殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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44 奴隷購入

「こちらでございます、お客様」

「はい」

 

 通りすがりの男に場所を教えてもらった場所、奴隷の買える奴隷商館とやらに足を運んだ(オートマタ)は、待合室みたいな場所で待たされた後、個室に案内された。

 

 今回、私が奴隷を買おうと思った理由は簡単だ。

 前に、生前の不死身ゾンビが奴隷を連れてたのを見たから知ってるけど、この世界には奴隷紋という不思議なシステムがあり、奴隷は主に逆らえない。

 もしかしたら、私が知らないだけで奴隷紋を強制的に解除する方法もあるのかもしれないけど、それでも基本的には逆らえない。

 それは、ゴブリンに対する囮になれという、実質死ねと言われているに等しい命令に逆らえなかった、剣士の女の存在が証明している。

 

 つまり、奴隷は口封じがとても簡単なのだ。

 普通に命令するだけで口をつぐむだろうし、いざとなったら自殺でも命じれば、物理的に口が塞がる。

 死人に口なし。

 数多の連中を殺して口封じしてきた私が言うんだから間違いない。

 たとえゾンビになろうとも、死人は情報を喋らないのだ。

 

 そして、そんな奴隷相手になら、いくら怪しまれても問題はないという事。

 例えば、この世界の人間なら知っていなければおかしい常識とかを聞いても問題ない。

 でも、これを他の奴に聞いたらどうなる?

 日本で言うなら「この星の名前って何でしたっけ?」と聞くようなものだ。

 こいつ頭おかしいんじゃないかとは確実に思われるだろう。

 よって、私には奴隷が必要なのだ。

 

 懸念は、オートマタと四六時中一緒にいる人間の存在に、私の精神が耐えられるかだけど。

 大丈夫。

 奴隷は人間じゃないからセーフ。

 奴隷は人間じゃないからセーフ。

 よし。

 自己暗示完了。

 

 そうして、私が自己暗示を完了させた時、個室の扉がコンコンとノックされて、そこから小太りの男が現れた。

 背後には護衛を連れている。

 一応、鑑定。

 

ーーー

 

 人族 Lv1

 名前 ジョルジュ

 

ーーー

 

 ステータスは弱すぎたので省略。

 ただし、演算能力のスキルを持ってたから、無能ではないと思われる。

 やっぱり、このスキルは戦闘系のスキルではないのかもしれない。

 ちなみに、護衛の方も鑑定したら、平均ステータス600くらいで、そこそこ強かった。

 生前の中年ゾンビよりちょい下くらいと考えると、その強さがよくわかる。

 まあ、その程度じゃ、黒鉄ゴーレムにすら勝てないんだけど。

 

「お待たせいたしました。この度はアビントン商会へようこそ。本日はどのような奴隷をお望みですかな?」

 

 ジョルジュとかいう奴隷商人が、ニコリと笑ってそう言った。

 うぇえ……ガマガエルみたいで気持ち悪い。

 客商売してるなら、もう少しどうにかならなかったんだろうか?

 

「魔法を使える奴隷をお願いします」

 

 しかし、そんな事は一切顔に出さず(そもそも、オートマタの上に仮面つけてるから、顔に出る訳がない)私は要望を口にした。

 どうせなら、これを機に魔法の覚え方まで奴隷に聞いてしまおうという魂胆だ。

 

「ほほう、なるほど、なるほど。

 お見かけしたところ、お客様は冒険者様のようですし、戦闘のできる後衛をお探しですかな?」

「まあ、そんなところです」

 

 今回の勘違いは正さなくていいや。

 商人相手に細かい事情を話す必要はない。

 

「ご予算の方は?」

「そこそこで」

「なるほど。では、他にご要望などはありますかな?」

「では、なるべく色んな事を知っている奴隷を」

「かしこまりました。では、候補を連れて参りますので、少しお待ちください」

 

