殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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55 王都到着

 魔法を鍛えている間に馬車の旅は終了し、この国、ウルフェウス王国の王都へと辿り着いた。

 今回は、乗り合い馬車に払った代金の中に通行料も含まれてるので、門の前で「お前、冒険者じゃないんかい」問答もなかった。

 あれ、めんどくさいから、回避できてよかった。

 

 そうして辿り着いた王都は、なんというか騒がしい。

 まるでお祭りでもあるかのように、住人達が浮わついてるような気がする。

 

 まあ、それはともかく。

 これから落とす国の首都に着いた訳だし、最初にやるのは情報収集だな。

 敵戦力の把握は急務だ。

 

「リーフは、王都に来た事があるんだよね?」

「はい。何度か」

「じゃあ、この国で一番強い人が誰か知ってる?」

 

 王国最強とかなら、有名人になってそうだし、リーフでも知ってるかもしれない。

 

「それなら、騎士団長のアイヴィ様と、宮廷魔導師のランドルフ様が有名です。

 どちらも、魔王軍幹部に引けを取らない、王国の守護者だと言われています」

 

 ん?

 アイヴィはともかく、ランドルフ?

 はて、どこかで聞いたような……ああ、爺ゾンビの名前だ。

 あいつ、この国の最高戦力だったのか!?

 いや、確かに魔法系ステータスならゴブリンロード超えてたし、それくらいの有名人でも不思議はないのか。

 

 そんな奴に攻められて、よく生きてたな私……。

 あの時は、ゴブリンロードと討伐隊が上手くぶつかって弱体化してくれたからよかったものの、万全の状態で戦う事になってたらと思うとゾッとする。

 そこは運が良かった。

 そこだけは運が良かった。

 

 さて、そうなってくると、私は既にこの国の最高戦力の一角を落としている事になるのか。

 なら、割と簡単に国を滅ぼせる……なんて甘い話はないだろう。

 まだ生前の爺ゾンビに匹敵する奴が一人残ってるし、そもそも私が爺を殺せたのは、ダンジョンという私のホームグラウンドで戦って、しかも運良く爺が弱体化してたからだ。

 地の利もなく、状況的有利もなく、リビングアーマー先輩もいない状態で、あれに匹敵する化け物を倒せる気はしない。

 

 おまけに、一般兵士とか、討伐隊にいたような精鋭とかもまだ残ってるんだろうし。

 まともに正面から戦っても勝ち目ないな。

 街中でテロでも起こして一撃離脱とか、そういう搦め手を使えば、それなりにダメージは与えられそうだけど。

 幸い、こっちには爺ゾンビをはじめとした、ダンジョン外でも動かせる戦力がそれなりにいるし。

 

 クゥ~

 

 と、そこまで考えた時、オートマタの隣からそんな音が聞こえた。

 発生源はリーフだ。

 どうやら、お腹が空いたらしい。

 

「食堂にでも入る?」

「す、すみません!」

「謝る必要はない」

 

 お腹が空くのは生理現象だ。

 それに、私は奴隷を虐待する趣味はない。

 空腹で足手まといになっても困るし、ご飯くらい、ちゃんとあげるわ。

 ある意味、ペットみたいなものだしね。

 

「どこか知ってる食堂はある? できれば宿屋もかねてる所」

「は、はい! こっちです」

 

 リーフはトテトテと走って行った。

 オートマタに、早足でそれを追いかけさせる。

 そうして辿り着いたのは、まあ、どこにでもありそうな一軒の食堂。

 この世界の食堂のデフォルトは知らないけど、この店にはあんまり特徴がないって事はわかる。

 

「前のご主人様に連れられて来た事があって。あのクソ野郎……変態……あの人といた中で、唯一良かったと思えたのが、このお店の料理の味なんです!」

 

 リーフの言葉に、そこはかとない闇を感じる。

 やっぱり、前の飼い主に恵まれてなかったらしい。

 まあ、飼い主に恵まれてないのは今も同じだけど。

 それでも、私は変態プレイをしないだけマシだと思う。

 

 あと、私が真面目に仕事したら、多分、この店も更地になると思うんだけど、リーフはそこら辺わかってるんだろうか?

 

「いらっしゃいませ~。お好きな席にどうぞ~」

 

 そんな微妙な気分で店に入ると、看板娘っぽいのがチェーン店みたいな台詞を言ってきた。

 どこの世界でも似たようなものはあるんだなー。

 そんな気持ちで適当に席に座る。

 リーフがそわそわした様子でメニューに目を通した。

 どうやら、この世界の食堂は、壁に料理の名前が書かれた札が垂れ下がってるらしい。

 ラーメン屋か!

 そして、なんかリーフが待てをされた犬みたいな目で私を見てくるんだけど。

 どうした?

 

「別に、好きな物頼んでいいよ」

「え!? いいんですか!?」

 

 そんなに驚く事か?

 まあ、奴隷の扱いと考えたら、かなり良心的な方か。

 ここら辺、現代日本との感覚の違いを感じる。

 

 で、私によしと言われたリーフは、なんかお子様ランチみたいな料理を頼んだ。

 私も何か頼まないと不自然なので、適当に小物を注文。

 どうせ、オートマタの口に入ったら還元するんだから、どんな料理でも変わらない。

 料金は先払いだったので、ついでに宿屋もかねてるここに宿泊する分の代金も支払っておいた。

 とりあえず、10日分だ。

 

 そして料理が運ばれてきた。

 リーフは何とも嬉しそうな顔で、エルフの長耳をピョコピョコとさせながら、お子様ランチを食べ始める。

 ……なんか、前に家で飼ってた猫のクロスケを思い出すなぁ。

 大好物のかつお節を貪る時のクロスケが、ちょうどこんな感じだった。

 あいつは私が心を許せる貴重な奴で、寿命で死んだ時は大泣きしたっけ。

 

「美味しい?」

「はい!」

 

 そんなクロスケを思い出したからだろう。

 私はリーフにそんな言葉をかけていた。

 人間なんて大嫌いなのに、リーフはそうでもないな。

 やっぱり、ペット枠という事だろうか?

 

 そんな事を考えながら、仮面をズラしてオートマタの口へと料理を運ぶ作業をしていた時、ふと近くの客が話している声が聞こえた。

 聞いてしまった。

 

「とうとう明日か、勇者様のお披露目式は」

「これで、これでやっと戦争が終わる……!」

「ああ、お前の息子、戦場に行っちまったからな」

「早く勇者様が魔王を倒して、帰ってくるといいな」

「ああ!」

 

 そんな、聞き捨てならない会話を。

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