殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~ 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
リーフを引き連れて、というより、前にもこの街に来た事があるらしいリーフに案内されて、冒険者ギルドまでやって来た。
当面の目的は、ここでの情報収集というか、状況の推移を見守る事。
それに伴って、いざという時の為に多少は影響力を持っておきたい。
具体的には、これから始まる戦争に付いて行っても違和感ないくらいには。
そうすれば、戦場でヒャッハーする事もできそうだし。
という事で、しばらくは真面目に冒険者活動をしようと思う。
もちろん、その裏では暗躍しまくるつもりだけどね。
手始めとして、今夜辺り、先生ゾンビに護衛を付けて、馬車でこの国の首都に向かわせる。
そこにテレポートできるようにしておいて損はない。
また馬車馬の用意をしておかないと。
その後は、さっき買った地図を基に、近隣の村や街への先生ゾンビの派遣かな。
そんな事を考えている内に、オートマタはボルドーの街にあった冒険者ギルドとよく似た建物へと辿り着いた。
「着きましたご主人様。ここがこの街の冒険者ギルドです」
「うん」
目の前の建物は、ボルドーの街の冒険者ギルドよりも随分大きかった。
さすが、栄えてる街というべきか。
どことなく田舎っぽかったボルドーの街とは違う。
私は、そんな冒険者ギルドへとオートマタを踏み込ませる。
途端に向けられる、荒くれ者っぽい男どもの視線。
冒険者には嫌な思い出しかなかったけど、たった今、更に好感度が落ちた。
ぶち殺すぞ、こら。
「ご主人様、こっちです」
来るべき時には全員殺してやると固く誓いながら、リーフの案内で依頼書の貼られている掲示板へと向かう。
冒険者の仕事は、基本的に、この掲示板に貼られてるような依頼書を受付に持って行って受理されるらしい。
ラノベとかに出てくる冒険者ギルドと大体同じだ。
わかりやすい。
そこ
そうして、掲示板に貼られている依頼を吟味する。
この依頼にも、冒険者ランクと同じくF~Sまでのランクがあって、冒険者は自分のランク以下の依頼しか受けられないらしい。
これまた、ラノベでありがちなシステムだ。
まあ、実力のない奴に危険な依頼を任せても死ぬだけだろうし、妥当なシステムと言える。
私の目的は冒険者ギルドに溶け込んでの情報収集なので、別に依頼に拘るつもりはない。
適当にCランクの依頼を掲示板から剥ぎ取る。
豚の魔物、オークの群れの討伐依頼だ。
これなら簡単そうだし、多少はDPと経験値の足しにもなるだろう。
ちなみに、ここでは目立たないようにC級の冒険者カードを使うつもりなので、いきなり難易度の高い依頼をこなして注目を浴びるテンプレ主人公のような真似をする気はないとだけ言っておく。
そして、その依頼書を受付に持って行こうとした時、事件は起こった。
「おっと、お嬢さん方。たった二人でその依頼を受けるのはやめといた方がいいんじゃねぇか?」
長髪の、なんとなくチャラい男が、髪をかきあげながら話しかけてきた。
当然、無視する。
無視して受付に歩いていく。
「おいおい、待てって。話くらい聞いてくれてもいいだろう?」
受付の列に並んだら、そこにチャラ男も付いて来やがった。
ナンパみたいで、とてもウザイ。
人目と目的がなければ、即座に殺っているレベルだ。
でも、これから周囲に溶け込もうってところで騒ぎを起こすのは得策じゃない。
でも、こういう奴は生理的に受け付けないので、話すのも嫌。
となれば、残る手段は一つ。
オートマタはリーフの肩を軽く叩いた。
「任せた」
「ええ!?」
私はリーフに丸投げした。
任せたぞ万能ペット。
頼りにしてるから。
「ええっと、この依頼をやめといた方いいっていうのは?」
「なぁに、簡単な話さ。お嬢ちゃん達、見たとこせいぜいC級だろ?
知っての通り、依頼のランクってのは
たった二人で、その依頼を受けるのは無茶ってもんだ」
そんな事は知ってる。
リーフから聞いた。
だからこそ、その行為が言う程無茶って訳じゃない事も知ってる。
一概にCランクって言っても、依頼の難易度にも、冒険者の実力にもムラがある。
D級から上がりたてのC級と、B級に昇格間近のC級は全然違う。
それに、ランクに見合わない実力者だっている。
だからこそ、私達がこの依頼を受ける事を、無茶だと決めつける事はできないのだ。
なのに、このチャラ男が、わざわざ私達に声をかけた理由。
ナンパに決まってる。
相手する必要なし。
「だからさぁ、頼れるB級冒険者である、この俺が一緒に……」
「次の方どうぞ」
「はい」
「おい! 聞けや!」
話の途中で受付嬢に呼ばれたので、歩みを進める。
だが、そこで奴は許されざる行動に打って出た。
なんと、オートマタの肩に手を伸ばして、無理矢理止めようとしたのだ!
いくら遠隔操作の人形とはいえ、この私に無許可で触れるなど、万死に値する!
むろん、伸ばされた手を速攻で握り潰し、捻り上げた。
「がぁああ!? いてぇ!?」
「気安く私に触れるな下郎」
このまま折ってやる。
こいつのステータスは、せいぜい生前の中年ゾンビと同じか少し下。
その二倍のステータスを持つオートマタには勝てない。
骨折して不様に失禁するがいい。
「ご、ご主人様! それ以上は!」
と、そこでリーフの声が聞こえて、私は少し冷静さを取り戻した。
オートマタの目で周囲を見回してみれば、冒険者どもが好奇の目でこっちを見ている。
……やり過ぎたかな。
さすがに、このまま折ったら危険人物認定されるかも。
私はしぶしぶ、本当にしぶしぶ、チャラ男の手を離した。
「これに懲りたら、二度と私に話しかけないで」
「クッソ……! このクソ女が! 覚えてやがれ!」
三下か。
そうツッコミたくなるような捨て台詞を残して、チャラ男は去って行った。
まったく。
冒険者ギルドで柄の悪い冒険者に絡まれるとか、どこのテンプレ主人公なんだか。
はぁ……。
それにしても、初っぱなからやっちゃったなぁ。
後悔はしてないけど、ミスった自覚はある。
先が思いやられるわ。
「行こう」
「あ、はい!」
そんな憂鬱な気分を抱えながら、オートマタとリーフは改めて受付カウンターに向かった。