 そうして、奴隷商人は部屋から出て行った。

 部屋の中には、オートマタと、この個室に案内した男だけが残される。

 こいつも鑑定してみたけど、平均ステータス25くらいだった。

 リックとやらと大して変わらない雑魚。

 オートマタの敵ではない。

 

 そんな雑魚を一応警戒しつつ、暇潰しにボス部屋で戦闘訓練をして時間を潰す。

 相手は不死身ゾンビだ。

 こいつは他のゾンビと違って即座に自動回復するから、サンドバッグにちょうどいい。

 

 そうして遊んでる内に、奴隷商人がボロい服を着た何人かの人間を連れて戻ってきた。

 インテリっぽい男。

 目付きの悪い女。

 色々いる。

 でも、その中に一際目を引く存在がいた。

 

ーーー

 

 ハーフエルフ Lv14

 名前 リーフ

 

 HP 65/65

 MP 220/220

 

 状態異常 奴隷

 

 攻撃 8

 防御 16

 魔力 180

 魔耐 30

 速度 24

 

 スキル

 

 『風魔法:Lv5』『回復魔法:Lv4』

 

ーーー

 

「エルフ?」

「はい。エルフの少年です。まあ、混血ですがね。

 それでも、人族国家のこの国では珍しいでしょう?」

 

 そこにいたのは、小学校高学年くらいの見た目をした、中性的なハーフエルフ。

 気になって説明を求めてみれば、そんな答えが返ってきた。

 というか、普通の人族以外の人間いたのね、この世界。

 今まで見なかったのは、奴隷商人の言う通り、この国が人族国家とやらだからだろう。

 詳しい事情はわからないけど、想像くらいはできる。

 

 その直後、奴隷商人がハーフエルフに変な石ころ、鑑定石を握らせ、ステータスを開示させた。

 自前の鑑定機能がある私には必要ないけど、普通の奴が奴隷を購入するなら必要な手順か。

 

「ご覧の通り、魔法に秀でたエルフの血が入っている為、魔力系のステータスは、Lvの割にかなり高めとなっております。

 加えて、長寿な事で知られるエルフですから、見た目以上には生きており、その分、見識もそこそこ広いと言えるでしょう。

 かつては、冒険者であった父親と様々な国を渡り歩いていたそうですしね」

「ほう」

 

 奴隷商人の説明に相槌を打っておく。

 戦闘に使う気はないから、ステータスはどうでもいい。

 ただ、色んな国を渡り歩いた、つまり色んな国を知ってるってところには魅力を感じる。

 悪くないかも。

 

「戦闘にも使えますし、この見た目ですから愛玩用に使ってもいい。

 ただ、既にそういう目的で使われた後、再び売りに出された奴隷ですので、いわゆる中古品です。

 それを差し引いても、おすすめの商品ですよ」

「なるほど」

 

 確かに、このハーフエルフ、かなりの美形だからな。

 ◯◯◯(ピー)に使われてもおかしくない。

 でも、美少年というより美少女に近い見た目だから、女じゃなくて男の性処理に使われた可能性も高い。

 つまり掘られたと。

 ……いや、そんな事は凄まじくどうでもいいな。

 なんで私は、こんなどうでもいい事を考えてるんだ。

 思考がゴブリンに侵食されたのか?

 うわ、嫌な想像しちゃった。

 

「それでは、他の商品の説明に移らせていただきます」

 

 

 その後、他の奴隷の説明も受けたけど、目ぼしい奴はおらず、最終的にはこのハーフエルフを購入する事となった。

 見た目的に、視界に入れた時の不快感が一番マシだったっていうのが最大の理由だ。

 私は人間を視界に入れるだけで不快感を覚えるから、オートマタの体とはいえ、ずっと一緒にいる相手の外見は大事である。

 精神衛生上の問題で。

  

 まあ、それはともかく。

 こうして、私は奴隷という道具を手に入れたのだった。


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