Panzer schiff Division's   作:箕理 田米李

1 / 1
ずっと前から頭の中で温めていた世界観を表現してみました。


第1団「第7装甲艦師団"サハラ師団"

ここはかつて砂漠や自然の広がる平原があった動物達の王国でもあったサハラだった。だが、今はもうその光景は見る影もない。砂漠の黄色や平原の緑色は真っ青な海の青色が飲み込み、溶け込んでしまったからだ。ここサハラだけではない、この世界のほとんどの大陸という大陸が突然の水没を迎えたのだ。人類は生き残る為に長い年月を掛けて水没した大陸の上に人工の水上都市を築き上げた。

しかし、そんな天変地異を経験したのにも関わらず人類は争いをやめられなかった。"領土"を失った国々が今度は"領海"を争う様になりその争いは世界中に飛び火した。アイゼンヴァルト帝国 第7装甲艦師団"サハラ師団"もここ新サハラ水上大陸の"領海"を連合国から死守すべく守りについていた。

 

Ⅵ号級重戦艦

"ASD(アイゼンヴァルトサハラ師団)-701"

艦橋

副長兼参謀長

ユーカ・ハーブスト・ベルグ中佐「司令官殿、上がられます❗️」

そう副長兼参謀長のユーカ中佐が言うと皆が敬礼する。彼らが敬礼し視線を送っている彼女こそ第7装甲艦師団"サハラ師団"の司令官、ルーツィエ・ロスメルである。

ルーツィエ・ロスメル元帥兼艦長「皆お疲れ様、直っていいよ。」

そう司令が言うと敬礼をやめて皆それぞれの作業と持ち場に戻る。

ルーツィエ「ユーカさん、現在の艦隊の状況を教えてください。」

部下に対しても敬語で心優しく、部下思いな彼女はまず副長兼参謀長で同時に親友でもあるユーカに艦隊の状況を尋ねる。

ユーカ「正直言って良くないですあります師団長殿。連日の戦闘で我が師団戦力は半減しています。」

第7装甲艦師団は戦闘艦と支援艦を含めて336隻いるのだが、敵連合国の一角であるブリテン(ブリテン・ランド連合王国)第7機甲艦師団"レッド・ラッツ(赤いネズミ)"との連日の激戦により戦力を消耗していた。

ルーツィエ「本国からの補給要請は❓」

ユーカ「再三要請しましたが、補給は充分ではありません。」

本国から遠く離れた戦場にいるサハラ師団には戦い続ける為に必要な補給が欠かせない。輸送船団は送られてくるもののブリテンと連合国に参戦したステイツ合衆国による通商破壊が行われたせいで満足に受けられてないのが現状だ。

ルーツィエ「現在の戦力数と使える数は❓」

ユーカ「はい、126隻中稼働可能な艦が83隻でうち損傷及び修理中が28隻、予備が15隻です。」

稼働可能が予備を含めて111隻と半分以下となった師団戦力、これでは数に勝る連合国に負けてしまう。そう思い顎に手を当て作戦を練り始める。

ユーカ「(お、師団長殿が考え始めました。作戦参謀たる私でも思いつかない様な奇策を練るんでしょうね〜、楽しみであります。)」

"海上の狐"と称される程の奇策を生み出す戦術家として敵味方双方にその名を知られるルーツィエ、臨機応変に対応できるその頭脳はこの不利な状況を打破できる術を見出せるのか期待に胸を膨らませ目を輝かせるユーカ。

ルーツィエ「ユーカさん、撃破された艦艇って今はどうしてる❓」

ユーカ「え❓あ、はい。回収できるものは回収して共食い整備用に残しています。」

ルーツィエ「その中に武装が使えるものは❓」

ユーカ「正確には数えていませんがそれなりに...。」

ルーツィエ「すぐに集めて❗️」

ユーカ「は、はい ❗️了解であります❗️」

短時間のうちに作戦を練り上げ、即実行に移すその姿にユーカはさらに目を輝かせ「この人の参謀で良かったと」思いを噛み締める。

ルーツィエの指示通り、損傷したⅥ号級重戦艦、Ⅳ号級中型戦闘艦、Ⅲ号級突撃艦、38t級軽戦闘艦が集められた。どれも連日の戦闘で被弾して破壊された艦だ。この一見役に立ちそうにない艦艇群を使い、どう役立てるのだろうか❓

 

