殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~ 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
魔神は死んだ。
戦いは終わった。
私はまず自分の傷を回復魔法で治し、次に壊れまくったボス部屋をDPで修復してから、ベッドに潜り込んだ。
そして、ベッドの中で布団を頭まで被り、体を抱いて震える。
怖かった。
痛かった。
さっきの戦いは、今までのような安全圏からの戦いじゃない。
本気で命の危機を感じた。
久しぶりに、死がすぐそこにまで迫ってきていた。
戦いが終わって緊張が解けた今、その恐怖が遅れて私を苛む。
このままじゃトラウマになりそうだ。
そうなったら、次似たような事が起こった時に戦えない。
それはダメ。
絶対にダメだ。
何でもいいから、早急に心のケアをする必要がある。
私は、転送機能で自分自身を転送し、第一階層のある部屋へとやって来た。
「あ、ご主人さ……ご主人様!? どうしたんですか、その格好!?」
やって来たのはリーフに与えた部屋。
そこで留守番してたリーフが、私の格好を見て悲鳴を上げながら近寄ってきて回復魔法を使い始めた。
怪我はもう治したから意味ないんだけど。
今の私の格好は、魔神との戦いの時に着てた服のままだ。
着替える気力がなかったから、そのままにしてある。
そして、私はあの戦いで結構な攻撃を受けた。
リビングアーマー先輩を貫通して、内側の本体にまでダメージが通るような攻撃を。
右腕とか斬られたし、脇腹とか削られたし、最後の攻防では割と全身くまなく切り刻まれた。
つまり、今の私の服装は、ボロボロな上に血塗れで酷い事になってるのだ。
リーフが慌てるのもわかる。
でも、今の私にリーフを気遣う余裕はない。
私は、無言でリーフの体を抱き締めた。
「え!?」
困惑するリーフを無視して強く抱き締める。
少し落ち着いたような気がした。
「痛っ!?」
あ、リーフが悲鳴を上げた。
そう言えば、魔神を倒して大幅にLvが上がった今、物理系ステータスもかなり上がってる。
全力で抱き締めたら、リーフがミンチになってしまう。
気をつけないと。
「《ヒール》」
とりあえず、リーフに回復魔法をかけて抱き着きを続行する。
今度は気がするではなく、傷付いていた心が癒えていくのを感じた。
アニマルセラピーは偉大だ。
日本にいた頃も、辛い事があった時は、よく猫のクロスケを抱いて癒されてたっけ。
「あの、ご主人さ……ま……!?」
気づけば、私は泣いていた。
次から次へと涙が出てくる。
リーフを抱き締めながら、ぐすぐすと嗚咽を漏らして泣く。
そういえば、こうして誰かにすがり付いて感情を吐き出すのはいつぶりだろう?
最後にそうしたのは、小学校低学年くらいの時、学校でイジメられてママに泣きついた時だったかな?
成長していくうちに両親にも素直には甘えられなくなって、引きこもってからは、何かにつけて引きこもりをやめさせようとしてくるから、余計にすがれなくなった。
両親以外にすがれる相手はクロスケだけ。
そのクロスケも、引きこもりになる前には寿命で死んじゃったし、それからの私はずっと独りだった。
私は、自分で思うよりも人肌恋しかったのかもしれない。
寂しかったのかもしれない。
リーフに抱き着いて泣いていると、戦闘の恐怖だけじゃなくて、そういう積年の感情も吐き出されていくような気がした。
「えっと、よくわからないですけど……お疲れ様でした、ご主人様」
リーフはそれだけ言って、静かに背中を擦ってくれた。
それが何だか、とっても温かい。
その温もりに身を預けている内に、ドンドン眠くなってきた。
このまま寝ちゃいたい。
いいや、寝ちゃおう。
いくらペットとはいえ男の前でとか、ダンジョンの第一階層なんて、そんなに安全とは言えない場所でとか、今だけはそういう事を考えたくない。
どうせリーフは私に逆らえないし、万一逆らえてもリーフのステータスじゃ私に傷一つ付けられない。
今は、そんな最低限の安全と、この温もりさえあればいい。
それから何分もしない内に、私は泣き疲れて眠りについた。