殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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38 商人の少年

 居住スペースからオートマタを操作し、ダンジョン近くの森の中を歩かせる。

 ちなみに、その作業をやりながらでも、私はダンジョンの強化を行う事ができるのだ。

 並列思考と演算能力様々。

 

 そうして森を歩いている内に、モンスターを見つけた。

 ゴブリンだった。

 ホブゴブリンに率いられた数匹の群れだ。

 まだ残ってたのか。

 よし殺そう。

 

 最初はオートマタの性能テストの為にも、オートマタ自身に戦わせてみようかと思ったけど、ちょっと考え直して、ある実験をしてみる。

 まず、モンスター転送機能で黒鉄ゴーレムを召喚。

 ゴブリン殺せという命令を与えて突撃させる。

 私は、オートマタに擬似ダンジョン領域を解除させた上で、それを見守っていた。

 

『ギギィイイイイイ!?』

 

 そして、10秒とかからずに黒鉄ゴーレムがゴブリンどもを屠殺。

 結果、DPは入ってこなかった。

 やっぱりか。

 ダンジョンモンスターが手を下しても、ダンジョン領域内じゃなければDPは入ってこないと。

 この分だと、経験値も入ってなさそう。

 今度から、殺す時はなるべく領域内で殺ろう。

 

 擬似ダンジョン領域を復活させ、黒鉄ゴーレムを送還する。

 というか、やっぱり黒鉄ゴーレム強いな。

 もうちょっと増やしておこう。

 

 ついでに、ゴブリンどもの死体を還元。

 少しはDPの足しになった。

 実験も終わったし、先に進むとしよう。

 

 

 そうして先へと進んでいる内に、今度は別のモンスターを発見した。

 デカイ狼だ。

 体長3メートルくらいある。

 それと、地味にダンジョン産のモンスター以外で、ゴブリン以外のモンスターを初めて見た。

 鑑定っと。

 

ーーー

 

 キラーウルフ Lv18

 

 HP 200/200

 MP 20/20

 

 攻撃 154

 防御 81

 魔力 10

 魔耐 33

 速度 189

 

 スキル

 

 なし

 

ーーー

 

 大体、ホブゴブリンと同じくらいか。

 今の私にとっては雑魚だし、オートマタにとっても雑魚だ。

 でも、キラーウルフはこっちに興味がないみたいだった。

 というより、他の事で忙しい。

 

 このキラーウルフ、現在進行形で人間を襲っているのだ。

 

「助けてぇえええええ!」

 

 情けなく悲鳴を上げてるのは、商人みたいな格好した一人の男。

 年齢的には私と同い年くらいに見えるから、少年と言うべきか。

 その背中に、やたらと大きいリュックサックみたいな物を背負ってた。

 鑑定っと。

 

ーーー

 

 人族 Lv8

 名前 リック

 

 HP 50/50

 MP 7/7

 

 攻撃 21

 防御 25

 魔力 1

 魔耐 8

 速度 50

 

 スキル

 

 なし

 

ーーー

 

 弱い。

 キラーウルフよりも尚弱い。

 上にのし掛かって噛みつこうとするキラーウルフの牙を、護身用と思われるナイフで防いで何とか生き残ってるみたいだけど、このままなら、あと数秒で死ぬと思う。

 

「助けてぇえええええ!」

 

 さて、どうするか。

 人間なんて助ける価値もない生き物だし、見殺しにしても何ら問題はない。

 ……でも、実は奴を助ける事によるメリットもあるんだよなぁ。

 何せ、今の私(オートマタ)は人里がどこにあるのか知らない、いわば遭難状態。

 奴を助けて道案内でもさせれば、人里に辿り着ける可能性は高いだろう。

 

 はぁ……仕方ない。

 助けるか。

 役に立たなかったら、DPの足しにしてやればいいし。

 

 そういう訳で、私はオートマタをキラーウルフに向けて突撃させた。

 人前でダンジョンに関わる能力は使いたくないから、モンスター召喚とかは使わない。

 代わりに剣を抜き、盾を構える。

 