連合国

ステイツ合衆国

第2機甲艦師団

M4級中型戦闘艦

“Be audacious(大胆不敵であれ)"

艦橋

師団長 ベアトリス・パットロン「各隊前進❗️前進❗️ガンッガン行くよぉーっ‼️」

その明朗快活さとフレンドリーさで部下からの信頼が厚い師団長 ベアトリスは各隊に元気よく無線で命じる。

ステイツ合衆国 第2機甲艦師団はこのサハラが初陣だ。連合国に加入したばかりのステイツ合衆国軍は実戦経験はほぼ皆無だった。ブリテンと共同戦線を張る為士気も旺盛で意気揚々としている。悪く言えば「我々ステイツの艦艇はアイゼンヴァルトどころか味方のブリテンよりも優っている」と楽観的もしくは傲慢に捉えていた。ベアトリスもそうかはどうかは分からないが、少なくとも敵はともかく味方を見下してはいないだろう。

副長「我々だけで良かったのですか❓いきなりの初陣で。」

ベアトリス「エリー達の師団は連日の戦いでtiredだからね。それに連合国に参戦したからには役に立たないと。」

彼女がエリーと呼ぶ人物はブリテン 第7機甲艦師団"レッド・ラッツ"の師団長 エリザベス・モートメリーの事だ。ベアトリスとは対照的に優雅で余裕を持ち、気品に満ちた彼女はベアトリスとは別の意味でのカリスマがあり戦い方もよく準備した上で挑む守備的と真逆である。

副長「気を遣ってのことでしたら私が口出し致しませんが、なにより我々は彼女達より経験が無いのです。せめて共闘できれば心強かったというのが本音です。」

ベアトリス「それは私も同感だよ。でも弱気はダメだよ。No ploblem❗️とまではいかないけど、なんでも怖がったり不安がったりしてたら何もできないよ❓だからさ、何事もLet's tryでいきましょっ⁉️」

副長「そうですね。失礼しました師団長殿❗️」

ベアトリスの前向きな言動と姿勢に副長は表情を明るくする。そんな会話を弾ませながらV字隊形で進撃する第二機甲艦師団を遥か彼方の正面からレーダーで捉えている者がいた。ルーツィエのⅥ号級重戦艦だ。

 

Ⅵ号級重戦艦

ASD-701

CIC

レーダー手

サーリー・K・ローゼ中尉「敵艦隊捕捉しました。V字隊形で真っ直ぐ向かってきます。」

CICでレーダー手を務めるサーリーが第2機甲艦師団の接近を知らせる。

ユーカ「いよいよ来ましたね。」

ルーツィエ「うん、作戦開始します。サーリーさん、各隊に暗号で伝えたください。」

サーリー「わかった。」

サーリーは作戦開始を素早く味方に暗号を送る。

 

第2機甲艦師団

右翼

M4級中型戦闘艦

217号艦

艦橋

艦長「我らが師団長はガンガン行くタイプだが、敵は既に戦力が半減してんだろ❓俺達がガンガンやったら蹂躙しちまうんじゃないか❓」

副長「そうですね、初陣の相手が半数程度じゃ勝ったもどう...」

そう話していた矢先、話が途切れた。217号が突然爆発したのだ。

 

中型戦闘艦 "Be audacious"

艦橋

ベアトリス「Wnatッ⁉️何があったの❓」

副長「217号艦が撃破されました❗️」

双眼鏡で217号艦を見る2人。

ベアトリス「 Trubleなのッ⁉️」

副長「分かりません、突然爆発を。」

ドォンッと次は左翼の方から爆発が聞こえる。

左舷見張員「234号艦がやられました❗️」

ベアトリス「敵襲⁉️」

副長「レーダーと見張員は何をしていたッ⁉️」

そう騒いでいる間に次々と水柱が上がる。砲撃だ、しかも数が多い。

「DF(師団旗艦)❗️DF❗️敵の攻撃を受けている❗️指示を乞うッ‼️」

「274号艦がやられたっ⁉️次は❓...ウワァァァァァァァッ⁉️」

次々と味方の悲鳴とも取れる無線が次々と飛んでくる。

ベアトリス「(情報が間違っていた⁉️いや、何かtrickがあるはず...でもどんな...❓)」

ベアトリスは必死に頭でこの状況がなぜ起こってるのかを考え込む。

 

