ーーー
土属性魔法の威力を大幅に上昇。
ーーー
説明だけ見れば、爺ゾンビや熱血ゾンビの真装と同じ、シンプルな効果。
だというのに、十二使徒の化け物ステータスでやると、魔法のスケールが違う。
でも、所詮は土で出来たゴーレム。
いくら大きくても、そこまで強くはない。
下にいた雑魚魔物の攻撃で、早くも崩れかけてる。
「やれ!」
でも、完全に崩れる前に巨大ゴーレムは行動を起こした。
巨大な腕を伸ばし、亀の甲羅を掴む。
そして、そのまま投げ飛ばした。
「な、なんじゃと!?」
亀は驚愕しながら飛んでいき、街を盛大に破壊しながらひっくり返った。
しかも、手足をジタバタさせるだけで起き上がれてない。
人化しろ!
その程度の事もわからないのか脳筋!
そして、役目を全うした巨大ゴーレムは崩れ去った。
残骸が街や砦の上に降り注ぐ。
でも、これで神道を塞き止めてた亀が一時的に戦線離脱してしまった。
つまり。
「今です勇者様!」
「はい!」
抑止力を失った神道が、他者強化型の十二使徒と共に魔王を追いかけて行く。
立ち塞がった幹部は、一撃で斬り捨てられた。
やっぱり、亀じゃないと止められない!
そして、神道達が凄いスピードで走り去り、残された幹部と十二使徒が戦いを再開する。
フェンリルをはじめとした何体かの幹部は、神道達を追いかけて行った。
結果、この場に残された十二使徒と幹部の数はほぼ互角。
泥仕合が予想される。
しかし、私のそんな予想は外れた。
神道達が走り去ってから一分足らず。
多分、そろそろ大聖堂の跡地に到着したんじゃないかというタイミングで、その現象は発生した。
━━大聖堂の跡地から、黒い光の柱が天に向かって立ち上る。
その後、黒い光は空を染め上げるように広がり、まるで夜のように世界を闇に包み込んだ。
直接見なくてもわかる。
本能的な部分が教えてくれる。
あの黒い光の柱の根本に、強大な力を持ったナニカがいるという事が。
魔神が復活したという事が、わかった。
それに引き寄せられるかのように、幹部も十二使徒も戦いをやめ、黒い光に向かって走り出す。
恐らく、魔物は本能的に、十二使徒はその魔物を追うと同時に優先順位を考えて。
私もまた、オートマタを操作して現場へと走らせた。
何故か、そうしなければならないという、焦燥にも似た感覚を覚えながら。