母校の一室。そこには、多数のKAN-SENが集まっていた。
部屋に集まったKAN-SENの中には、クイーン・エリザベスやビスマルク、赤城など各陣営の主要人物といえる者もいる。
彼女たちが集まった理由。それは、彼女たちが所属する母校に下着泥棒がいる、というとんでもない情報がロイヤルのメイド隊からもたらされたからだ。
「被害に遭ったのは、誰なのかしら?」
「……ご主人様です」
赤城の問いに対して、ベルファストは少し躊躇ってから答える。その答えを聞いた赤城の顔から表情が消えた。
「この母校に、よりにもよって、指揮官様の下着を盗んだ不届き者がいる、ですって……見つけ次第、血祭りにあげてやるわ」
犯人確保への強烈な意気込みを見せる赤城。そんな彼女に、部屋の中にいる大半のKAN-SENの視線が集まる。赤城のお付きとして会合に出席していた加賀ですら同じく視線を向けていた。視線が自身に集まっていることに、赤城は不満を露にする。
「もしかして、私が犯人だと思っているのかしら?私を見くびらないでちょうだい。確かに、赤城の指揮官様への愛は、たまに、過激なものになってしまうことはあるけど、盗みを働くまで堕ちていないわ」
自分に疚しいことはない、と赤城は胸を張って答える。
本当なのか、と多くのKAN-SENが思う中、エンタープライズがおずおずと手を上げた。
「その、メイド隊の勘違いではないのか?例えば、誰かが、うっかり間違えて持って帰ってしまったとか……」
「確かに、シリアスは失態をさらすことは多いですが、故意に行うことはありませんし、失態を犯したと気づけば、ご主人様に罰を求めに行きます」
歯切れの悪いエンタープライズの言葉に対して、ベルファストは首を横に振って答える。
「待ってくれ。私は、シリアスが何か失敗をしたとは一言も言っていないぞ!?」
いきなり個人を名指ししたベルファストに、エンタープライズは慌てた。そんなエンタープライズを無視して、ベルファストは言葉を続ける。
「それに、私どもが確認したところ、失われたご主人様の下着は、1枚や2枚ではございません。合計で13枚の下着が盗まれていました」
「待て。被害者である指揮官自身ですら、疑念を抱くまで、盗みに気が付かなかったのだ。それなのに、何故、他者である貴様たちが、盗まれた下着の正確な数を把握している?実は、メイド隊が犯人なのではないか?」
メイドとして指揮官の衣服の洗濯やらを、指揮官から頼まれたわけでもなく、勝手にやっているメイド隊。
そんな彼女たちが、下着を盗まれた被害者である指揮官ですら分からない盗まれた下着の正確な枚数を知っている。
それが理由で、加賀はメイド隊に疑いの目を向けた。
「お言葉ですが、重桜の大鳳様、隼鷹様など、怪しい方は多いと思われますが?」
加賀の言葉に、ベルファストに、随伴していたシェフィールドが言い返す。
「あの子たちじゃないわ。大鳳は、自分の私物を指揮官様のお部屋に置くことはあるけど、指揮官様の私物を盗んで自室に飾るなんてことしないし、隼鷹は、下着泥棒なんてやらずに真っ正面から下着を貸してくれとか言うわよ」
赤城は、ベルファストに犯人なのではないかと名を挙げられた二人を弁護する。
下着泥棒とは別の問題が浮上したが、KAN-SENたちは、まずは下着泥棒の件を片付けることを優先した。
「そういえば、指揮官様のことを、子豚とかふざけた呼び方をしている方がいたわねぇ。確か、ロイヤルの方だったかしら?」
自身だけでなく、重桜の仲間を犯人扱いされた赤城は、嫌みたらしい表情と声で、揶揄する。
「エイジャックスは、泥棒なんて下品なことをしないわ!それに、鉄血にだって、指揮官のことを下僕呼ばわりする娘がいるじゃない」
「ドイッチュラントは、素直な子よ。私たち鉄血の仲間を侮辱するというのなら、考えがあるわ」
赤城の言葉に、ロイヤル代表のクイーンエリザベスは言い返し、今度はそれを聞いた鉄血代表のビスマルクが不快感を露にする。
「もうKAN-SEN全員の部屋を家捜ししてみたら?」
険悪な空気が部屋中に広がり、話し合いどころではなくなりつつある現状に、プリンツ・オイゲンは心底面倒くさいといった様子で、声をあげた。
「待て。今回の事件を内密に処理するために、集まったことを忘れたのか?」
「今の状況では、そんなの無理よ。少なくとも、この場にいる者が、有罪であるのか無罪であるのかは見分けをつけないと、話にならないわ」
加賀は、プリンツ・オイゲンの提案に反対するが、クイーン・エリザベスやビスマルク、赤城らがプリンツ・オイゲンに賛同したため、秘密の会議に参加した者の部屋を家捜しすることに決まった。
後日、内密の会議に出席していた大多数のKAN-SENの部屋から盗まれた下着が見つかったという報告を、本当に下着泥棒ではなかった赤城から受けた指揮官は軽い鬱状態に陥った。