殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~ 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
魔王との通信を終え、早速、準備を整えてアワルディア共和国へ向けて旅立つ。
もちろん、本体ではなくオートマタが。
本体は、今日も元気に引きこもりだ。
私は引きこもり道を極めるのだ!
そして、遠征に向けて用意する物を確認する。
まずは、装備とかの冒険者セット一式。
リーフの意見を参考にして揃えたやつが、収納の魔道具の中に入ってるから問題ない。
次に、ボルドーの街から回収してきた馬車。
前に王都へ行く時に使ったやつだ。
破損を想定して、停留所に停まってたやつを全部奪ってきた。
今回はその中の一台を使う。
だが、ここで問題発生。
馬車はあっても馬がいない。
というか、たとえ馬がいたとしても、私は馬術なんてできない。
これに関してはリーフも同じだ。
高機能型
という訳で、馬の代わりを用意した。
使うのは、ウチのダンジョンの中でリビングアーマー先輩の次に足が速い、剣ゾンビ。
こいつに人力車よろしく、馬車を引いてもらう。
比喩でもなんでもなく、馬車馬のように働いてもらおうではないか。
それと一応、剣の顔知ってる奴対策に顔は隠しておこう。
ついでに、先生ゾンビも馬車に乗せておく。
先生ゾンビの《テレポート》は一度行った場所にしか飛べないから、その範囲を広げる為の処置だ。
そうして準備は完了し、出発と相成った。
「じゃあ、行くよ」
「はい。……でも、その、あの人はあれでいいんですか?」
「気にしなくていい。ただのゾンビだから」
「え!?」
同行者のリーフを驚愕させながらも、馬車は発進。
凄い速度で道を走る。
しかし、この辺りは街の近辺と違って、そこそこに舗装された道なんてない。
つまり、揺れる。
王都に行った時とは比較にならないくらい揺れる。
「うっぷ……!」
私は例によってオートマタ視点のモニターを切ってたからいいけど、リーフはこの揺れにやられたらしい。
俯瞰視点モニターで見ると、馬車酔いで顔が真っ青になっていた。
吐かないでよ?
「辛いなら、ダンジョンで待っててもいいけど?」
「……いいえ、ご一緒させてください。その、一人でいるのは寂しくて…… 嫌な事思い出すし……」
あまりに辛そうだったから、ダンジョンに送り返して後で転送しようかと思ったんだけど、なんか涙目でオートマタの服の裾を掴みながらそう言ってきたので、このまま連れていく事にした。
ペットのメンタルケアは大事だからね。
本人が望んでるなら、まあ、多少は希望を聞いてやらんでもない。
でも、くれぐれも吐かないでよ?
「きゅう……」
結局、その後まもなくしてリーフは気絶した。
運のいい事に、ちょうどオートマタの膝の上に倒れ込んできたよ。
膝枕だ。
本体なら絶対にやりたくないけど、オートマタでリーフ相手なら、まあ、いいかと好きにさせておいた。
どうせ、気絶してるしね。
そして、なんとなく頭を撫でておいた。
そんなこんなで、馬車の旅を続ける事、数日。
普通の馬より遥かに速いウチの
もちろん、街に入る前に、目立つ馬車は馬ごとダンジョンに送り返してある。
そして、フラフラなリーフを連れて、街の中へ。
今回は門で冒険者カードを提示したところ、驚いた事に顔を確認されなかった。
それだけ冒険者ギルドの信用は厚いって事だろうか。
まだ手配書は出回ってないだろうと思って正面から行ってみたけど、結果として貴重な情報が手に入った。
で、街の様子だけど。
ここら辺は、まだ自国の王都が壊滅したって知らせがきてないみたいで、平和そのものだ。
多分、近い内にドラゴン率いる軍勢に蹂躙されるんだろうなー、と思う。
ちなみに、ここに来るまでの間に、いくつかの街や村を見かけたけど、慈悲深い私は滅ぼさずに放置しておいてあげた。
滅ぼしたら騒ぎになりそうだし。
そうなったら穏便な国境越えができない。
それに、手配書が出回るのは時間の問題だと思って急いでたっていうのもある。
そうして何事もなく街を抜け、再び馬車馬を走らせる。
今度は一日もしない内に、関所のような砦が見えてきた。
そこも冒険者カードの力で押し通り、アワルディア共和国の領地に入る。
王都壊滅の報せが来てたら、こうもスムーズにはいかなかっただろう。
その後も馬車馬を走らせる内に、次の街が見えてきた。
あれが、アワルディア共和国側の国境の街。
今回の最初のターゲット。
前の街で買ってきた地図によると、その街の名前は、
━━貿易都市バロム。