重戦艦

ASD-701

CIC

サーリー「敵艦隊、陣形乱れています❗️」

ユーカ「やりました❗️作戦成功ですぅ‼️」

ルーツィエ「うん、ユーカさんが損傷艦を集めてくれたお陰だよ。ありがとう(にっこり)。」

ユーカ「はっ❗️いえ私は当然の事をしたまでで〜(師団長殿に褒められたでありますぅ〜)。」

ユーカは謙遜するものの褒められた嬉しさに癖のある髪をわしゃわしゃさせて喜ぶ。

今ベアトリス達を攻撃しているのは戦闘で撃破された損傷艦群だ。艦橋や一部の兵装を破壊されたり、無数の被弾でスクラップ同然になった艦を無人化し無線操縦装置を取り付け遠隔操作している。これらを敵が通ると思われる場所に砲台として配置していたのだ。

ルーツィエ「マコーナさん、前進して射撃位置に。ブルーメさんは射撃用意、弾種は徹甲。」

 

艦橋

操舵手

マコーナ・カルト・クヴェレ少尉「了解、と〜りかじいっぱ〜い。」

 

CIC

砲術士

ブルーメ・F・カンゲル大尉「了解しました。主砲発射用意します。」

ルーツィエ「艦隊前進、トドメを刺しに行きます。Panzer vor〜❗️」

艦橋にいる操舵手 マコーナとCICにいる砲術士 ブルーメにそれぞれ指示を送り、艦隊を前進させて敵にトドメを刺しに向かう。

ルーツィエ「全艦停止、砲撃用意。各艦各個に目標を定め砲撃開始してください。」

配置についた各艦が主砲を各々の目標に狙いを定める。

ルーツィエ「撃てッ❗️」

ルーツィエの指示で一斉に砲声というなの轟音が響き渡り、敵は瞬く間に数十隻が大破、轟沈する。

 

第2機甲艦師団

中型戦闘艦"Be audacious"

艦橋

副長「師団長ッ❗️どうすればッ⁉️」

ベアトリス「Calm down(落ち着いて)❗️白リン弾を撃ち込んで‼️Hurry up(急いで)‼️」

砲術士「Yes,ma'amッ❗️」

発煙弾の一種である白リン弾を撃ち敵の視界を曇らせた。今日は風も無いので煙幕は流される事なく漂う。

ベアトリス「撤退するわよ❗️」

生きている艦達はベアトリスの艦に続き180°回頭して撤退する。

ベアトリス「(Shit(クソッ)❗️(相手を侮っていたつもりはないのに、数で優ってると思って油断した❓傲慢が綻びを生むという事なの❓)」

ベアトリスは心中でそう思いながら敵に背を向け敗走するしかなかった。第2機甲艦師団の初陣は敗北という苦い結果に終わったのだ。

 

Ⅵ号級重戦艦

ASD-701

艦橋

サーリー「敵艦隊、撤退していくよ。」

サーリーが敵艦隊の撤退を確認し見張員が煙幕の晴れた海域を見ると、そこには無数の敵艦の残骸が漂っていた。敵艦隊をを返り討ちにしたとの報を聞き乗員達は歓声を挙げる。

ユーカ「やりましたよ師団長殿ッ❗️大成功ですよッ‼️」

ユーカも喜びをルーツィエに表すものの彼女の顔は未だ信玄な表情だった。

ユーカ「師団長殿❓」

ルーツィエ「あの艦隊の旗艦と思われる艦。すごく冷静だった。あの混乱した状況下ですぐに立て直して煙幕を張って逃げた。今度会った時は同じでは通じないかもしれない。ユーカさん、十分な補給を送るよう再度本国に伝えて。」

ユーカ「りょ、了解しました❗️(さすが師団長殿、一時の勝利の余韻に浸らないとは)ですが、損害ゼロで勝ったんです。今は素直に喜んでもいいと思いますよ。」

ルーツィエ「うん、そうだね。」

ユーカ「だから、皆んな貴女について行くんです。これからも一緒ですよ師団長殿。)」

その後、"サハラ師団"はルーツィエの臨機応変な奇策によって数に勝る連合国を何度も返り討ちに合わせる事に成功する。しかし、それでも数的不利なのは否めず。補給の滞りもたたって遂には撤退してしまう事になる。




「軍艦」×「戦車師団」の物語、いかがだったでしょうか❓今回は史実のドイツアフリカ軍団の戦いをモチーフにしました。軍艦を戦車に見立てた戦い、短いながらも楽しんで頂けたら幸いです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。