殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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84 偵察任務

「ふむふむ。周囲に強い魔物はいにゃいね。行くにゃん」

 

 猫耳が猫耳をピクピクとさせながらそう言いながら先に進み、オートマタを含めた他の冒険者が後に続く。

 猫耳は猫の獣人だけあって、やっぱり耳が良いらしい。

 それに加えて、長年の冒険者生活で培った危険察知能力がある。

 斥候としては右に出る者なし。

 この分野ならS級にも負けない。

 と、本人が言っていた。

 つまり自称だ。

 それでも、他の冒険者が黙って従う程度には、その能力を信頼されているっぽい。

 

 そんな感じで、偵察部隊は猫耳を中心に索敵を行い、基本的に全ての戦闘を避けて先に進んだ。

 そして、数日をかけて調査範囲を広げ、遂に魔物の群れを見つけ出す事に成功する。

 場所は、普通に馬車を走らせた場合、国境の砦から一日もしない距離にある一つの街。

 ウルフェウス王国側の国境の街だ。

 

 いや、正確には街だった物(・・・・)と言った方がいいかな。

 何せ、その街は魔物の群れによって破壊され、占拠され、見るも無惨な姿に変えられているんだから。

 

「これは……」

「いくらなんでも……」

「惨いにゃん……」

「クソッ、魔物どもめ……!」

 

 その光景を見て、偵察部隊は各々の感想を漏らす。

 当然、できうる限り小声で。

 さすがに、ここで激昂して突撃していくバカはいないらしい。

 

 それにしても、これは本当に酷い。

 私も都市の破壊と大量虐殺には一家言あるから言えるけど、この街は計算の基に破壊された訳じゃない。

 野生のモンスターが、ただただ本能のままに踏み潰しましたって感じだ。

 その証拠に、大量の血痕と死体で汚れた街の中を、色んな種類の魔物が好き放題に闊歩している。

 ゴブリンやオークが廃墟の中で女を犯し、キラーウルフとかが人間の残骸をムシャムシャと貪り、それどころか魔物同士で共食いまで発生してるこの光景は、軽く地獄だ。

 別に同情とかはしないけど、スマートじゃない殺り方だとは思った。

 

 そして、そんな地獄と化した街の中を、偵察部隊は慎重に進んで行く。

 気配を消し、特殊な靴で音を隠し、魔物の匂いを体に擦り付けて匂いを誤魔化す。

 そうやって、細心の注意を払いながら進み、調査を進めていく。

 

 その結果、わかった事がいくつかある。

 

 まず、魔物は街全体に蔓延る程の数がいるという事。

 具体的に数字で表すと、数千ってところかな。

 滅茶苦茶多い。

 数だけなら、ウチのダンジョンの全戦力より上だ。

 これだけの数が一つの街にいるって事は、多分、魔王軍本隊の一部が合流したんだと思う。

 

 次に、魔物の質。

 殆どはゴブリンだのオークだのの雑魚ばっかりで大した事ないけど、たまにゴブリンチャンピオンとかの大物が交ざってる。

 比率としては、雑魚9、大物1くらいの割合かな。

 そう言うと少なく感じるけど、実際は数千という大群の中の一割だから、ステータス1000を超えるのが数百体はいる事になる。

 一つの街だけでこれって、魔王軍は本当に恐ろしい。

 

 そして、最後に。

 この群れを率いるボスこと、魔王軍幹部の存在を確認できた。

 言わずもがな、前に一緒に仕事したあのドラゴンだ。

 悠々と街の中心で昼寝してやがった。

 怠け者め。

 

 でも、怠け者とは言え圧倒的強者であるドラゴンを目にして、偵察部隊は絶句。

 鑑定が使えなくても、さすがにドラゴンと自分達との圧倒的な戦力差くらいは理解できるらしい。

 どこぞの勇者とは大違いだ。

 

 そんな、自分の力量くらいは弁えてる偵察部隊は、猫耳の指示の基、即座に撤退を開始。

 ……さて、それじゃあ。

 

「そろそろ仕掛けようか」

 

 私は居住スペースで一人呟き、ダンジョン内のゾンビ二体へと指示を出した。

 一体は先生ゾンビ。

 テレポートを使い、もう一体のゾンビを街へと転送する。

 この街は国境越えの時に通過した街だから、先生ゾンビの転送先に登録されているのだ。

 これの利点は、擬似ダンジョン領域での転送機能と違って、オートマタから離れた位置へと送れる事。

 

 そして、その先生ゾンビによって転送したゾンビ。

 顔まで隠す全身鎧に身を包んだ熱血ゾンビに、事前に指示した通り、偵察部隊を襲わせた。

 

 真装を解放し、ステータスを5000以上にまで高めた熱血ゾンビが、偵察部隊の頭上から降ってくる。

 

「にゃ!? 皆、上!」

「え? ぐぎゃ!?」

 

 猫耳の忠告も虚しく、偵察部隊の一人が熱血ゾンビに踏み潰されて息絶えた。

 当然、そこは擬似ダンジョン領域の中。

 DPと経験値が入ってくる。

 

「こいつ、どこから……ぐはっ!?」

「マイケル! うわっ!?」

「がっ!? クソッ……!」

「皆!」

 

 圧倒的な強さを誇る熱血ゾンビは、一瞬にしてオートマタと猫耳以外の四人を瞬殺。

 その勢いのまま、猫耳に殴りかかる。

 

「にゃにゃ!?」

 

 だが、猫耳はこれを防いだ。

 倍以上のステータス差を前に、小さな短剣で拳の勢いを受け流し、しぶとく生き残る。

 さすがはA級冒険者という事か。

 他の奴らと違って、そこそこにやるね。

 

 でも、それは悪足掻きでしかない。

 私はオートマタを操作し、腰の剣を抜かせて、猫耳に向かって突撃させた。

 猫耳から見れば、援護の為に近づいたように見えただろう。

 

 だからこそ、その剣は簡単に猫耳の胸を貫通した。

 

「……え?」

 

 猫耳が、何が起こったかわからないというような顔をした。

 さぞ混乱してるのだろう。

 猫耳からすれば、この状況で私が裏切るメリットなんて思いつかない筈。

 普通に考えて、一介の冒険者が魔王軍に属してるなんて思いもよらないだろう。

 

「にゃんで……? ラビちゃ……」

 

 最後の言葉を言い切らない内に、熱血ゾンビの拳が猫耳の頭部を吹き飛ばした。

 首から上を失った猫耳の死体が、ぐらりと倒れる。

 でも、高熱を纏った拳に傷口を焼かれたので、血は出ない。

 比較的綺麗な死体の完成だ。

 

「ふぅ。やっと片付いた」

 

 私は、居住スペースで一人呟く。

 あとは、熱血ゾンビを送還して、辺りに散らばった冒険者の死体を還元したらお仕事完了だ。

 周囲の魔物に襲われる前に、オートマタもダンジョンに回収しておこう。

 その後、先生ゾンビのテレポートで砦の近くに送り返せばいい。

 

 こうして、魔王軍の動向を掴んだ上に、部隊まで壊滅させられたという最高の結果を持って、私の偵察任務は終了したのだった。

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