「ガァアアア!」

 

 接近するオートマタに気づいたのか、キラーウルフがリックとやらを放置して、こちらを振り向き吠えた。

 

 その首を、一切の抵抗を許さずに剣で斬り飛ばす。

 

 キラーウルフのステータスは、高いものでもせいぜい150程度。

 対して、オートマタの物理ステータスは1500。

 勝負になどならない。

 

 キラーウルフが死んだ事で、微量のDPが入ってきた。

 オートマタは、私の操作で剣の血糊を払い、鞘に納める。

 リックとやらは呆然としながらそれを眺めていた。

 

 私は、オートマタをリックとやらに近づける。

 

「大丈……」

「うぉおおお! 助かった! あんた強いな! 助けてくれて、ありがとう!」

 

 オートマタの言葉を遮ってリックとやらが叫び、手を握って上下にブンブンと振り回した。

 貴重なオートマタの第一声を遮るとか……殺しちゃおっかな。

 ボディタッチとかも、本体にやられてたら死刑確定の重罪だし。

 

「あ……」

 

 私が処刑方法を考えはじめた次の瞬間、(オートマタ)の顔を間近で見たリックとやらの顔が赤くなり、慌てて手を離した。

 ……ああ、異世界でもそうなのか。

 世界が違えば美的感覚も違うかもと少し期待してたのに。

 どうやら、この世界でも私の顔は美少女らしい。

 げんなりとした。

 

「ご、ゴホン! 改めて、助けてくれてありがとう。

 俺は旅商人のリックって言うんだ。あんたの名前を聞いていいか?」

 

 名前……名前か。

 別に隠す必要もないかな。

 偽名とか考えるのも面倒だし。

 

「マモリ」

「そっか、マモリか。不思議な感じの名前だな」

 

 不思議なのか。

 いや、考えてみれば、いかにも外国人風の名前が多い中で、日本人の名前は普通に目立つか。

 まあ、不思議って程度で違和感を抱く程じゃないみたいだし、気にしなくてもいいかもしれないけど。

 

「マモリは何でここに……って聞くまでもなかったな。

 その格好に、その腕前。どう考えても冒険者だし、大方、近頃物騒な魔物が出るっていうマーヤ村で依頼を受けたってところか」

 

 なんか、勝手に勘違いし始めた。

 そして今、私が求めていた情報がさらっと出たな。

 マーヤ村とかいうのが近くにあるらしい。

 というか、物騒な魔物が出るんだ。

 ……もしかしなくても、ゴブリンどもが誘拐してた女って、その村の住人かな?

 だとしたら元凶はもう死んでる。

 死んで、私の手駒になってる。

 

 あと、前々から思ってたけど、この世界ではモンスターの事を魔物って呼ぶんだね。

 うっかり、人前でモンスターって言わないようにしよう。

 

 それはそれとして。

 とりあえずリックとやらの勘違いは正さないと、村に連れて行ってもらえないかもしれない。

 という事で、私はオートマタの首を横に振り、口を開いた。

 

「違う」

 

 オートマタの声は、無生物らしく感情が欠片も籠ってない平坦なもの。

 それでも、クール系と言えばギリギリ通るくらいには人間っぽい。

 その言葉を聞いて、リックとやらはキョトンとしていた。

 

「道に迷っただけ。村の場所がわからない」

 

 そう言うと、リックとやらはポカンとした後、

 

「ぷ、あはははははは!」

 

 爆笑し出した。

 殺すぞ、こら。

 

「あんた、あんなに強いのに方向音痴なのかよ! 冒険者として致命的じゃねぇか! 笑える!

 まあ、うっかりキラーウルフに襲われた俺が言えた事じゃねぇけど」

 

 なら、そのツボにハマったとばかりの大爆笑をやめろ。

 殺すぞ。

 

「わかった! 命の恩に報いる為にも、あんたの事は俺が責任持って村まで送り届けてやる!」

 

 ……チッ。

 最初からそうしろ。

 余計な口叩きやがって。

 

 そうして、私は何とか人間の村へ行く算段をつけた。

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