殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~ 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「はい。起きています、魔王様」
「ふむ。そろそろ落ち着いたかの?」
「はい」
神道逃走ショックからは、とうに立ち直ってる。
というか、それに配慮して今まで連絡してこなかったんだろうか?
……魔王が意外と良い上司だ。
絶対に殺せると確信するまで、クーデターは起こさないでおこう。
「それは何よりじゃ。では、これからの作戦を伝える。よいな?」
「はい」
「よろしい。では、まず状況説明からじゃ」
そうして、カオスちゃん人形の腕の中に、丸まった紙みたいな物が現れた。
大きな紙だ。
カオスちゃん人形よりも遥かに大きい。
それを、ミニ玉座から降りたカオスちゃん人形が床に広げていく。
サイズ的に、なんか作業が大変そうだったので、マモリちゃん人形にも手伝わせる。
お人形さん二人が、えっさほいさと動く様を見ていて、不覚にもちょっと和んだ。
そんな苦労を経て、紙は床に広げられた。
そこに描かれていたのは、地図だった。
しかも、今まで私が入手してきた国や街の周辺の地図と違って、これは多分世界地図。
そして、その半分近くが黒く塗り潰されている。
「さて、わかるかもしれんが、これはこの世界の地図じゃ。
そして、黒く塗り潰してあるのが、我ら魔王軍が既に滅ぼした国じゃな。
で、現在地であるウルフェウス王国がここ。
目的地であるエールフリート神聖国が、ここじゃ」
そう言って、カオスちゃん人形は二つの国を指差した。
片方は、黒い国と隣接する位置にある、そこそこ大きい国。
もう片方は、地図の中で一番大きい国。
そっちには赤丸がついてる。
これがエールフリート神聖国か。
「知っての通り、今回の戦いにおいて、我らはウルフェウス王国の首都を落とした。
こうなれば、この国全体もまた落ちたも同然じゃ。
まあ、国というものは案外しぶといもので、頭を潰しても、しばらくは動くんじゃがな。
しかし、ドラグライトを王都に残してきた。
外からの魔王軍本隊。内からのドラグライト。
この挟撃によって、遅くとも数ヶ月あれば、この国は完全に滅びるじゃろう」
カオスちゃん人形が、どこからか現れたペンとインクを使って、地図に描かれたウルフェウス王国を黒く塗り潰す。
両手でペンを握ってぬりぬりする姿を見て、不覚にもちょっと可愛いと思ってしまった。
「さて、あとは見ての通りじゃ」
「なるほど。最短で、あと三つ国を落とせばエールフリート神聖国に進軍できますね」
「左様!」
……思ったより魔王の計画って進んでたんだね。
急いで強くならないと。
「それで、作戦なんじゃがな。
お主には、今回のように国の内側へと潜入し、内部から滅ぼしてほしいのじゃ。
これは他の脳筋どもにはできん仕事じゃからのう」
「わかりました」
そうなると、まずは情報収集して、潰せそうなところを潰しながら、コツコツとやろうか。
私には、全力で魔王の為に尽くしてやる義理はないんだし、国落としタイムアタックに挑戦する必要はない。
不興を買わない程度に働いて、残りの労力は自分の強化の為に使おう。
「それとな。国三つ落とせば進軍経路は開けるが、それはあくまでも最低限じゃ。
万全を期し、全軍を持って奴らの本拠地を包囲するには、進軍経路は他にもいくつか開いておきたい。
まあ、それは他の幹部の仕事なんじゃが。
とにかく、国三つ落としたら、即最終決戦とはいかないとだけ覚えておれ」
「はい」
それは、よかった。
準備期間は長ければ長い程いい。
「ああ、それと、我は基本的に最前線での戦いに専念しておるからの。
余程の事でもない限り、今回のような助力は期待せんでくれ」
「わかりました」
要するに丸投げね。
まあ、自由行動を許されたと思っておこう。
その時間で、できうる限り牙を研ぐ。
「では、これにて話は終わりじゃ。
健闘を祈るぞ、マモリよ」
「はい」
「それと、その地図はお主にやろう。
では、さらばじゃ!」
そうして、カオスちゃん人形はミニ玉座に飛び乗った後に停止した。
さて、じゃあ私も行動開始といこうか。
私は、モニター越しにカオスちゃん人形が残していった地図を見る。
次の標的は、ウルフェウス王国の隣国。
アワルディア共和国だ。